ウマ娘短編   作:無し

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ゴールドシップ

ゴールドシップ、その奇抜な言動や常軌を逸した行動からある層から支持され、ある層からは関わることを避けられる何とも不思議な立ち位置のウマ娘…

それがアタシ、ゴールドシップ様だ!

 

まあ、ゴルシちゃんとしては〜…人に乗せられるのがスゲー腹立つ訳ですよ、決められた規範通りってのも悪くはねーが…そこはゴールドシップ様と言うことで

 

ある皐月賞での事だった、アタシはトレーナーにミーティングに付き合わされてたんだが…

 

トレーナー「前日の雨もあるし、内側の状態は非常に悪い、そこを通るのは危険だし、外を回っていこう、外ならそこまでバ場も悪く無いし…ゴールドシップ?聞いてるのか?」

 

ゴルシ「うーい」

 

この時アタシはあろう事かルービックキューブテトリスに集中しててなーんも話聞いてないんだな、コレが

 

そしてレース中、最後方から追っかける展開で第四コーナーに差し掛かったんだが…)

 

ゴルシ(…あれ、なんであんなに外に膨らんでんだ?ラッキー)

 

と、言うわけでアタシは周りが外に膨らんで走ってる中1人内側を走っちゃったわけよ

 

トレーナーはなんか叫んでたけど、まあ、結果は一位、あんまりうるさいからドロップキックをかましてやった

 

トレーナー「全力で走ってる時に転けたら命の危険が…ぐあ!?」

 

多分ウチのトレーナーはこの時頭でも打ったんだろうな、ここから段々ネジが外れちまった…

練習優先!ちゃんとしろ!だったんだが…どんどんアタシ色に染まりやがった、中々呑み込みも早くて悪くねえ

 

ゴルシ「おっすー、今日のトレーニングだけどダートにマックイーンとジョーダンがいるからダート行こうぜ!」

 

トレーナー「よし、ダート行くか!」

 

まあ、だいたい毎日こんな感じだ

 

 

とある日の放課後

まあ、この日はラーメン屋のバイトをしてたんだが…

 

ゴルシ「へいらっしゃい!」

 

トレーナー「…ゴールドシップ?」

 

ゴルシ「おう、とりあえず座れよ、仕事終わりで疲れてんだろ?」

 

トレーナー「……今日は何の催しだ?」

 

ゴルシ「あーあー、わかってねーなー、そう言う質問の仕方はつまんねぇんだよ…ったく、ラーメン食ってくんだろ?」

 

トレーナー「…そりゃ、食うけど」

 

ゴルシ「ヤサイニンニクマシマシ油絡め一丁!」

 

トレーナー「ここはそう言う系統の店じゃないだろ…?」

 

ゴルシ「今調理場にいるのはアタシだ、ちゃんと食ってけよ!野菜たっぷりだからダイエットにもいいって評判なんだぜ?」

 

トレーナー「誰に」

 

ゴルシ「オグリキャップ」

 

トレーナー「意味わからん」

 

とまあ、実際に食い切らせたりもしたんだがな…うむ…うむむ

この時はトレーナーの壮大な計画をアタシは知らなかったわけだ

 

あるレース、アタシは絶不調で臨まなきゃならないなんて状況…まあ基本ねーんだが…

この日の出走表、運営側の手違いでマックちゃんの名前があったのよ、それが間違いだなんて知らねーアタシは当日に真実を知り最悪の気分に…

まあ、アタシのこと大好きなマックちゃんが寂しくて泣いてるんじゃねーかと思うと不憫で仕方ねぇからなぁ…

 

トレーナー「ゴールドシップ、お前ちょっとはやる気出そうぜ…」

 

ゴルシ「いやー…なんかやる気出ねーんだって、わかるだろ?」

 

トレーナー「わかるけどだめだ、しっかりしてくれ」

 

ゴルシ「あんまうるさいとパイルドライバーすっぞ!」

 

トレーナー「傷害罪な」

 

ゴルシ「……なーんか乗らねー…トレーナー!アタシのテンション上げてくれよ!」

 

トレーナー「いや、お前はもう控室を出ないと怒られるんだが…」

 

ゴルシ「頼むって!」

 

トレーナー「……終わったらマックを食べながらマックイーンのレースを見に行くか?」

 

ゴルシ「…しょぼいぜ…それ」

 

トレーナー「ダジャレのセンスはないんだよ…!」

 

ゴルシ「…出走してくるわ」

 

この日のレースはアタシが2番人気、期待は大きかった…

ってーのに、全然うまくいきやがらねー

出遅れて最後方から集団を見る展開が続きやがる

 

ゴルシ(…なんか疲れたな、このまま適当にゴールして帰っか…あ?)

 

普通人気上位のヤツがこんな舐めた走りしてたら暴言の一つでも飛ぶだろう、こっから仕掛け始めるヤツもいる、そいつらを応援する声が響いて音なんてロクに聞こえないはずだった

 

ゴルシ「お?おお?」

 

確かに聞こえた、アタシを応援する声、トレーナーは勿論、アタシを応援する奴等がたくさん居た

 

ゴルシ「…面白くなってきたぜ!」

 

声援がアタシの背中を押した…

第四コーナーの大外からスパートをかけまくり、最高速度で曲がりきって先頭集団とガッチガチのラストスパートで競り合っての勝利!

 

ゴルシ「おー、なんかめちゃくちゃ拍手されてやがる」

 

トレーナー「ゴルシ!良くやったな!駄洒落が効いたか?」

 

ゴルシ「いや、そりゃねぇけど…なんだろうな、応援って良いもんかもなぁ…」

 

トレーナー「……」

 

 

 

 

 

ゴルシ「よし!トレーナー、今日は映画行こうぜ!」

 

トレーナー「おうよ!」

 

この辺りからトレーナーは急にノリが良くなった

アタシが何をするにも付き合ってくれた

 

ゴルシ「焼きそば売るぞ!」

 

トレーナー「場所の確保は任せろ!」

 

何をするにもアタシの背を押してきて、何をするにもやりやすい

 

トレーナー「今日はカラオケ行くか!」

 

ゴルシ「お、いいぜ!」

 

最初は無理に合わせてるんだと思った、だけど遊びに誘われることも増えた

漸くアタシの中のネジも外れてきた

トレーナーと遊びまくり…のある日、レースに出た

 

この日は走る前までは調子が良かった

いや、最後の方まで調子は良かったんだ、だけどどうにも…

 

ゴルシ(…7着か、まあ、真ん中の方だし悪かねぇ)

 

今までとは違う、嫌な焦燥感が背中にまとわりつきやがる

そんな嫌な気分の中控室に戻った

 

ゴルシ「おす、お疲れ」

 

トレーナー「…ゴルシ、大切な話がある」

 

ゴルシ「あん?」

 

トレーナー「…アイドルを…ウマドルを目指そう!」

 

ゴルシ「……よっしゃぁ!」

 

とまあ、気分を変えたかったアタシも乗っかり、意味のわからないノリで始まったアイドル活動だが…

前にでかいレースで勝ったウマ娘がアイドル始めたとあっちゃ人気が出ないわけがねーよ!

 

ゴルシ「ピスピース!」

 

トレーナーが用意した曲で華やかにデビューを飾り、派手に、ダイナミックに、アグレッシブに!をコンセプトにした活動を数週間続けたある日

 

ゴルシ「なんか飽きてきたでゴルシ」

 

トレーナー「そろそろレース出るかぁ…」

 

ゴルシ「お、いいねぇ…」

 

とは言った物の…レース用の練習なんて暫くしてなかったアタシには一抹の不安がよぎった

前と同じ…いや、前よりもひどい負け方をしそうだ…そう思った

 

 

 

 

宝塚記念

かなりの有名どころだけあって出てくる連中もマジにマジなレース

そしてこの日のアタシは5番人気となった…

 

ゴルシ「ま、そりゃああっちの活動優先してたし…勝ちそうなやつは他に山ほど居るんだからな、そりゃそうなるぜ」

 

一ヶ月に満たない期間、それだけの間レース用の対策とか、何もしてなかった…コレはアタシにとっては初めての事だった

不安もあるし、周りの評価がそれを物語っていた

怪我とかで仕方なく練習を長期間休む奴らもたくさん居る、だけどそいつらは前以上の特訓をして戻ってきて、それで漸く芝を踏む

 

ゴルシ(…絶不調な気分だな)

 

トレーナー「心配するな、ゴルシ」

 

ゴルシ「あ?」

 

トレーナー「お前なら勝てる、今までの活動は全てお前が今1番必要なトレーニングだった」

 

ゴルシ「何処がだよ!」

 

トレーナー「走れ、そうすればわかる…」

 

ゴルシ「いや、漫画やアニメじゃねーんだぞ、アイドルやってなにがつくんだ?スタミナか、それとも根性か」

 

トレーナー「違う、そのどれでもないモノがお前を後押ししてくれる」

 

トレーナーのいつになく真剣な目に何も言い返せず、トボトボとゲートに向かうしかなかった

逃げ出したい気持ちでいっぱいになった

 

全員がゲート入りした

今日のゲートはいつも以上に暗くて狭い…

 

ゴルシ(…集中できねぇ…)

 

ゲートが開くのは今か今かと待っている時、周りから声が聞こえた

 

「ゴールドシップってあの?」

 

「そう、逃げ出した奴」

 

ゴルシ「逃げ出した…?」

 

どっからそう言われたのかはわからなかった

 

「大人しくアイドルやってちやほやされてりゃ良いのに」

 

「また負けるだけ、本当に何で戻ってきたの?」

 

ゴルシ(好き放題言いやがって…)

 

ゴルシ「ふざけんじゃねぇぇ!」

 

ゲートを登り、腹の底から叫ぶと同時にゲートが開いた

 

ゴルシ(やばっ…)

 

ゲートの開く衝撃で芝に落ち、無様晒して笑いモンにされて…

 

もう最後尾も100メートルは先にいやがる…

 

ゴルシ(勝ち目なんかねぇじゃねぇか…)

 

それでも、芝の上に居る以上は走るしか無い…やるしか…

 

最後方から、バ群を追いかける

さらに開く距離、感じる視線

心臓が嫌に早く鼓動して、辛い

 

何も聞きたく無いのに、やけに耳はクリアで…音が良く聞こえて…

 

ゴルシ「…っ?」

 

そう、音が、声が聞こえる

今ここに居るアタシを、応援する声が…

 

チラリと観客席を見た、ちょうどアタシを応援してる奴らが居た

1人や2人じゃ無い、数えきれねーぐらいたくさん居た

気づいたら最後尾は思ったより近い…200メートルくらいか?

 

ゴルシ(…なんだ、イケるじゃねぇか…!)

 

ゴルシ「面白く…なってきたぜぇぇぇッ!」

 

会場がどよめいた、アタシの脚に誰もが驚いた

このままアタシが最下位だ、そう信じてた奴らはアタシのファンよりもずっと多かったはずだ…

 

ゴルシ「スタートミスって最下位…そう思ってんだろ?……そんなら…裏切ってやるぜぇ!」

 

ゴルシ(何たってアタシは…黄金の不沈艦(ゴールドシップ)様だぞ…!)

 

誰よりも力強く走り、誰よりも、何よりも速い

マストに風を受け大海原を走る黄金の船を誰が止められるのか…もし、目の前に岩山があったとしたら…

 

ゴルシ「道を開けろ!ゴールドシップ様のお通りだぁぁ!」

 

ぶっ潰してやる!

 

 

 

 

ゴルシ「っしゃあ!ドロップキックの時間だオラァ!」

 

トレーナー「悪かった!悪かったからやめろ!せめて蹄鉄外せ!」

 

ゴルシ「あぁん!?知るかそんなもん!」

 

無事1着

出迎えたトレーナーの勝ち誇った顔にムカつき問いただしたところ…

前に歓声でやる気を出したレースからこの絵図を描いていたらしい

アタシが不調になったのなら…できるだけファンを減らさず、アタシを大きいレースに出す

そう考えていたと言われた

 

つまり、ウマドル活動も、あの遊びの時間も、全部手のひらの上だったわけだが…

 

ゴルシ「気に食わねぇ!ぜってーここで蹴る!」

 

と言う事で宝塚記念の第二レースが始まった、コースの1/10ほどトレーナーは逃げたがその辺りで失速、背中にドロップキックをしてノックアウト、バックブリーカーきめたままコースを一周してやった

 

ゴルシ「よーし!また勝つからな!ちゃんと応援しろよ!」

 

アタシの声に応える奴らが居るなら、アタシは応えなきゃならねぇ…

 

ゴルシ「あとウマドルやめるからなー!」

 

悲鳴と絶叫も心地いいもんだな…

 

 

 

 

トレーナー「悪かった…悪かったって」

 

ゴルシ「お前だけは許さねえ…アタシの心を弄びやがって!アタシを乗せるためにあんな演技までして…」

 

トレーナー「いや、それは違う、途中から本気で楽しくなってた」

 

ゴルシ「お?そうなのか?」

 

トレーナー「考えなくてもわかるだろ、お前のノリに着いてくなら楽しまなきゃやってらんねぇよ」

 

ゴルシ「…へへっ、そうか」

 

トレーナー「な」

 

拳を此方に差し出したトレーナー

それに笑いながら全力で右ストレートを繰り出してやった

 

ゴルシ「あああ!結構痛え!骨折れてんじゃねぇの!?」

 

トレーナー「それはこっちのセリフだ!拳合わせるだけなのに何で全力で…絶対骨折れたぞ!腕と肩!」

 

馬鹿みたいに叫んで騒いで

泣いて笑って…

 

ゴルシ「はーっ……おめえも結構いいノリしてんじゃねぇか…3日目の佃煮くらいの仕上がりだな…」

 

トレーナー「…意味わかんねぇ」

 

ゴルシ「最高だって事だよ、わかれよバーカ」

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