東方戦国記   作:楠名等

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さあ、問題です。私が投稿するのは何日ぶりですか?

いや、本当に遅くなって申し訳ないです。本当だったら鎧武放送中に何回か投稿したかったのですが、まあ、色々あって・・・。
これからは少なくても一ヶ月に一回は投稿できるように頑張ります。

ちなみに、今回は変身してません。


綺麗な笑顔 曇る心

体に風を感じ、霊夢は目を開ける。そこは眠りについた神社ではなく見慣れぬ森だった。

 

『・・・?』

 

不思議と驚きや不安の感情は無い。ただ、何故自分がここにいるのか、それが分からなかった。

 

『・・・』

 

何か無いか周りを見渡す。辺りは木々で溢れている。森だから当たり前だが、それ以外は見当たらない。仕方なく、当ても無く歩く。ここがどこなのかも、これが夢なのかも今はどうでも良かった。この先に行けばそれが分かるから。そう思う理由は無い、ただの勘だ。

 

どのくらい歩いただろうか。木の数は段々と減っていき、次第に地面に石が露出し始める。更に先を進んでいくと崖に突き当たる。その崖の前に、金髪の少女が背を向け立っていた。

 

「・・・貴女は」

 

金髪の少女は霊夢へと振り返る。白そのものといった服に身を包んだ少女は、どこか神秘的であり、どこか人間的な雰囲気をしていた。

 

『貴女が私をここに連れてきたの?』

「この世界に貴女が来た原因は私。でも、ここまで来るのを選んだのは貴女自身よ」

『何か捻くれた答えね。森の中にずっといたがる奴なんていないでしょ』

「そう、誰もが違う世界を求める。破滅や追放を恐れず、ただ己の欲する物を求めて」

『それって、どういう意味?』

 

霊夢が少女に近づいた瞬間さっきまで無音だった世界に音が鳴り響く。少女は質問に答えず崖の下を指差す。霊夢は少女の隣に立ちその先を見て言葉を失う。

 

『これって・・・』

「彼等は運命を選んでしまった」

『・・・運命?』

 

少女の言う彼等―――複数のアーマードライダーが無数のインベスを従えて戦っている。

 

馬に乗った鎧武者が二輪の機械に乗った騎士と鎬を削る。白いアーマードライダーが緑色のアーマードライダーを引き連れ、インベスを引き連れた茶色のアーマードライダーと戦う。

空に浮かぶ複数の緑色の機械がインベスを打ち落としながら、インベスに破壊されていく。この戦いはまるで『合戦』だった。

 

そして、その光景を見ている者がいる事に霊夢は気付く。霊夢と少女がいるのとは反対側の崖に何かがいる。

遠すぎてはっきりとした姿は確認できないが、影のように黒い姿のそれは人間でもアーマードライダーでもない、異形だった。

 

『!』

 

一際大きい爆発が起き、世界が一瞬光に包まれる。目を開いた霊夢は自分と少女がさっきまでとは違う場所にいる事に気付く。そこは奇妙な植物が生い茂る森の中だった。そして、そこでも戦いが起きていた。

 

白い異形が大剣を振るい、赤い異形が自身を煙のように変え、緑の異形が植物を操り数多の異形の生物を葬り去っていく。霊夢から見ても、その三体の強さは圧倒的だった。それでも、そんな圧倒的な強さを見せ付けても戦いは止まらない。何が彼等を駆り立てるのか、霊夢には分からなかった。

そして、ここにも戦いの光景を見ている者がいた。それはさっきの黒い異形とは違う、黄金の異形だった。

 

世界が歪みまた別の光景が写される。いくつも、いくつも、いくつも・・・無数ともいえる世界が繁栄し滅んでいく。

 

「数多の世界が違う過程を歩み、同じ結末を辿る。誰もそれは変えられない」

『・・・それが運命だって言うの?』

 

少女は無言で頷く。その伏せた顔は悲しみに満ちていて、その運命に納得しているようには見えない。伏せた顔を上げた少女は空間に手をかざし、まるでジッパーを開くかのように亀裂を作る。その先には何も無い空間が広がっている。

 

『これは一体何よ』

「幻想と現実の成れの果て。黄金の果実に妄執する者を討たなければ、いずれ幻想と現実の境界は曖昧になり、一つの世界がその芽を摘まれる」

『・・・』

 

幻想と現実の成れの果て―――その意味が分からないほど霊夢は馬鹿ではない。この何も無い空間、それは世界が終わった事を意味している。わざわざ少女がこの世界だけこんな見せ方をするという事は、自分にはこの先へ行かせたくないからだろう。そして、この世界はきっと自分の・・・。

 

「いずれ憎しみの種が育ち、世界は争いに包まれる」

 

まだ自然が残っている世界が写り、世界が一瞬で朽ち果てていく。少なくなった自然は争う人々に踏み潰され消えていく。そして、さっきのように何も無い空間へと姿を変えていく。それを最後に空間の亀裂は閉まり、最初にいた森へと場所が変わる。

 

「貴女は運命を知った。破滅の運命を。それでも、貴女は戦い続けられる?」

『当然よ。戦うに決まってるでしょ』

 

心配するかのような少女の問いに、霊夢は迷い無く答える。その堂々とした姿に少女は初めて驚きの表情を見せる。

 

『何驚いてるのよ?戦うのは当たり前でしょ』

「どうして?破滅の未来を知っていて何で抗おうと思えるの?」

『知ってようが知らなかろうが同じよ。自分が動かなければ意味無いでしょ。それに』

 

霊夢は自分が考えうる限り絶対といえる自論を少女に語る。それは当たり前だが、少女を納得させるには十分な言葉だった。

 

『明日私がお茶を飲む運命だったとして、その味まではまだ分からないわ。分からなければ自分で確かめるまでよ』

 

分からなければ自分で確かめる。ただそれだけの事だ。それは霊夢が巫女だからそう考えている訳ではない。霊夢が霊夢だから、そうするだけだ。

少女はそんな霊夢を羨ましそうに見た後、少しずつ霊夢から離れていく。

 

「確かに世界は滅びる運命を辿っている」

 

立ち止まったまま離れていく少女はそのまま言い残していく。

 

「だけど、黄金の果実の種を託された者がその種を芽吹く事が出来たのなら、その運命を変えられるかもしれない」

『黄金の果実の、種?』

 

少女の言葉とともに空間の先に光が溢れる。それはまるで破滅の運命を超えていく―――

 

「気付いて、希望はいつでも近くにある」

 

―――希望のように

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんぅ・・・」

 

朝日を感じ霊夢は目を覚ます。目を擦り、ぐっと体を伸ばす。

 

「ふぁ~。・・・なんか変な夢見たような?」

 

凄い大切な話をしたような気もするが何故かぼんやりとしか夢の内容を思い出せない。金髪の少女と一緒にいたのは確かだが、それ以外が思い出せない。

 

「・・・まあ、いっか」

 

夢の内容よりも今は現実の方が大切だ。霊夢は温もりの残っている布団から起き上がり行動を始める。

 

「たのもう」

「・・・はぁ」

 

玄関の方から聞き覚えのある声が聞こえる。残念ながら穏やかな一日は訪れなさそうだ。

 

今日も一日が始まっている。

 

 

神社の食卓にご飯が並べられる。つい先日までは十分な食料があったはずだが、僅か一日足らずで底を突きそうになっていた。思わずため息が出そうになるが、貴重な食料の前でするのは良くないだろう。

 

「いただきます」

 

博麗神社で遅めの朝食を食べながら霊夢は今までの情報を整理していた。

インベスやロックシード、ヘルヘイムの森などの情報だ。所謂異世界からの侵略といった内容だったが、どこか情報が歯抜けになっている気がする。戦国が意図的に情報をあまり出さなかったのかもしれない。だが、それが妙に引っかかる。

ヘルヘイムに住むインベスはクラックという空間の裂け目を通ってこちらの世界に来るらしい。霊夢もそのクラックは見た事がある。チルノとあの男が持っていたロックシードでインベスを呼び出す時に出てきた裂け目、それがクラックだろう。そして、このクラックは自然発生する事もあるらしい。だが、そのせいで一つ納得出来ない。

 

「ヘルヘイム・・・」

「たのもう!!」

 

何故、戦国はヘルヘイムの侵食をこの世界とは無縁の話のように語っていたのか?戦国の話が事実なら幻想郷もヘルヘイムの侵食に遭っていると考えるのではないか。インベスがいる以上クラックの存在を疑う筈だ。

仮に幻想郷に出てきたインベスが全てロックシードで呼び出したものだとして、そんなに都合よくリミッターが外れているロックシードが落ちているのか?幸い、なぜロックシードが幻想郷に流れ着いたのかについては多少見当が付いている。

それよりも黒いロックシードとは何なのか?色が黒いだけで見た目はチルノの持っているロックシードと同じだった。でも、性能は異常そのものだ。関係者である戦国すら知らないロックシードが何故ここにある?戦国に不意打ちしたあいつは関係しているのか・・・。

 

「・・・考えるだけ無駄ね」

 

分からない事があるなら異変を引き起こした張本人に聞くのが早い。今までもそうしてきた。これからもそうだ。当然今回も。

 

「ご馳走様でした」

「たのもー!」

 

話したくないのか、話せないのか。そのどちらかは分からないが、何にせよ今回の異変を解決する鍵を握っているのは戦国だろう。上級インベスと戦うにはアーマードライダーの力が必要だし、インベスなどに関する知識を持っている人物の協力は確実に必要になる。人物像はどこか不安な奴だが、悪い奴ではない。

それに、今回の異変は自分達にも縁がある。少なくとも、あの『資料』を読む限り全くの無関係とは言いがたい。

 

「それにしても」

「たのもー!!」

 

ドンドンドンと扉を叩く音が鳴り響く。別に鍵はかけていないのだが、そんな事どうでもいいと言わんばかりに扉を叩き続けている。段々と声と叩く音がでかくなっていくから、そろそろ無視するにも限界だろう。仕方なしと玄関に向かう。

 

「た!の!」

「うるさい!帰れ!」

「もぉ!?」

「うっ!?」

 

思い切り扉を開き、怒鳴りつける。だが、そのせいでロケットのように飛び出してきた相手と正面からぶつかってしまう。

鳩尾を抑えながら立ち上がり、相手を睨みつける。案の定そこにいたのはチルノだった。最近神社に出入りする回数が増えている気がする。

 

「ず、随分遅かったわね霊夢!怖気ついてたの!」

「あーそうそう。怖気ついてた餅ついてた」

「もー!真面目にやってよ!」

「朝から元気ね・・・。で、何の用?喧嘩売りに来たわけ?だったら喜んで買うけど」

「ふ、ふん。その通りよ。今日こそ勝つ!」

 

朝っぱらから騒がしいチルノを適当にあしらおうとするが、向こうもやる気のようで強気な姿勢を崩さない。後、意外な事に負けている自覚はあったようだ。

 

「あたいもバカじゃないからね。更なるパワーアップをしてきたのよ」

「パワーアップ?」

「この錠前が目に入らぬか!」

 

チルノのパワーアップという言葉に首を傾げる霊夢。そんな霊夢を気にする事も無く、チルノはポケットからロックシードを取り出し見せ付ける。それは前面にメロンがデザインされていて、『L.S.-04』と刻印されている。その見た目から察するに『メロンロックシード』だろう。察するにこの間のリベンジと言ったところか。

 

「そんなのどこで手に入れたのよ」

「朝起きたら目の前にあった」

「悪い事は言わないから、今すぐそれ捨てなさい!」

「いけー!家来二号!」

「聞け!」

 

チルノの脳天に霊夢の拳骨が落ちる。その拍子で落ちたロックシードを霊夢は素早く回収する。明らかに怪しすぎる入手経路に、触る事を一瞬躊躇いかけたのは仕方ない。

 

「あたいのメロン返してよぉ!」

「危ないから駄目よ」

「返せよぉ!」

「だめ!」

「大体ぶつことないじゃん!」

「あんた、昨日も同じ事言ってたの忘れた?」

「覚えてるけど?」

「じゃあ、時正が言ってた事は?」

 

霊夢の問いに首を傾げながらチルノは考える。答えはインベスを召喚するのは控えろだ。

一分二分と首を傾げ続け、恐る恐るといったように答える。

 

「一撃・イン・ザ・シャドウは趣味、だっけ?」

「・・・」

「無言で殴らないで!」

 

今日二回目の拳骨が落ちる音が響いた。

 

 

快晴の青空を飛ぶ霊夢とチルノ。特にどこにも行く当ての無いチルノはふらふらと飛びながら霊夢に質問をする。

 

「ねぇ、どこ行くの?」

「人里。あの馬鹿に聞きたい事があるのよ」

「馬鹿って、すいかたろう?」

「そうよ。・・・自分で言っといてあれだけど、馬鹿で通じるって・・・」

「何を聞くの?」

「まあ、色々ね。あいつ肝心な事隠してるのよ。この資料の事とか」

 

懐から数枚の紙が纏められた資料を取り出す。これは戦国が神社に落ちてきた時に持っていた物の一つだ。昨日戦国を魔理沙達に任せて帰った理由の一つがこれの内容を確認するためだ。ゴミと一緒に燃やす一歩手前だったが。

チルノに読める物か不安だったが、噂では普通に新聞も読んでいるらしいし大丈夫だろう。

 

「・・・・・・・・・これ」

「分かったようね」

「こんな森、ここら辺にあったけ」

 

真面目な顔でそう言うチルノに思わず空中でずっこける。

 

「何でそうなるのよ!」

「え?だって『スキマ』写ってるし」

「・・・その森がヘルヘイムの森ってやつよ。書いてあるでしょ」

「んー?あ、ほんとだ。あれ?何でヘルヘイムにスキマがあるの?」

「それが分からないから困ってるんでしょ」

 

スキマとは、『八雲 紫』という『スキマ妖怪』が作り出す空間の裂け目の事だ。紫はそのスキマを通って空間を移動し、場合によっては人や物を幻想郷へと持ってくる。外の世界で言う神隠しの正体は、彼女のことだ。

何故異世界であるヘルヘイムの森にスキマがあるのか?異世界にまでスキマが作れるのかもしれないが、どうして紫はヘルヘイムにスキマを出現させたのか。これが分かれば異変が解決する一手になるかもしれない。そして、そんなスキマを作り出すスキマ妖怪は紫ただ一人だけの種族。要するに、紫を見つければ済むという話だ。残念ながら、楽な道ではないが。

 

「もしかしたら今回の騒動は紫が原因かもしれなくて、すいかたろうがこっちに来たのと関係があるって事?」

「まあ、十中八九あるでしょ」

「紫がインベスを連れてきたのかな?」

「それは無い・・・とも言い切れないわね。あんな百害あって一利なしな奴等を呼ぶ理由は思い付かないけど」

 

紫は何を考えているのか分からない。一見、何の意味も無い事を平気な顔でし始める。今回もその一端である可能性はある。

 

「てか、さっきから何で付いて来てるのよ」

「暇だから」

「友達のとこにでも行けばいいじゃない」

「何か皆だるいとか疲れてるとかって言って引き篭もってんだもん。妖精の癖に」

「妖精も仮病使うのね」

「?」

「何でもないわ」

 

妖精が風邪を引くとは思えないし、大方遊ぶのをめんどくさがってるだけだろと遠回しに皮肉ったのだが、通じなかったようだ。

 

「変な霊夢ね」

「・・・そうね」

 

不思議そうに首を傾げるチルノに、霊夢は苦笑しながら同意してあげた。

それにつられてチルノも笑う。それは無邪気な子供の笑顔だった。

 

 

綺麗な青空に雲が浮かんでいる。形を変えながら自由に空に浮かぶ雲。その近くには鳥が飛んでいる。妖怪は・・・飛んでいないようだ。そういえば、人里ではあまり飛んでいる人はいないけど何故だろ?目立つからか?飛んでいるといえば、今朝戦ったインベス・・・

 

「・・・忘れろ忘れろ」

 

頬をぱんぱんと叩き嫌なビジョンを振り払う。

魔理沙は暇を持て余していた。体のあちこちが痛いけど、動けないほどじゃない。だが、医者に安静にするように念を押されている以上、勝手に動くわけにもいかないのだ。本でもあれば別だけど、残念ながらこの部屋の中には一冊も見当たらなかった。

 

「お邪魔しまーす」

 

しばらくすると、ドアの向こうから聞き慣れた声が聞こえた。入る事を許可する前に開けて来たのは、予想通り戦国だった。

 

「魔理沙、体は大丈夫?」

「時正か。私は大丈夫だぜ?」

「本当に?」

「・・・本当に」

「本当に本当?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

妙にしつこく尋ねてくる戦国の顔は至っていつもの優しい顔だ。ただ、そのせいで内心が読めない。もしかしたら怒っているのかと考えてしまい少し不安になる。

 

「・・・時正は」

「うん?」

「時正は、何でライダーになったんだ?」

「え?何でって」

「私は・・・」

 

戦国が何故そんなことを聞くのかと言う前に、魔理沙は続ける。それは殆ど独白のような物だった。

 

「私はベルトを使って変身してみて分かった。その力は軽い気持ちで使っていいものじゃない」

 

魔理沙の脳裏には変身した時の記憶がはっきりと残っていて、今まで感じた事のない恐怖がまだ消えていない。皆といる時も表に出さないよう努めていた。もう忘れて記憶の奥底に閉じ込めておこうと考えてた。でも、一度溢れ出した気持ちは止まらない。

 

「怖いんだ・・・。自分でも信じられないくらい、その力が怖い・・・。なあ、何で時正はライダーでいられるんだよ?」

「・・・」

 

いつもの彼女を知っている人物全員に『らしくない』と言われそうな程に弱弱しい姿。それは力への恐怖。それに魔理沙は囚われていた。

 

魔理沙の問いに戦国は少し考える。戦極ドライバーを所有しているとはいえ、自分はそこまで変身した事はない。それどころか実戦を経験したのはつい最近だ。そんな自分が偉そうな事は絶対に言えない。

だけど、自分の中で絶対だと言える理由はある。

 

「僕がアーマードライダーになった理由は、大切な人を守りたいから。僕に居場所をくれた人達のため」

「大切な人・・・」

「うん。ユグドラシルの人達、沢芽市の人達、会った事ないけど、別の街の人達に」

「待て待て!お前それ言ったらきりないだろ!」

「そうかもしれない。でも、そうやって考えるのって間違ってるかな?」

「え?」

 

だってさ、と戦国は笑顔のまま続ける。

 

「どうせだったら沢山守りたいでしょ?だから、僕は戦うんだ。大切な人達が傷つかないように。それが僕のアーマードライダーになった理由なんだ」

そう言いきる戦国の顔はあどけない少年の顔だ。世界の汚れも、悪意も何一つ知らないような綺麗な笑顔だった。

 

「それにね、魔理沙も大切な人だよ」

「私がだと?会ったばっかりなのにか?」

「もちろん。だってご飯大盛りにしてくれたじゃん」

「・・・・・・・・・は?」

「もう、こんな恥ずかしい事言わせないでよ~」

 

その綺麗な笑顔のままで答える戦国だが、反対に予想外すぎる答えに魔理沙はぽかんと口を開けたまま固まってしまう。てっきり、もっとロマンチックな言葉を言われるのかと思ったが、残念ながら大外れだ。どういうわけか顔を赤らめている戦国にとってさっきの言葉は、所謂告白に似た物だったらしい。

あー、と若干間の抜けた声を出して魔理沙は納得する。

 

「やっぱり、お前馬鹿なんだな」

「えぇー、真顔かよ」

 

真剣な顔で頷かれて流石に肩を落とす戦国。だけどさ、と魔理沙は言う。

 

「馬鹿だけど、やっぱり嫌いじゃないぜ」

 

笑顔でそう続けた。

 

「褒められてるのかな?」

「褒めてる褒めてる」

「嘘くさ」

「くく、ほんとだぜ」

 

疑うような目で見てくる戦国に対し、魔理沙は笑いながら答える。それにつられて戦国も自然と笑顔になっていく。先程の暗い雰囲気は無くなり、いつものような明るい表情になる。

 

 

「ところでさ、ちょっと聞きたい事があるんだけど。このベルトで変身した時、何か変なイメージが頭の中に入ってきたけど、あれって何なんだ?」

 

一頻り笑った後、魔理沙は一つの疑問を口にした。

 

「あー、それ聞いちゃう?」

「どうなっても知らないなら答えなくていいぜ?」

「いや、答えるからその光ってるの仕舞って」

 

ミニ八卦路を仕舞ったのを確認し、こほんと咳払いをし説明を始める。

 

「まず、この戦極ドライバーには二種類ある。最初に装着した者のみが使える試作型。誰でも自由に使える完成品の量産型だ」

「ふんふん」

「いずれ『全人類』の分だけ完成品の戦極ドライバーを作り、ヘルヘイムの森に対処する術を得る。これがユグドラシルが計画する『プロジェクト・アーク』だ」

「具体的な話は初めて聞いたな」

「出来るだけ内密に頼めるかな?まだ公にはなっていないからね。ドライバーの生産が終わるまでに公表したらパニックになりかねない。パニックになれば暴動が起きる。暴動は広がっていずれ世界規模で」

「分かった!分かったから続けてくれ!」

 

話が面倒な方向に脱線しそうになり慌てて修正する。

ごめんと一言侘びを言って戦国は続ける。

 

「だが、一般人でインベスと戦う技量を持っている者は多くない。特に子供や女性、老人といった層に戦いのノウハウを何十億人単位で伝えるには膨大な時間がいる。そこでプロフェッサー凌馬が提案したのが戦闘データを最初から戦極ドライバーにインプットしておくといった方法だ。というわけで、手始めに試作型の戦闘データをベースにした量産型ドライバーの製作を開始した、ってわけ。で、魔理沙は変身した時にデータが急に入ってきてびっくりしたって感じかな」

「ふーん、成る程な」

 

魔理沙は説明を聞いて納得した。自分が変身した時に見たイメージは要するに試作型の戦闘データだったという訳だ。しかし、全部のデータを確認した訳ではないがあれだけの数のインベスを倒した人物とはどんな人なのだろうか?きっと相当の凄腕なんだろう。

 

「・・・」

「えーと、本当ならそうならない様に調整しなくちゃいけないんだけど、別のドライバー製作で忙しくてさ」

「ん?」

 

黙り込んでしまった魔理沙に、怒ったのかと勘違いしたのか言い訳するように戦国は言う。その内容に引っ掛る物を魔理沙は感じた。

 

「まさかとは思うが、ベルトってお前が作ってるのか?」

「うん、そうだけど。あ、全部じゃなくて一部の量産型だけどね」

「マジか!?」

 

本当にあっさりと肯定される。確かに設計者は別だとは言っていたがそこまで関与しているとは思っていなかった。

 

「普通、設計図と材料があれば作れるでしょ?」

「いや、そんなお手軽料理みたいに言うなよ!」

「似たような物だけどなぁ」

「うーん・・・」

 

何でもないという態度に関心の様な呆れの様な複雑な気持ちになる。気を取り直して話をまた本筋に戻す。

 

「じゃあ、これがその完成したドライバーって事だな」

「まあ、そうなんだけど。これはそれだけじゃないんだ。本来なら一つの戦極ドライバーに入っているライダースーツは一つ何だけど、この特別製には全部入ってる」

「全部だと!?何でそんなに入れたんだ?」

 

魔理沙にはアーマードライダーが全部で何体いるのかは分からなかったが、戦国の表情を見る限り二体や三体ではないのだろう。そこまでの数を一つのベルトに詰め込むメリットは想像もつかない。

戦国は魔理沙の質問に顔を背けながら答える。

 

「・・・何個も作ってデータ入れるのって、案外手間かかるんだ」

「それって、手抜き」

「いいんだよ!・・・結局怒られて作り直したからさ。データまだ入れてないけど」

 

魔理沙の指摘を遮り言い訳をする。だが、何週間も部屋に閉じ込められていれば誰でも嫌にもなる。息抜きのつもりで参加した空間の亀裂の調査でまさかこんな目にあうとは思わなかったが。

 

「このドライバーの製作が終わったら今度は他の量産型ドライバーにもデータを組み込めって言うんだよ!?僕一人で作るのには限界があるってのに無茶ばっか押し付けるしさ」

「何か、大変なんだな」

「いや、それが仕事なんだけどさ」

 

はぁ、とため息をつく戦国は疲れている様にも見える。魔理沙にはその仕事の規模がどれほどの物かは見当もつかないが、まだ子供である戦国に務まるものなのか疑問だった。だが、実際に目の前に完成品がある以上問題は無いのだろうが。

それよりも魔理沙は目の前の人物にそこまでの能力がある事が衝撃だった。霊夢にこの事を教えたらどんな反応をするのだろうかと今から少し楽しみでもある。

 

 

「おい、戦国。いるか?」

 

ドアの向こうから医者の声が聞こえた。入っていいと言う前に開けてくるが、この部屋を使ってるのは一応女性なのだからもっと配慮してくれないだろうか。戦国といい医者といいデリカシーというものを大切にすべきだ。

 

「戦国、そろそろ怪我の具合を確認したいんだがいいか?」

「あ、はい。ごめん、魔理沙。また後でね」

「ああ」

「早くしろよ」

 

せっかちなのか医者は伝えるだけ伝えたらさっさと出て行ってしまう。戦国もそれに続いて部屋を出ようとするがドアの前で立ち止まりこちらに振り返り、何か言いたそうにしている。

 

「まだ何か用かよ?」

「えっと、魔理沙はさ、強いと思うよ」

「へ?」

「えっと、何て言えばいいのかな」

 

いきなりそんな言葉をかけられて一瞬戸惑ってしまう。戦国自身も少し恥ずかしそうにしながら、それでも、魔理沙の目を見てちゃんと言葉を伝える。

 

「魔理沙とは長い間一緒にいたわけじゃないし知らない事は沢山ある。でも、ベルトとかに頼らなくても魔理沙は強いよ。僕はそう思う。じゃなかったら、インベスに立ち向かうなんて出来ないよ」

「・・・もしかして、励ましてくれてるのか?」

「いや、違うけど」

「真顔で言うなよ!」

「へへへ、じゃ」

「笑顔で誤魔化すな!逃げるな!」

 

言うだけ言って走り去っていく戦国。即効で否定されたけど、励ましてくれたのだろう。・・・多分。

 

『魔理沙は強いよ』

 

「私が強い、か・・・」

 

頭の中で戦国の言葉が繰り返される。

戦国は恐らく本気で言っている。インベスに立ち向かった自分の事を強いと。ただ、それは・・・

 

「違うんだ・・・。本当は、私は・・・」

 

自分がベルトを使って戦おうとした本当の理由を言えば、戦国はきっと失望する。戦国だけじゃない、霊夢や萃香だって呆れるだろう。

 

「私は・・・」

 

私は、ずるをしようとしたんだ。

 

曇っていく心に反して、空はどこまでも綺麗な青空だった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちょっと時系列がややこしくなってるので補足します。

魔理沙がインベスの情報をゲット。そのまま現場へ。変身するが返り討ち。

戦国と交代し、萃香と一緒にインベス撃破。

ノアがナックルに変身してインベス撃破。

ここら辺で霊夢遅めの朝食中。

戦国達は人里に戻る。

若干窮屈ですが、だいたいこんな流れです。辻褄が合わないと思った時は、そんなもんだと流してもらえればありがたいです。


鎧武も終わってしまいましたね・・・。出来れば皆さんと沢山語り合いたかったです。まだムービー大戦は残ってるけど。
ですが、仮面ライダーはまだまだ続いています。仮面ライダードライブの応援をよろしく!

後、次回もよろしくお願いします。
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