金 獅 子 を 狩 っ て 参 れ !   作:水煮

5 / 6

モンハン小説書く上での誠意と思って戦闘シーン書いたけど、なんかキツいだけだったしもうやめよう…



火の国の姫:火山炎上! 後編

 ジャラララララ……

 サイドカバーのボルトを外し、チェーンとガイドバーを分解する。ゴミを簡単に掃除して、ポーチから替刃を取り出し、ガイドバーに取り付けて本体にセット。チェーンの張り具合を確認し、軽く油を差して、試運転して問題なければ完成。同じことをもう一本のチェーンソーにも行う。

 

 

「よし、完璧!!」

 

 

 新品の刃を光らせた二本のチェーンソーを振りかざして、メロンが立ち上がった。

 

 ギロチンの名を持つメロンの愛刀は、切れ味が落ちても研ぐわけにはいかないので、砥石の代わりに替刃を持ち込んでいる。

 隣でアスカは大量の矢を矢筒に詰め込んでいる。現在地は火山ベースキャンプのテント内。事前に持ち込みを頼んでおいた各種アイテムやギルドからの支給品が、遅れて到着していた。

 

 

「じゃあ出発するか」

 

「はいよー」

 

 

 準備が終わり、テントを出てまだ見ぬモンスターを探しに再び山を登る。狩猟再開だ。

 

 火山地帯に対策もなしに足を踏み入れると、凄まじい熱気に肺が焼け、体は脱水症状を起こすため、クーラードリンクを必ず飲まなければならない。調合に使われる氷結晶は常温でも溶けない程の冷気を放ち、火山の熱気を和らげてくれる。

 

 リオレウス亜種、もしくはアグナコトルを探して、火山を駆け回り痕跡を辿るが、なかなか見つからない。

 火山中腹まで登って、双眼鏡で周囲を探していると、溶岩だまりと岩の隙間で寝ているアグナコトルを発見した。

 

 

「居た……あそこじゃ戦えないな。そこの平地までおびき出そう」

 

「了解」

 

 

 流れる溶岩に気を付けながら斜面を下って行き、アスカが弓の射程ギリギリまで近づいて、一際大きい岩の上に立って狙撃する。

 ばしゅっ、と円弧を描いて矢が飛んで行き、凄まじい精度でアグナコトルの額に命中し、ガツンと音を立てた。ギロりと目を開いた炎戈竜が、睡眠の邪魔をする不届き者の姿を見つけて、怒りの咆哮を上げて溶岩を撒き散らしながら突進してくる。

 追いつかれないよう必死で岩と岩の間を跳ぶが、アグナコトルが岩をものともせず砕き割りながら、アスカ目掛けて猛追する。クチバシでどつかれる寸前の所で、手を振り回しながら大きく跳び、何とか予定の場所に滑り込んだ。

 

 

「おつかれ!」

 

 

 弓使いの命懸けの遁走に労いの言葉をかけながら、メロンが剣を横一文字、いや二文字に構え、突っ込んでくる炎戈竜の体側を薙いで削っていく。

 体に纏う溶岩がぱっくりと割れて、じわじわと元に戻る。

 1000℃以上の超高温に耐えるアグナコトルの甲殻はしかし、ウラガンキンの物ほど硬くはなく、もう一太刀か二太刀で貫けるかという所である。

 

 炎戈竜が息を吸って、不協和音のような独特な音程の咆哮を上げた。震えるような音波に身動きが取れない二人の目の前で、バガン! とその自慢の碇口で岩盤をぶち抜き、大穴を開けながらドリルのように身をねじって地面に埋まり、その巨体を完全に潜らせ姿を消した。

 

 ハンター達は目配せしてそれぞれ別方向へだっと走り出す。動きを止めるのが一番危険だと知っているからだ。

 アスカが足を踏み出したその一歩先が灯赤色に光り出した。横へ逃げるのは適わないと、よりいっそう足を踏み込んで走り抜けた直後、地面が盛り上がって亀裂が入り、岩盤を突き破った勢いで炎戈竜の30メートル近い体躯が躍り出る。

 

 

「ッッ!!」

 

 

 岩ごと投げ出されて転んだアスカを無視し、炎戈竜はそのまま宙を舞って、今度はメロンに向かって身を捻りながら降り注いで来る。撃竜槍を前にしたような迫力に気圧されかけるが、既に軌道の決まった攻撃、落ち着いていれば難なく躱せる。

 全力疾走で逃れた炎戈竜のクチバシがこれまた地面に突き刺さり、巨体を地中に埋めていったかと思うと、もう一度今度はメロンの足元から二度目の跳躍。それも何とか避けるが、炎戈竜はさらに地中に潜り、鋼板のような超硬質の背鰭だけを地上に出して、物凄い勢いで突進してきた。

 

 

「メロン止まれ!!!」

 

 

 アスカの声を聞いて反射的に急停止したメロンの、すぐ前を目掛けて背鰭が地面を深々と割った。あのまま走っていたら確実に吹き飛ばされていただろう。

 ボウガンの偏差射撃のように、対象の動きを予測し避けた先を事前に狙い撃つ、アグナコトル得意の突進攻撃である。こちらに吸い込まれるようにその巨体が突っ込んでくる様は、まるで未来予知でもしているのではと思わせる迫力がある。

 

 ようやく地上に出てきたアグナコトルの周りは、度重なる潜行のせいでボコボコの穴だらけになってしまっている。足下が悪く迂闊に近づけない。

 アグナコトルが猛スピードで這いずってこちらに向かって来るのを、アスカが強弓で迎え撃ち、胸元の皮に矢が突き刺さるが、お構い無しに突撃した炎戈竜は二人を嘴で貫き潰しにかかり、地面に穴を開けていく。

 

 

「これ以上は危険だ! 向こうへ行くぞ!」

 

「りょーかい!!」

 

 

 穴だらけの地面からマグマが噴き出し始めた。万が一マグマの海に落ちでもしたら、骨も残らず燃え尽きるだろう。アスカ達は崩れ去った岩を蹴って細い道を辿り、火山を登る方に逃走を始めた。

 

 

 炎戈竜が溶岩を水中のように泳いで、逃げる獲物を猛追する。

 二人が火山の八合目辺りの高台になっている場所へ何とか走り込むと同時に、来た道がアグナコトルの嘴に貫かれた。溶岩へ沈みかける足場を踏み出して、一息ついて振り返る。

 

 

「仕切り直しだ」

 

 

 一足先に戦闘態勢に入ったアスカが、振り返って炎戈竜を見定めている。

 遅れて走ってきたメロンが、なにかに気づいたように上を見上げる。普段は紅い頬がサッと蒼白に染まり、手を伸ばして叫んだ。

 

 

「ッ避けて!!」

 

 

 アスカには何が起こっているのか分からない。だが彼はその言葉の真意を確かめようとはせず、ただ相棒を信じて、即座に斜め前へ跳び、大きく転がった。

 直後、彼の立っていた場所が爆音とともに光に包まれ、大炎上する。

 起き上がって空を見上げると、揺らめく陽炎の向こうに現れたのは、悠々と羽撃く碧の火竜。蒼空の王者リオレウス亜種が、火口を背に翼を広げ、不敵に吼えていた。

 

 

 

 

 

 そこから先は物凄い血闘だった。狩人にとっては幸運なことに、二頭の竜は互いの縄張りを主張し、己の強さを見せつけるが如く、血で血を洗う闘いを始めた。

 もちろん初めは二頭とも現れた人間達を狩ろうと攻撃はしていたのだが、四方八方から炎が吹き荒れる竜達の猛攻にアスカ達はなすすべもなく、ひたすらに逃げ回って身を潜めていたところ、いつしか三つ巴の闘いは竜の決闘へと変わっていた。

 

 蒼火竜が毒の爪を構えて隕石のように降り注ぐ。その大質量の飛びかかりは、炎戈竜の冷え固まった火成岩の鎧さえもメキメキと砕き割って、横倒しになった炎戈竜にそのままのしかかる。

 しかし炎戈竜も負けじと巨体を振り回して飛竜に絡み付き、思い切り体を巻いて締め上げる。苦しそうに暴れる蒼火竜が無茶苦茶に火球を吐き、そのうちの一つが炎戈竜の顔面に当たって、怯んだ隙に締め付けから逃れる。

 

 そんな調子でどかんどかんと戦いが繰り広げられるものだから、地面が割れ溶岩は波打ち、もはや人の立ち入っていい領域では無くなってしまった。お互いの必殺の攻撃をもろに喰らい合っているので、二頭の竜はかなり深手を負っているが、余程気が立っているのか、依然戦いをやめる気配がない。

 

 その様子を双眼鏡で遠くから覗く、逃げ隠れたハンター達は、その壮絶な戦いを見てすっかり自信を失っていた。

 

 

「……私たち、ほんとにあんなの倒そうとしてたの……?」

 

「……まぁ、ウラガンキンは倒せただろ? いけたと……思う……」

 

「……」

 

 

 黙りこくる二人の視線の先で、怪獣大戦争は未だ続いている。その様子は、単なる縄張り争いの小競り合いとはかけ離れた、狂気じみたものとなっている。

 

 

「それにしても、何であそこまで戦うんだ? 何かおかしくないか?」

 

「確かに……たまに縄張り争いは見るけど、普通は一撃離脱って感じだよね」

 

「嫌な予感がするな……もっと何か大きなものの、前触れというか……」

 

「まえぶれ」

 

「例えばほら、ラオシャンロンの話みたいな……」

 

「ラオシャンロンの……禁忌の龍が……ってこと?」

 

「そこまでは言わないが……」

 

 

 アスカの言うラオシャンロンの話とは、以下の通りである。

 ある時、歩く天災とも呼ばれる超巨大龍ラオシャンロンが、砦を侵攻し、村を破壊し、田畑を焼いていた。初めは、気性の荒い邪悪な巨龍が、気に食わぬものを踏み潰して回っているのだと、全員が思っていた。しかし誰が言ったかラオシャンロンは、何かに怯えて逃げている、と。その何かとはもしかして、いにしえの伝承につたわる、禁忌の黒龍なのではないか……と、そんな話。

 事実、後に黒龍は現れ、大国の援助と共にココット村の英雄に討伐されたらしく、裏も取れている有名な事件である。今回の事態とは随分異なるが、アスカには何か似ている予感がしてならなかった。

 

 

「まぁ今考えても分からないことだ」

 

「そだね……あ、動いた」

 

 

 視線の先で戦況に動きが起こる。アグナコトルがリオレウス亜種に尻尾をもぎ取られ、喚きながら敗走するところだった。リオレウス亜種は勝鬨の咆哮を上げ、追ってくる様子もない。

 

 

「アグナコトルを追うぞ」

 

「オッケー」

 

 

 マグマの中をザブザブ泳いでいくアグナコトルの行き先を見届けて、双眼鏡をしまい追跡を始める。目指す先は山頂、火口付近だ。

 

 

 

 一歩踏み外せば落下死しそうな細い足場を進んで、溶岩の沸き立つ火口を見渡せる、大きな洞穴に辿り着いた。奥を見てみると、幼生であるウロコトルに囲まれてぐっすり寝ているアグナコトルの姿が見える。

 

 

「寝てる……もう捕獲しちゃった方が良くない?」

 

「確かにな。捕獲しよう」

 

 

 捕獲クエスト以外では捕獲してはいけないルールなどは無く、狩猟という言葉の中には、捕獲の意味も含まれている。捕獲は狩猟時間の短縮により安全性が確保できる代わりに、罠などのコストがかかる他、剥ぎ取りの権利を失うデメリットがある。

 ちなみに剥ぎ取り以外の素材報酬は、多くの場合はギルドが所有する別個体の素材が即日引き渡されるが、ギルド側の手持ちがない場合は、報酬が受け渡されるまでひと月以上待たされることがある。希少なモンスターを捕獲した場合などは、特に素材が回ってくるまでが長く、ハンター達の不満の種になっていたりする。

 また、ギルドのハンター達の間では、モンスターの討伐こそが王道、捕獲は邪道だとする風潮もあるが、二人は気にせず安全第一で捕獲することが多い。

 

 こっそり近づいてシビレ罠を腹の下へ差し込み、体重をかけさせて罠が発動したところで、すかさず麻酔玉を投げつける。アグナコトルを一切動かせず、慣れた手つきで瞬く間に捕獲を終えてしまった。

 

 

「ふう……あと一体……」

 

「気合い入れていくぞ」

 

 

 炎戈竜の狩猟が終わっても、まだ緊張の糸は切られない。ギャアギャア喚くウロコトルを振り払って、リオレウス亜種を追いかけに洞穴を出る。

 双眼鏡で空を見渡すと、滑空していく青い影が小さく見えた。火山の麓、木の生い茂るエリアに飛んで行ったらしい。

 

 

「くそ、また山下りか……」

 

「なんだかんだ降りる方が疲れるよね、登るより」

 

「それな」

 

 

 本日2度目の下山に辟易しながら、二人は煙に包まれた麓の景色に向かって、重い足取りで歩き出した。

 

 

 

 

 クエストを開始してから、既に4時間が経過している。途中で腹ごしらえしながら、やっとこさ山を降りて、リオレウス亜種の痕跡を辿り、背の低い草むらを掻き分けて捜索を続ける。

 二人はかなり疲労していたが、それでも既に、常人なら一歩も動けないほどの運動量に達しており、その身体能力はG級ハンターの超人ぶりを伺わせている。

 

 樹齢数百年とも見て取れる、黒煙を穿つ大木の後ろに、青黒い流線型の、棘のあるフォルムが見えた。その姿は間違いなく、リオレウス亜種そのものである。

 あと一息の時こそ油断は禁物、気をいっそう引きしめて、深呼吸する。

 

 

「わたし閃光玉投げるから、ちゃんと目塞いでね」

 

「了解」

 

 

 メロンがそう確認しながら草むらから躍り出ると同時に、アスカも弓を構える。長かった火の山の戦いも、遂に最終局面を迎えていた。

 

 

 

 狩人と竜が激闘を繰り広げ、剣戟と炎が吹き荒れる。二人とも体力の限界が近いにもかかわらず、その動きに淀みはない。

 

 蒼火竜リオレウス亜種は、空の王者リオレウスの派生種にあたる個体である。その蒼い体色の理由は、空の青や夜の闇に紛れるためとも言われているが、真実は定かでは無い。

 原種に比べて空中戦を得意とし、その巨体からは想像もつかない程の空中機動力で、多くの狩人を丸焦げにしてきた、危険なモンスターである。

 

 一方で、経験を詰んだ狩人にとって、闘いやすいモンスターという側面もある。理由は単純、火竜が大陸全土に広く棲息するため、狩猟する機会が何かと多いのである。

 アスカとメロンも例に漏れず、事実、わがまま王女の依頼で原種の火竜を捕獲したのも記憶に新しい。

 

 亜種といえども基本的な行動パターンは体に染み付いているため、至近距離で切り結ぶメロンも、器用に火竜の猛攻を捌いて火花を散らしている。

 

 

「そっち行った!!」

 

「うぉぉ!!!」

 

 

 遠距離からドスドスと矢を射っていたアスカに、高くまで羽ばたいたリオレウス亜種が、毒爪を突き刺さんと襲いかかってくる。間一髪で回避した直後、蒼火竜は地面にバウンドするかのようにもう一度飛び上がり、逃げる獲物に向かって煉獄の炎を吐く。

 咄嗟に空を飛ぶリオレウス亜種の真下へ潜り込んで、空中からの火炎放射をやり過ごしたアスカの頭上を、円筒状の小さい物体が飛んで行った。

 

 

 カッッ! と真っ白な閃光が空気を埋めて、アスカの目の前に黒い影を伸ばす。メロンの投げた筒に入った光蟲が発光し、突然視界を奪われたリオレウス亜種は、パニック状態で羽をばたつかせて墜落した。

 

 地響きと共に腹から落下したリオレウス亜種に、渾身の一撃を叩き込む。相手もアグナコトルとの戦いでかなり消耗しており、体中に生傷や火傷の跡が目立っていて、その傷をつくようにして己の最大火力をぶつける。卑怯だと罵るのはお門違い、これがハンターの基本戦術である。

 

 

「血ッ、風ッ、独楽ッ!!!!」

 

 

 裂帛の気合とともに、メロンが両の手の鎖鋸を体ごと振り回して、凄まじい遠心力でコマのように旋回しながら、蒼火竜の重殻を切り刻む。

 剣を振り抜く勢いを一切殺すことなく、立て続けに回転しながら突進する、双剣の狩技「血風独楽」でもって、激しい血しぶきを上げリオレウス亜種に深手を負わせた。

 

 転倒姿勢からようやく起き上がったリオレウス亜種が、情けない呻き声を上げながら、戦闘中はいつも高く掲げている双翼を地面と平行に、よろめく足取りで逃げ出した。大技を決めた反動で、蓄積した疲労がどっとあふれ出したメロンが、思わず泣き言を漏らす。

 

 

「えぇー!! また逃げられたらもうっ……限界っ……」

 

「メロン! 閃光玉はまだあるか!」

 

「あるけどっ……あっ!!」

 

 

 このエリアで仕留めることを半ば諦めていたメロンは、アスカの言葉の真意に電撃的に閃いた。

 リオレウス亜種が脱走のために高高度へ飛び立つ瞬間。火竜の身体が宙に浮くその一瞬に、また目の前に閃光をぶつけることが出来れば、とどめを刺す絶好のチャンスになる。

 

 今の疲労状態で精確な投擲は不可能だと判断したメロンが、閃光玉をアスカに投げ渡す。アスカはそれを分かっていたかのように受け取り、流れるような体捌きで、素早くリオレウス亜種の眼前に投げ込んだ。

 

 再び閃光が辺りを包み、丁度飛び立ったばかりのリオレウス亜種が、これまた再び墜落した。

 

 

「麻酔玉を!!」

 

 

 アスカがそう叫びながらもがく飛竜のもとへ駆け出す。

 捕獲のことを失念していたメロンが慌ててポーチから麻酔玉を取り出している間に、腹の下にシビレ罠を設置された火竜が、横倒しの体勢のまま痙攣を始める。

 

 

「それっ……うわぁっ!!!」

 

 

 両手いっぱいに麻酔玉を抱えたメロンが、さあ投げようと走り出した直後、足元の石に蹴っ躓いて盛大に転び、麻酔玉をぶちまけて顔から着地した。

 

 

「……大丈夫か」

 

 

 もくもくと煙る麻酔ガスからメロンを引っ張り出して、アスカが苦笑いする。大量の煙はリオレウス亜種の体内まで吸い込まれていったようで、蒼火竜は低い寝息を立てて安らかに眠っている。

 

 

「うぅ……痛ぁい……」

 

 

 顔を抑えてべそをかくメロン。アスカはやれやれとそれを見て笑ってから、ぐっすり眠るリオレウス亜種を見る。

 

 クエスト、完了。

 

 達成感と襲い来る疲労に身を任せ、手足を地面へ投げ出した。相変わらず遠くで鳴る噴火の轟音も、今は不思議と狩猟達成を祝福しているように思えた。

 

 

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

 

 

「本っ当に、ありがとうっ……!!」

 

 

 クエスト達成の報告を聞いた火の国の姫は、頭が地面にめり込むんじゃないかと思わせるほど、深々と礼をした。

 

 

「礼は必ず尽くす。今はこれだけしかもてなせんが、存分に食べてくれ」

 

 

 口いっぱいで返事も出来ないハンター2人組は、姫の言葉にこくこくと頷く。

 現在は火の国中央宮1階、豪華絢爛な食堂にて、2人は報酬という名目の料理をありがたく頂いていた。広い食堂のテーブルには、国中の料理自慢が作った特産の料理たちが所狭しと並んでいる。

 マグマトンの丼を頬張ってもがもが言っていたメロンが、ごくんと呑み込んで口を開く。

 

 

「ぷはっ、ありがとうございます!」

 

「この国を救ってくれた恩は、生涯忘れはしない。本当に、何と礼を言えばよいか……」

 

 

 今にも泣きそうな顔でかしこまっている火の国の姫。

 ブカブカの衣装を床に余らせ、痩せた頬を覗かせるその姿を見てメロンは思う。一国の未来を背負うには、この少女の背中は些か小さすぎる。

 メロンはいつの間にか憂いを帯びていた顔にニコッと笑いを作り、姫に語りかけた。

 

 

「ナユタさんも一緒に食べませんか?」

 

「えっ……?」

 

「色々あってお疲れでしょう? ほら、目の下のクマも凄いし!」

 

「いや、私がそのようなことをする訳には……」

 

「いいからいいから……えい!!」

 

「んぐっ」

 

 

 料理の乗った匙を姫の口に突っ込む。姫は目を白黒させて戸惑っていたが、やがて大人しくもぐもぐと咀嚼を始めた。

 メロンがおちゃらけた表情を真面目に引き締め、姫に語りかける。

 

 

「……あんまり、休み取ってないんじゃないですか? 今くらいはゆっくり、皆でご飯食べましょう」

 

 

 姫はごくりと飲み込んだ後、少し悩むように黙って、俯いて話し出す。

 

 

「しかし……まだ私にはやることが……私がやらなければならないのだ……」

 

「だったらなおさらです。……私はこの国のことを知らないので、一人で抱え込むな、なんて無責任なことは言いません。……でも今くらいは、ゆっくり食卓を囲んで、愚痴をこぼすくらいのことはしてもいいんじゃないですか?」

 

 

 まっすぐ顔を見合わせてその言葉を聞いていた姫は、一度顔を伏せて、ふっと諦めたように笑って口を開いた。

 

 

「……そうだな。父が病に伏せて以来、複数人での食事など久しくしておらん」

 

「じゃあ……」

 

「私も頂くことにしよう。そうだな……聞いてくれるか、この火の国の話を」

 

 

 アスカとメロンが揃って大きく頷く。祝勝の料理は次々に運ばれてくる。

 宴はまだ始まったばかりだ。

 

 

 





読了ありがとうございました!
次回はようやく第三王女再登場予定です。今度こそこれ以上期間開けずに投稿するぞ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。