日も落ちて闇も深まる守矢にて
漏れる光と騒ぐ神達
「ハッハッハ、それはいいね、ほらほらもっと飲みなよ」
「あ、ありがとうございます」
私の器にお酒がなみなみとそそがれる
「それじゃ私も……」
何倍も大きい諏訪子さんの器に注がれるお酒
「ありゃ、これで終わりか」
「もう飲み終わったのか……?まぁいいか、酒も追加しようか」
「それじゃあ私、倉庫から持ってきますね」
「ありがとう紗代子、助かるよ」
酔いも見られぬ確かな動きで立ち上がる紗代子さん
「あ、それ私も手伝います」
そう言って立ち上がろうとするが……
「ダメダメ、主役が居なくなってどうするのさ」
休憩はさせてもらえないようである
(飲みすぎてなんだかクラクラしてきたんですけどね……)
出来れば休ませてもらいたい
「それにしても飲ませすぎじゃないのかい?諏訪子」
(あぁ……神奈子さんは優しいですね……)
「そんなことないさ、私だって抑えてるよ」
「いやいや、お前が飲み過ぎなんだ、それに合わせて飲ませてたらいくら妖怪と言えど潰れてしまうだろうに」
「なにさ!私が酒を飲むのに文句かあるってのかい!神奈子だってこれくらい飲むじゃないか」
「私はさすがに限度ってものはわきまえてるさ、お前と違って」
「私がわきまえられないバカだっていうのか?!!」
「酒に関してはそうかもな」
「このやろー!!祟ってやる!!」
「ちょっと神奈子様諏訪子様?!また喧嘩してるんですか??」
そして始まる神様同士の口喧嘩
(本当に元気な方たちです、でも私は……なんだか瞼が重い……)
喧嘩する二柱とそれをなだめる風祝の声が響く中、段々と意識が遠のいていく
(そもそもなんでこんな宴会になったんでしたっけ……確か……)
木々スレスレの低空飛行でのんびりと空を飛んでいる
「この峠を超えたら見えますかね……?」
今は山の峰を越えるように翼を向けながら、目的の場所を探しているところだ
「紗代子さんに聞いた通りならそろそろだと思うんですが……」
ここら一帯を傘下とする神社の風祝が道案内を間違えるとは思えない
「いやぁ……どんな感じなのか楽しみですねぇ」
そしてぐんぐんと山肌に沿って上昇していく
「おーっ!」
峰を越え、視界が開ける
「これが……諏訪湖……!」
そこに見えたのは、一体どれほどの水量であるかも想像できないほどの、大きな大きな青い湖だった
「そしてあれが……守矢神社ですね!」
湖の端に沿って視線を進めると、湖に向けて建てられた鳥居と沢山の社を見つけることが出来た
「ん……?そしてもしかしてあれは……」
それは神社とは別方向に目を向けた先にあった
「すごいっ!こんなに広い田んぼがあるなんて!」
湖から少し離れたそこには、綺麗に整備された田んぼが辺り一面に広がっていた
「これは……待ちに待ったお米に期待してしまいますね!」
これだけ田んぼが広ければ、さぞかし沢山の米を作っているに違いない
「神社に着いたら食べさせて貰えないか頼んでみましょう、そうしましょう」
やはり米は正義である
「そうと決めたなら早く神社に挨拶に行かないとですね!」
少々不純な動機を持ちながら、先程見えた鳥居の方へと進路を向けた
「よっと……」
翼を畳み大きな鳥居の前へと足を下ろす
「ここが……守矢神社……!」
まだ鳥居だけではあるが、堂々と建てられたそれは、その先が神聖な領域であることを感じさせる
「これは……入っていいんでしょうか……?」
鳥居の向こうの雰囲気を見ると、妖怪である私は神聖な領域に踏み込んではいけないような、そんな気もしてくる
「いやでも……皆さんに挨拶するって約束しちゃいましたしね……」
覚悟を決めなければならないだろう
「うん、諏訪子さんや神奈子さんに会いたいですからね、よし」
一礼し、鳥居の中へ一歩を踏み出すと……
「……っ!」
入った瞬間、周りの空気が変わるのを感じる
「お、お邪魔します……!」
雰囲気に負けないように気持ちを強く持たなければ
少し歩くと、この中で一際目立つ、1番大きな建物が目に入る
「ここが本殿ですかね……?」
諏訪子さんや神奈子さんがいるとしたらここだろう
「それにしても立派な建物ですね……」
門をくぐり、本殿の前へと足を進める
「えっと……どうしましょうか」
見たところによると、参拝をするのであろう本殿のそこには、お供え物がいくつか並べられているようである
「賽銭は……あっ、そもそもお金が存在しないんでしょうね」
私も代わりにお供え物を置くことにしよう
「これぐらいしかないですけど……これでよし」
種類も様々なお供え物の中に干し肉が加えられる
「それでは……」
パンパンと手を鳴らし、お祈りをする
(この先色んな人たちと出会えますように……あとお米も食べたいです)
そんなことを祈りながら少しの間手を合わせると……
「ふぅん、妖怪も神に祈るのだな」
「……っ!」
突然の声に驚き瞼を開くと、大きな注連縄を背負ったあの神様がそこにいた
(これは……!)
そしてその後ろには……
「やっほー文ちゃん!いらっしゃい!」
特徴的な帽子を被った神様が手を振っていた
(ほんとに諏訪子さんと神奈子さんだ……!)
「おい諏訪子、こういうのはちゃんと威厳を持って……」
「なーにいってるのさ、客人なんだからそんな必要ないじゃないか」
「何……?そうか?」
「そうさ、ね?文ちゃん?」
「は、はい……?」
(どうすればいいんでしょう……?)
「その客人を困らせてどうするんだ……」
「えへ、まぁそんな堅苦しくするつもりもないってことだね」
「なるほど?」
(前話したときの感じでしょうか……?)
「まぁ諏訪子が言うなら……そういうことにするよ、そんなわけで射命丸、よろしくな」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
「私もよろしくだね!」
「はい!」
「それじゃ挨拶も済んだし、客人が来たということで宴会にでもしない?」
「お、いいじゃないか」
「さ、すぐ準備するから文ちゃんも上がってきなよ」
こっちこっちと手を招かれる
「えぇと……私なんかが本殿に足を踏み入れていいんでしょうか……?罰が当たったりしません……?」
「はは、これまたなーにいってるのさ、罰当たりもなにも、それを決める神様はこの私なんだから関係ないよ」
「あと私もな」
「た、確かに……言われてみれば」
「だから遠慮しずにほらほら上がって上がって」
「お邪魔します……」
下駄を脱いで本殿へと足を踏み入れる
「適当に座っててよ、紗代子はまだ帰ってきてないから適当に私が酒を持ってくる」
「ありがとうございます」
見た感じ本殿の中には特に何かが置いてあるという感じでもなさそうだ
「あの……神奈子さん」
床に腰かけながら話しかける
「ん?なんだ?」
「実は私……お酒を飲んだことがなくて、私でも飲めるでしょうか……」
「そうなのか?ん〜お前さんは妖怪だから、飲めないってことはないんじゃないか?」
「そう……ですかね?」
確かに妖怪なら酒に強いかもしれない
「まぁそれは飲んでみて確かめればいいことだ」
「そうですね、楽しみです」
そんなことを話していると本殿の奥の方からパタパタと足音が近づいてくる
「お酒、持ってきたよー」
「うわぁぁ?!これは、樽ですか?!」
「そうだよ?宴会なら必須だろ?」
身長ほどありそうな大きな樽を危なげなく床に置く諏訪子さん
「こ、こんなに飲めますか……?」
「なにいってるのさ、こんなの少ないくらいだろ」
「えぇ……?」
「それより早く乾杯しようよ、杯も持ってきたからさ、はいどうぞ」
そう言って諏訪子さんは帽子の中から杯を取り出す
「あ、ありがとうございます」
「諏訪子、私の分も持ってきたんだろうな?」
「ちゃんと持ってきたさ、はい」
取り出したのは私の倍はあるかという杯
(でかい……)
「助かる、それじゃ私が注ぐよ」
それを聞いて帽子から更に同じサイズの杯を取り出す諏訪子さん
「これはこれはどうも、ほら文ちゃんも」
「あ、ありがとうございます」
そして当たり前のように二柱は樽を持ち上げて酒を注いでいる
(な、なんて怪力)
「さて、それじゃ酒も注いだし乾杯しようよ」
「そうだな、乾杯の音頭はお前がするか?」
「そうさせてもらおうかな、それじゃ杯を持ってもらって」
「わかりました」
「それじゃ、文ちゃんの訪問を歓迎して、かんぱーい」
「か、かんぱーい」
なみなみと酒が注がれた杯が掲げられ、二柱と元神様(?)による宴会が始まった
宴会が始まって程なくして……
「あー!もう飲んでるんですか!?あ、それと射命丸さん、こんにちは」
「こんにちは紗代子さん、お邪魔してます」
「おかえりー紗代子」
どうやら紗代子さんが帰ってきたようだ
「おかえり、紗代子も呑むか?」
「いや、私は皆さんの料理を作ることにしますね」
「おー紗代子ありがとう!ちょうど何か食べたいと思ってたんだよ」
それからしばらくして、料理を作り終わった紗代子さんも宴会に加わる
「あのー紗代子さん、神奈子さんと諏訪子さんが宴会をする時はこんな感じなんですか?」
「んー、いつもこんな感じではありますけど、今日は射命丸さんがやってきたということでいつもより張り切っているとは思いますね」
「なるほど……」
そんな神様の張り切りもあり、宴会は真夜中まで続いたのだった
読んでいただきありがとうございます
お久しぶりです、モチベーションが何とか戻ってきたので、執筆を再開しようと思います
今後ともまたよろしくお願いします
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