東方戦国記   作:楠名等

13 / 13

明けましてからもう20日経ってるけど、明けましておめでとうございます。楠です。

いつも使ってる機械の調子が悪くてパソコンに乗り換えたら、勝手が違いすぎて文章打つのが大変でした。だから投稿が遅くなりました(言い訳)。



笑顔 怒り 敗北

「ねぇ、角の人」

 

戦国と萃香が男を追って行った霊夢達の元へ向かっている時の事だ。ダンデライナーを操作しながら戦国が萃香に話しかけた。いまだに名前で呼ばない事にむっとしたが、そもそも名乗ってないのを萃香は思い出した。

 

「角の人じゃないよ。伊吹 萃香」

「スイカ?」

「そう、萃香」

 

すいか・・・スイカ・・・?と、戦国は不思議そうに何回か呟く。そして、それが目の前の少女の名前だと理解し、少し考えた後話し出す。

 

「戦国 時正」

「せん?」

「戦国 時正。僕の名前」

「戦国 時正ねぇ」

「・・・変?」

 

幻想郷に来て初めて戦国は自分の名前を名乗れた。この名前は自分の世界では珍しい名前だ。変な名前だと思われないか不安だった。

 

「いや、カッコいいと思うよ」

「本当!」

「本当本当。萃香、嘘吐かない」

「へへ」

 

さっきまでどちらかといえば作り笑顔の様な表情だったが、名前を褒められた瞬間年相応の少年らしい顔に変わる。それだけ自分の名前に愛着があるのだろう。

今時珍しいと萃香は思い、戦国に一つ尋ねてみる。

 

「時正ってどういう意味なんだい?」

「えっとね、『君の生きる時間が正しいと言えるように』と『偽りの無い真っ直ぐな人になってほしい』って意味らしいよ。・・・名前負けしてるけど」

 

自分に名前を付けてくれた人の事を考えると少し気分が沈んでしまう。あの人は責任感が強い。無理をしないとも限らない。それに、自分がついて行きたいと言わなければこんな事にはならなかった。あの人がリーダーだったから一緒に行きたいと思ったけど、その考え事態が浅はかだった。

 

自己嫌悪に陥る戦国をよそに萃香は意地悪そうに笑った。

 

「してるね。嘘つきまくりだし」

「あ、やっぱりばれてたんだ」

「ばればれだったよ。閻魔様だったらその場で舌引っこ抜いてたね」

 

さらりと恐ろしい事を言う萃香に戦国は苦笑いしか出来ない。

 

「人の為だとしても、嘘はだめ。本当に正しい生き方をしたいなら自分に正直になりな」

「正直に?」

「そう!つむじ風のごとく現れ気に入らない新入りをぼこる!とか」

「・・・それ今の状況だと僕がぼこられるんじゃ?というか、無闇に暴力を振るうのは良くないよ」

 

それもそうだ、と萃香は笑う。裏表の無い笑顔に戦国はちょっと口の端が上がった。

 

そうだ、と言い萃香は思い出す。最初に名乗ったのは萃香だが、先に話しかけてきたのは戦国の方だ。

 

「それで、どうしたんだい?もうすぐ人里に着くよ」

「えっと、萃香はどうして僕に優しくしてくれるの?」

「優しくしてるつもりはないんだけどねぇ」

 

疑われるのは分かる。いきなり空から巨大なスイカに乗って落ちてきた人がいたら、普通なら近づきたくはないだろう。・・・改めて考えると相当奇妙な話だ。

それに、自分は嘘を吐いてた。相手を騙そうとしていた。信じてくれなんて言える筈もない。

だけど、目の前の鬼はそんな自分にチャンスをくれた。それがどうしてか分からなかった。

 

戦国の問いに萃香は数秒ほど考えて答える。

 

「友達の友達は、私にとっても友達だからかな」

「?良く分かんないや」

 

萃香の答えに戦国は首を捻る。友達の友達と言われても、萃香の友人を自分が知っている筈がない。でも、萃香が適当にはぐらかした様にも感じられない。訳が分からない。

 

「そのうち分かるよ、『スイタ』」

「スイタ?」

 

あーでもないこーでもないと考える戦国を萃香は妙な名前で呼ぶ。不思議そうにする戦国を見て、満面の笑みで答える。

 

「渾名だよ。スイカ太郎、略してスイタだ!この私が直々に名付けてやったんだ。ありがたく思いたまえ」

「・・・・・・」

「・・・やっぱ嫌だったりする?」

 

安易な理由で付けたのを嫌がったのかと考える。そもそも、スイカ太郎もそのまんまの意味だったけど。

だけど、萃香の予想に反し戦国は笑顔になる。

 

「ううん、凄く気に入った」

 

戦国はどんな理由でも自分を信じてくれている事が嬉しかった。

 

「よろしく、スイタ」

「よろしく、スイカ」

 

お互いに名前を呼び合い笑い合う。そこには嘘偽りは無い。

 

二人が到着した時、そこには拳を振り上げる巨大なインベスがいた。そして、そのインベスに二人は立ち向かっていった。

 

 

 

 

『・・・・・・』

 

鎧武者は身じろぎ一つしない。まるで戦国を値踏みするかのように見る事以外は一切行動を起こさない。

 

戦国は鎧武者の姿に動揺を隠せなかった。全身を覆う紺色のライドウェアにブレード状の前立て。植物のような模様の入った赤い鎧。真紅のパルプアイに黒いクラッシャー。そして、イニシャライズされている戦国ドライバー。その姿を戦国はこう呼んでいた。

 

「アーマードライダー・・・」

 

様々な疑問が溢れ出てくる。何故ここにアーマードライダーがいる?いや、そもそも目の前のアーマードライダーは誰なんだ?何であのアーマードライダーと似ている?

 

分からない分からない分からない分からない。

 

だが、戦国はそう考えてる事自体が現実逃避だと気付いていた。先程から必死に目を反らしている現実が嫌でも目に入るのを避けられない。

 

「・・・萃香?」

 

地面に萃香が倒れている。体から血を流している。腹が裂けている事以外は傷一つ無い綺麗な体なのが余計に現実を教えていた。

 

「・・・ねえ、萃香ってば」

 

声をかけても萃香は返事をしない。あんなに体から血を流しているのに一切声を出さないしピクリとも動かない。不自然なほどに萃香から生を感じれなかった。

 

『・・・ふん』

 

鎧武者が倒れている萃香に手を翳す。すると、地面に亀裂がはしり、萃香がその中へと吸い込まれていく。

 

「萃香!?待って!」

 

消えていく萃香に必死に駆け寄る。足が震えて上手く走れない。それでも、萃香の名前を呼びながら走った。

 

だが、間に合わなかった。戦国が辿り着いた時には萃香は既に消えていた。戦国が手を伸ばした先には萃香がいた痕跡は何も無かった。

 

「何で・・・」

 

そこから先が言葉にならない。体から力が抜け、地面に座り込む。状況を理解しようにも頭がそれを拒否している。

 

『何故、か』

 

何も行動出来なくなった戦国を見下ろしている鎧武者は、不意に喋りだす。

 

『簡単な事だ。いらないから消した。それだけだ』

「いらない?」

『他に理由などいらん』

 

何て事もない様に鎧武者は言い切る。実際に目の前の存在にとっては何でもない事なんだと戦国は気付いた。本当に何でもない・・・。

 

「・・・・・・ははは」

 

乾いた笑いがでる。いらないから消した。目の前の存在は確かにそう言った。そんな理由で萃香はいなくなった。

 

「・・・・・・っ!!!」

 

ふつふつと自分の中から何かが込み上げてくるのを感じた戦国は、戦極ドライバーを装着しロックシードを構える。

 

「ふざけるなっ!!」

『マツボックリ!』

 

怒号とともにロックシードを解錠する。クラックから飛び出たマツボックリアームズが赤い鎧武者に向かって飛んでいく。赤い鎧武者はそれを小刀で受け止め押し返す。

 

『ロックオン ソイヤッ!マツボックリアームズ!』

「うああああぁぁぁぁーーーー!!」

『一撃・イン・ザ・シャドウ!』

「おらぁ!!」

 

マツボックリロックシードをベルトにセットし、すぐにカッティングブレードを倒す。跳ね返ってきたマツボックリアームズをそのまま被り、黒影に変身する。影松ではなく無双セイバーを変身と同時に出現させ、赤い鎧武者に斬りかかる。

怒りのままに刀を振るい、二度、三度と斬り合い鍔迫り合いに持ち込む。刃と刃がぶつかり合い火花が散る。全力の力で押しているが鎧武者はびくともしない。それどころか、余裕があるかのように鎧武者は喋りだす。

 

『良い事を教えてやろう。貴様をこの世界に来る様に仕向けたのはこの私だ』

「なっ!?」

 

その言葉に戦国は耳を疑う。この世界に来るように仕向けた、確かにそう聞こえた。だが、そんな筈はない。そんな事が出来る訳がない。

そう反論しようとした戦国に鎧武者は追い討ちをかける様に続ける。

 

『あの時貴様の前に、いや、上空か。空間の亀裂が現れたのは偶然ではないと言っているのだ』

「あの時の・・・!」

 

わざとらしく言い直した言葉が余計に真実味を感じさせた。あの時空間の亀裂が現れたのが偶然でないのなら、

 

「何が目的だ!」

『この世界、いや、全ての世界を我が手中に収める。そう、天下を手に入れる事だ!!』

「天下?」

『その為に奴を使おうと考えていたが、そこに貴様が現れた!私はついている!』

「くっ!奴?」

 

赤い鎧武者の一撃を捌きながら戦国は言葉の意味を考える。その奴が誰かは分からないが、この鎧武者は戦国そのものに何故か目を付けている様だ。

無双セイバーから銃撃を放ち距離を取る。呼吸を整えながら出来るだけ情報を聞き出す事に専念する。

 

「黒いロックシードをあの人に渡したのもお前か!」

『その通りだが、それがどうした?』

「あんなロックシードは僕は知らない。一体どうやって作った!」

 

戦国はほぼ全てのロックシードについて知っている。だが、あの黒いロックシードについてだけは知識が無かった。ロックシードはほぼ全てが戦極凌馬によって製作された物だ。でも、その中にあんな黒いロックシードは無い。それはつまり本来の製作方法とは違う方法で作られた事になる。

 

赤い鎧武者が仮面の下で笑った。

 

『果実は採らなければいずれ腐り落ちる。土に帰るその果実に行き場を失った魂共は群がる。熟した果実が死者の魂で満たされた時、その実は凄まじい力を宿す!』

「腐った果実に、人の魂・・・?」

『ぼうとしている暇はあるのか!!』

「ぐあっ!くそ!」

 

思考している隙をつかれ何度も斬られる。素早く重い攻撃を捌ききれず鎧から火花を散らす。

 

『どうだ?私が憎いだろう?』

「憎い?何で僕がそんな」

『貴様は受け入られない事実に遭遇すると別の思考で目を反らす』

「なにっ!」

 

赤い鎧武者の言葉に冷静さが次第に無くなっていく。言葉の一つ一つが戦国の理性を削っていく。それに気付かず戦国は相手の思惑に乗っていてしまう。

 

『よく自分の心を見てみる事だ』

「何を知った気に!」

『あの鬼の様にはなりたくはないだろう?』

「!」

 

その言葉にさっきの光景が蘇る。萃香が消えていく光景を。自分がただ名前を呼ぶだけしか出来なかった姿を。

 

そして、戦国は自分の中で湧き上がっていた感情の正体に気付いた。

 

「・・・・・・そうか。分かったよ」

 

無双セイバーを軽く振り、赤い鎧武者に向ける。

 

「お前を見てると、体の中が焼けるように熱くなる。お前をぶった斬りたいって!これが憎いって事だろ!!」

『むっ!!』

「はぁっ!!!」

『ぐぉっ!』

 

無双セイバーが赤い鎧武者を切り裂く。火花を散らし、初めて鎧武者が苦悶の声を出す。

 

『・・・そうだ。それこそが貴様を強くする!』

「うおおおおお!!」

『怒れ!憎め!それこそが力だ!!』

 

赤い鎧武者と激しく斬り合う。火花が飛び散り、ライドウェアの中に血が滲むがそれでも構わず攻撃を続ける。

萃香を傷つけたこいつを許せなかった。だから自分が傷ついても、こいつを傷つけたかった。その怒りが憎しみがどんどん重なっていく。

 

『ソイヤッ!マツボックリオーレ!』

 

カッティングブレードを二回倒し、無双セイバーと出現させた影松にエネルギーを溜める。

 

「そおりゃあっ!!」

 

赤い鎧武者に向かって連続で斬撃を飛ばす。

 

『貴様とはまだ決着をつけるつもりは無いが、力の差を試す必要がある』

 

カッティングブレードを一回倒し、エネルギーを小刀に溜める。

 

『ブラッドオレンジスカッシュ』

 

斬撃を切り伏せ鎧武者は進む。戦国も影松にエネルギーを込め、鎧武者へと駆け出す。

 

『はぁ!!』

「そおりゃあ!!」

 

同時にお互いの武器を突きつける。武器同士がぶつかり合い強力な衝撃が生まれる。

 

『フンッ!!』

「なっ!?」

 

鎧武者が一歩踏み出した瞬間、拮抗していた力が崩れる。影松の一撃が弾じかれ、戦国は強力な一撃をまともに受けてしまう。

 

「うああぁぁ!!」

 

たったの一撃で吹き飛ばされ変身が解除される。全身を打ちながら戦国は地に倒れる。

 

「う・・・あぁ・・・」

『やはりまだこの程度か』

 

痛みで動けない戦国に対し、鎧武者は息一つ切れていない。

力を振り絞り戦国は立ち上がってもう一度変身しようとした。その時だった。

 

『!』

「うわ!?」

 

上空から様々な色の光弾が降り注ぎ辺りを破壊する。鎧武者はその場から離れ、戦国は吹き飛ばされた。転がりながら空から降りてくる人物を見る。その人物は戦国の良く知る紅白の少女だった。

 

「変な妖気を感じたかと思えば、とんでもない奴がいたわね」

「霊夢!何でここに!?」

「あん?それはこっちの台詞よ」

「何で不機嫌なの!?」

 

険しい顔をしながら霊夢はこれまでの経緯を端的に話す。戦国を探し回っている時に偶然奇妙な妖気を感じ飛んで来たらしい。さっきの技に巻き込んだのはその腹いせなのだろうか。

 

「で、こいつは何?」

「こいつがインベス騒動とか黒いロックシードとかの元凶で、こいつが僕をこの世界に連れてきたんだ・・・。それに・・・萃香が、こいつに・・・」

「・・・時正、やっぱり話は後で聞くわ。今はそれだけ分かればいいから」

 

戦国の話を聞き霊夢は鎧武者に向き直る。今の話で分かったのはこいつが全ての元凶だという事。そして、萃香に何かがあったという事。戦国の表情を見る限り、いい話は聞けなさそうだ。

 

「あんた、随分と好き勝手やってきたみたいだけど、勿論覚悟は出来てるわよね?」

『・・・』

「今だったら地獄巡りで勘弁してあげるけど?お代はいらないわ」

 

不敵な笑みを浮かべながら霊夢は言う。だが、相手の力量が分からないほど霊夢は愚かではなかった。

少なくとも目の前の存在は幻想郷のルールを守る気は無いだろう。今から弾幕ごっこで決着をつけましょうと言えば、あの赤い刀で問答無用で斬られるのが落ちだろう。残念ながら自身の技があまり効果的ではないのは霊夢にも分かっている。この戦力差を埋める最終手段を霊夢は持っていた。非常に不本意だが、あの錠前の力を使うしかないと、そう思っていた。

 

だが、そう考える霊夢をよそに鎧武者は意外な行動にでる。

 

『貴様が来た以上、戦うのは得策ではないな』

 

そう一言言い、鎧武者は刀を収めた。それだけでなく、戦国達が見た事のない空間の亀裂を作り、その場から離れようとすらしていた。

あまりに予想外な事に意表を突かれた戦国と霊夢だったが、すぐに我に返る。

 

「待て!まだだ!!」

『いいのか?私の相手をしていて』

「何がだ!」

『今に分かる』

 

戦国達の方を一切見ずに鎧武者は告げる。その意味が分からない戦国は問いただすが、すぐにその理由は明かされた。そんなに離れていない場所から幾度も聞いた音が鳴り響いた。

 

「この音・・・まさか、クラック!?」

 

幾つものクラックが開かれる音が聞こえる。それも一つではない。十も二十も超える数の音が響き、それと同時に人の悲鳴とインベスの鳴き声が辺りを埋めた。

 

「もしかしてあのロックシードを!」

 

戦国はあの黒いロックシードが使われた事に気付く。誰が何の為にかまでは検討もつかないが、人里で使われた以上放置していれば多大な被害が出るのは確かだ。

 

『どうする?このまま戦いを続けるか?』

「だけど、お前を逃がすわけには・・・。それに、萃香も・・・!」

『まだ分からぬか?見逃してやると言っているのだ。それに、あの鬼はもう戻らん』

「・・・・・・っ」

 

鎧武者からは既に戦意を感じなかった。それはつまり、自分を取るに足らない存在だと言っているわけだ。戦国はそれが悔しくて腹立たしくて、何より惨めだった。

 

「時正!そいつはほっといて行くわよ!」

 

霊夢は戦国の肩を掴みこの場から離れようとする。その判断が正しいのを戦国も分かっている。それでも、戦国は鎧武者に言う。

 

「戦国 時正だ」

『・・・』

「お前の名前は何だ」

 

時間が無い事は分かっている。だが、これだけは聞いておきたかった。目の前の『敵』の名前、それを聞かずにはいられなかった。

 

『我が名は『武神鎧武』!いずれ天下を手に入れる者だ!』

 

鎧武者―――武神鎧武はそれだけ言うと空間に亀裂の中へと消えていった。

 

「武神、鎧武・・・」

「時正!早く!」

「分かってる!」

 

戦国と霊夢はクラックの出現地へと急ぐ。既にこの辺りは人の悲鳴で溢れかえっている。もう一刻の猶予も無かった。

 

そんな中、戦国の感情にはいつもと違うものが渦巻いていた。人がインベスに襲われている事への焦りも誰かが傷つくかもしれないという恐怖も無かった。

 

「次は絶対に、お前を斬る!」

 

そこにあるのは、自分の敵への憎悪だった。

 

 

自身でも気付かない内に戦国の心中には、どこか薄暗いものが広がっていた。

 

 

 

 

息を切らせながらノアは全力で走っていた。もう目の前には人里が見えている。しかし、安心は出来なかった。人里の真上に奇妙な裂け目とそこから降りてくる怪物が見えたのだ。

 

「あいつが言ってのはあれか!」

 

山の中で遭遇した少女の言葉を思い出す。人里が大変な事になる、と少女は言っていた。それは確実にあれの事だろう。

一体何体いるのか数える事すら億劫になる。あんな数で暴れられたらどれだけの被害がでるか分かった物ではない。

 

一つ疑問があった。何故あの少女は自分にわざわざ忠告などしたのだろうか?自分はどう贔屓目に見てもただの人間だ。あの怪物に勝てる見込みなど万に一つも無い筈だ。

このベルトを除けば、だが。

 

「あいつはこのベルトの事を知っている可能性が高いか」

 

辿り着いた答えはある意味当然の物だった。自分自身が特別でないのなら、残された物が特別だという話だ。そして、その特別性に気付いているという事はそれが何か知っている。

 

「・・・今はそんなのどうでもいいか」

 

この力が特別だろうが何だろうが、今は関係ない。今大切なのは―――

人里に降りてくる大量の怪物を見据え、ノアは強く叫ぶ。

 

「あいつら全部ぶっ飛ばす!」

 

少しずつだが、彼の冷めた心に火が点き始めていた。

 

 

 

 

人里のある路地裏、一人の少女が手元にある複数の錠前を弄っていた。

 

「う~ん、あの鎧の出し方がわかんないんだよなぁ」

 

開いては閉じて、閉じては開いてを繰り返し少女はぼやく。以前、白黒の魔法使いと変わった少年がこれで奇妙な姿に変わったのを見たのだ。だが、自分がこれを使ってもその現象は起こらない。出て来るのは若干透けている小さい怪物だけだ。

 

「こんなザコいくら出してもなぁ」

 

憂さ晴らしに弾幕を撃つ。逃げ惑う怪物に当てない様にわざと外しながらその光景を楽しむ。次第に逃げ場を失った怪物が焦りだし表へと逃げ出そうとするが、少女はその先を読み弾幕を撃つ。被弾し爆散する怪物。

 

『YOU LOSE』

 

錠前からそう鳴りゲームが終わった事を知らせる。

 

つまらない。少女は溜息をつき錠前を投げ捨てる。

 

「やっぱあいつが持ってるのが必要か?」

 

あの白黒も少年も変な板を腹に付けていた。あの板が鍵になるのだろうか。

仮にそうであれば是が非でも欲しい。あれだけの力があれば、巫女だろうが神だろうが妖怪だろうが鬼だろうが魔法使いだろうが仙人だろうが幽霊だろうが・・・そこまで考えて虚しくなった。手に入らない以上意味の無い妄想でしかない。捕らぬ狸のなんとやら。

溜息をつき空を見上げる。無駄に青い空が腹ただしい。

 

「ん?・・・・・・おぉ!?」

 

見間違いかと思わず二度見する。突然、空に幾つ物裂け目が現れ何体もの怪物が降りてくる。すぐ近くで人の悲鳴と逃げようと走る音が聞こえてくる。でも、そんな事はどうでも良かった。

あの空の裂け目、あれを見た事がある。ついさっきまで遊んでいたから間違いない。

 

少女は手元の錠前を見る。この錠前で怪物を呼び出した奴がいる。それもこれよりも遥かに凄い性能の物を使って。

 

少女の口の端がこれ以上に無いほど上機嫌だと言わんばかりに上がる。

 

「欲しい物は奪うに限るよな?」

 

誰に問うでもなく少女は呟く。そして、人々が逃げるのとは反対の方へと向かう。舞い上がる気持ちを抑えずに満面の笑みで走る。恐れを感じる人達とは反対の気分だ。

 

だって天邪鬼だもの。

 





最後まで読んでいただきありがとうございました。

本編をテンポ良く進めるってのが上手く出来ないです。一応、鎧武本編みたいに連続物を心がけてるんですよね。投稿前は二話完結物の予定でした。

しかし、時間が経つのが早いですね。年明けだと思えば、もう二月に入ります。鎧武はVシネがでますし東方も何やら新作が出るようで。どちらも楽しみです。

それでは次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。