霧雨魔理沙……いや、魔理沙でいいって言われたな。
魔理沙に連れられてやってきたのは山の上。そこにあったのは神社だった。
鳥居には博麗と書いてある板があるため、『博麗神社』という名称のようだね。
「れ、霊夢ー。いるか……?」
しかし返事がない。一応人の気配はするから、出てこないだけなのか、気づいていないだけなのか。
しかし、魔理沙は大きな声を出して呼んだのだから、どう考えても無視を決め込んでいるだろう。一体私と出会う前に何をしでかしたんだ?
「い、いないみたいだな。外来人がいたから霊夢に説明させた方が早いと思ったんだが仕方ない。帰「待ちなさい。話を聞かせて」……ようやくお出ましか」
わざとらしく大声で言っていたのだから『外来人』というワードに反応したのだろう。それを言ったことによって出てきたということは、そのあたりのことに関しての専門の人だということだろう。
「で、そいつが外来人?」
「ああ、迷っていたらしい」
「とりあえず、ここについて説明するけどいいかしら?」
私は頷いた。聞かなければ始まらないからな。
……長い。が、よく分かった。
「つまり私は忘れ去られたというわけでしょうか」
「もしくはあいつに連れられた、とかね」
「……あいつ?」
「呼んだかしら?」
その言葉とともに何故か空中に空間が開き、そこから女の人が現れた。
「呼んでないわよ。でもちょうどよかったわ。紫、あんたはコイツをこっちに連れてきたりしたかしら?」
人をコイツ呼ばわりとは失礼な……。ああ、そういえば名前名乗ってなかったな。ならば仕方ないか。
「いーえ。私は一切関与してなくてよ? それにしても、帰らせるなら連れて行こうと思うけれど?」
「で、どうすんの?」
選択権は私に委ねられた訳か。しかし、あんな世界に戻りたくはないし、おそらく神隠しのようなものに巻き込まれたのでなければ確実に私は忘れられたのだろう。証拠抹消記憶操作その他色々。やろうと思えば出来るから、きっとそういう手を使って私という存在がいたことを消した。
ならば、私がやることって、私のいる場所ってひとつじゃないのか?
「私はここに残ります。忘れ去られた私はあの世界に戻ったところで、帰るところはありませんから」
「そう? それじゃあ私は戻るわね」
「え、あんたそのために出てきたの?」
「違うわよ。外の世界に行くだけ」
それじゃあね、という言葉を残して紫と呼ばれた人は空間後と消え去った。
さて、あの人を見たことによって能力……『境界を操る程度の能力』を得た訳だが、いまいちぴんと来ないからこういうときこそ聞いてみるのもいいかもしれない。
「……霊夢、あの人は?」
博麗霊夢……やはり呼び捨てでいいと言われたから霊夢と呼んでいる。彼女は博麗の巫女で幻想郷と外の世界を隔てる結界の管理をしている一人だ。
この博麗神社の巫女さんでもある。だが、参拝客がまるっきり来ないらしい。妖怪退治も専門としているようだから来てもおかしくはないと思うのだがどうしてだろうか。
「あいつは八雲紫。外の世界からこっちに人間を連れてきたりすることもあるけどあれでも妖怪の賢者で結界の管理をしている一人よ」
……やはり神隠しをしていたのか。というか、それでいいのか妖怪の賢者。それでいいのか結界の管理者(の一人)。
「なら、空間から出てきたのは何?」
「それはあいつの能力よ。境界を操る程度の能力。それでさっきのスキマを出したり結界を操ったりしてるのよ。というか、スキマで移動できるからっていきなり出てきたりするのはやめて欲しいわ」
なるほど。そういう感じか。今使うとアレだから今度使ってみることにしよう。
「まぁ、そんな感じね。ところでどうすんの?」
「なにがですか?」
「住むところよ。住むところがないと困るでしょ?」
……まったく考えに入れてなかった。どうしようか……。
「だったら私の家に来ないか?」
「魔理沙の家はやめておきなさい。家の中かなり散らかってるじゃない。そもそも魔法の森の中なんだから普通の人間には無理よ」
「平気かもしれないだろ? 試してみないと分からない」
「……それもそうね」
な、納得するのか!? というか、魔法の森というのは普通の人間にとって危険なところのようだ。何が原因でそのようなことになるのかは知らないが、その森の中にある植物が原因かもしれないね。
「平気だったら魔理沙の家でいいですか?」
「おう、いいぜ! ……まぁ、いろいろ物があって散らかってるけどな」
「じゃ、決まりね。出発しましょ」
そして私たちは、魔法の森へ向かうことになったのだった。