堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
ーーーー都内廃神社ーーーー
「おまたせ、ユキ」
「うん、美澄ちゃん」
いつか一緒に街に出掛けた時みたいに。
今日は別に待ち合わせをしたわけでもないけれど、わたしたちは出会った。2人とも笑顔で、言葉を交わし始める。
「ここでもいい?」
「うん」
美澄ちゃんに促され、昔のように腰かけた。今考えるととっても罰当たりなことをしてるな、なんて少し可笑しくなる。
「どうしたの?」
「ううん、こうしてゆっくり話すの久しぶりだなって」
「まぁ、うん。色々あったからね。しかたないしかたない」
「ふふっ、本当にそうだねぇ」
色々あった。
美澄ちゃんと一緒に呪術高専に入って、任務に行ったり、お出掛けしたり。
わたしが正藤兄さんに狙われ、守ってくれたこともあった。
花房家の当主になった時は1年くらい会えなくて。
それから、今度は美澄ちゃんが草木福濁に狙われて、その頃くらいから本当に会えなくなっていった。
ゆっくり話したのが、囚われてた時だったのは皮肉な話だよね。
そして、わたしは『堕雪』に乗っ取られて……まぁ、今となってはその表現は正しくないかな。
だから、こうして話せるのは本当に久しぶり。
「ねぇ、美澄ちゃん」
「なに、ユキ?」
「わたしたちっていい友達だったのかな?」
「……私はそれ以上だって思ってたよ」
「………………そっか」
でもね、美澄ちゃん。
それはきっと『上書き』されてた記憶のおかげなんだ。
その証拠に、今はきっと私を恨んでるでしょう?
家族を殺されて、幸せを壊されて、憎しみに支配されたはず。
あの頃のわたしとおんなじ気持ちだよね。
「あのね、わたしは美澄ちゃんの家族を殺したの」
「……うん、思い出したから知ってるよ」
「きっと美澄ちゃんも辛かったよね。悲しかったよね。わたしのこと、きっと憎いよね」
知ってるよ。わたしもそうだったから。
それでも、
「ごめんねは言わない。言えない。わたし、そうしたいって思ってしまったから。わたしから両親を奪ったみたいに、全部殺して幸せを奪ってしまおうって思ったから」
それがわたしの気持ちだった。
謝らない。そもそも謝ったところで何か変わるわけでもないもんね。
それに、
「それにまだ終わってないんだ。わたしのお父さんとお母さんを殺したあの男はまだ生きてる。それに、美澄ちゃんも生きてるから」
でも、もう終わらせよう。わたしの、この憎しみを晴らそう。
この殺意はもう止めないから。
「ねぇ、美澄ちゃん」
「お願いだから、殺させて」
わたしの言葉を受けて、美澄ちゃんはゆっくりと立ち上がった。
わたしも立って、美澄ちゃんと向き合う。
そしてーー
ーーブンッーー
呪力を込めた拳を振り抜いた。
今のわたしは以前とは違う。呪力も膂力も『堕雪』と同じ。
「っ!」
ーースッーー
それを感じ取っていたようで、美澄ちゃんは拳を受けずに避ける。受けていれば、確実に壊せてたのに……。
っと、惜しむのはあとにしなきゃ!
「『廻脚』!」
「っ」
ーーギリギリギリギリーー
両腕で受ける。確かに呪力は多少上がってるけどーー
「受け切った、よ」
「……さすがはユキ。じゃあーー」
ーーグラッーー
「!?」
「これはどう!!」
足元がぐらついた。右足が急に落ちる感覚。
一瞬だけ呪力感知を足元へ向けると、右足側の地面が四角く抉れていて、そこからは美澄ちゃんの呪力の痕跡があった。
『結界』を使ったのだと理解すると同時に、わたしは地面についている左足で踏み切り、宙返りで後ろへ距離をとる。
これなら距離を離せるはず。けど、美澄ちゃんはわたしが地面を離れた隙を見逃さない。
ーーガシッーー
「つかまえた」
左足を持たれる。そのまま上へ投げ飛ばすつもりなんだろう。
だけど、それも想定してるよ。
ーーググググッーー
「っ、この力……っ」
「今のわたし、膂力も『堕雪』と同じなんだよ、美澄ちゃん」
ーーブンッーー
掴まれたまま左足を振り抜く。
わたしの足の力だけで、美澄ちゃんの体を吹き飛ばせた。
すかさず追い打ちをかける。駆けて跳ぶ。吹き飛ばした美澄ちゃんの頭上へ。そして、
ーーバギッーー
美澄ちゃんの腹部に呪力を込めた拳を叩き込んだ。
「~~ッ」
そのまま地面へ叩きつけられる美澄ちゃん。咄嗟に呪力で防御はしたみたいだけど……。
「立てる?」
「……………………」
体が地面にめり込んだまま反応はない。
……これで終わりかな。案外あっけなかった。そう思うのは、わたしに『堕雪』の力があるからで。
だからだと思う。それは今までだったら考えられない油断。
呪力感知を怠ったせいで、気づくのに遅れた。
「…………『輪廻復原』」
ーーゾゾゾゾゾゾッーー
美澄ちゃんの手に『転移結界』が張られていたことに。
『転移結界』でストックしてあった『それら』を美澄ちゃんが握りつぶした途端に、彼女の周りに血溜まりが出来ていく。けれど、その血溜まりはすべて呪力の塊で。
やがて美澄ちゃんがゆっくりと立ち上がる頃には、彼女を守るように7体の骸人形が出来上がっていた。その中にはあの呪詛師・草木福濁らしき姿もあって。
「……総力戦、だね」
「出し惜しみしてる場合じゃないでしょ。それに、これが私の最後の『輪廻復原』になるだろうしね」
「それじゃ第2ラウンドといこうか、ユキ」
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完結後の外伝ストーリー(主人公は優くん)の構想があるのですが、見たいですか? それとも美澄と雪の物語だけで十分ですか?
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見たい
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美澄と雪の話だけで十分
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新しい作品を書くべし