金 獅 子 を 狩 っ て 参 れ !   作:水煮

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初っ端からしっかり投稿遅れました。

今回は三人称視点に変わっています。



酔狂な美食家:美味との遭遇?

酔狂な美食家

とある異国では、虫を煮込んで 

食する文化があるそうじゃ。  

しかもそれが実に美味だと聞く。

…これは、試さずにいられる  

ものか! 人類の歴史とは食の 

探求の歴史じゃ。ワシは恐れん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン

 

 

「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 視界を埋め尽くす赤黒い虫の大軍。さながら蚊柱ならぬ、ブナハブラ柱に囲まれて、若い男ハンターが黒い鎧をガチャガチャ鳴らして半狂乱になっている原因は、二日前に遡る……

 

 

 

 

 

 

 わがままな第三王女の一件から1週間、アスカ達はリオレウス捕獲の報酬を受け取った後、とある依頼を受けるためユクモ村へ訪れていた。

 大陸の東部を管轄しているロックラックギルド、そのさらに東にある山岳地帯に、その村はある。知る人ぞ知る名湯が湧き出る、まばらな湯治客で賑わう観光地である。

 

 そのとある依頼というのを受けるはずだったのだが、どうやら依頼者と連絡が取れないらしく、しばらくユクモ村で待たされることになった為、村に来ていた軽い依頼を受けようということになったのである、が……

 

 

「俺、虫嫌いなんだよ……」

 

「でも村の人困ってるんだからしょうがないでしょ」

 

 

 村への交易路にもなっている水没林に、ブナハブラが大量発生していて立ち往生していたところに、美食家とやらからブナハブラの討伐依頼が来ていたらしい。丁度そのタイミングでハンターが村へ来たので、あれよあれよという間にクエストを受けることになった。

 この村でも村長の好意でマイハウスを借りているので、みすみす断ることも出来ない。

 すぐに水没林に出発して、到着したアスカたちを待っていたのは、数百というブナハブラの群れだったという訳だ。

 

 

「あああああああああ!!!! 助けて!! 誰か助けて!!!!」

 

「アスカー!! 気を確かに持って!!」

 

「無理ぃぃぃ!!!」

 

 

 アスカが手に握った矢を無我夢中で振り回すが、虫たちの軍勢はヒットアンドアウェイを繰り返して一定の距離を保ってくる。たまにぐしゃっと矢じりが虫の身体を貫いて、その感触が腕に伝わって鳥肌を立たせる。

 

 

「頑張れー!! ちょっとずつ倒せてるよ!」

 

「嘘だ!! 全然減らないじゃん!!」

 

 

 いつもの冷静な態度はどこへやら、涙目で駄々をこねるアスカ。ただでさえ全長1m近くあるバカでかい虫が、視界を覆い尽くして景色すら見えない程の数襲いかかってくるのでもう顔は真っ青。もはや気絶寸前である。

 

 

「おらぁぁぁぁ!! けっ、ぷう、ごまぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 薄れゆく意識の中で、メロンが怒涛の気勢で両手に広げたチェーンソーを身体ごとコマのように回して、ブナハブラを砕き散らしていくのが見える。

 チェーンソーの刃がはじき飛ばしたブナハブラの腹の断面が顔にベチャッと叩きつけられ、青い体液の温度を感じさせ、白目をむいて、アスカは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

「……きて、起きて! アスカ!」

 

「ん……どこだ、ここ……」

 

「ちゃんとしてよ! 水没林だよ! ブナハブラを狩りに来たんでしょ!」

 

「……そうだった……ブナハブラは……」

 

 

 目を開けて辺りを見回すと、死骸、死骸、死骸、死骸。

 アスカが再度意識を飛ばそうと白目をむくが、メロンに引っぱたかれて阻止される。

 

 

「こら! ちゃんと立って! あとはネコさん達に任せていいから、歩いて帰るよ!」

 

「うぅ……はぁい……」

 

 

 まるで母子のように、自分よりずっと背の低いの少女に手を取られ、青年はフラフラの足取りで家路に着く。

 

 

「もー、わたしが全部倒す羽目になっちゃったじゃん!」

 

 

 本来の依頼はブナハブラ20体の討伐。しかし2人の後にする水面には、ゆうに100を超える虫たちの亡骸が転がって、その大地を埋めつくしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら〜……龍歴院のハンターさん、お疲れ様でしたわ」

 

 

 ユクモ村の村長兼温泉の女将である、竜人族のきれいな女性が、頬に手を添えてハンターたちに労いの言葉をかける。

 

 結局村に帰るには遅く、水没林のベースキャンプで1泊したアスカたちは、翌朝早くに出発して昼頃にユクモ村に帰ってきた。討伐したブナハブラの大半はそのまま自然に還すのだが、依頼人に引き渡す分は運んで帰らなければならないので、小型モンスターの輸送に人員を割く訳にも行かず、必然的に同じ竜車に乗ることになる。

 大量のブナハブラに虫嫌いが囲まれて、心休まる訳もなく、アスカはすっかり疲弊しきっていた。

 

 

「それで、依頼人のお方から、クエストをクリアした方に渡すようにと、文が届いているのですが、読み上げてもよろしくて?」

 

「はい……」

 

 

 村長が懐から1枚の手紙を取り出して、その内容をつらつらと読み上げ始める。

 

 

「えー、こほん。『ブナハブラを討伐したハンター殿。此度の働き、まことに感謝する。そこで、貴殿らに晩餐会の誘いじゃ。討伐した飛甲虫をともに頂こうではないか。毒の処理など、専門家の意見も聞きたい。決して一人で虫を食すのが怖くなったからでは無いぞ。決してな』とのことですわ」

 

「断ります」「行きます!!」

 

 

 ハンターコンビがまったく同時に返答する。どちらがどちらのセリフかは言うまでもないだろう。

 お互いの返答を認識した途端、信じられないという顔を見合わせて、言い争いを始めてしまった。

 

 

「おいメロンお前! 行く訳ないだろこんなもん!!」

 

「え──!? 行きたい行きたい行きたい──ー!!」

 

「そんなに虫が食いたきゃ一人で行ってこい!!」

 

「あらあら、仲のよろしいことで」

 

 

 早速喧嘩を始めた二人を見て、村長が上品にクスクス笑う。二人はバツが悪そうに居住まいを正し、すいませんと小声で謝った。

 

 

「とにかく、この文を差し上げますわ。お所が裏に書いてありますの」

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 受け取ろうとしないアスカの代わりに、メロンが手紙を手に取る。

 これ以上見苦しいところを見せるわけに行かず、二人は村長に礼をして温泉街の階段を下って行った。

 

 

「面白そうだし行きたいー! 昆虫食は前から気になってたんだよ! とにかくわたしだけでも行ってくるからね!」

 

「あぁ勝手にしろ! 俺は絶対に嫌だ!」

 

「ふん! いいもん! アスカなんて知らない!」

 

「ああ俺もだ! 解散だ解散!」

 

 

 年甲斐もなく意地を張るアスカ。彼は今年で20歳になる。二人はついにお互いにそっぽを向いて黙り込んでしまった。

 

 コンビ、解散である! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、美食家が指定してきた場所はここでいいのか?」

 

「うん、そうみたい」

 

 

 メモと建物をにらめっこする二人の人影。肩を寄せあって大変仲が良さそうである。

 

 アスカは結局、メロンを一人で行かせるのは心配で、なんだかんだ着いてきた……というか、そもそも二人別行動という選択肢が頭にないようであった。喧嘩したところで同じ部屋に帰る訳だし。アスカは「俺は見てるだけで食べないからな」としきりに繰り返してはいたが。

 

 手紙に書いてあったロックラック近郊の街へ行き、美食家の屋敷へ訪れ、本人と対面したのが昨日の話だ。酔狂な美食家とやらは、白ひげをたくわえた初老の男で、柄の多い羽織を纏った胡散臭い人物だった。

 美食家はにこやかに謝辞をまくし立て、明日このレストランに来るようにとメモを渡し、すぐに屋敷に閉じこもってしまった。

 アスカたちは近くの宿で一泊し、メモと格闘してそのレストランを探し、今に至る。

 

 

「大きい店だな……」

 

「結構高そうだね」

 

 

 村の集会所くらいのサイズはありそうな店構えに怯みつつ、その扉を開いて中に入る。店に客は入っていなく、アスカたちを出迎えたのは昨日会ったばかりの美食家と、コック棒を被った大きなアイルーだった。

 

 

「ようこそ『アイルービストロ ロックラック』へお越しくださいました。わたくしは料理長のペロンガですニャ」

 

「あ、どうも。ハンターのアスカです」

 

「メロンです! よろしくお願いします!!」

 

 

 普通のアイルーの倍はある体躯と突き出たお腹を器用に折り曲げ、料理長が挨拶する。メロンは誰に対してもこの挨拶で通すらしい。

 

 

「あれ? ニャンコックさんとは……」

 

「おお、申し遅れましたニャ。ここはニャンコックの経営している、『アイルービストロ』のロックラック支店。わたくしはニャンコックの弟子の一人なんですニャ」

 

「そうだったんですね。ニャンコックさんには龍歴院でお世話になっています」

 

 

 ニャンコックとは、龍歴院本部前の集会所で料理を振舞っている、これまた大きなアイルーの料理人のことだ。彼はチーズを食べて大きくなったと言っていたが、ここの料理長もそうなんだろうか。

 

 

「ゴホン。それでペロンガ殿、料理の準備はできているのかね?」

 

「おお、そうでしたニャ。下ごしらえは大方終わっていますが、何分虫料理は初めてニャもので……」

 

「あ、俺はメロンの付き添いなので、料理は出して頂かなくて大丈夫です」

 

「そうニャのですか? 3人分の準備をしてしまったのですが……」

 

 

 料理長は残念そうに豊満なお腹をなでる。アスカの良心が少し痛むが、いやいやと首を振って食べない決意を固める。

 

 

「分かりました、それでは、あちらの席におかけ下さいニャ」

 

 

 料理長に案内されて、部屋の中央にある四人席に座る。去り際の料理長にメロンが何か耳打ちをして、いたずらっぽく笑って厨房へ見送ってから席に座ると、美食家がアスカたちに話しかける。

 

 

「いやー、アスカ殿にメロン殿、今日は来てくれて感謝する。わしの聞いた話ではな、とても美味らしいので……これは食の探求なのであって、何も恐れることはないんじゃ」

 

「いや、誘いは嬉しいんですが……なんか自分に言い聞かせてません?」

 

「なんの事じゃ? これは言うなれば崇高な使命なんじゃよ。言い聞かせてなどおらん」

 

「その割には随分汗かいてますけど……」

 

 

 うんうん頷きながらそう言う美食家の顔を、冷や汗がツーっと流れていく。この美食家、変な興味とプライドで依頼をしたはいいものの、なんだかんだゲテモノ料理は苦手なので、昨日からずっとビビり散らかしていたのだ。

 厨房から料理長が食器を乗せたワゴンを押して出てきた。テーブルの前で止まって、料理を各々に配る。

 

 

「お待たせしました、こちら、ブナハブラの香草煮込みですニャ」

 

 

 出てきた料理は、一見普通の見た目だった。少し緑がかった鶏肉のような何かが、野菜と一緒に盛り付けられている。

 

 

「なんか……思ったより普通だね」

 

「うむ、これは一安心……ゴホン、美味そうな料理じゃ」

 

「ブナハブラはとても大きいですから、食べられそうな肉が多かったんですニャ。逆に外殻は硬すぎて取り除くしかニャいので、虫っぽさは薄れますニャ」

 

 

 拍子抜けの感想を漏らすメロンたちに、料理長がそう説明する。ブナハブラの甲殻は武器や防具に加工される程の硬さなので、とても食べられるものでは無い。

 そこで今まで黙っていたアスカが、引きつった顔で料理長に問いかける。

 

 

「あの……俺の分はいらないってさっき……」

 

 

 アスカの目の前には、断ったはずの料理がしっかり置かれていた。

 

 

「先程メロン様に、一応持ってくるようにと仰せつかりましたニャ」

 

「ほら意外と見た目大丈夫だったでしょ? アスカにも食べて欲しいと思って」

 

「お前……後で覚えてろよ……」

 

 

 料理長のセリフに被せるように、ニコニコと説明するいたずら少女をキッと睨んで、諦めたようにため息をつくアスカ。確かに見た目は大丈夫そうだと恐る恐る眺めるが、脳裏にあの巨虫がチラついて、思わず吐き気が込み上げる。

 アスカは懸命に見ないふりをしているが、他2人はもう食べる準備万端のようだ。

 

 

「それじゃ、いただきまーす!」

 

「お、おお……ワシも頂くとするかの……」

 

 

 メロンたちがフォークで1口大の肉のような何かをを口に運ぶ。ついにそれを口の中に入れて咀嚼し、真剣な顔で慎重に味わっている。

 アスカが不安そうに二人を交互に見ているが、食事中の当人たちは真面目な顔でもぐもぐと無言のままだ。

 

 

「どうだ……? 不味いのか……?」

 

 

 一点を見つめて咀嚼を続ける二人を見て、アスカが思わずそう漏らす。

 ごくりと嚥下したメロンがフォークを皿に置いて、少し俯いてから、ついに口を開いた。

 

 

 

「美味しい!!」

 

 

 

 パッと笑顔になって、次の一欠片を口に運ぶメロン。美食家も続けて感想を述べ始める。

 

「うむ……! 白身魚のような淡白な味わいで、癖がなくて食べやすい。食感はエビに近いな。魚料理を食べているようじゃ」

 

「そうニャのです。身体が大きいせいか、肉がしっかりしていて魚類との共通点も多かったんですニャ」

 

 

 ブナハブラは飛行するためなるべく軽くなるようスカスカの体内構造をしているが、それでも1メートル近い巨体を浮かすためにはそれなりの筋力がいる。その筋肉が、少なすぎず硬すぎない、丁度いい可食部となっていた。

 だがアスカは信じられないものを見る目で、その食事の様子を見つめている。

 

 

「本当に美味いのか……? なんか緑がかってて気持ち悪いのに……」

 

「それはブナハブラの体液の色が染みていたものです。血抜きもしていないので不安でしたが、全然臭みがないので安心して食べられますニャ」

 

「うぇぇ……」

 

 

 体液という言葉を聞いて、アスカの顔から更に血の気が引いていく。

 昆虫は気門という穴から全身に直接酸素を通すため、動物のように酸素を運ぶためのヘモグロビンを持たない。ヘモグロビンは血の赤色や鉄臭い匂いの原因でもあるので、ブナハブラの体液には臭みがなかった。

 

 

「美味しいよアスカ! 食べてみなよ!」

 

「う……いや……やっぱり無理だ……」

 

「見た目で判断してはいけませんぞ、アスカ殿。バターの香りですかな? 味付けもしっかりしていてとても美味じゃよ」

 

「いや、味の問題じゃ無くてですね……」

 

「でも、料理長さんがせっかく作ってくれたんだよ?」

 

 

 さっきまでビビっていた美食家もすっかり調子に乗っている。しかし熱心に勧めてくる二人をなおも拒んで、アスカはフォークに手をつけようとしない。

 

 

「まぁ、食べてほしい気持ちはありますが、わたくしは気にしてニャいですよ……? しょうがないですニャ……」

 

 

 料理長が耳をピッと伏せて残念そうに笑い、アスカの良心が傷つき決意が揺らいでいく。

 

 

「それでは、わたくしは次の料理を持ってきますニャ……」

 

 

 料理長はそう言うとトボトボと厨房に帰って行った。哀愁漂う後ろ姿である。

 

 

「アスカ……料理長さん悲しそうだったね……」

 

「う……なんだよその目は」

 

「試行錯誤して作った料理を食べて貰えなくて、さぞかし残念だったことでしょうな……」

 

「それは……ていうか、二人なんか仲良くなってません……?」

 

 

 少女と老人が息を合わせて、演技臭い悲しげな表情で見てくるせいで、どうしてもいたたまれない気持ちになってくる。

 ……1口くらいは、と覚悟を決めて、アスカが口を開いた。

 

 

「……分かりました、食べればいいんでしょ?」

 

「え!? 言ったね? 撤回はさせないよ!」

 

「おい! さっきの雰囲気はどうした!」

 

 

 急なお葬式ムードから打って変わって、メロンが満面の笑みで言質を取りに来た。言ってしまったものは仕方ないと、メロンにキラキラした目で見られながら、アスカは渋々フォークに手を伸ばす。

 

 

「う……うわぁ……」

 

 

 フォークの先を肉に突き刺すと、想像より柔らかい感触がズブリと伝わってきて、気持ち悪さを増幅させる。

 既に吐きそうなアスカは、もうガッシリと目を瞑っている。

 

 

「こらー、目つむってたら食べれないでしょ!」

 

「いや食べれる……俺は鼻もつまむぞ……」

 

 

 宣言通り鼻までつまんで、アスカが震える手で肉を口元まで運んでくる。しかしどうしても口が開かない。

 

 

「アスカ! あーんして!」

 

「ぐ……」

 

 

 大地に亀裂を入れるが如く、唇を引き剥がすようにゆっくりと口を開ける。本当に嫌そうだ。

 

 ついにブナハブラの肉が口腔内に入った。震える歯を慎重に下ろして、前歯で肉を挟んでいる。

 

 

「うぃぃぁぃぃぃぁぁぁ」

 

「頑張れ! ほらもぐもぐってして! もぐもぐ!」

 

「ぅぅうぅぅぅぅう」

 

 

 アスカが声にならない悲鳴をあげながら、意を決して肉を噛んだ。

 

 

「どう? 美味しい?」

 

「んんんんん……わからん……不味くはないぃ……」

 

 

 視覚と嗅覚をしっかり封じているので、とても味を感じられる状況では無い。

 

 

「もう目は開けていいよ! ごっくんしな! はい、ごっくん!」

 

「んんん──!!!」

 

「お待たせしましたニャ。甲殻は食べられないと言ったのですが、一応……」

 

 

 もはやお母さんと化したメロンに煽られて、ついにその肉を飲み込もうとしたその瞬間。

 まぶたを開けたアスカの目に飛び込んできたのは、丸ごと揚げたブナハブラそのものを持った料理長の姿だった。

 

 油と衣まみれの死骸と目が合って、自分の体内にその巨虫が入っていくことを認識し、体が拒絶反応を起こす! 

 

 

「丸揚げに……」

 

「うぼろろろろろろろろろろろろろろろ」

 

 

 吐いた。

 胃の中身を全部出す勢いで吐いた。

 そのまま白目をむいて気絶し、吐瀉物の上にビシャっと倒れ込む。

 

 

「あっ……やりすぎたかも……?」

 

「アスカ殿?! どうしましたニャ?!」

 

「……」

 

 

 反省、心配、絶句と三者三様の声が店内に響き渡る。しかしその声のどれもが、彼に届くことは無いのだった……

 

 BAD END……

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……酷い目にあった……」

 

 

 ユクモ村の集会浴場の湯船に浸かって、アスカは嫌な思い出を湯に溶け込ませるように、少しずつ思い出す。

 

 目覚めたのは宿のベッドの上だった。顔にこびりついた臭いに起こされ、ぼんやりしたままその臭いの元凶を落としているうちに、何があったのか思い出して、もう一度吐きそうになった。

 メロンは無理矢理食べさせたことを反省しているらしく、やけに大人しく言うことを聞いていた。アスカとしては無理矢理食べさせられたとは思っていなかったが、都合がいいので放っておいて、メロンの奢りで美味い飯をご馳走になって、次の日にユクモ村へ帰ってきた。

 

 何となくいじっていたガーグァのおもちゃを置いて、あまり考えても仕方ないと、様子を湯から上がって浴場を出る。

 外で待っていたメロンと合流して、高い石階段を下りていく。

 

 

「アスカー、もう怒ってないー?」

 

「別に俺は最初から怒ってないぞ、お前が大人しいから放っておいたけど」

 

「え!? 嘘、ちょっと!! じゃあ昨日のご飯代返してよ!!」

 

「もう食っちまったもんは仕方ない」

 

 

 ポカポカ叩いてくるメロンの拳を受けながら階段を下ると、桃色の着物の竜人村長が、アスカたちに気づいて手招きしているのが見える。

 

 

「お疲れ様です、龍歴院のハンターさん。またずいぶんと仲のよろしいことで」

 

 

 うふふと笑う村長に苦笑いで答えるが、村長のまなざしが真剣なものに変わり、何事かと姿勢を正すと、彼女は一つ咳払いをしてゆっくり口を開いた。

 

 

「本題なのですが、例の依頼、連絡が取れましたわ」

 

「本当ですか」

 

「はい、かなり深刻な状況のようで、使者を出すのもままならなかったそうです」

 

 

 アスカたちがユクモ村までやって来た理由。その依頼が、村長の口から語られた。

 

 

「あなた達には火山へ行ってもらいます。……依頼者は火の国の姫。どうか、火の国の危機を救ってくださいまし」

 

 

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