ある空間の揺らぎの中、一つの魂がさまよっていた。彼ははっきりしない意識の中で、自分の事を思い出すように考えていた。
ーここは何処だ?ー
ー私はどうなったのだ?-
ーあと一歩だったのだ。私が全てを手に入れるまで・・・!ー
ー今はまだその時ではないようだー
ー次こそ必ず・・・ー
ー私が天下を取る!!ー
魂の揺らぎが一層強くなり、辺りの空間に亀裂が生じる。その中で彼は胸の中の野望を燃やし続ける。また戦が始まるその日を待って・・・。
▽
「全員気を引き締めろ。周囲に常に警戒しろ」
奇妙な植物が生い茂る鬱蒼とした森の中、六人の黒い鎧を纏った存在が辺りを散策していた。その腰には共通のベルトが巻かれている。
黒影トルーパーーー『沢芽市』のダンスチーム、『レイドワイルド』のリーダー・『初瀬亮二』が変身していた『アーマドライダー黒影』の量産型である。トルーパー隊は周囲に目を配りながらなあるものを探していた。
「しかし、『ヘルヘイムの森』にそんなのが本当にあるのだろうか?『クラック』と見間違えたのでは?」
トルーパー隊の一人が疑問を口にする。彼が言うクラックとは、この奇妙な森ーーーヘルヘイムの森と別の世界(正確には沢芽市)を繋ぐ空間の亀裂の事だ。それはこの森の侵入点であり、不規則に現れいつの間にか消える。ここにいるトルーパー隊の者達もそのクラックを通ってこの森に侵入してきている。ただ、トルーパー隊の通るクラックは他のものと違い、不規則に消えたりはしないのだが。
「実際に探すしかないだろ。今回は『呉島主任』もいないんだ。俺達に出来るのは地道に探す事位だからな」
「・・・そうだな。少しは役に立たねーとな」
頼りになる存在が今この場にはいない。そもそも、本来のプロジェクトと今回の件は一切関係が無い。なので、この場に主任がいないのは仕方ない。
お世辞にも強いとは言えないトルーパー隊だが、彼等なりの意地がある。せめて何かの役に立ちたい。そんな思いを持った者達が今回の捜索隊志願者だった。
「お喋りはその位にしておけよ。ここら辺が目撃地だ」
トルーパー隊のリーダー格が隊員に声をかける。隊員達がその場に集まり、愕然とする。まるでその場一帯が戦場だったかのようにボロボロの焼け野原となっていたのだ。
地面は抉れ、植物は燃やされ、焼け残った木も原型を止めているものは一つもなかった。
「・・・どうなっているんだ、これは」
「『インベス』の仕業か?」
インベスーーーヘルヘイムの森に住む原生成物の通称。緑色の表皮に、ずんぐりとした姿の怪物だ。見た目からは想像も出来ないような凶暴性と戦闘力を持ち、一人では戦わないように念を押されるような存在だ。
「いや、インベスがわざわざ自分の餌場を減らすとは思えない。・・・おい、『戦国』。お前はどう思う?・・・戦国?」
トルーパー隊の一人が、ある人物に意見を求める。しかし、返事が返ってこない。それどころか、最初は六人いたトルーパー隊が今では五人しかいない。
「おい!誰か戦国を見なかったか!?」
「いや、そんな事言われてもな」
「見た目は全員同じですからね」
「ちょっと待て、本当に一人足りないぞ」
「まさか・・・。うわ、本当だ」
ワチャワチャとお互いを確認しあうトルーパー達。その中に目的の人物は入っていなかった。
「マズイぞ。もしインベスに襲われたらあいつ一人じゃ戦えねーぞ」
「二手に別れよう。二人が戦国の捜索。残りの三人が例の空間の亀裂の捜索だ。俺が戦国を探しに行く。もう一人は誰だ?」
「あ、じゃあ、俺も行きます」
「よし、捜索を始める」
リーダー格の一人とまだ若い隊員の一人が戦国と呼ばれる人物の捜索に名乗りを上げる。本当なら全員で捜索に出た方が安全なのだが、そう出来ない理由があった。単純に時間が無いのだ。
この森で目撃されたと言われるクラックとは違う空間の亀裂。それの捜索に当てられた時間はたったの三日だ。その空間の亀裂がこの森の謎を解明するのに繋がる可能性もある。かといって、今更そんな事に時間も人員も割く暇は無い。だから、一日でも時間を無駄にしたくない。
そう考えてる矢先にこれだ。少なくとも、トルーパー隊の皆の心中は穏やかではないだろう。
▽
「ふんふんふんふ〜ふふん」
奇妙な植物が生い茂る鬱蒼とした森の中、一人の黒い鎧を纏った存在が、鼻歌を歌いながら辺りを散策していた。軽やかにスキップをしながら歩くその姿は、まるでこの森に遊びに来たかのようにも見えてしまう。
黒い鎧を纏った存在ーーー黒影トルーパーは錠前のような形をした妙な果実が実っている木の前で止まる。そして、実の一つ一つを観察する。
「うーん、これかな?」
そのうちの一つに手を伸ばしもぎった。その瞬間、さっきまでの植物としての面影は消え、機械的な錠前へと変化する。その錠前は前面にスイカの果実がデザインされていて、『L.S.-10』と刻印されている。
「やった!大当たり!『スイカロックシード』だ!!」
大喜びする黒影。彼が手に入れたロックシードーーーヘルヘイムの森に生えている果実を、腰に装着している『戦極ドライバー』と呼ばれるベルトの力で加工した物だ。アーマドライダーへと変身するのに使用されるそれらは、様々なクラスに分けられる。その中でも希少価値の高いクラスAのロックシードを手に入れたのだ。喜ぶのも仕方ないともいえる。
「じゃあ、早速使ってみよっと。・・・えーと、どうやるんだっけ?変身するの久し振りだったからなー」
自分の腰に装着している戦極ドライバーをガチャガチャと弄る。彼は本来このベルトをあまり使用しない。というのも、彼は研究者側の人間であり、変身する機会が殆どないからだ。ただ、今彼が装着しているそのベルトは彼自身の所有物である。他の量産型のベルトとは違い、左右にロックシードを収めるホルスターと一振りの銃刀が付いている。
「そうだ!一度ロックシードを外さなきゃ「戦国ー!!」ん?」
「戦国ー!!いるなら返事をしろー!!」
そう遠くない所から自分の名前を呼ぶ声がする。恐らく、トルーパー隊のリーダーだろう。しかし、何故リーダーが離れた位置にいるのだろう?そう思い、周りを見渡してみる。そこで初めて戦国は自分が皆とはぐれた事を知った。
「あ、あれ?何で皆いないんだろうな〜?・・・なんて、ねぇ。あはは・・・」
流石にマズイ。ヘルヘイムの森での独断行動は禁止されている。インベスに襲われたら、自分などひとたまりも無いだろう。そんな事は承知している。なのに気付いたらフラフラと歩き回っていた。言い訳のしようもなく、怒られるだろう。
はぁっとため息を吐く。やってしまったものは仕方ない。素直に謝って素直に怒られよう。そう決心した時だった。
「ウオオォォォォ!!」
「!?」
木の影から怪物が飛び出してきた。灰色の表皮に、丸っこい胴体。この森の原生成物、インベスだ。それが一体や二体ではなく、続々と森の奥から大量に現れてきたのだ。
突然の事に動揺する戦国だが、この森ではいつインベスが現れてもおかしくない。寧ろ、インベスに出逢わずに目的地まで辿り着けた事が奇跡に近い。
「ウアアァァ!」
インベス達は戦国に向かって飛びかかってくる。だが、狙いは戦国自身ではない。先ほど手に入れたばかりのロックシードを狙っているのだ。この森の果実はインベスの餌であり、それを加工して作ったロックシードも例に漏れずインベスは捕食する。
「うわぁっと!くそ!リャア!!」
インベスの突進を間一髪で避け、腰の銃刀ーーー『無双セイバー』を引き抜きインベスの一体に斬りつける。多少のダメージは入ったようだが、何分数が多すぎる。本来の手持ちの武器は果実をもぎる時に置きっ放しのままだ。
徐々に囲まれていく戦国。無双セイバーで攻撃を続けるものの効果は薄い。流石にこのままではどうにもならない。それならばスイカロックシードを使おうとした時。
『『ソイヤッ!マツボックリスカッシュ!』』
「オラーッ!!」
「タァーッ!!」
二人の黒影が長槍型の武器ーーー『影松』に松ぼっくり状のオーラを纏わせながらインベスの群れに突っ込んできた。突然の一撃に反応出来なかったインベスの一部がまともに攻撃をくらい爆散する。
「リーダー!それに・・・黒影さん!」
「いや、皆黒影何ですけどね」
「馬鹿言ってる場合か!さっさと立って戦え!!」
「あ、はい!」
ようやく状況を把握出来たインベス達が襲いかかってくるが、さっきの不意打ちによりその数は多くない。戦国はおいといても、トルーパー隊は少なからず戦闘経験がある。三〜四体程度なら三人もいれば事足りる。現にインベスは一体ずつ確実に数を減らしつつある。
「よーし。これで決めるぞ」
『ロックオフ』
戦極ドライバーにセットされている『マツボックリロックシード』を取り外し、無双セイバーにセットする。
『ロックオン 1!10!100!!』
「そーりゃあっ!!」
『マツボックリチャージ!!』
刀身に溜まったエネルギーをそのままインベスに向かって解き放つ。松ぼっくり状の斬撃が残ったインベスに直撃し爆散する。
全てのインベスを撃破した事を確認し、ようやく緊張感から解放される。大きくため息を吐き出しその場に座り込む。インベスとの戦闘をシミュレーション訓練以外にはやった事のない戦国にとって、この戦いは初陣だった。
「やりましたね。リーダー」
「やりましたね、じゃないだろうが!この馬鹿野郎が!!」
「いったぁ!?ご、ごめんなさい!!」
思いっきり拳骨を食らった。変身しているとはいえ、その一撃は十分過ぎるほどのダメージだ。頭を抑えながら謝罪する戦国。それを呆れながらトルーパー隊の一人が見ている。
「今回は君が悪いんですよ。着いてきたいって自分から言っといて、自分から逸れるようじゃ強制送還されますよ?無線まで通じないし」
「ごめんなさい・・・」
「全く、お前は・・・。大体、何で単独行動をしたんだ?」
「その・・・気付いたらフラフラと」
「「・・・・・・はぁ」」
戦国の言葉に更に呆れる二人。危険区域でこれなら、やはりこいつだけでも本部に帰すべきか。そう考えていた時だった。
「グルルゥゥゥ!!」
またインベスの声が聞こえた。今度は一体しか聞こえなかったが、かなり近い位置にいる。
「またインベスか。キリがないな」
「迎え撃ちますか?」
「三人もいれば余裕です!」
「いや、倒してもキリがないから適当に追っ払う。逃げても追ってきそうだしな」
インベスはロックシードにつられて引き寄せられる性質がある。ここまで近くにいたら、逃げても追ってくるだろう。ならば、倒すか追っ払うかのどっちかしかない。そう普通ならそれで良かった。だが、今回は訳が違った。
「グオオオオォォ!!」
「おい、あれって・・・」
「マズイですね・・・」
「あれ?あのインベスってもしかして、『上級インベス』!?」
森の奥から現れてきたのは、さっきまで戦っていたインベスとは違い、中国に伝わる青龍を思わせる姿をしたインベス、『セイリュウインベス』だった。
上級インベスとはその名の通り、下級のインベスが何らかの方法で進化した個体のことを言う。その戦闘力はそこらのインベスとは比べものにはならず、戦わずに逃げるように言われている。だが、ここまで接近されていては、無事に逃げ切るのは不可能だろう。
「・・・俺が時間を稼ぐ。お前達はその間に逃げろ」
「ちょっ、リーダー何言ってるのさ!?一緒に逃げようよ!」
「分かりました。戦国、早く逃げますよ」
「黒影さんまで!」
「いや、皆黒影ですって」
「馬鹿やってないで逃げろ!!」
「ウオオォォ!」
リーダーが怒鳴った直後、今まで様子を見ていたセイリュウインベスが襲いかかってくる。リーダーはその一撃を影松で受け止めるものの、重すぎる衝撃に耐えきれず吹き飛ばされてしまう。木に叩きつけられるも直ぐに身を起こし、セイリュウインベスを影松で斬りつける。だが、硬すぎる皮膚に影松の攻撃は通らず、逆に相手の反撃を連続で食らってしまう。
「ぐあぁ!」
「リーダー!」
「いいから逃げますよ!!」
「でも!」
「俺達じゃ勝てないんです!俺達に力が無いから・・・逃げるしか」
上級インベスと黒影との戦力差は絶望的だ。今ここにいる三人、いや、トルーパー隊の六人が力を合わせても勝てるかどうか。だったら、一人を犠牲にしてでも生き延びるべきだ。
「・・・力なら、あります」
「え?」
『スイカ!』
「スイカロックシード?どうしてそれを?」
「フラフラしてる時に見つけたんだ」
戦国がスイカロックシードを解錠する。音声と共に、戦国の上空にエネルギーが集まり、巨大なスイカを思わせる物体が現れる。戦極ドライバーにセットされているマツボックリロックシードを取り外し、スイカロックシードを取り付ける。すると、さっきまで纏ってた黒い鎧が消え、アンダースーツだけの状態になる。
『ロックオン』
法螺貝のような音色が鳴り響き、変身の準備が整ったことを知らせる。戦極ドライバーの右側に付いている小刀ーーーカッティングブレードを倒し、ロックシードを切る。
『ソイヤッ!スイカアームズ!!』
音声と共に、上空のスイカが戦国の元に降ってくる。それを避けもせずにその身に受ける。そのまま巨大なスイカは戦国を押しつぶした・・・訳ではない。
「うりゃぁー!!」
『大玉・ビッグバン!!』
巨大なスイカが周りの木をなぎ倒しながらセイリュウインベスに向かって転がる。スイカアームズを装着した事により、戦国が巨大なスイカを操っているのだ。
「グオォ!?」
「何だ!?」
そのままの勢いでセイリュウインベスにぶつかる。強固なスイカアームズの一撃をくらいセイリュウインベスは吹き飛ばされる。
「リーダー!大丈夫!?」
「お前、戦国か?何でスイカ持ってるんだよ!?」
「インベスに襲われる前にもぎった!」
「あ、ああ、そうか」
あるんだったら早く言って欲しかった。現状、トルーパー隊ではセイリュウインベスに立ち向かうことは出来ないが、スイカロックシードがあれば話は別だ。それ一つだけでこの辺りのインベスだったら瞬殺だろう。自分が囮をやった意味がまるで無い・・・。
「グウウゥゥゥ!」
「まだかかってくるつもりか?懲りないな」
『ヨロイモード』
音声と共にスイカが展開され、巨大な人型の鎧へと変化する。その手には巨大な薙刀ーーー『スイカ双刃刀』が握られている。
スイカ双刃刀を向かってくるセイリュウインベスに斬りつける。一撃の威力が影松と比較にならないほど強く、やすやすと強靭な皮膚を切り裂いていく。
「ウリャァッ!!」
「グウオォォ!!」
止めに強烈な突きを食らわす。その威力に耐えきれなかったセイリュウインベスは爆散し、その命を終わらせた。
「やったー!勝ったー!」
巨大な鎧を纏ったまま大喜びをする。上級インベスを自分一人で倒せた事と、リーダーが無事だった事。その嬉しさで大はしゃぎしてしまっている。
「・・・やっぱスイカロックシードを配布するようにしてもらえないんですかね?」
「無理だろ。クラスCのマツボックリに対してあっちはクラスA。しかもその中でも希少なスイカだ。一つでもこっちに回ってくることはないな」
「ですよねー」
もし、あんなのが大量にあったらこんな苦労は誰もしない。
「勝ったー!」
「いつまではしゃいでいるんだ・・・」
▽
「さて、時間も無いし捜索を続けるぞ」
「はーい」
「返事はいいんだよな、こいつ」
セイリュウインベス撃破後、無線で連絡を取り合い全員が集合した。言うまでもなく、戦国は隊員全員からのお説教を受けた。
「で、何でこいつはスイカのままなんだ?」
「こっちの方が遠くまで見えるからね」
「こっちは踏みつぶされそうで怖いけどね」
スイカアームズは通常の時の倍以上のサイズを誇る。更に空中戦にも対応している万能な装備だ。その代わり、長い間使うとしばらく使用不可になるが。
「しかし、空間の亀裂は結局まだ見つかってないんですね」
「ああ、普通のクラックは何個か見つけたけどよー。別に何も異常は無かったぜ」
空間の亀裂の捜索隊は二手に別れた後も懸命に捜索を続けたが、結局手掛かりは掴めなかったようだ。
「ところでさ」
「何だ?戦国」
「その空間の亀裂ってどんなの?」
そう言った瞬間、トルーパー隊全員がずっこけた。こいつは知らないで着いてきたのか?
「お前なぁ、資料読め!資料!」
「うわっ!資料ちっさい!」
「お前がでかいんだよ!」
本当に本部に帰すべきなんじゃないだろうか?不安に包まれながらも、スイカという強力な武器がある以上いてもらうしかないのだが。
渡された資料に目を通す。中には空間の亀裂を目撃した日、目撃場所、目撃した状況、最後にその空間の亀裂の写真が載せてあった。なるほど、確かにクラックとは似ても似つかない。普通のクラックならば空間にチャックが開いたようなものが出てくるのだが、この空間の亀裂はまるでこちらを見るかのように、大量の目が付いている。その奥は見えておらず、両端はチャックではなくリボンが付いている。戦国個人の意見ではリボンの部分はちょっと可愛いい。
「なるほどなるほど、つまりこれは」
「何か知っているのかい?」
「いやさっぱり」
「ですよねー」
「ところでさ、あの上にあるのって違うの?」
「上?」
戦国が上の方を指さす。その方をみると、そこにあったのは青空ではなく、探し求めていた空間の亀裂そのものだった。
「おいおい、マジかよ・・・。そんなとこにあったのかよ」
「これは盲点・・・て言えるのか?」
「それよりも、どうやってあそこに行くんですか?『ロックビークル』は無いですよね?」
「この中であそこまで行けるのは・・・」
「行けるのは?」
「「「「「・・・・・・じー」」」」」
トルーパー隊全員が戦国の方を見る。現在飛行能力を持っているのはスイカアームズだけだ。ロックビークルと呼ばれる乗り物の中には飛行能力を持つものがあるが、この間大量に破壊されたため、配布されていない。となれば、頼めるのは、戦国しかいない。不安だが。
「も、もう!そんな見ないでください!恥ずかしくて引きこもっちゃう!」
『大玉モード』
「なぁ、こいつ殴りたいんだけど?」
「帰ってからにしろ」
音声と共に、最初に呼び出された時のスイカの状態になる。完全に不安でしかないが、こいつに頼むしかない。腐っても研究者側の人間だ。何か気付くかもしれない。
「戦国、ちょっと調べてきてもらえるか?こっちでも色々やってみるから」
「しょうがないなー。ひとっ飛び行きますか」
『ジャイロモード』
音声と共にスイカが展開され、飛行形態へと変化する。そのまま浮き上がり空間の亀裂のところまで飛んでいく。
何の苦もなく辿り着き、観察をする。よく中を見てみると、黒い空間の中が様々なもので溢れかえっている。まるでその中自体が一つの世界のようだ。
「うん?」
中を観察していると、何かが見えた。それは見間違いでなければ・・・
「どうした!戦国!」
「中に人がいます!」
「何だと!?」
人がいる。意識が無いのかこちらの言葉に反応しない。もし、このまま放っておけばこの空間の亀裂は消える。そしたら、この人も・・・。
「リーダー!ちょっとこの中に入ってみるから!」
「無茶をするな!一度本部に戻って」
「そんな暇無いって!」
「戦国!」
リーダーの静止の言葉を振り切り、亀裂に侵入する。中は酷く不安定で、真っ直ぐ飛ぶことが出来ない。何とか中にいた人の近くまで辿り着くが、あと一歩が届かない。
「おーい!聞こえてる!今行くから待ってて!」
何とか手を伸ばすが届かない。何か方法は無いのか・・・。そう考えていた時。
ー・・・ってー
「え?」
ー・・が・・・い。・・・をー
目の前の人の声かは分からないが、誰かの声が聞こえる。自分に何かを頼む声を。
「何なんだ?ねぇ!起きてるの!?」
ー・・・武神・・・の、・・・・・・をー
「武神?」
ー幻・・・頼・・・・・・ー
最後にそう聞こえた瞬間、空間が揺らぎ始めた。まるで嵐に巻き込まれたように視界が回る。もはや飛行することすら出来ない。
「うわっ!くそ!おい、さっきのってどういう意味なの!?」
返事は返ってこない。それどころか、さっきまでいた人もいなくなっている。訳が分からないが、今は取り敢えずここから脱出しなければ。だが、操縦がきかないこの状況で出来る事などたかが知れている。
しかし、諦める訳にはいかない。まずは出口を探す。安定しない視界の中で周りを見ると、さっきと同じ空間の亀裂をすぐに見つけることが出来た。空間が崩壊の兆しを見せる中でチャンスを待つ。
「今だ!!」
『ソイヤッ!スイカスパーキング!!』
カッティングブレードを三回倒し、出力を上げる。一瞬の加速だったが、それで十分だ。何とか空間の亀裂からの脱出に成功した。
しかし、
「うおっ!?落ちてる!?」
脱出の時に無理がかかったのか、飛行形態にもかかわらず落下していく。しかも、下を見るととんでもないほどの高さから落ちているのが分かる。強固なスイカアームズとはいえ、飛行形態でこの高さから落ちたら自分もただではすまない。
「ええい!どうにでもなれ!」
『大玉モード』
音声と共にスイカ形態へと変化する。一番防御に長けたこの形態ならば、この高さでも耐え切るかもしれない。そう思っての判断だ。
落下していく中である疑問が浮かぶ。さっき下を見た時の景色はヘルヘイムの森ではなかった。ではここは沢芽市なのか?だが、どこか沢芽市とは雰囲気が違う気がした。まるで別のーーー
「ぐおっ!?」
思考中の戦国の意識が途切れる寸前に辿り着いた答えは、自分が地面に叩きつけられたという事だった。
戦闘描写が難しいです・・・。あと長い。
何か気になった事や質問があったらコメントいただければと思います。
それでは、次回。