東方戦国記   作:楠名等

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やあ、楠ですよ。一ヶ月とちょっとぶりですね。失踪はしてないですよ。
家でトラブルがあって一ヶ月ほど余裕がありませんでしたが、今回から投稿を再開します。ただ、今回はちょっと短めですが。
待っていただいた方、これからもよろしくお願いします。

それでは本編をどうぞ。


心配になるほど

 

「誰かいたかい?」

「いや、誰もいないよ」

 

コウモリインベスを倒し変身を解除した後、ダンデライナーを旋回させながら萃香と一緒にさっきの視線の主を探す。しかし、木々の所為で人っ子一人見つけることが出来ない。それに、今ではさっきのような視線は全く感じられない。

 

「私はもう少し探すから、あんたは魔理沙のところに行きな」

「了解!」

「・・・返事はいいんだね」

 

ダンデライナーを操作し魔理沙と別れた場所まで移動し、待機状態に戻す。辺りを探すと、木に寄りかかっている魔理沙を見つけた。すぐ近くまで駆け寄り声をかけるが反応が鈍い。どこか怪我でもしたのだろうか?

 

「魔理沙、怪我は無い?」

「・・・」

「魔理沙?大丈夫?」

「時正・・・」

「どうしたのさ?」

 

耳を近づけると、か細い声で自分を呼ぶのが聞こえた。やはりどこか怪我をしたのかと心配になる。インベスの攻撃で傷を負ったら植物の侵食に遭う。現状それをどうにかする方法は無い。しかし、魔理沙の体には目立った外傷は無いように見えるが。

 

「魔理沙、本当に大丈夫か?魔理沙?」

「・・・・・・怠い」

「は?」

「何か、めちゃくちゃ体が怠い」

「・・・疲れてるんだよ」

 

地面にだらしなく座り込む魔理沙を見て、とりあえず無事だという事が分かり安堵する。帽子を目深に被りぐでっとしている。相当体に反動が来たようだ。

 

「スイタ、魔理沙」

 

今度は空から自分を呼ぶ声が聞こえる。上を見上げると、萃香が丁度降りてくる。物凄い不機嫌な顔で。戦国はその表情をよく見たことがあった。自分を叱る時の大人の顔だ。

二人の前に萃香が無言で立つ。戦国も魔理沙も雰囲気に押され何も言えずにいる。その様子を見て萃香は、はぁ、とため息をつく。

 

「私はあんた達の親でも保護者でもないし、そんなのになる気もないけどさ」

 

口を挟まずに黙って聞く。二人とも勝手な行動をとった自覚があり、素直に怒られるつもりだった。

「・・・あまり心配させないでくれよ」

 

真っ直ぐに戦国と魔理沙を見ている萃香はふと悲しそうな表情に変わる。それを見て戦国は、心配をしていたのは自分だけじゃないのを漸く理解した。

 

「萃香・・・ごめん」

「私も、勝手な事して悪かったよ・・・」

「いや、分かればいいんだよ」

 

萃香は魔理沙の頬を両手で優しく覆い頬笑む。普段のだらしない姿からは想像も出来ないその優しさに、魔理沙は色んな感情が混み合い、また涙が出そうになる。普段ならこんな弱い自分を他人に見せる事はありえない。でも、今だけは弱さに負けそうになっていた。のだが、

 

「萃香ぁ・・・」

「でぇもぉ」

「いっ!?」

「心配かけさせた分はきっちり払ってもらうよ!」

 

突然、微笑から悪鬼の表情へと変貌し、魔理沙の頬をこれでもかと引っ張る。いきなりの展開についてこれない魔理沙に容赦する事無く限界まで伸ばす。

 

「ひふぁい!ひふぁい!」

「ふはははははは!ここでは日本語で喋れ!」

「ひゃめろー!」

「うりゃりゃー!」

 

悪党の様な笑い方をしながらも萃香は魔理沙の気持ちに気付いていた。どんなに妖怪退治に慣れているとしても、魔理沙の根本は普通の少女だ。いきなり強い力を手に入れても扱いきれる筈が無かった。それ以上に心配をさせた分を返してもらおうという部分が大きいが。

 

それと同時に違う疑問が湧いてくる。そんな力を常に使っているあの少年。自分を見て苦笑いしている戦国は、本当に普通の少年なのだろうか?

 

『そいつに伝えるがいい。いずれ貴様は禁忌に触れた事を知ると』

(あの声が言っていた事。禁忌に触れたっていうのはなんなんだ・・・?)

 

根拠の無い不安が、萃香の胸の中に渦巻いていた。

 

ちなみに、萃香は気付いていないが、戦国にその事を伝えるのを皆さっぱり忘れていた。

 

 

診療所の玄関先。そこには戦国と慧音がいた。魔理沙は萃香に連れられ医者の元へと運ばれ、一緒に着いて行こうした戦国だけ慧音に止められたのだ。

 

「・・・・・・」

「あの、勝手に抜け出してごめんなさい」

「・・・・・・」

「あ、あのー」

 

鬼のような顔をした慧音。どうやら、診療所を抜け出した戦国を人里を傷の癒えない体で駆け回って探していたようだ。今だ怪物騒ぎが収まっていない中で外来人である戦国が行方不明になれば、当然騒ぎになる。

慧音は無言で戦国の正面に立ち、肩を掴む。

 

「この馬鹿者が!」

「あいたー!!?」

 

大きく背中を反らし、思いっきり頭を振り下ろす。綺麗なフォルムで繰り出された頭突きは、見事に戦国の脳天に直撃し、ごつんという鈍い音と戦国の絶叫が辺りに響く。あまりの衝撃にその場に倒れこむ戦国。そして、何故か慧音もその場にしゃがみ込む。

 

「戦国、お前、頭固いな・・・」

「星が見える・・・」

「スイター、魔理沙は怪我とか大丈夫だって・・・なんだこれ?」

 

頭突きを喰らった戦国と、頭突きをした慧音。その両方が痛みに涙目になっていた。

診療所の中から出てきた萃香と医者がその意味が分からない光景に首を傾げる。

 

「慧音さん、あんた怪我人なんだから大人しくしててくれ」

「こういう勝手な行動をとる子供を叱るのが大人の仕事です!ちゃんと本人にも分からせないといつまでも」

「子供を叱るのは良いですけど、デコにたんこぶ作ってる人が言うとあまり説得力無いですよ」

「・・・」

 

何と無くどういう事か察した医者は慧音に指摘する。慧音は医者に指摘され大人しく引き下がる。

 

「何だよ子供子供って。僕だってもう一人前なのに」

「そういう事言っているうちはまだまだ子供だよ」

「むぅ・・・」

「ま、そのうち分かるよ」

 

納得がいかないという表情の戦国の肩を叩く萃香。見た目が完全に子供の萃香に言われると釈然としないが、それを言うと確実にぶたれるだろうから黙っている事にした。

 

「ん?」

「萃香?どうしたの?」

「スイタ、ちょっと用が出来たから後は頼むよ」

「え?ちょっと!?」

「夕飯までには帰るからー」

 

急に人ごみの方へと目を向けたかと思うと、萃香はそのまま人ごみの中へと走り去り、あっという間に紛れ込んでしまう。

 

「戦国、いつまでも玄関にいても仕方ない。中に入りなさい」

「・・・はい」

 

置いてけぼりにされた戦国は医者の言葉の従い診療所へと入る。この後質問攻めにあうだろうと考えると、自業自得とはいえ気が重くなる戦国だった。

 

 

「さて、戦国。霧雨の嬢ちゃんがああなった理由を教えてくれ。あの娘もお前さんに聞くように言ってたからな」

「えーと、その・・・」

 

全てを話しても言いのだろうか、と戦国は悩む。山であった事を話せば当然アーマードライダーの話もしなければいけなくなる。霊夢や魔理沙には空から降ってきたところから見られていたが、医者にはただの怪我人としか思われていない筈だ。そんな奴が急に怪物を倒してきました、などと言い出したらただでさえやつれている医者が倒れるんじゃないかと心配になる。いっその事、インベスは萃香が倒したことにするべきか。

戦国がそう思考を巡らしている時だった。部屋の扉が開き、一人の女性が入ってくる。水色の上下一体のスカートに白いベスト、青色の髪には簪を刺している。特に目につくのは、半透明の羽衣を身に纏っている事だ。

いきなり現れた女性にその場にいる三人の目が向く。戦国はこの女性に見覚えがあった。自分に山への近道を教えてくれた女性、少なくともこの場にはそぐわない人だ。

 

「ごめんなさい・・・。全ては私の責任なのです」

 

三人が声をかけるより早く女性が口を開く。だが、その言葉の意味は戦国にも分からなかった。責任とは何の事だろうか。

戸惑う三人を余所に女性は戦国の横に座る。どうやら、診療所事態に用があってここに来たわけではなく、今この場に明確な理由があるようだ。

 

「私は『霍 青娥』。呼ぶときは愛を込めて『娘々』と呼んでくださいませ」

「え、ああ」

 

女性---青娥は全員に自己紹介をする。何故愛を込めて娘々と呼ばなければいけないのか、誰もツッコミを入れる事が出来なかった。

 

「何で娘々がここにいるのさ?」

「・・・自分の名前なのに、意外と恥ずかしいわね」

「まためんどくさい人が来た・・・」

 

自分の名前だったのかと、戦国は納得する。きっと何か理由があって別の名前を名乗っているのだろう。では、一体どうして別の名前を名乗る必要があるのだろうか?

戦国はそこまで考えてそこは別に重要じゃないことに気付く。問題は彼女がここに来た理由だ。頭を抱えてため息を吐いている医者も、その事が気になっているようだ。

 

「では、話の顛末を説明します。私が日課の朝登山を楽しんでいる時」

「待て、その時点で何かが変ではないか?」

「上白沢さん、話しは最後まで聞きなさいな」

「・・・」

「大体、『仙人』は山が好きなんだから登山ぐらい普通だわ」

「え、そうなの?」

「うん、そうなの」

 

真面目な顔でそう言われてしまい、何も言い返せなくなる。そして、さらっと流してしまったが仙人とは何なのだろうか。彼女がその仙人というものらしいが、こんな俗っぽい仙人何ているのか?

 

「それでですね、いきなり怪物に襲われたのです。ほら、今噂になっているインなんちゃらって言う怪物」

「そういえば里でそんな噂を少し耳に挟んだな。確か、インキュベーターだったか?」

「インベスです」

 

医者の勘違いに突っ込む戦国。インしか合ってないのだが、一体どんな噂を聞いたのだろうか。青娥が小さい声で、魔法少女がどうのとか言っていたが、気にしない事にした。

 

「私は必死に逃げて逃げて逃げて・・・。だけど、捕まりそうになったその時!」

「その時?」

「魔理沙が駆けつけたの」

「魔理沙が?」

「ええ、たまたま近くを飛んでいた時に見かけたようね。その後増援で彼や萃香が駆けつけてくれたの。お陰で命拾いしたわ」

 

彼女が言っている事はある意味間違ってはいない。インベスが目撃された場所に最初に駆けつけたのは魔理沙だ。その後自分が変身してインベスを倒した。そこに青娥がいたかいなかったかの違いはあるが。だが、変だ。青娥は妙に大袈裟に話をしている。それこそ青娥自身に疑いの目を向けられるほどに。というより、どこか疑いの目を青娥自身にわざと向けさせている様に感じる。

戦国は青娥が適当に作り話を言っているわけではないと考えていた。彼女が話している内容は今朝の一件と一致しすぎている。まるで、全てを見ていたかのような口ぶりだ。だとすれば、戦っている時に感じたあの視線の正体は青娥なのだろうか?

 

「だが、戦国の坊主は怪我人でしかも子供だ。何故彼が助けに行ったんだ?」

「怪我人?・・・ああ、怪我を押してまで助けに来てくださったなんて・・・!貴方にはどうお礼をすれば良いのか!」

 

戦国が怪我をしているのを知らなかった青娥は一瞬驚きを見せるものの、すぐに戦国の手を握り大げさに感謝の言葉を言う。

 

「えーと、気にしないでください。僕は人助けが趣味ですから」

「ああ!!器も広い!!感激ですわ!!もし道教に入るのなら秘伝の極意を教えますが」

「えーそうですねー。なやんじゃうなー」

 

もうどうでもいいと言わんばかりに投げやりに答える。医者も慧音も同情の眼差しでこちらを見てくるのが正直辛い。

 

「というわけです。何かご質問は?」

「結局魔理沙が運ばれてきた理由が分からないとか、インベスはどうしたとか、聞きたい事は山ほどあるんだが」

「そうね。あ、時正君は魔理沙の事が気になるんじゃない?」

「え?」

 

青娥から、私に任せろ、とサインを送られる。どうやら、一人のほうが都合が良いらしい。怪しい彼女に任せてもいいのかと迷ったが、青娥が足に短刀を突きつけてるのを見てこの場を任せる事を決心する。

 

「すみません、魔理沙の所に行きたいんですけど・・・。出来れば一秒でも早く」

「え、ああ、霧雨の嬢ちゃんなら奥の部屋で寝てるぞ。行ってきなさい」

「じゃ、ちょっと行ってきます」

 

魔理沙が気になっていたというのは本当だ。変身していたとはいえ、上級インベスと交戦していたのだ。怪我がなかったとしても、戦極ドライバーで変身した反動がきている可能性もある。どちらにせよ、自分で確かめるほか無い。

 

「ああ、戦国よ」

「何ですか?」

「この話が終わったら怪我の診察のついでに勝手に抜け出した事説教するから覚えていろよ?」

「・・・はい」

 

誰かが助けてくれたとしても、自分のやった事が消えてなくなるわけではない。戦国はそれを一つ学んだ。

 

「・・・あれ?」

 

魔理沙のいる部屋に向かっている時、戦国は一つの疑問を覚える。

 

『時正君は魔理沙の事が気になるんじゃない?』

「僕、青娥さんに名乗ったっけ?」

 

青娥への謎は深まるばかりだった。




最後まで読んでいただきありがとうございます。

突然出てきた娘々。最初は娘々で通そうかと思ってたけど、変換が面倒だったので、普通に青娥にしました。ちなみに、ちなみに、主人公が地の文で苗字呼びなのも同じ理由です。時正って一回で出てこないんですよね。

この一ヶ月間で色々ありました。バトライドウォー2が発売されたり、鎧武の映画を見に行ったり。それ以外はちょっと個人的に辛い一ヶ月間でした。それでも、この物語は完結させたいです。これからも応援よろしくお願いします。

次回もよろしく
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