堕雪の花言葉【3年以内に私はそれを●す】(完)   作:藍沢カナリヤ

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第6話 幕間の話

ーーーー記録ーーーー

 

 

都内S沢製鉄工場跡地にて。

準一級呪術師・要田純及び草木美澄、三級呪術師・花房雪が一級相当と思われる呪霊と会敵し、祓除した。

その際、要田純が死亡した。

その遺体からは脳幹が抉り出されており、草木美澄の証言から得られた呪霊の行動と一致した。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「ねぇ、ユキ。まだやってるの?」

 

 

呪術高専の女子寮内。

ユキの部屋で、私はユキにそう訊ねた。

当のユキはというと、呪力感知の訓練のために、壁一面に貼り付けたおびただしい数の心霊写真とにらめっこしていた。

その辺の訓練は、私はよく分からないけど、なにやら花房家でもそんなことをしてきたらしい。

まぁ、事実ユキの呪力感知能力は高い訳だから、きっとその方法は効果的なんだろうね。

 

 

「もう少し……」

 

 

珍しく前髪をピンで止め、真剣な表情をするユキ。

かわいい。

真剣な顔もかわいいなんて反則だよぉ。

本当にかわいいなぁ、ユキは。

 

 

「……あの……美澄ちゃん?」

 

「ん~? なに~?」

 

「そんなに見られると……集中できない」

 

「おかまいなく!」

 

「わたしが気になるのっ」

 

 

もう終わり!

そう言って、ユキは写真を片付け始めた。

どうやら訓練は終わりみたい。

 

 

「それにしても、今日はいつもに増して真剣だったね」

 

 

片付けを手伝いながら、聞いてみる。

いつも真面目なユキだけど、今日は少し様子が違ったように見えたから。

私の言葉にユキは、

 

 

「……うん。わたしが倒れてなかったら、もしかしたら…………」

 

 

俯いてしまった。

もしかしたら、か。

 

 

「あの要田って人が死んじゃったのはユキのせいじゃないよ。相手は一級呪霊だし、呪術師ならそんなこともあるって」

 

「……わかってる。でも、やっぱりね」

 

 

 

「仲間が死んじゃうのは悲しくなるよ」

 

「…………そっか」

 

 

 

本当に、ユキは優しい子だ。

 

 

 

ーーーー呪術高専1年教室内ーーーー

 

 

「先日の任務はご苦労様でした」

 

 

担任・佐木はわたしたち2人にそう言った。

感情のない声。

わたしはこの声が少しだけ苦手。

 

 

「ありがとうございます。先生」

 

「早速ですが次の任務です」

 

 

わたしの言葉を軽く流し、先生は話を進める。

それに対して、美澄ちゃんが不満の声をあげた。

 

 

「まだ2日よ? 私たちが任務から帰ってきてから」

 

「もう2日も休んだのですから十分でしょう」

 

「十分じゃない!」

 

 

ユキと遊びに出掛けたいのよ!!

そんな風に声を大にする美澄ちゃん。

正直、同感。だけど、

 

 

「美澄ちゃん」

 

「ユキもそう思うよね!」

 

「任務は任務だよ」

 

「…………むぅ。ユキが言うならそうするけどさぁ」

 

 

少し不満そうにしながらも、美澄ちゃんは引き下がってくれた。

 

 

「もういいですか」

 

「はい、すみません。続けてください」

 

「では、任務の内容ですが、その前に……草木さん、花房さん」

 

 

先生は2人の名前を呼ぶと、1枚の紙切れを差し出してきた。

少し前のものなのだろう。

紙は日焼けして、そこに書かれた文字も読みにくくなっている。

 

 

「これは……なんですか?」

 

 

そう訊ねると、先生は答える。

 

 

「そこに書かれた場所に行って、『あるもの』の回収をお願いします」

 

「……あるもの?」

 

「特級呪物『両面宿儺』。その指の回収です」

 

 

『両面宿儺』。

花房家にいた頃、その名前を聞いたことはある。

呪術全盛の時代に、当時の呪術師が総力をあげて挑み敗れた呪術師。

腕が4本、顔が2つある仮想の鬼神の名を冠する呪いの王。

 

 

「その指……」

 

「そんなヤバいものを私たちにとってこさせるわけ?」

 

「人手不足ですから」

 

「…………先生」

 

「なんですか、花房さん」

 

「……わたしは三級、美澄ちゃんは準一級です。その呪物の回収には役不足ではありませんか」

 

 

『両面宿儺』の指は他の呪いを惹き寄せる。

それも知っていた。

だから、わたしたちでは流石に厳しい。

そう思っての発言だったけど。

 

 

「先ほども言いましたが、他の一級術師は僕も含め、年々活発になる呪霊の相手で手一杯です」

 

「それは、わかってます……」

 

「それに今回は指の受け取りだけですから、準一級でも十分です」

 

 

受け取り?

特級呪物の?

 

 

「はい。相手には話は通してありますから、そのメモに記されている場所に行き、それを渡せば受け渡しは完了です」

 

「先方? 相手は誰?」

 

「…………アイヌ呪術連の関係者とだけ言っておきます」

 

 

詳しいことは話さないし、話せない。

先生からはそんな雰囲気を感じ取った。

以前、先生から聞いた話だけど、一級術師に課せられる任務の危険度は然ることながら、機密性に関しても準一級以下の比ではないらしい。

だから、きっとわたしたちには気軽に話すことはできないんだろう。

正直、腑に落ちないことはあるけど、今はこの件について、自分の中でそんな風に決着をつけた。

 

 

「明日より任務に取りかかってもらいます。準備をしてください」

 

 

そうして、その日は午前で放課となった。

 

ちなみに、午後は美澄ちゃんと任務のための買い出しに出掛けた。

買い出しの間、美澄ちゃんは終始ご機嫌で。

……機嫌がなおったみたいでよかったな。

 

 

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