「あら?また悪い鴉がやってきたのかしら?」
(あやや……)
威圧感のこもった女性の声が背後から聞こえる
「あの……そのっ……」
ただならない雰囲気に恐怖しながらゆっくりと振り向くと……
「ひぃっ!?」
鋭い目線でこちらを睨む緑の髪をした女性がいた
(どどどどうしましょう?!)
その風貌、そしてその片手に持つ傘からして、あの風見幽香であることはほぼ間違いない
(いやしかし、すごく機嫌が悪そうですね?!)
今はとにかく無事に離脱できるように頑張る方が良いかもしれない
「わ、私は怪しいものではありませんよ……?」
「そう、それで?」
(それで……?!)
どう答えるのが正解なのだろうか……?
「その……綺麗なお花達ですね?」
「あら、それはありがとう」
(お、正解の返答が出来ましたかね?)
心なしか表情が和らいだようにも見えたが、それもすぐに元に戻り
「それで……どんな目的でここに来たのかしら?」
(あんまり効果はなさそうですね……)
「その……たまたま通りかかって花を見ていました」
これは嘘ではない
「そう……」
一瞬だけ彼女は考える様子を見せる
「ほ、ほんとですよ……?」
(ど、どうすればいいんでしょうか……?!)
そしてまた沈黙が数秒
「あなた、鴉天狗よね?」
「そ、そうですよ?」
「私に用があるんじゃないの?」
「あ、ありません……よ?」
「そう……」
(沈黙が怖い……!)
「この前のとは違うのかしら……」
「あ、あの……」
「そうね……家に来ない?」
「えっ、いやっ……その……」
(一刻も早くこの空間から離れたいですが……)
「来るわよね?」
「は、はいっ!」
(ダメそうですね……)
大人しくついていくしか無さそうだ
幽香さんに連れられてお家にお邪魔する
「お、お邪魔しまーす……」
「そこ、座って」
言われるがままに正面のテーブルの席につく
(随分洋風な家ですね……?)
気を引かない程度に周りを観察すると、日本には存在しなさそうなオシャレなインテリアが並べられていることが分かる
(どうやって手に入れたんでしょうか……)
しばらくして、幽香さんがやってきてテーブルにお皿を置く
「これ、どうぞ」
「わぁ……ありがとうございます」
そこには、花を型どった色も様々なクッキーが並べられていた
(かわいいし……美味しそうですね)
ほのかに香るバターと花の香りが鼻腔をくすぐり、すぐに食べていいものかと悩んでいるうちに向かいへ幽香さんが着席する
(すっごい見られてます……)
「い、いただきますね……?」
そうして幽香さんに見守られながら、サクッとクッキーをひと口かじり、味わうこと数秒
「美味しい……?」
「は、はいっ!すごく美味しいです」
「そう、よかった」
完璧に焼き上げられたそのクッキーをひと口、またひと口と味わうごとに、今までの生活では味わうことが出来なかった洋菓子の甘味が口の中に広がっていく
「紅茶、どうぞ」
クッキーを堪能していると、いつの間にか用意されていたティーカップに紅茶が注がれる
「いい……匂いですね」
(これは……何かの花……でしょうか?)
そして白いティーカップを口元に運び、ひと口
「…………おいしいです」
思わず感想が口から出る
「そう……それはよかったわ」
幽香さんはとても優しい顔をしていた
読んで頂きありがとうございます!
遅くなりました。なかなか集中して執筆に臨むことができずにいたのが原因の遅れです。しかも短めとは……、次は頑張ります。
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