東方戦国記   作:楠名等

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連続投稿です。最初に書き忘れていましたけど、一話目は仮面ライダー側で、今回が東方側です。


幻想の楽園

「ここをこうか?とっとと、違う。じゃあ、こうやって・・・お!出来たぜ!」

 

奇妙な森の中、魔女のような黒い帽子に、白黒のエプロンドレスを着た長い金髪の少女が何かに挑戦していた。一見すると、バイクのようなものに跨っているのだがそのバイクも普通ではなかった。車輪が付いてなく、地面から数センチ浮いているのだ。その妙なバイクの操作方法を少女は勘でやっている。何と無く動かし方が分かったのか、少女が操作すると車体が空中に浮かび上がる。

 

「よっし、成功だぜ。いやー、箒と違うから悩んだけど、やってみるもんだな」

 

次第に操作に慣れていき、空中を自在に飛び回る。空中旋回、急ブレーキ、ウィリー走行・・・もはや手足のように使いこなしている。

 

「よーし、『霊夢』の奴に自慢してこよっと」

 

そのままバイクで目的の人物まで会いに行くことを決めた少女。青空目掛けてアクセルを振り切る。帽子が飛ばされないように抑えながら全速力で駆ける少女の姿は、流れ星のようだった。

 

「ヒャッハー!速いぜー!!」

 

あるいは、暴走族のようだった。

 

 

ある神社の縁側で二人の少女がいた。一人は紅い巫女衣装のような服と、黒い長髪を紅いリボンで纏めた少女。もう一人は頭に二本の角を生やしていて、白いノースリーブに紫色のスカート、茶色の長髪に頭に赤いリボンを付けている。

頭に角を生やした少女は何かを探しているのか、神社の中を行ったり来たりしている。

 

「おい、霊夢〜。酒もう無いのか〜」

「『萃香』、あんたいつまで飲むのよ。もう全部あんたが飲んじゃったわよ」

「えぇー、お酒お酒〜」

「酔っ払いめ・・・」

 

でろでろに酔っ払っているのか、萃香と呼ばれた二本角の少女は幼子のように駄々をこねる。駄々をこねている見た目は幼子相応のものだが、求めているものと実際の年齢との差のせいで、霊夢と呼ばれた紅い服の少女には妙な違和感を感じてしまう。

 

「無い物は無いの。しつこいと追い出すから」

「ちぇー、霊夢はケチだな」

 

一応の諦めはついたのか大人しくなる。ケチで結構だが、人の家の酒を飲み干す輩には言われたくはない。こう静かな日くらいは誰にも邪魔されずにすみたいものだ。なのだが、

 

「おーい、霊夢!見てくれよー!」

 

友人の魔法使いが空から妙ちきりんな乗り物に乗ってやってきた。いつもは箒で飛んでくるのに、今回は見たこともない機械に乗っている。

 

「それ何よ、『魔理沙』。またどこからか盗んできたの?」

「失敬な、死ぬまで借りてるだけだぜ?そもそも、これは落ちてたのを拾ったんだ」

「ふーん、落ちてたのをね・・・」

「あー、信じてないな。そんな奴には乗せてやんね」

「別にいいわよ、そんなの」

 

お互いに言い合うが、特に喧嘩をしている訳でも仲が悪い訳でもない。むしろ、霊夢と魔理沙は仲がいい方だ。

 

「霊夢ー、ちょっとお酒買ってくるー」

「はいはい」

「お、萃香いたのか?酒買ってくるって、お前の瓢箪に酒入ってるんじゃなかったのか?」

「色んな酒を飲み尽くすのが真の酒豪というものさ」

「なるほど、さっぱりだ」

 

フラフラと里の方へと飛んでいく萃香。年がら年中酔っ払っている彼女が真っ直ぐに飛んでいるところを魔理沙はまだ見たことがなかったりする。

 

「あいつは相変わらずだなー」

「こっちとしてはいい迷惑なだけね」

「でもさ、迷惑にいいも悪いもないよな。迷惑は迷惑だし」

「それこそどうでもいいわ」

 

妙な乗り物から降りた魔理沙は霊夢の隣に腰を下ろす。どうやら、居座る気のようだ。いても構わないけど、静かにしてもらうのは・・・きっと無理だろう。

 

「抜き足差し足、えーと、千鳥足だっけ?」

 

それじゃ酔っ払いだ。心の中でツッコミをいれるが気付かないふりをする。隣にいる魔理沙も同じ考えなのか茂みの方を一瞬だけ確認した後知らん顔をしている。また面倒が形を持ってやってきた。

 

「いい?お前があいつらの気を引いてあたいがその隙に攻撃する。この作戦でいくからね」

「ウォー」

「聞こえてる聞こえてる」

「ほっときなさい」

 

丸聞こえの時点で作戦とは言えないのだが、作戦自体はそこそこまともな部類だろう。成功するかどうかはまた別の話だが。

 

「それじゃ、1、2の3!でいくからね」

「ウォー」

「誰と話してるんだ、あいつ?」

「さぁ?」

「いくよー。1、2の〜!」

 

茂みからガサガサと音がする。飛び出す用意をしているのだろうが、大声と大きすぎる音で居場所が割れてしまっている。今だったら、『弾幕』を一発で当てられる自信がある。

 

「3!うりゃー!」

「ウオォォー!」

「いや、どっちも出てきたら意味ないだろ」

「というか、何あれ?」

 

茂みから出てきたのは、青いワンピースを着た若干ウェーブがかかった水色のセミショートヘアーに、緑色のリボンを付けた六枚の氷の羽が生えている少女と、その足首よりちょっと大きいくらいのサイズの珍妙な妖怪だった。

少女の方には見覚えのある霊夢と魔理沙だったが、妖怪の方は初めて見た。短い手足に灰色の体、丸っこい胴体とこの世の生き物とはとても思えない。おまけに何かの映像のように透けている。『幻想郷』にあんな妖怪がいたのか。

 

「いけー!家来一号!霊夢に向かって突撃だー!」

「ウォ?・・・ウオォォー!」

「私は魔理沙何だが」

 

少女に命令された妖怪はどっちがどっちか分からず一瞬迷ったが、当てずっぽうで向かっていった。魔理沙の方に。

本人は全力で走ってるつもりなのだろうけど、如何せんサイズがサイズだ。トコトコと走ってる妖怪を待っていたら、日がくれる。魔理沙は立ち上がり、自分から妖怪の方へと歩いていく。そして、一発蹴りを入れた。それだけで吹き飛ぶ妖怪に一体何が出来たんだろう?

 

「ウオォ!?ウ、ウォォォ・・・」

「あ、こら!勝手に帰っちゃダメ!」

 

蹴られた妖怪はさっきの倍以上の速さで走りだし、突然空間に現れた亀裂に飛び込んでいった。何がなんだが分からないが、少女の作戦が失敗した事は確かだろう。

 

「で、『チルノ』。あんたは何しに来たの?」

「家来を手にいれたから下戸上に!」

「下克上な?」

「そうそれ。あたいの最強っぷりをもう一度知らしめようと思って」

「意味分かってないのかよ・・・」

「そんな事よりこれ見て!」

 

チルノがその手に持っている物を見せる。錠前のようなそれは、前面にヒマワリの種がデザインされていて、『L.S.ー00』と刻印されている。

 

「それは・・・」

「拾ったの!いいでしょ!」

「倉庫の鍵には使えそうもないわね」

「ふぅー、全く霊夢ったらおバカさんね。これはそういう使い方じゃないんだよ?」

「・・・・・・」

「落ち着け、霊夢。ここで暴れたら私も巻き添えだ」

 

湯のみが割れんばかりに軋んでいる。チルノは人ではなく妖精に分類されている。妖精は基本的に頭が弱く、チルノもその例に漏れない。そのチルノに馬鹿にされるのは屈辱的なのだろう。

 

「ここをこうやって、こうすると」

「うぉっ、さっきの妖怪がまた出てきた」

 

チルノが錠前を展開すると、まるでチャックで開くように空間が開き、中からさっきと同じ妖怪が現れる。どうやら、この錠前は一種の召喚機のようだ。

 

「いけー!今度こそ霊夢に突撃だー!」

「ウウゥゥ?・・・ウルオォォー!」

「だから、私は魔理沙だって」

 

また妖怪が宙を舞った。

 

 

「ぶつことないじゃん!」

「ここで騒ぐからよ」

「まぁ、自業自得だな」

 

涙目になりながら頭を抑えるチルノ。霊夢に拳骨を食らったようだ。しかし、今回の折檻はまだ優しい方だ。場合によっては有無を言わさず退治されていただろう。妖精は死んでもすぐに蘇るから懲りずに戻ってくるだろうが。

 

「よし、チルノ。こっち来い。面白い物見せてやる」

「え?なになに?」

「ほら、凄いだろ?」

「おおー!おぉぉー?何これ?」

「そりゃそうなるか」

 

魔理沙が乗り物の方へとチルノを誘導する。これ以上騒ぐと自分まで霊夢の怒りに巻き込まれかねない。それだけは避けたい。チルノも乗り物に興味を示したようだ。このままうまく神社から追い出そう。

 

「ここに乗って、ここを握るんだ」

「こう?わっ!浮いた!」

「そうそう、うまいぞー」

「おぉー!あたい凄い!?」

「おう、凄い凄い」

「えへへ!」

 

おだてられてはしゃぐチルノ。霊夢もその様子を見て、珍しく微笑んでいる。よし、このままチルノを乗せて神社から出よう。そう考えていた時だった。

 

「このボタンなんだろ?」

 

あんまり弄るなよ。そう声をかけるつもりが、遅かった。乗り物の前面から光線が発射された。光線が直撃した木はへし折れ、音を立てて倒れる。一人はしゃぐチルノ。笑顔のまま凍りついている霊夢。霊夢への恐怖で凍りついている魔理沙。いち早く行動出来たのは、魔理沙の方だった。

 

「霊夢・・・。ちょっと人里まで散歩に行ってくるぜ!」

「うわっ!急に動かさないでー」

「・・・・・・」

 

乗り物にチルノを乗せたまま全速力で神社から逃走する魔理沙。後に残されたのは、笑顔のまま凍りついた霊夢だけだった。

 

「・・・・・・」

 

(湯のみが割れる音)

 

 

「やばかったぜ。あのままだったら、どうなっていたことやら・・・」

「うわー、天狗よりもはやーい」

「おい、やめろ」

 

今の状況で天狗に目をつけられたくない。というか、そのセリフは何故か不謹慎な気がする。

当てもなくフラフラと飛んでいると、本当に人里へと来てしまった。特に用事も無いからチルノを下ろして帰ろうか、そう思ってるとチルノが何かに気付いたようだ。人里が騒がしい。祭りとは違う、良くない雰囲気だ。

 

「ねぇ、魔理沙。何か人里であったのかな?」

「ああ、多分悪い迷惑な事がな」

「迷惑にいいも悪いもあるんだ」

「さあな」

 

乗り物の高度を下げ、着陸する。辺りは昼頃なのに女性や子供がいなく、いるのは大人の男だけだ。それも鉈や刀、猟銃など、物騒な物を持っている。まるで危険な生き物でも入り込んだかのように警戒体制を敷いている。

 

「なぁ、何かあったのか?」

「ん?何で子供がまだいるんだ。怪物に食われる前に家に帰りな」

「はいはい、だいたい分かった」

 

適当にそこら辺の大人に事情を聞くが流されてしまった。しかし、分かった事もある。どうやら、人里に何かが入ってきたようだ。それで子供や女性を避難させて大人達で退治しようって訳だ。別に自分が加わってもいいが、『慧音』もいるはずだし何の問題も無いだろう。

 

「チルノ、取り込み中みたいだから帰るぜ。・・・チルノ?」

「魔理沙・・・。あれ」

「あれ?・・・・・・何だありゃ」

 

チルノが指さした方を見ると、そこには人の背丈と同じくらいの怪物が立っていた。それを見た人達は動揺するが、魔理沙とチルノは違う意味で動揺していた。その怪物は細部の差はあれど、チルノが錠前で呼び出したあの小さな妖怪と同じだった。何故あの妖怪がここにいて、どうして巨大化しているんだ?のそのそと歩いていた妖怪がこちらに気付いたのか、奇声をあげて突っ込んできた。

 

「グォォォー!!」

「あっぶね!おい、チルノ大丈夫か!?」

「大丈夫ー!もー、家来の癖に主君に逆らうなんて、輝針城のつもり!?」

「だから、下克上だって。もうじょうしか合ってないじゃねーか。それと多分あれ、お前の家来とは別もんだぜ」

「お前ら、いいから逃げろ!殺されるぞ!」

 

大人達が妖怪に向かっていくが、おそらく勝機は薄いだろう。少なくとも、並の妖怪ではない。だが、

 

「私は奪うことはあっても、自分のものは何一つ奪われないよ」

 

懐から『ミニ八卦路』を取り出す。自分の取って置きを見せるつもりだ。並じゃない妖怪も、超人も、神様もこれで全部倒してきた。

 

「チルノ、アシスト頼む」

「エンスト?」

「・・・サポートを頼む」

「了解!」

 

刀や鉈で切りつけるも皮膚が硬いのか、一撃も通らずに逆に蹴散らされている。ならば、一撃で終わるようにしよう。

 

「空に向かって打ち上げてくれ!」

「あいよ!」

「グオォ!?」

 

妖怪の足元から氷の柱が出現し、そのままの勢いで持ち上げていく。チルノは氷の妖精であり、氷を扱うことに長けている。このくらいは慣れたものだ。

十分空に浮かび上がったところでミニ八卦路を妖怪に向ける。光が収縮し、一箇所に集中していく。そして、チャージが終わったことを確認し、解き放つ。

 

「マスタースパーク!!」

 

極太の光線が真っ直ぐに突き進み妖怪を飲み込む。断末魔の叫びをあげる間もなく妖怪は爆散した。光が晴れた先にあったのは、氷の柱と綺麗な青空だけだった。

呆然としている大人達を見やり、魔理沙はニカっと笑う。

 

「さて、チルノ、今度こそ帰るぜ・・・って言いたかったんだけどな」

「あれ?あたいの家来、こんなにいたっけ?」

「だから、お前の家来じゃねーって」

 

あらゆる所からさっきと同じ妖怪が現れてくる。キリがない。もう一度マスタースパークを放つためにミニ八卦路を構える。

が、マスタースパークを撃つよりも早く空から様々な色の光弾が降ってきた。光弾は妖怪達を次々撃ち貫き、爆散させていく。空を見ると見知った巫女が空から妖怪を狙い撃ちにしていた。

 

「あらら、私が解決してお礼を貰ってやろうと思ったんだけどな」

「魔理沙、さっき帰るって言ってなかったっけ?」

「そん時はそんな気分だったんだよ」

 

自由自在に空を飛びかいながら、容赦無く妖怪を蜂の巣にしている友人を見ると、あの場から逃げて正解だった事を知る。かなり鬱憤が溜まっていたのか、無慈悲に殲滅活動をする彼女の方がよっぽど妖怪に見える。本人にはそんな事口が裂けても言えないが。

 

数分ほど里の上空を飛んでいた霊夢が降りてくる。自分が近付くより早く里の男共が霊夢を囲んで礼を言いはじめた。若干うっとおしく思うのか、霊夢は男共を適当に追い払い、慧音の居場所を尋ねる。空中を飛んでいる時に見当たらなかったようだ。

 

「私なら・・・ここにいる」

「慧音!?お前、何でそんなボロボロなんだ」

 

腰まで届くくらいの長い銀髪に所々青いメッシュが入っていて、立方体のような変わった帽子を被っている女性がどこからともなく現れた。上下一体型のスカートはボロボロになっていて、出血もしている。

 

「ちょっと、無理をしてしまってな・・・能力で隠れているしか出来なかった。それに妖怪を逃がしてしまった」

「それなら、『博麗の巫女』さんが全部退治してくれましたよ」

「違う!もう一匹いるんだ・・・。そいつは・・・赤い」

「慧音!?おい、慧音!?」

 

途中で力尽きたのか気を失う慧音。怪我は酷いが、命を失うほどのものではなさそうだ。しかし、慧音ほどの人物にこれほどの手傷を負わせる事が出来る妖怪などそう多くはない。

 

「霊夢・・・。これって」

「・・・『異変』でいいのかしら」

 

医者の所へと運ばれる慧音を見ながら、霊夢はそう答えた。

 

 

奇妙な妖怪の退治も終わり、神社で一息つく。あの後、チルノを送り返し、人里全体に結界を張り何者も侵入出来ないようにしておいた。どれほどの効果があるかは分からないが。

 

「しかし、あの妙な生き物何だったんだ?妖怪とも違ったし」

「私が知るわけないでしょ。あんなもの今まで見たことも聞いたこともないわ」

「そりゃそうだ」

 

幻想郷にあんな生物がいたなどという話は聞いた事がない。もしかしたら、地下に鬼や悪霊がいたように何処かに住んでいたのかもしれないが。

 

「まぁ、私達が考えても仕方ないよ。向かってくるようだったら蹴散らす。それだけだぜ」

「面倒臭いから私は遠慮したいわ」

「こっちはまた一緒に戦ってやってもいいんだけど」

 

お互いに軽口を言い合う。二人にとって、今の状況は心が休まる。

 

「・・・この錠前、やっぱり危険かもな」

 

魔理沙がポケットから錠前を取り出す。全面にオレンジがデザインされていて、『L.S.ー07』と刻印されている。魔理沙が錠前を持っていた事を知らない霊夢は当然驚く。

 

「あんた、何でそれ持ってるの?」

「森の中に落ちてたから貰った」

 

あっさりと答える魔理沙。実際、あの奇妙な乗り物も落ちていた物だ。収集癖のある魔理沙が錠前も一緒に拾っていてもおかしくはない。

 

「・・・」

 

ため息を吐き錠前をしまう。そこら辺に放り投げておく訳にもいかない。どうせなら使い道を探すべきだ。

 

「じゃあ、そろそろ帰るかな」

「あら?もう帰るの?」

「ああ、錠前の事をちょっと調べたいしな」

「そう、またね」

「おう、またな」

 

霊夢に別れを告げ、乗り物のところまで向かう。あの乗り物も悪くないけど、次からはまた箒に乗ろうか。そう考えながら乗り物に向かっている途中、奇妙な鳴き声が聞こえた。その声は遠くない。

 

「何だ?またあのヘンテコ生物か?」

 

辺りを警戒しながら魔理沙は考える。このまま放っておくわけにはいかない。神社の近くにいるのを無視して帰ったら、次の日にでも霊夢に自分が怒られる。そんな面倒な事は避けたい。

ミニ八卦路を構えながら気配のする方へと向ける。次第に鳴き声が近くなり、足音が響く。

 

「不意打ちだけど、悪く思わないぜ」

 

茂みから何かが飛び出してきたのを見た魔理沙は、何が飛び出してきたのかろくに確認せずに弾幕を発射した。極太の光線が直撃して勝利を確信するが、光が晴れた先には無傷の赤い化け物が立っていた。

 

「グウゥ!ウオオオォォ!!」

「な、何だよ、あれ。まさか、あれが慧音が言ってた・・・」

 

自分の一番のとっておきが効かなかった事、目の前の敵が今までの相手とは異質すぎる事。魔理沙は想定外すぎる事態にうまく反応出来ずにいた。化け物が近づいてくるのに足が竦んで動けない。

 

「オオォォォ!!」

「魔理沙!!」

「うわぁっ!?」

 

いつの間にかその場にいた霊夢によって難を逃れる。後少し遅かったら自分はあの鋭い爪にやられていたかと思うとゾッとする。

 

「あ、ありがと。霊夢」

「お礼はいいから、立って。逃げるわよ」

「そうしたいんだけど、足が・・・」

 

魔理沙は恐怖のせいでまともに動けない。霊夢だって同じだ。自分達が相手にしているのは、今までとは違いすぎる。そのくらい分かる。だからと言って、このままでは死ぬだけだ。何か方法は無いか。霊夢は必死に策を練るが二人が生き残れるだけの考えは浮かばない。

 

「グルルル!」

「・・・」

 

魔理沙を庇いながら札を構える。死ぬつもりはないが、死ぬつもりで戦うしかなさそうだ。

 

「うおおぉぉぉ!」

 

恐怖に打ち勝つためにあらん限りの大声を出して相手に突っ込んで行こうとした時。

 

『大玉モード』

 

「え?」

「は?」

「グウ?」

 

遥か上空でそんな声が聞こえた。魔理沙と化け物も反応したことから、どうやら幻聴ではないらしい。さっきまでの緊張感は消え、二人と一匹は上空の方を見ている。夕日が沈む空を眺めていると、ボールみたいなのが落ちてきているのが見えた。あれが大玉なのだろうか?

 

「何か落ちてきてるぜ」

「落ちてきてるわね」

「グオォォ」

 

二人と一匹の意見が重なる。真っ直ぐに落ちてきている物が近づくにつれて、その正体が分かってきた。スイカが落ちてきている?

 

「スイカに見えるぜ」

「スイカに見えるわ」

「ウオォ」

「呼んだー?」

「あ、萃香。お前じゃなくてスイカだよ。スイカ」

 

妙なタイミングで帰ってきた萃香のせいで更に妙な空気になってしまった。そうしている間も上空のスイカはどんどん近づいてくる。それも物凄い速さで。

 

「なぁ、あれこっちに落ちてきてないか?」

「きてるわ」

「あっひゃっひゃっひゃ!本当にスイカが降ってきてらー!」

「てか、あれでけえ!?」

「ちょっと、逃げるわよ!?」

 

隕石のように落ちてくる巨大なスイカは、そのままの勢いで霊夢達の所に降ってきた。霊夢達は何とか事前に避ける事が出来たが、ずっと見ていた化け物は逃げそびれてしまったようだ。

 

「グオォ?グオォォォ!?」

 

真上に落ちてきた巨大なスイカを両手で受け止めようとしたが、隕石のように落ちてきたスイカを止めることなどできず、化け物は下敷きにされ爆散した。その後も勢いは止まらず、地面を砕きながら沈んでいった。

状況についていけてない霊夢と魔理沙は呆然とその光景を見ているしかなかった。土煙が晴れた先にあったのはクレーターになった地面と、人の倍以上の大きさを持った巨大なスイカだった。

 

「・・・どういうこと?」

「・・・さっぱり分からないぜ」

 

助かったのは分かった。化け物が爆散した事を考えると、命の心配は無いだろう。目の前のスイカが化け物その2でなければだが。

 

「ひゃっひゃっひゃ!でけぇー!!かてぇー!!」

「こら萃香!刺激しないの!」

 

怯えもせず巨大なスイカを蹴っている萃香。酔っ払っているからというより、元からの性格だろうが見ているこっちとしてはヒヤヒヤして仕方ない。だが、いつまでも怖がっている訳にはいかないだろう。このスイカが何なのか、霊夢も魔理沙も興味がある。

 

「近くで見ると、やっぱでかいな」

「それに、金属みたいね」

「まぁ、そこら辺で売ってるスイカじゃないよな」

「河童の作品なのかも?」

 

二人で意見を言い合うがはっきりと分かることはあまり無い。見たまんま巨大なスイカ。それが二人の出した答えだった。

 

「よーし、お前らどけー。萃香がスイカ割りするぞー」

 

どこから持ってきたのか、巨大な木の棒を担いでやってきた。スイカ割りという事は、このスイカを叩き割るつもりなのだろう。霊夢達が止める間もなく、萃香は木の棒をスイカに叩きつけ始めた。

 

「そりゃ!うりゃ!かてえな。もういっちょ!」

「す、萃香!?大丈夫なのかよ!?」

「大丈夫大丈夫!こんだけ大きけりゃたらふく食えるって」

「いや、そうじゃなくって・・・」

「うー、セイヤー!!」

 

萃香が気合をいれて飛び上がり、強烈な一撃をいれる。その衝撃でスイカが割れる・・・事はなく、最初からそこに無かったかのように消滅してしまった。これには酔っ払っていた萃香も、離れて様子を見ていた霊夢と魔理沙も驚いていた。

 

「スイカ・・・消えたな」

「・・・もう頭痛いわ」

「あれー?スイカどこいったー?」

 

頭を抑えながら状況を何とか理解しようとするが、混乱が増すだけだ。もう風呂に入ってご飯を食べて寝たい。そんな考えすら浮かんでしまう。

 

「あー、霊夢。何か色々ありすぎて疲れたから帰るわ」

「・・・はいはい」

 

疲れたのはこっちも一緒だが、文句を言っても仕方ない。このクレーターをどうするか。そんな事を考えていると、萃香が自分と魔理沙を呼んでいるのが聞こえた。何かまた見つけたのだろうか。これ以上面倒なことは増やして欲しくはないけど。

 

「霊夢ー、魔理沙ー!見て見てー」

「何だなんだ?私はもう帰るんだが」

「下らないものだったら怒るから」

「おおう、怖いぞお前ら」

 

若干怯えつつも、萃香はクレーターから何かを持ち上げながら上がってきた。霊夢と魔理沙の目が確かならそれは、

 

「スイカから生まれたスイカ太郎!」

 

白衣を着た白髪の少年だった。

 

「霊夢」

「何?」

「多分、このままだと帰りに事故るから泊めてくれ」

「私も一人だと辛いからいいわ」

 

あまりに色々ありすぎて疲れた二人には、少年の事について考える余裕は無かった。

 

「スイカ太郎ー。おーい、生きてるかー」

「うー・・・」

 

完全に伸びてしまっているこの少年はどうすればいいのか、霊夢はため息をつきながら考えるしかなかった。

 




やっぱり長い。後、口調が安定してない気がする。本編やり直そうかなぁ。

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