「ふぅ、これで終わりですかね」
朝の日課である境内の掃除を終わらせて、辺りを見回す
「よし、だいぶ綺麗になりました」
この頃は落ち葉が多く、掃除も一苦労だ
「これを箒だけで終わらせていた紗代子さんは本当に凄いですね……」
風を起こして落ち葉を集めるのとは労力が大違いだろう
「よし、戻って朝ごはんも作りましょう」
朝の仕事はまだまだあるのだ
朝食の準備をするために台所に立つ
「おはようございます、文さん」
「おはようございます、今日も早いですね」
「うん、やっぱり早起きの癖が抜けなくて……」
「早起きしても仕事はしちゃダメですからね?私がちゃんとやりますから」
身体に染み付いているのか、仕事を続けようとする紗代子さんを止めるのは本当に大変だった
「わかっているわ、この赤ちゃんのためだものね」
「それなら大丈夫です、朝ごはん作っちゃいますね」
そして野菜を刻んだり、釜の火加減を確認したり、台所で朝ごはんの準備をしていると
「あのー、文さん……?」
後ろから呼びかけられ、手を止めて振り向くと
「あはは……」
紗代子さんが居間からこちらを覗いている
「……お腹空きました?完成はもう少し後になると思いますよ」
「ううん、そうじゃなくて……その……私にもできることはないかしら?」
「あー、なるほど……」
何かあるだろうか?
「何でもいいの、その……手持ち無沙汰なだけだから」
「うーん……そうだ、それなら」
包丁を置いて食料庫の方からそれを持ち出してくる
「これを処理しておいて貰えますか?」
紗代子さんに渡したのは胡桃などの木の実が入った籠
(これなら座ったままでもできますからね)
「怪我しないように気をつけてくださいね」
「ありがとう!やっておくわ」
紗代子さんは籠を受け取ってそう言うと、居間の方へと戻っていった
「よし、残りもささっと作っちゃいましょう」
あまり待たせる訳にもいきませんからね
「いただきまーす」
今日もみんなで朝食を囲む
「うーん、ちょっと水が多かったですかね」
米を食べながらそんなことを呟く
「そうですか?私は美味しいと思いますよ?」
「美味しいんですけどね……完璧とはいえないというか」
(もっと美味しくなりますよね……これはこれで美味しいんですけど)
もぐもぐと食べ進めながら味を確かめていく
(こっちは調味料の差ですかね……やはり今の時代だと調味料が未発達ですからね)
そんなことを考えながらうーんと唸っていると
「文ちゃんってさ、食に対する理想が高いよねぇ」
「そうだな、いつかその理想の料理を食べてみたいものだ」
「あはは……頑張ります」
どうやら周りにもわかるほど考え込んでいたようである
(そのへんはやはりどうにか工夫するしかありませんよね……)
やはりあるものでどうにか作ってこそだろう
そんな料理事情について考えながら食事を終え、一通り食器も洗い一息つく
「よし、少し休憩しましょう」
今日は天気がいいので縁側に座って日向ぼっこをする
「あ、文ちゃんは休憩?」
私がうんと頷くと、諏訪子さんがこちらにきて私の隣に腰を下ろす
「今日はあったかいよねー」
「そうですね、これだけ晴れていると何より洗濯物が早く乾きますしね」
「そっか、晴れの日もいいけど私は雨の方が好きだなー」
「そうなんですか?」
「うん、ミシャクジや蛙たちは湿っている方が好きだからね」
「あぁ、なるほど」
(そういえばそうでしたね)
「ケロちゃん……」
「ん?なんか言った?」
「あ、いやなんでもないですよ」
(つい口に出してしまいましたね、気をつけないと)
「そう……?あ、それでさ、ちょっと新しい仕事を頼みたいんだけど」
「新しい仕事、ですか?」
「うん、今は文ちゃんには神社での仕事を頼んでるじゃん?」
「そうですね」
主に神社の管理や訪問者への対応などをしている
「ちょっと今回は外での仕事をしてもらおうと思って」
「外での仕事……というと?」
「そうだな……文ちゃんにやって貰うのは、言わば……見回り?」
「見回り、ですか。なにか不審者でも?」
「いやいや、それくらいだったらわざわざ文ちゃんに頼まないさ」
「そうなんですか」
なんだか凄く私の働きを信頼してくれているようである
「うん、それで文ちゃんに頼むのは……」
「いやはや、まさか妖怪の私が妖怪調査の見回りをするとは」
夜の諏訪、特に山奥の地域を飛行中
「しかし、特に不審な様子はないですけどね……」
諏訪子さんによると、ここ最近、妖怪の仕業と思われる人攫いが数件発生しているらしい
「子供を狙った人攫い……」
子供だけを狙うということは、単なる捕食のために攫っている訳では無いだろう
「いやでも、ルーミアさんは子供の肉は美味しいって言ってたっけ……」
いつかは分からないが、そんなことを話していた気もする
「というか、まさかルーミアさん……?」
可能性としてはなくはない
「でもルーミアさんは攫うってタイプではないですかね……」
どちらかと言うと森に迷い込んだ人間を捕食するタイプだ
「まぁ、実際聞いたわけじゃありませんけどね」
そんなこんなで辺りを見下ろしながら考えを巡らせていると
「ん?あれは……」
見ていたのは人の住む地域から少し離れた森の奥、ぼんやりと明るくなっている場所が見える
「誰かいるんでしょうか……?」
しかし、こんな夜更けに森の奥にいるとはなかなかである
「妖怪に襲われないんでしょうか?」
そんな疑問を抱きながら、そこにいる存在に興味が湧く
「ちょっと見に行ってみましょうか」
(もしかしたら助ける必要があるかもしれませんしね)
夜の森には危険がいっぱいなのだ
光の見える方向へと飛行していると、だんだんと光を発している場所の全貌が見えてくる
「こ、これは……!?」
そこに見えたのは、時代にそぐわない、洋風な造りをした一軒家だった
「なんでこんなところにこんなものが……?」
時代錯誤にも程があるだろう
「これはますます気になってきましたね……調査しますか」
この建物の住人が人攫いの原因というのも有り得るだろう
そうして高度を落とし、その建物の敷地らしき場所へと足を下ろす
「これは……すごいですね……」
その洋風の建物は、近くで見てもやはり時代錯誤であり、その外見はまるでおとぎ話から出てきたような、そんな建物であった
「そしてこれは……コスモスですかね?」
建物の周りには沢山の花が咲いており、とてもいい匂いがする
「いやしかし……一体こんなものをどうやって……?」
洋風の家に沢山の花、そこから分かるのは……
「いや、まさか……そんなわけ……」
1人の人物が頭をよぎる
「いやいやいや、そんなことないですよね」
こんなところにいるわけが無いだろう
「でも……少しでもその可能性があるとするなら……」
(ここにいるのはめちゃくちゃ危ないのでは?!)
「とりあえず一度様子見で出直しま……」
「あら、花達が騒がしいと思ったら、また悪い鴉がやってきたのかしら?」
(あ、あやや……)
まさに、時すでに遅しという言葉はこのような時のためにあるのだろう
読んでいただきありがとうございます
前回の投稿から二週間たってしまいました。1週間で15話の半分くらいはできてたんですけどね……やることと誘惑が多かったです(テスト勉強、遊戯王、etc……)
そういえば、三月の新潟例大祭で知り合いのサークルの売り子としてお手伝いに入ることになりました。しがない学生ですが、読者の方々と出会うことになるかも?という感じで、少し楽しみです