堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完)   作:藍沢カナリヤ

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第56話 花と散るー壱ー

ーーーー都内廃神社ーーーー

 

 

「おまたせ、ユキ」

 

「うん、美澄ちゃん」

 

 

いつか一緒に街に出掛けた時みたいに。

今日は別に待ち合わせをしたわけでもないけれど、わたしたちは出会った。2人とも笑顔で、言葉を交わし始める。

 

 

「ここでもいい?」

 

「うん」

 

 

美澄ちゃんに促され、昔のように腰かけた。今考えるととっても罰当たりなことをしてるな、なんて少し可笑しくなる。

 

 

「どうしたの?」

 

「ううん、こうしてゆっくり話すの久しぶりだなって」

 

「まぁ、うん。色々あったからね。しかたないしかたない」

 

「ふふっ、本当にそうだねぇ」

 

 

色々あった。

美澄ちゃんと一緒に呪術高専に入って、任務に行ったり、お出掛けしたり。

わたしが正藤兄さんに狙われ、守ってくれたこともあった。

花房家の当主になった時は1年くらい会えなくて。

それから、今度は美澄ちゃんが草木福濁に狙われて、その頃くらいから本当に会えなくなっていった。

ゆっくり話したのが、囚われてた時だったのは皮肉な話だよね。

そして、わたしは『堕雪』に乗っ取られて……まぁ、今となってはその表現は正しくないかな。

 

だから、こうして話せるのは本当に久しぶり。

 

 

「ねぇ、美澄ちゃん」

 

「なに、ユキ?」

 

「わたしたちっていい友達だったのかな?」

 

「……私はそれ以上だって思ってたよ」

 

「………………そっか」

 

 

でもね、美澄ちゃん。

それはきっと『上書き』されてた記憶のおかげなんだ。

その証拠に、今はきっと私を恨んでるでしょう?

家族を殺されて、幸せを壊されて、憎しみに支配されたはず。

あの頃のわたしとおんなじ気持ちだよね。

 

 

 

「あのね、わたしは美澄ちゃんの家族を殺したの」

 

「……うん、思い出したから知ってるよ」

 

 

 

「きっと美澄ちゃんも辛かったよね。悲しかったよね。わたしのこと、きっと憎いよね」

 

 

知ってるよ。わたしもそうだったから。

それでも、

 

 

「ごめんねは言わない。言えない。わたし、そうしたいって思ってしまったから。わたしから両親を奪ったみたいに、全部殺して幸せを奪ってしまおうって思ったから」

 

 

それがわたしの気持ちだった。

謝らない。そもそも謝ったところで何か変わるわけでもないもんね。

それに、

 

 

「それにまだ終わってないんだ。わたしのお父さんとお母さんを殺したあの男はまだ生きてる。それに、美澄ちゃんも生きてるから」

 

 

でも、もう終わらせよう。わたしの、この憎しみを晴らそう。

この殺意はもう止めないから。

 

 

 

「ねぇ、美澄ちゃん」

 

「お願いだから、殺させて」

 

 

 

わたしの言葉を受けて、美澄ちゃんはゆっくりと立ち上がった。

わたしも立って、美澄ちゃんと向き合う。

そしてーー

 

 

ーーブンッーー

 

 

呪力を込めた拳を振り抜いた。

今のわたしは以前とは違う。呪力も膂力も『堕雪』と同じ。

 

 

「っ!」

 

ーースッーー

 

 

それを感じ取っていたようで、美澄ちゃんは拳を受けずに避ける。受けていれば、確実に壊せてたのに……。

っと、惜しむのはあとにしなきゃ!

 

 

「『廻脚』!」

 

「っ」

 

 

ーーギリギリギリギリーー

 

 

両腕で受ける。確かに呪力は多少上がってるけどーー

 

 

「受け切った、よ」

 

「……さすがはユキ。じゃあーー」

 

 

ーーグラッーー

 

「!?」

 

 

「これはどう!!」

 

 

足元がぐらついた。右足が急に落ちる感覚。

一瞬だけ呪力感知を足元へ向けると、右足側の地面が四角く抉れていて、そこからは美澄ちゃんの呪力の痕跡があった。

『結界』を使ったのだと理解すると同時に、わたしは地面についている左足で踏み切り、宙返りで後ろへ距離をとる。

これなら距離を離せるはず。けど、美澄ちゃんはわたしが地面を離れた隙を見逃さない。

 

 

ーーガシッーー

「つかまえた」

 

 

左足を持たれる。そのまま上へ投げ飛ばすつもりなんだろう。

だけど、それも想定してるよ。

 

 

ーーググググッーー

 

 

「っ、この力……っ」

 

「今のわたし、膂力も『堕雪』と同じなんだよ、美澄ちゃん」

 

 

ーーブンッーー

 

 

掴まれたまま左足を振り抜く。

わたしの足の力だけで、美澄ちゃんの体を吹き飛ばせた。

すかさず追い打ちをかける。駆けて跳ぶ。吹き飛ばした美澄ちゃんの頭上へ。そして、

 

 

ーーバギッーー

 

 

美澄ちゃんの腹部に呪力を込めた拳を叩き込んだ。

 

 

「~~ッ」

 

 

そのまま地面へ叩きつけられる美澄ちゃん。咄嗟に呪力で防御はしたみたいだけど……。

 

 

「立てる?」

 

「……………………」

 

 

体が地面にめり込んだまま反応はない。

……これで終わりかな。案外あっけなかった。そう思うのは、わたしに『堕雪』の力があるからで。

だからだと思う。それは今までだったら考えられない油断。

呪力感知を怠ったせいで、気づくのに遅れた。

 

 

 

「…………『輪廻復原』」

 

ーーゾゾゾゾゾゾッーー

 

 

 

美澄ちゃんの手に『転移結界』が張られていたことに。

『転移結界』でストックしてあった『それら』を美澄ちゃんが握りつぶした途端に、彼女の周りに血溜まりが出来ていく。けれど、その血溜まりはすべて呪力の塊で。

やがて美澄ちゃんがゆっくりと立ち上がる頃には、彼女を守るように7体の骸人形が出来上がっていた。その中にはあの呪詛師・草木福濁らしき姿もあって。

 

 

「……総力戦、だね」

 

「出し惜しみしてる場合じゃないでしょ。それに、これが私の最後の『輪廻復原』になるだろうしね」

 

 

 

「それじゃ第2ラウンドといこうか、ユキ」

 

 

 

ーーーーーーーー

完結後の外伝ストーリー(主人公は優くん)の構想があるのですが、見たいですか? それとも美澄と雪の物語だけで十分ですか?

  • 見たい
  • 美澄と雪の話だけで十分
  • 新しい作品を書くべし
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