堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完) 作:藍沢カナリヤ
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『輪廻復原』
その術式効果は、呪力による術式と肉体の再構築。
その副産物として骸人形ができるのであって、それ自体が本質では決してない。
領域展開『
領域内の術師の呪力を蒐集し、術式を剥離させる必中効果。
肉体を再構築する強制効果。
そしてーー
草木美澄は自らの術式の解釈を拡げ、死の淵でやっとその領域を作り上げた。
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信じられないことが起きていた。
結界を応用して、自らの手を再現したことも。
その手で掌印を結び、領域を展開したことも。
そしてーー
「なに、これ……?」
青紫色の小さな花が咲き誇る庭園のような領域。
冷たさを感じつつも穏やかなどこか矛盾したその領域内で、わたしは『わたし』と対峙していた。
『…………こんにちは、わたし』
「っ、こんなッ!!」
ーーグヂャッーー
呪力を帯びた拳で叩き潰す。
自分と同じ姿をしたものを殺すのは気が引けるけど、それでもそのまま話をするよりはましだった。
なのに、
『無駄だよ』
「っ」
そこにはまた、『わたし』がいた。
ーーグヂャッーー
また殺す。
それでも、また、
『わたしはあなた。あなたがここにいる限り、わたしは存在し続ける』
「気味の悪い……」
『気味が悪くても、わたしはわたしだから』
『だから、お話しよう』
「……話? わたしを殺すんじゃないの?」
だって、そう聞いていたから。
美澄ちゃんの『輪廻復原』は骸人形が本人と対峙した時、殺し合わせるようになっていると。領域はその術式効果が強化されているだろうから、当たり前のように『わたし』はわたしを殺そうとしてくるものだと思い込んでいた。
『うん。わたしはあなたに危害を加えない』
だから、その答えは予想外で。
何か裏があるのだと考えて探るも、目の前の『わたし』から害意のようなものは感じ取れなかった。
だから、少しだけ話に乗ることにする。これも美澄ちゃんの領域を解明するため。
「ここはなに?」
『ここは美澄ちゃんの領域の中。綺麗だよね、ここ。美澄ちゃんの名前とおんなじ花がたくさん咲いてて』
『わたし』に指を差されなくても分かる。辺り一面を覆う小さな花。その名前をわたしも知っている。
ミスミソウ。
花言葉は『自信』。早春に雪の間から花を咲かせることからその言葉がついたという、自信に満ちた美澄ちゃんらしい花だ。
「っ、違う……! そんなことを聞いたんじゃない。なんでわたしが2人いるの」
『……この領域『合誦廻礼花』は『輪廻復原』の解釈を拡げた結果生まれた領域。だから、この中では美澄ちゃんが出会ったすべての人間の肉体を再構築できる。もちろん術式もね』
「……それ、本当?」
『『わたし』は自分に嘘はつかないよ』
それがもし本当ならば、美澄ちゃんを殺す上でこの領域は脅威になる。どうしたら……?
頭の中で、これからの戦闘の計画を練ろうとしているわたしを笑う声。少しムッとして、彼女を睨む。
「何がおかしいの」
『言ったでしょ? 『わたし』はわたしに危害を加えないって』
『わたし』の目的はひとつだけ。
目の前の彼女はそう言って、さらに言葉を紡ぐ。
『わたしはただ、あなたの本心を聞きたいだけ』
「本心って……わたしは美澄ちゃんを殺して、復讐を遂げたいだけ」
『……本当に?』
「っ」
その言葉に、わたしは少し動揺してしまう。
……なんで? いや、そんなことない。
「……悲願だよ」
『うん、知ってる』
「お父さんとお母さんを殺した奴への復讐は、わたしの生きる目的……生きる意味だった」
『それも知ってるよ』
「……なら、なんでそんなことを聞くの」
復讐を遂げたい。その気持ちを疑うなんて。
もし本当に目の前の『わたし』がわたし自身ならば、ありえない愚問だ。
『本当に?』
「また……なにが言いたいの!」
『わたしが生きる目的は本当にそれだけなの?』
「っ、くどい! それだけ、それしかない! わたしにはそれしかーー」
『美澄ちゃんと過ごした日々は楽しくなかった?』
『わたし』はわたしにそう訊ねる。
……きっと、自問自答のような、そうではないような奇妙な状況のせいだ。わたしの心がこんなにざわつくのは……。
「たのしく、なんてなかった」
『…………』
「記憶を上書きしていたから、表面上は楽しく見えたかもしれない。だけど、心の底では憎かった。憎かったよッ!!」
『…………』
わたしのことをただ見つめてくる『わたし』。
何故か、わたしはその視線から目を逸らしてしまって。その行動をさらに指摘される。
それが本心なら、目を逸らす必要ないよね、と。
「ちがう」
『ちがわない』
「ちがうッ!!」
『ちがわないよ、わたし』
「うるさいっ!!」
『…………もう分かってるんでしょ?』
「黙れ黙れ!!」
…………うるさい。
うるさいうるさいうるさいうるさい。
黙れ黙れ黙れ。
そんなの、ありえない。ありえないの。
だって、
ーーーーそんなのわたしが一番分かってるんだからーーーー
本当は、心の中では分かってるんだ。
わたしのことだもん。『わたし』に言われなくても自分が一番分かってるよ。
『やっと素直になった』
うん……そう。
本当はわたし………………うん、『わたし』の言う通りだ。
楽しかった。
美澄ちゃんとの毎日も。一緒に戦った日々も。
大変だったこともあったけれど、楽しかったよ。
もちろん、わたしがあの男を憎んでるのは事実。殺したいと思ってるのも本当だ。
だけど、それは美澄ちゃんを殺してまで遂げようとは思えないんだ。それほどまでに美澄ちゃんはわたしにとってーー
「大事な、親友だもん……」
本当に大切で大切で、大好きな美澄ちゃん。
殺そうなんて、もう思えないよ。
『…………それが聞けてよかった」
「え……?」
その一言で、目の前の『わたし』の姿が変わっていく。『わたし』から美澄ちゃんへと。
「美澄ちゃん?」
「うん。そうだよ、ユキ」
微笑む美澄ちゃん。
ってことは、今までのは……?
「私の『合誦廻礼花』は肉体と術式の構築だけじゃなくて、人格を剥離させる術式効果もあるんだ」
人格の剥離。それって……?
「だから、今までユキが話していたのは、私の体をユキの体に構築し直したところにユキの人格の一部を入れたんだ」
「……じゃあ、あれはやっぱりわたしだったの……?」
「まぁ、そういうこと。本当は『堕雪』を切り離して私の中に入れるつもりだったんだけどさ」
失敗しちゃった。
そう言って、美澄ちゃんは落胆のため息を吐く。
「……まぁ、ユキからその言葉を聞けたからよしとするかな」
一転、笑う美澄ちゃん。その表情はよく見慣れたものだった。
「美澄ちゃん……」
「これで両想いだね、ユキ!」
あぁ、いつもと変わらない美澄ちゃんだ。
わたしにまっすぐな好意を伝えてくれる彼女。無邪気なようで、少しだけ下心も感じるいつもの好きをくれる。
それを見て、聞いた途端に、
ーーブチッーー
「あ、う……うぅ……あぁぁ……」
「……ユキ!」
急に心がぐらつく感覚に襲われ、思わず倒れ込んでしまう。美澄ちゃんはそんなわたしを支えてくれる。
「ユキ! ユキっ!!」
「だ、めっ……あぁぁっ……みす、みちゃんっ……」
理解はしてたはずだった。なのに、一瞬勘違いをしてしまった。
もうわたしは戻れないのに。戻れないところまで足を踏み入れているのに。
このまま美澄ちゃんと一緒の日常に戻れるかもなんて、そんな勘違いをしてしまったんだ。
もう、わたしは呪霊『堕雪』なんだ。
あの時、わたしは自らを差し出した。『待雪草』と同化して『堕雪』になることを選んだ。
これは『縛り』。もう戻れない。
わたしは美澄ちゃんを殺すまで止まれない。
どうなるかはもう分からない。もしかしたら、このまま暴走して美澄ちゃんを手にかけてしまうかもしれない。
そんなことしたくない。でも、もう無理だよ。
せめて最期に伝えなきゃ……。
「美澄ちゃん」
「ごめんね」
「ありがとう』
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私の目的は最初からひとつだけだ。
ユキと幸せになる。
そのためにユキを守ってきた。
そのためなら、私はすべてを捨ててもいい。
……そう、すべて捨てるよ。
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「術式解放ーー『
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『合誦廻礼花』
美澄の領域展開。
領域内では美澄が出会った呪術師の術式・肉体を構築し、完全に使役することができる。また、自身の肉体を再構築することもできる。
また、領域に引きずり込んだ術師の肉体を構築した場合、本人の術式と人格を剥離させる。そのため、本来であれば、対象となった術師は肉体のみを残して死亡する。
雪に使った領域は本来の使い方をしていない。
完結後の外伝ストーリー(主人公は優くん)の構想があるのですが、見たいですか? それとも美澄と雪の物語だけで十分ですか?
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見たい
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美澄と雪の話だけで十分
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新しい作品を書くべし