東方鴉人録   作:yukke9265

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11.白との接触

「あやや、沢山積もりましたねぇ」

 

家から出ると、冷えた空気と共に白くなった景色が目に入る

 

「うぅ…さむいっ、もう一枚着ていきましょうか……」

 

家の中から毛皮の上着をもう一枚引っ張り出す

 

「よし、完璧ですね」

 

全身毛皮の服に、藁で作った蓑まで着たフル装備でもう一度外に出る

 

「さーて、今年の狩りを始めましょう」

 

植物の育たない冬は狩猟の季節だ

 

「冬以外の狩りをしてた頃もありましたね」

 

昔は生きるためとはいえ、何も考えずに狩りをしてしまっていた

 

「少ない冬の食料を狩っていた訳ですからね……」

 

今思えば馬鹿なことをしていたものだ

 

「まぁ、人間に害を為す獣妖怪は季節関係なく狩りの対象ですが」

 

年によってはメインになることもある

 

「普通の獣を狩ると村の人々の分が少なくなるかもしれませんからね」

 

人間にとって妖怪化した獣を狩るのは非常に難しい

 

「村総出で妖怪化した獣を狩るよりは、一人で出来る私がやる方がいいですからね」

 

むしろ村総出で妖怪化した獣に対抗できるなら頑張っている方だろう

 

「あっそうだ、せっかくなのであれを使って狩りをしましょうか」

 

手のひらに妖力弾を発生させる

 

「こんな感じで……」

 

丸かった妖力弾がよくとがった痛そうな形に変化する

 

「それっ」

 

ドスッ

 

そんな音を立てて妖力弾は積もった雪に突き刺さる

 

「積もりすぎて威力がわからないですね……」

 

周りには柔らかい雪が分厚く積もっている

 

「まぁいいです、実践で確かめましょう」

 

最低限の貫通力はあるはずだ

 

 

 

「いやーしかし本当に今年もしっかり積もってますねぇ」

 

毎年のことではあるが、この辺りは雪がよく積もるのだ

 

「よっと……ふう、やっぱり歩きは無理があるでしょうか」

 

人間のように歩いて行こうかと思ったが、どうやらこの身体には雪が深すぎるようだ

 

「仕方ありません、飛んでいきましょうか……」

 

 

 

 

「やっぱり上空は風が凄いですね……着込んで来て良かったです」

 

葉が落ちて見通しが良くなった冬の山を飛ぶ

 

「ここまで見やすいと動物も見やすく……ん、あれは……?」

 

あれは、緑の……髪?

 

「緑の髪って珍しいですね……それにしてもなんでここに?」

 

緑の髪の村人は居ないはずだ

 

「リグルさんは一応緑っぽいですけどあそこまで緑では……げっ」

 

雪景色の中では目立つ緑の髪をした誰かがこちらを睨む

 

「気付かれたなら一応挨拶しときましょうか……」

 

睨まれながら高度を落としてゆっくりと目の前に降り立つ

 

「こんにちは〜?」

 

 

 

「守矢の二柱の恩寵を受けていない村があるって聞いてわざわざきたのに……何も無いじゃない」

 

雪の中を歩いてきたが、見えるのは木や岩ばかりだ

 

「嘘八百を並べ立てたあの村人は後で祟られればいいわ」

 

そんなことを思って引き返そうとしたその時

 

「……っ!」

 

どこからか風を切る音がする

 

(上ねっ!)

 

音のする方向を睨むと、そこにはこちらの方に飛んでくる誰かがいた

 

(羽がある……ということは天狗よね)

 

しかし、ここから天狗の住処までは少し距離があるはずなのだ

 

(そもそも、今日は奇跡的に妖怪に会わないはずなのに……)

 

そう考えている間にもその天狗は近づいてくる

 

(天狗は警戒心の強い種族だと諏訪子様は仰っていましたし、守矢が舐められないようにしなければ)

 

そうして天狗は自身の目の前へと降り立つ

 

「こんにちは〜?」

 

「何者ですか」

 

「私はなんてことないただの天狗ですよ〜」

 

(この反応……こちらを警戒していない…?)

 

「そうですか、私は守矢の二柱に仕えし風祝、天狗が私に何か用ですか?」

 

「いや〜この辺りでは緑の髪というのは珍しいので、挨拶しておかないと思っただけですよ、それがまさか守矢の風祝の方だったとは!」

 

(挨拶……やはりこちらを警戒している?)

 

この天狗、にこやかな笑顔の裏で何を考えているのかまるで分からない

 

「私は忙しいので、要件があるのなら手短に済ませてください」

 

「わざわざすみません、えっと……何しにここへ?」

 

(こちらの動向を探っている……ここは牽制の意味も込めて言っておきましょうか)

 

「まだ二柱の恩寵を受けていない村に恩寵を授けに来たのですよ」

 

「なるほど!あの村に布教に来たんですね」

 

(特に警戒する様子はなし……?と、なにか村について知っているようね)

 

「村について何か知ってるのかしら?」

 

「いやぁちょっと仲良くさせてもらってるだけですよ」

 

(村が天狗の庇護下にあるってこと……?いやでも天狗の領域からは遠いはず、どうしてこんな所まで……)

 

「そう、まぁ私は二柱のために務めを果たすだけよ」

 

「あぁすみません、呼び止めてしまって」

 

「問題ないです、それでは」

 

天狗に背を向けてまだ確認していない方向へと歩き出す

 

(とにかく村が近くにあって天狗と関係がありそうなのはわかったし、慎重に行くことにしましょう)

 

「あ!村ならそっちじゃなくてあっちですよ!」

 

後方から声をかけられる

 

(やたら親切な天狗ね、村には布教しても問題ないということなのかしら)

 

「親切にどうも!」

 

そして天狗に言われた方向に向けて歩みを進めることにする

 

 

 

 

「いや〜、まさか守谷の風祝さんに会えるとは!運がいいですね」

 

奇跡、というやつだろうか

 

(天狗よ、聞こえるか)

 

「へ?」

 

(聞こえているな)

 

(え?もしかして脳に直接語りかけられている……?一体どこから……?)

 

(物分りが良くて助かるな、今はお前の足元に落ちているミシャクジから話しかけている)

 

「あや、ほんとでした」

 

足元で白いミシャクジが雪に同化していた

 

(私は諏訪の土着神たる洩矢諏訪子だ、対話を続ける気があるのならそのミシャクジを温めてやってくれたまえ、寒さに弱いのでな)

 

(も、洩矢諏訪子…!)

 

(どうした、私に恐れ戦いたか?)

 

(あ、いや……その、急いで温めますね!)

 

足元のミシャクジを拾い上げ上着の中へしまい込む

 

(家に向かいますね!)

 

(対話を続ける気はあるようだな、よろしく頼む)

 

ミシャクジを温めるために家へと急ぐことにする




読んでいただきありがとうございます!

お久しぶりです(n回目)
いざ時間ができると他のことをしてしまうものですね
もしかしたら明日追加で何か投稿するかもしれません
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