東方鴉人録   作:yukke9265

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3.鴉天狗の食料事情

「はぁっ…はぁっ」

 

周りには吹き飛ばされた獣たちが転がっている

 

そしてこの状況を作り出したのはもちろん、

 

「風を操る程度の能力……」

 

これが……私の能力ですか

 

「完全に忘れていましたね」

 

こんなことを忘れていたとは……情けないです

 

「でも思い出したからには、有効に活用しましょう」

 

負けたままではいられません

 

助走をつけて起き上がり始めた獣たちを完全に仕留めにかかる

 

「てりゃぁぁっ!」

 

まずは突風により加速された蹴りを叩き込む

 

「一匹目!」

 

そして蹴りで怯んだ隙を逃さず首元へと追撃で仕留める

 

「次です!」

 

間髪入れず飛び上がり、空中から飛び石を飛ぶように1匹2匹3匹と脳天に蹴りを入れていく

 

「まだまだ!」

 

口から体内に風圧を叩き込み内臓を破裂させたり、風によって相手の飛びかかりを逸らしたり、能力を駆使して次々と襲いかかってくる獣をさばいていますが……

 

「やはり能力があると違いますね!」

 

そしていい感じに身体に馴染んでいる気がします

 

「せいっ!そいっ!」

 

相手をせずにこのまま逃げることもできますが、この獣たちは全員倒さないといけない気がします

 

「でもこの数をまとめて相手するのは面倒ですね」

 

まとめて倒す手段もないことはない

 

「ちょっと難しいですが、やってみましょうか」

 

素早く後退し一旦距離をとる

 

この大技を成功させるためには、できるだけ敵を沢山引きつけること、そして何より集中するということが大事です

 

「すぅ……」

 

私がゆっくりと呼吸を整えている間にも、獣たちが私を囲い込むようにゆっくりと近づいてきています

 

(そうです……それでいいんです)

 

この技は近ければ近いほど効果が大きいはずです

 

「……っ」

 

ふと両者が動きを止め、空気が張りつめる

 

(まだです、ギリギリまで引きつけなければ……)

 

睨み合う両者

 

そして、先に動いたのは獣たちであった

 

一斉に飛びかかる獣たち

 

そして、その牙が彼女に届くその瞬間

 

「終わりです、」

 

(風刃結界ッ!!!)

 

突如として彼女の周りに発生する大量の斬撃

 

その何百にもなる斬撃は、周りの獣たちをことごとく切り裂き、その命を刈り取っていった

 

そして辛うじてその攻撃の中生き残った数匹の獣もいたのだが

 

「逃しませんよ」

 

容赦のない追撃のキックによって絶命させられた

 

「よし、完璧です」

 

獣たちの完敗であった

 

 

 

「ふぅ……即席の技にしてはいい感じでしたね」

 

周りには大量の死体が転がっている

 

「やはり風を操る能力というのは便利です」

 

急激な空気の移動によって真空を発生させ、そこから生じる大量の斬撃で無差別に攻撃する技ですが、上手くできて良かったです

 

「上手くいったのはいいんですが……色々と散々でしたね」

 

私が能力に目覚めていなければどうなっていたことか

 

まぁでも……こうやって窮地に追い込まれたこそ、能力に目覚めることが出来たと考えることもできますからね

 

その辺は考えてもキリがないでしょう

 

そんなことより、今はもっと重要なことがあります

 

「うぐぅ……お腹が空いた……」

 

集中力が切れたせいなのか、襲われる前まで感じていた謎の空腹感が戻ってきました

 

(もうこれは……いっそこの獣の肉を食べて……)

 

さっきまで無理していた影響だろうか

 

(もう……限界です……いやでも生の獣肉はさすがに我慢しないと……)

 

だがしかし、目の前の肉を喰らいたいという強い衝動に駆られてしまう

 

(うぐぐぐぐぐ……無理!)

 

結局欲望に負けてしまった

 

本能に導かれるように、目の前の獣の皮を剥ぎ、肉を露出させ、半ば獣の如く肉を喰らっていく

 

(あぁ……なんて美味しいんでしょうか)

 

ただの生肉のはずなのに、何かが満たされるような……

 

腹を満たしながらそんなことを感じていた

 

 

「うっ……ふぅ」

 

それなりの肉を喰らい、一段落したところでふと物思いに耽る

 

(なるほど……これが妖怪として生きるということなんですね)

 

そして今までの飢えの原因も分かりました

 

「十中八九身体能力の低下もこれが原因でしょうね……」

 

どういうことかというと

 

「妖力不足ですか……」

 

つまり、妖怪として力を発揮するには妖力が必要だということだ

 

「そしてそれを補給するための手段が……」

 

今まさに行なっているこの行為、他の生き物を喰らうことなんですね

 

「はぁ……やっと少し正気に戻ってきました」

 

妖力が足りなくなることがここまで影響するとは思ってもいなかったです

 

「冷静に考えると倒した獲物の肉をその場で食べるって、そこらの獣と変わりないですからね……」

 

それだけ冷静さを失っていたということでしょう

 

「しかしこれだけの獣肉……どうしましょうか」

 

食用にするにしてもせいぜい二三匹分でしょう

 

「正直……そのまま食べてもあまり美味しくないですからね」

 

これを美味しく感じてたのが嘘みたいです

 

もちろん妖力の補給にはなるんですが……

 

「ちょっと活用法を考えないといけませんね」

 

干し肉とかにしてみましょうか

 

「あ、毛皮とかも使えますかね」

 

見た感じでは、暖かいかどうかはいささか怪しいところがありますが

 

「まぁ使えないということはないでしょう」

 

問題は腐らせる前に終わらせられるかどうかですが……

 

「あやや……なかなかハードな作業になりそうですね」

 

何から始めればいいんでしょう

 

「血抜きと……内臓を取り出す感じでしょうか?」

 

血抜きってどうやるんでしょう

 

「首元になにかするイメージはあるんですが…」

 

首の太い血管から血を絞り出したりするんでしょうか?

 

「なんかこんな感じで……えいっ」

 

しっかり補給した妖力を使い、指を思い切り獣の首元に突き刺す

 

(あれ、なんか前より力が強くなったような……)

 

妖力切れの時が弱すぎたので印象が強いだけ……ですかね?

 

「まぁそれは置いておくとして……そこまで血が出てきませんね」

 

指を刺して抜いた瞬間こそ出てきましたが、すぐ止まってしまいました

 

「放置しておけば出てくるでしょうか」

 

一旦内臓の方をやってみましょう

 

 

 

 

「夜明けですか……」

 

作業をしているうちに周囲が明るくなってきていた

 

そして試行錯誤の末、目の前に出来上がっていたのは、ズタズタになったいくつかの死体と十個ほどの肉塊

 

「やはり素人がやるものではありませんね」

 

予想通りと言うべきか、時間がかかった上にとても不格好な肉塊ができあがってしまった

 

「いや捌きはしましたが……やっぱりこんなに食べられないですよ」

 

そして余った肉の為の保存場所もなければ保存方法もない

 

「干し肉は一応出来そうではありますが……」

 

よし、次はそれを試しましょうか

 

「んんっ……!ふぅ……」

 

しゃがみこんで作業をしていたので、身体が固まってしまいました

 

「んんっ……あれ」

 

どこからかカラスの鳴き声が聞こえてくる

 

「あやや、これはこれは……」

 

見上げるとたくさんのカラスが周りの木々に止まっていた

 

「皆さんどうかしましたか〜?」

 

そんな風にカラスさん達に声をかけてみる

 

「ふむふむ……えぇ構いませんよ!」

 

どうやらカラスさんたちは獣の死体に惹かれてやってきたみたいです

 

「私じゃ食べきれないのでどんどん食べちゃってください!」

 

そう伝えると一斉にカラスさんたちが死体に群がる

 

「よし、これで無駄になることはなさそうですね」

 

カラスさんたちも嬉しそうですし

 

「あ、そういえば」

 

何故カラスと話ができるのだろうかという疑問を忘れていました

 

カラスさんたち自身に聞いてみれば分かるでしょうか?

 

とりあえず聞いてみることにします

 

「あのー、なんで私があなた達カラスと会話出来てるか分かりますか?」

 

近くのカラスに近づいて話しかける

 

「ふむふむ、あやや…そうですか……なるほど、ありがとうございます」

 

やっぱり分からないみたいです

 

「ですが、面白い意見も聞けましたね」

 

なんとカラスさん達的には私もカラスらしいです

 

確かに私は鴉天狗ですけど……

 

まぁほぼ同じ種族だから話せるのは当たり前ってことなのかもしれませんね

 

 

 

 

 

「さて、この肉たちの保存方法を考えないとです」

 

ひと塊ぐらいは後で直ぐに食べるとして、残りは今後のために保存しておかないといけませんからね

 

「干し肉なんですが……干す場所はどうしましょうか」

 

日陰の風通しが良い場所がいいでしょう

 

「あとは動物に盗られない位置ですね」

 

あれ?これって結構難しいのでは?

 

「盗られないなんて無理な気がするんですが……」

 

まぁでもとりあえずやってみましょうか

 

「よし、早速作業に取りかかることにしましょう」

 

 

 

 

「よっと、これでいいですかね……おっと危ない」

 

今は寝床にしている大木の枝の一つに、干し肉を干す場所を作っているところです

 

「よし、簡易的ですがこんなものでしょう」

 

蔓植物と枝を使ってぶら下げる形の干し器を作ってみました

 

「いやぁ枝を集めるのが大変でしたね」

 

ちょうどいいサイズの物が全然なかったので、木によじ登ってひたすら細い部分を折って回っていました

 

「逆に蔓のほうは簡単でよかったです」

 

近くに蔓植物に覆われそうな木を見つけたので全部剥がして使わせてもらいました

 

干し器はこれで完成なのであとは……

 

「こんな感じで小さく切った肉を並べて……と、よし完成です」

 

乗り切らなかった分は焼いて食べてしまいましょう

 

「ふぅ、疲れましたしお腹すきました……よし夕飯ですね」

 

 

 

薪をあつめていつもの河原で火を起こして、肉を焼く準備をする

 

「ハプニングもありましたが……焼いていきましょうか」

 

火を大きくするために能力を使って風を起こしたら、なんと薪ごと吹っ飛んで火が消えてしまったんですよ

 

「まぁ2回目は上手く行きましたし、よしとしましょう」

 

とりあえず肉の方は牛串っぽく枝にいくつか小さくした肉を刺して焚き火の周りに立ててみています

 

「うまく焼けて食べれられるといいんですがね……」

 

焼き始める頃にはだいぶ肉が生臭い状態になっていました

 

 

 

「よし、こっちの方は待つだけですしもう一つの方も終わらせましょう」

 

実は肉も薪もまだ残してあるので、ちょっとやってみたいことがあるんです

 

「いい感じのはありますかね……えーと」

 

何を探しているのかと言うと、平らで大きめな石です

 

「あ、ありました」

 

私の頭ぐらいの大きさの平らな石です

 

「そしてこれを……よいしょっ」

 

持ち上げて準備しておいた場所へ持っていきましょう

 

「よっと……これでいい感じですね!」

 

用意しておいた位置に石をセットする

 

「最後に下の燃料に火をつけてっと」

 

隣りの肉を焼いている焚き火から火種を貰って点火する

 

「あとは温まるのを待てば……」

 

焚き火の方の肉の焼き加減を確認しながら少し待ちましょうか

 

 

 

「ん、まだレアですね」

 

串の肉を味見してみたらまだ中身が生でした

 

「こっちの石は温まったかな……?うーん、多分大丈夫でしょう!」

 

まぁ適当でいいですね

 

「これでいい感じに焼肉が出来そうです」

 

まぁ石の上で肉を焼いているだけなんですが、何となく焼肉がしてみたかったんですよね

 

「それじゃ肉を乗せて……おー?」

 

温まった平らな石に乗せた肉は小さくジューと音を立てている

 

「あ、ひっくり返す方法を考えてませんでした」

 

まずいですこのままだと焦げてしまいます

 

「あーどうしましょうどうしましょう」

 

そう考えている間にも香ばしい匂いが漂ってくる

 

「よしとりあえず手でひっくり返し…あつぅ?!」

 

やっぱり無理でした

 

 

 

結局1つ目の肉は片面を思い切り焦がしてしまいましたが、あの後は上手く焼くことが出来ました

 

「よし、いい感じに焼けてますね……周りも真っ暗になってしまいしたし早く食べてしまいましょう」

 

そして肉を口に入れようとしたその瞬間

 

「貴方はだーれ?」

 

暗闇の中から声がした

 




この一週間リアルが忙しくて第三話は突貫工事になってしまいました、少し変な部分があるかもしれません

それはそうとして、今週この東方鴉人録の評価に色が付いていました

しかも赤です。
心臓が止まるかと思いました


追記 2022 3/17 表記揺れを修正しました(指摘してくださった方、ありがとうございます)
評価をしてくださった方々本当にありがとうございます!
それに加えて第二話投稿後たくさんの感想も頂き、お気に入り登録件数も投稿現在30件を超えています
読んで下さった方々、感想やお気に入り登録をしてくださった方々、本当にありがとうございます!

そんな感じで感謝感激雨あられで、執筆の励みになっています
今後もこの東方鴉人録をよろしくお願いします!
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