東方鴉人録   作:yukke9265

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8.秋の訪れ

「あやや、結局見つかりませんでした……」

 

広範囲の探索も虚しく、既に地平線が少し明るくなってきている

 

「この辺りは大体探したんですけどねぇ、獣妖怪達はいなくなってしまったんでしょうか」

 

一匹も見つからないというのもおかしな話です

 

「狩り尽くしたつもりは全くないんですけどねぇ」

 

狩りのペースだって月に1度で二三匹程度だ

 

「何故なのか見当もつかないですが……元はと言えば妖力補給の為の狩りですからね、足りているなら気にする必要もありませんかね」

 

ひとまず家に戻りましょうか

 

 

 

 

ある森のどこかにて

 

「ねぇお姉ちゃん、ちょっとこの辺神域っぽくない?」

 

香る秋の恵み

 

「そうね……だいぶ弱いものだけれど」

 

揺れる秋の色葉

 

「神域ができるってことは神とそれを信仰する人間がいるってことよ!早く探しに行きましょ!」

 

「ちょっと……急ぎすぎよ、待ちなさい!」

 

今年の秋は騒がしい

 

 

 

 

 

「あれ、何かの気配……?」

 

我が家に戻り今日は竹細工でもしようかと思っていた所

 

「……気のせいですかね」

 

恐らく小動物か何かの気配だろう

 

「まぁ気にすることでもないですね、さて今日は……」

 

竹細工用に細く割られた竹の束を持ってくる

 

「干し肉用にザルでも作りましょうか」

 

去年1つだけ害獣に壊されてしまったのだ

 

「干し柿の量も増やしたいですし多めに作りたいですね」

 

竹は本当に便利です、丈夫ですし、加工することを考えれば用途は水筒、器、箸、竹細工などなど多岐にわたります

 

そんなことを考えながらよく研いだ石製のナイフで薄く竹の棒を削いでいく

 

こうすることで細く割った竹は薄くなり、曲がりやすくなるのだ

 

「五年目ともなれば慣れたものですね」

 

その技術の成長は初期の竹細工と見比べれば一目瞭然だ

 

「よし、こんなものですかね」

 

竹がちょうど良いしなり具合になれば、次はたくさんの竹の帯を編む作業に入る

 

「今回は大きめに作りましょうか」

 

薄く曲がりやすくなった竹を、両手で網目状に編んでいく

 

「んんっ……よっと」

 

たまに足を使うこともある

 

「ここをこうして……よし、」

 

そんなこんなで大まかな形が出来上がっていく

 

「仕上げは後でまとめてやるとして……もういくつか作りましょうか」

 

 

 

 

 

「っっ……!あやや、身体が固まってしまいそうです」

 

作業の方はひと段落といったところで、凝り固まった身体をゆっくりと伸ばす

 

「結構出来ましたね……」

 

ザルが2つと背中に背負ったり食料の保管に使ったりする大きめの籠1つが仕上げを待つのみという所まで出来上がった

 

「時間はどうでしょうか、よいしょっと」

 

段差を上がり家から出る

 

「お、まだ結構明るいですね」

 

木々の切れ目から明るい日差しが差し込んでいる

 

「大体……昼過ぎってところですかね」

 

空へ飛んで太陽の位置を確認する

 

「どうしましょうか、作業をそのまま続けるという手もありますが……」

 

他にもやらないといけないことは一応ありますからね

 

「あ、そういえば干し草を補充しないといけないんでした」

 

段々と毎日の気温が下がり始め、植物たちも実を実らせ終わり枯れ始める今の季節は、干し草を溜め込むにはちょうど良い季節です

 

「こちらもまた用途が色々ありますからねぇ」

 

縄を編んだり床に敷いたりするのが主な使い道でしょうか

 

「稲ではなないので藁ってわけでもないですが、便利な繊維であることは間違いないですね」

 

そういえば私は稲を見たことがありません

 

「米……食べたいですね……」

 

水田すら見たことがないので無理なのは分かっている

 

「そのうち食べられるといいですが……まぁとりあえず今は干し草ですね」

 

家で軽く準備をして、出かけることにする

 

「よし、行きましょうか」

 

背中に籠を背負って草の多い人里方面へと飛行し、黄金色に染まった草原へと着地する

 

「どれくらい刈りましょうかね……まぁ集められるだけ集めてしまいましょうか」

 

肩くらいまでの背丈のある草を刈り、いくつかのまとまりにし、根元を数本の草で結んで持ち運びやすいよう束にする

 

「もう少し籠に入りそうですね、日が暮れるまでにやってしまいましょう」

 

せっせと働くその姿は、間違いなく妖怪ではなく人間のそれであった

 

 

 

 

 

 

「いい人間たちだったね〜」

 

「そうね、これで信仰が増えるといいのだけれど」

 

「帰りの反応も良かったしきっと増えるよ」

 

村で信仰集めをしてきた様子の二柱

 

「そういえば、人間達から森の方の神を信仰してるって話はなかったね」

 

「そうね、でもその神を象ったらしい土器はあったわよ」

 

「そうなの?」

 

「えぇ、背中から羽が生えた人型だったわ」

 

「へぇ〜、人間達がその神を信仰してるのは間違いなさそうだね」

 

「そうね、にもかかわらず私達が信仰されそうってことは、その神が友好的だってことだと思うわ」

 

「そっか、でも信仰されそうなのは私達じゃなくて私だけじゃない?」

 

「余計なお世話よ、私だって……」

 

「ふーん、あ!羽が生えてる人がいるよ!」

 

森の方向を指さす妹

 

「え、あ、ほんとね」

 

一見10代前半の少女に見えるが、その背中には黒い翼が生えており、草刈りをしている様子の少女の背中で動きに合わせてゆらゆらと揺れていた

 

「あ、そこの方!」

 

姉が少女を大きな声で呼んでみると、ビクッと驚いた様子でこちらを向いて……

 

「あっ……」

 

少女は森の中へ見えなくなってしまった

 

「逃げちゃったけど………やっぱりお姉ちゃんは人気がないのね」

 

「えぇ……」




読んで頂きありがとうございます!

どうもお久しぶりです……リアルの忙しかったり展開にこまったりが重なってこんなに遅くなってしまいました

これからはペースを戻して文量も増やしていくつもりです

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