最終日となった今日は、疲れを最大限に癒すことと、リフレッシュをするため、みんなで温泉にきていた。
(追記 投稿がかなり遅れてしまい、申し訳ありませんでした)
3日目 お昼 メジロ家療養所
お泊り会最終日となった今日は、2日目にした模擬レースの疲れを癒すために、とある場所に来ている。
「おほー、ここが秘宝が眠っていると言われる最後の砦か!?」
「どこをどう見たら砦に見えるのよ」
「だけど建物自体は大きいけど、とても落ち着いてる雰囲気なの」
「残念だけどここにはお宝なんてないよ。だけどこの施設には、ウマ娘に良い影響を与える効能がある、日本でも数少ない秘湯があるんだ」
そう、私たちデネブ一行は、メジロ家が所有する療養施設に来ていた。
「ここで立ち話もなんだし、さぁさぁ中に入ってよ」
「失礼しまーす!」
中に入りまず正面に現れたのは、ガラス扉の大きな棚。ここには代々メジロのウマ娘が制覇してきた重賞レースのトロフィーや盾が、煌びやかに飾られている。
私もここに来た時、嫌というぐらい目にしている。
「これは凄い数やで!」
「色んなトロフィーが飾られてますね~」
「京都大賞典、京都新聞杯、高松宮記念、桜花賞、オークスにエリザベス女王杯。流石は名門メジロ家だ」
「皆さん、眺めるのもいいですけど、今日は温泉に入りに来たんですから、早く入りましょうよ~」
「スカイにさーんせーい、とっとと秘湯というお宝が埋まっていそう所に早く行こうぜ!もちろん1番はアタシな、んじゃおっさきー」
「あぁー、ゴルシ先輩ズルい!ちょっと待ちなさいよ、1番は絶対譲らないんだから~!」
「あっ、ちょっ、あまり走らないでよ~」
ぽつんと置き去りにされた私たちは、我先にと走り去ったゴルシとスカーレットの後を追いかける為、脱衣所に向かった。
脱衣所に着くとまず目に飛び込んできたのは、乱雑に衣服が詰め込まれた籠が2つ。よっぽど1番風呂に入りたかったんだろうね。
「どうやら2人は既に秘湯に入ってるの」
「あらあら~、きちんと畳んであげないとシワになっちゃいますのに。すぐに畳んであげないとです」
「アンタだけ目の付け所が、まるでオカンやないかい」
「まぁなんだ、今は温泉に浸かることが目的な訳だ。2人の気分が高揚してしまうのは、仕方のないことだろう」
「会長さんの言う通りですよ。早く脱いで入りましょ!」
「私は2人のを畳んでから合流しますね~」
~着替えを済ませ、温泉へ~
「2人とも待たせちゃったね」
「おう、先にスカーレットと一緒に満喫させてもらってるぜー」
「お先に入らせてもらってます。あれ?クリーク先輩はどこですか?」
「クリークさんなら、スカーレットさんたちが乱雑に脱いだ服を綺麗に畳んでいるところだよ」
「えっ、そうなんですか・・・」
「アンタら、あとでクリークにちゃんと謝っときぃーや」
反省の色が見えたところで、私らもゆっくりと温泉に浸かることにした。湯加減はとても丁度良く、みんなの会話も弾んでいる。長時間浸かるとのぼせてしまいそうだ。
そんな中、先に浸かっていた2人は身体を洗うために、1度温泉から上がる。
「ふぅー、やっぱいい湯だな。よしスカーレット、このアタシがお前の背中を流してやろう!」
「えっ!?べ、別に1人で洗えますから!」
「そんなに遠慮すんなって、いいからさっさと来いってんだ」
遠慮しているスカーレットを、無理やり担いで洗い場に消えていった。
「あはは、相変わらず仲がいいの」
「とても仲睦まじい様子だな」
「いい感じに温まってきたみたいですし、私たちも一緒に身体を洗いに行きませんか?」
「いいですねぇ~、私も行きますよ~」
「クリークさんいつの間に!?」
「うふふ、2人のを畳み終わりましたので」
「これで揃ったみたいし、ほな、みんな行こか」
~洗い場~
「どうだスカーレット、中々のもんだろ?」
「はい、とても上手じゃないですか」
「だろ~?アタシは洗い方を熟知してるからな。おっと、会長たちも来たんだな」
「おやおや~?もしかしてお楽しみ中でしたか~?」
「断じて違いますから!!!」
軽い冗談を交えた後、個々で髪や身体を隅々まで洗っていく。いつもは寮での閉め切られた空間での洗髪とかだけど、露天という場所で吹く少し冷たい風が、温められた身体に当たって、言葉に出来ない気持ちよさがある。
気持ちよく髪を洗っている中、私は不意に考えてしまう。函館記念までにもっと強くなるにはどうしたらいいのだろう、マックイーンを越えるのに必要なものは。モヤモヤが頭の中を埋め尽くしていく。
モヤモヤが晴れぬ中、私は髪を洗い終える。
他のみんなも洗い終わったらしく、みんなでまた温泉に浸かりに行く。
~温泉~
「いやー、露天風呂っていうのも悪くないな」
「そうだぜ会長さんよ、トレセン学園にも露天風呂を作ってくれよ~」
「それさんせーい」
「みんな喜びそうなの」
「うむ、確かにいい案なんだが、理事長の了承なしには生徒会も動けないからな」
「リフレッシュには絶対いいですよ!パーマー先輩もそう思いますよね?」
「・・・、っ、う、うん、そうだよね」
いけないいけない、考えすぎてぼーっとしてしまってたみたい。悟られたくないし、とりあえず先に上がっちゃおう。
「どうしたんですか先輩、もしかしてのぼせちゃいました?」
「あはは、どうやらそうみたい。私は先に上がってるから、みんなはゆっくり浸かっていってね」
「パーマー、ゆっくり休みや」
温泉から上がり、すぐさま脱衣所に向かう。脱衣所には、使いの方が用意してくれたバスタオルと浴衣が、それぞれの籠にセットされていた。私は籠にあるバスタオルを手に持ち、髪や身体を入念に拭き上げる。
すると突然、脱衣所の扉が開いた。入ってきたのはクリークさんだった。
「クリークさん、もう上がられたんですか?」
「えぇ、とってもいい温泉でした~」
「それはよかったです。使いの方々も喜びますよ」
「ところでパーマーさん、着替えましたら少し付き合ってもらえませんか?」
「はい、分かりました。では私は先に出て待ってますね」
先に浴衣に着替えた私は、脱衣所を後にし、通路にあるソファでクリークさんを待つことにした。
~数分後~
風呂上りの影響からか、特有の眠気が私を襲ってくる。よく考えればまだお昼過ぎであったことをすっかり忘れてしまっていた。
少しうたたねをしようと目を瞑ろうとした瞬間。「お待たせしました~」と、クリークさんが姿を現した。その姿はとても美しく、髪は後ろで纏めており、浴衣姿がより一層際立つぐらい綺麗だった。
「ところでクリークさん、私に付き合うって、何かあったんですか?」
「そうですねぇ、実はパーマーさんと2人きりでお話がしたくって」
「私とですか?」
「さっき温泉に浸かっていた時、ぼーっとしていましたよね?もしかしたら何かついて悩んでいたんじゃないのかなと思いまして」
「・・・。バレていましたか。実は函館記念の事とかで不安がありまして」
「なるほど、パーマーさんにとっては初めての重賞レースですもんね。私で良ければ話してみてくれませんか?」
私はクリークさんの言葉に甘え、今ある悩みを全て打ち明けた。すべて聞き終えたクリークさんは、深く頷いた後、口を開いた。
「パーマーさんは、自分の逃げに自信を持っていますか?」
「えっ、それはもちろん自信は持ってますよ」
「では少し変えますね。逃げて勝つという決してぶれない信念が、あなたにはありますか?」
はっ、思い出した。私は自分の大逃げで勝つこと、それにはまず自分の気持ちを動かすこと。そんな簡単なことに気付かないでいたなんて、どうして分からなかったのだろう。
というかあの時に、お婆さまとヘリオスに約束したじゃんか、いつかWDTで勝負するって、そのためにはG1を大逃げで勝つって。
私の中にある重かった鎖が、また解き放たれた。
「クリークさんありがとうございます、おかげでまた1つ悩みが吹っ切れました!」
「よかったです。でもここは中央、大きな挫折もあるかも知れないですが、そんな時は私やトレーナーさんたちを頼ってください」
「はい!」
「ふぃ~、すっきりしたぜ!」
「みなさんったら、しっかりとのぼせるまで浸かってましたもんねぇ」
「露天温泉、とても最高だったの」
まるでタイミングを見計らっていたかのように、ゴルシたちが脱衣所から出てきた。
「おっ、もう13時過ぎてんじゃんか。こうしちゃいられねぇ、早く笑っていいかな!?を見なきゃな」
そういえばもうそんな時間だったのか。
「ゴルシ、テレビだったら広間の所にあるからm」
「オッケー!うぉおー、待ってろよトモリさーん!!」
「やれやれ、少しは冷静に動けないものかね」
「あらあら会長さん、いつもの事じゃないですか~」
「さっ、ウチらも早く行こさ。アイツを1人にしたらなにやらかすか分からんからの」
「おーいパーマー、このMD専用の部屋ってなんだ?入ろうにも鍵が掛かっててよ。中が気になるから扉ぶっ壊していいか?」
あれ?もう居間に居ると思ってたのにまだ着いてなかったんだ。
んっ?MD専用?そんな部屋この療養所にあったかn・・・。あっ!しまった、あそこにはドーベルの秘密の漫画の山が!
「ゴルシぃーーーーーー!お願いだからそこの部屋だけは開けないでーーー!!!」
~メジロ家 宿泊部屋 深夜~
「まさかあんなデカいハンマーを持ってたなんて驚いたよ」
「君はまるで暴君のようだ」
「いや~あん時は悪かったって、ゴルシちゃん反省してるからさ」
あの時私たちは、通路をトップスピードで駆け、ゴルシの居る部屋の場所まで全速力で走った。
そしてどこから持ってきたのか分からない100tハンマーで扉を破壊しようととするゴルシを見つけ、迷うことなく、7人がかりでゴルシを床に押さえつけ、暴れないように縄で拘束した。
まさかチームメイトを拘束するなんて思わなかった。
「せや話変わるけど、パーマーは8月の函館記念出るんやったな」
「はい。エルムSとかを挟んだ後になりますが」
「確かヘリオスも出るっちゅうてたな。アイツはマイルが主なんやけど、最近は中距離でも頭角を表してきとる。でもな、絶対に勝てない相手でもない」
「そうですよ。私もそれまでの間、パーマー先輩の特訓に付き合いますよ」
「私も何か手伝えれば協力しよう」
「勝利を、この手に!」
このタイミングで、ルドルフのスマホの着信が鳴り響く。
「すまない、少しだけ席を外させてもらうよ」
「ルドルフさんって、自分の曲を着信音にしてるんですね。って言ってる自分もなんですがね」
「私とスカイちゃんはうまぴょい伝説にしてるの」
「そうなんですよね、あの曲いいですよね~」
「分かります~」
「やはりみんなそれぞれの個性がありますよね」
着信音から会話が広がり、気付けば30分も時間が経っていた。それにしてもルドルフはいつまで電話をしているのだろうか?
「ちょいとアタシが見に行ってやるよ」
「アンタ止めといたら?」
「まぁええやん、何かあったら自業自得やし」
「おし、んじゃ連れ戻してくるぜ」
嫌な予感しかしなけど。
~メジロ家 玄関前~
「会長の奴どこまで行ったんだ?ここに居なかったらどこにいr」
「あぁ、分かった。明日の昼から再開だな、みんなにも伝えておくよ」
(会長の声、相手はトレーナーだな。なに話してんだろ、物陰に潜むとすっか)
「ありがとうございますルドルフ。長々と付き合ってもらって悪いですね」
「別にいいさ。君は私たちトレーナー君なんだからね」
「それではもう切りますね」
「おっとトレーナー君。何か忘れているんじゃないかな?」
「ふふふ、そうやすやすとスルーしてくれませんか」
「君と私だけの特別な挨拶じゃないか」
「分かりましたよ。それではおやすみなさい、ルナ」
「うふふ、おやすみなさいトレーナー君。ふぅ、さて、ゴールドシップ。そこにいるのは分かっている、早く出て来い」
「やっぱり会長さんの洞察力が鋭いねぇ、ちなみにさっきのルナ呼びの部分は録音させてもらったんでs」
「ゴールドシップ。今ここで録音を消すんだ。もし消さないのなら、私にも考えがあるのだけどね」
(う、なんだこの殺気じみた謎の威圧感、これが皇帝ってか。だがしかしゴルシちゃんは負けねぇ。ここはやっぱり・・・)
「逃げるが勝ちだーい!・・・、ありゃ?なんで脚が動かないんだ?ほらっ、動けってんだいアタシの脚!」
「ふふふ、私の鋭い眼差しの前から逃げられると思うなよ。さてと、まずはどうしてやろうか」
「お願いします、誰にも言いませんから、いいませんから・・・」
「ぎゃあああああああああああ!!!」
「うん?なんや今の音」
「まさか幽霊だったりして~?」
「ちょ、ちょっと悪い冗談やめてくださいよ」
「あはは、メジロ家では出たことないから、きっと勘違いだよ」
するとタイミングよく部屋のドアが開いた。ゴルシが戻ってきたのだろうか?しかし先に戻ってきたのはルドルフの方だった。
電話はトレーナーからで、明日から練習が再開されるから、その打ち合わせだったみたいだ。
「そういえばゴールドシップさんと会いませんでしたか~?」
「ルドルフさんを探しに行ったきり戻ってこないの」
「あぁ、ゴールドシップなら、少し外の風を浴びてくると、玄関前で夜風に当たっているよ」
「なんやそうやったんか」
「それじゃ私たちは先に寝ちゃいましょうか。寝てる間に帰ってくるでしょうし」
「そうだな、それじゃあみんな、明日に備えて消灯するとしよう」
7人「おやすみなさ~い!」
「む、むんんんむむーーー!」
(だ、誰か助けてくれーーー!)
翌朝、ゴルシが戻ってきた形跡が無かった為、朝からみんなで手分けしてゴルシを捜索した。
すると玄関前で、身体中を縄で縛られて、口にはタオル、目には目隠し、おまけにミノムシのように吊るされた状態の、冷たくなっていたゴールドシップが発見された。
作者の紗夜絶狼です。
前回から約3ヵ月もの間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
夏休み期間の間、仕事が忙しくなったり、創作意欲が減ってしまったり、ウマ娘アプリにハマりまくったりと色々ありました。
今後は不定期で更新していくことにさせていただきます。
楽しみにしていただいてる方、すみません。