東方戦国記   作:楠名等

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はい、どうも。楠です。今回も連続投稿ですよ。


彼はスイカ太郎

ー・・・またこの夢かー

 

自分はあまり見た夢を覚えてないが、この夢だけは別だった。奇妙な森の中、何かを探すように彷徨う夢だ。当てもなくフラフラと辺りを歩き続けている。意識があるのか無いのか、視点は定まっていない。

 

ー・・・もううんざりだー

 

何度も何度も見た夢だが、今だに慣れる事が出来ない。この先で自分が見つけるものを考えると、酷い吐き気に襲われる。この夢を見るようになった初めの頃は恐怖で何日も寝られなかった。

 

ーお願いだから、そっちに行かないで・・・ー

 

無駄だと分かっているが、懇願せずにはいられない。自分の動悸が早まる。

 

ーやめてくれやめてくれやめてくれ!ー

 

願いは届かず、自分は夢の最後を見届ける事になった。そこにあったのは、

 

 

 

 

「うわあああああぁぁぁぁー!!」

「うおぉぉぉ!?」

 

悪夢から覚めることが出来たのか、体が動かせる。戦国はホッと安堵するものの、体が恐怖で震えている。夢とはいえ、生々しい光景をしばらく忘れる事が出来ない。寝汗で濡れている体を自分の両手で抱きしめる。こうする事で少しだけ恐怖が和らぐ。

 

「びっくりしたー。いきなり大声出すなよ、スイカ太郎」

「・・・え?」

 

声がした方を見ると、頭に二本の角のような物を付けている少女が襖から戦国を見ていた。その容姿に戦国は戸惑っていた。新手のファッションなんだろうか?個人的にはカッコいいけど。それより、スイカ太郎とは自分の事を言っているのだろうか?

 

「んー、案外元気そうだな。飯食えるかい?」

「あ、うん。大盛りで」

「ははは、意外と図々しいやつだねぇ」

 

たたたっと廊下の方へと走り去って行く少女。着いて行けばいいのか分からないが、ここで寝ているより体を動かすべきだと判断した戦国は少女を追う事にした。

 

「・・・しかし」

 

周りを見回すが、初めて見る物ばかりな事に気付く。布団や床、扉から天井までありとあらゆる物が戦国にとって新鮮だった。

枕元に置いてあった自分の白衣を羽織る。寝汗でじっとりしてるから、シャワーを浴びて着替えたい。

 

「後で風呂借りよ」

 

本人には自覚は無いようだが、彼は相当図々しいやつだった。

 

 

「スイカ太郎飯食うってさ」

「そう。魔理沙、お皿用意して」

「普通こういうのって、家の主がやるもんじゃないか?」

「泊めてもらってる身分で文句言わない」

 

魔理沙が抗議するも、霊夢は素知らぬ顔だ。そこまで面倒ではないが、妙に納得がいかないのは気のせいではないだろう。

 

米をよそおいながら、魔理沙は考える。例のーーースイカ太郎でいいのだろうか?ーーー少年も何者か分からない上に、昨日の異変は根本的には解決してない。それどころか、謎が増える一方だ。霊夢もその事を考えているのか、神妙な顔をしている。また『守谷』の連中が事の発端かもしれないし、新しい神様でもやってきたのかもしれない。どちらにせよ、悪い迷惑だが。

 

「ここかな?」

「お、スイカ太郎来たみたいだな」

「場所教えてないのかよ」

 

廊下の方から聞きなれない声がする。どうやら、適当に部屋を当たっていたようだ。

襖を開けて入ってきたのは、ショートカットの白髪に、幻想郷では見慣れないスーツの上に白衣を羽織った少年だった。間違いなく、昨日の巨大スイカから出てきた奴だ。

少年―――戦国は緊張を表に出さないように出来るだけ明るく挨拶をした。

 

「おはよー。ご飯大盛りにしてくれた?」

「・・・馴れ馴れしいわね」

「馴れ馴れしいな」

「スイカ太郎は図々しいだけじゃなくて馴れ馴れしいのか」

「えぇー」

 

見事なまでに滑ったようだ。戦国も初対面の人にする挨拶ではない事に今更気付く。既に手遅れだが。

 

「あれー、駄目だったか。もうちょっと爽やかにした方が良かったのかな?」

 

そういう問題では無いだろうと魔理沙は思う。

あはは、と笑顔でそう言う戦国に対し、霊夢は警戒を解かなかった。もし、こいつが異変に関わってるのなら、いつ本性を現すのか分かったものではない、と。

 

「まあまあ、座れよ。霊夢ー、面倒なことは飯食ってからにしようぜー」

「・・・そうね」

 

霊夢が戦国の事を警戒しているのを察した萃香は先に食事を済ませる事を勧める。特に断る理由も無い霊夢はそれに同意するものの、緊張した空気は緩まない。内心びくびくしながらも笑顔を崩さない戦国と、目に見えて威嚇している霊夢。

色々と聞きたいことが沢山あるが、取り敢えずはご飯を食べてからにすべきだ。

 

「・・・オカズ少ないね」

「うるさいわね」

 

 

「ご馳走様でした」

「ご馳走さん」

「ごっそさーん」

「・・・お粗末様」

 

全員が食べ終わり、後片づけにはいる。まさか、戦国が丼で三杯もおかわりをしてくるとは思わなかった霊夢は多少げんなりしている。おかげでうちの食費がボロボロだ・・・。四杯目は流石にストップをかけたが、これだったら最初からおかわりは一杯だけだと言えばよかった。

食器を水につけて流しに置いておく。まずは戦国から色々と話を聞きたいのだろう。霊夢と魔理沙は、今回の異変が始まったであろう時期に戦国がやって来たのは、ただの偶然ではないと考えている。

 

「さて、スイカ太郎。あなたに聞きたい事があるのだけど」

「あ、その前にいい?」

「なによ?」

「スイカ太郎って、僕の事?」

「そうだけど?」

「他に誰がいるんだ?」

「変なスイカ太郎だな」

「えぇー」

 

話を切り出した霊夢に待ったを掛ける戦国。妙な呼び名に疑問を立てるが、当然のように全員から肯定され、自分がおかしいかのように言われた。

戦国は目が覚めたら変な人達に変なあだ名をつけられていた。何がどうなってスイカ太郎なんてあだ名がつくのか。・・・思い当たる節は正直あるのだが。スイカアームズのまま降ってきたのが悪かったか?

 

「あのね、僕の名前は」

「そんな事はどうでもいいの。聞かれた事に答えればそれでいいから」

「えぇ〜」

 

どうやら、拒否権は無いようだ。少女とは思えないような鋭い目つきで睨むこの人には逆らわない方が懸命そうだ。戦国はそう判断した。

 

「まず一つめの質問。何で巨大なスイカに乗って空から降ってきたの?」

「いきなりそれか・・・」

 

どう答えたものかと頭をひねる。沢芽市にはアーマードライダーあるいは、『ビートライダーズ』と呼ばれる人達がいる。彼らは自分専用の戦極ドライバーを使って変身し、アーマードライダーどうしで競い合っていた。その様子は一種のゲームとして流行っていた時期があり、アーマードライダーを知らないものは少ない。今は別の事情で悪い意味で有名だが。

問題は、戦国が『ユグドラシルコーポレーション』に属する量産型のアーマードライダーという事だ。表向きは普通の企業であるユグドラシルにアーマードライダーがいることは知られるわけにはいかない。この情報が漏れれば、町の住民に隠しているヘルヘイムの森の事もばれる遠因になりかねない。それだけは何とか避けたい。ならば、ユグドラシルと関わりが無いかのように振る舞うべきだろう。

 

「実は僕、新しいアーマードライダーなんです」

「アーマードライダー?」

「何だそりゃ?」

「え?」

 

アーマードライダーを知らない霊夢達は、聞き覚えの無い名前に首をひねる。当然といえば当然だ。ここは沢芽市ではなく、幻想郷だ。

だが、それを知らない戦国は多少の違和感を感じながらも説明をする。

 

「アーマードライダーっていうのは、インベスから町の人を守るために戦う人達のことです。僕はなり始めたばかりだし、未熟だけど」

「ちょっと待て、インベスって何だ?」

「魔理沙、それは後で聞くわ。それで、そのアーマードライダーである事と、空からスイカに乗って降ってきた事が関係するの?」

 

当然霊夢達はインベスを知らない。戦国の中の違和感がさらに大きくなる。逆に霊夢達は、ある疑惑を持ちはじめていた。戦国は幻想郷の事を知らないのではないかと。

その事に気付くわけも無い戦国は正直に話しても信じてはもらえないだろうと悩む。異世界の森の中を散策してたら、空間の亀裂の中に入っちゃって気付いたらここにいましたー。なんて言った日には、病気認定されて病院に連れてかれるかもしれない。というか、この人は何でそんなにスイカにこだわってるんだ?

 

「実は、ちょっとした実験をしてたんだけど、失敗して打ち上げられちゃって」

「・・・」

「・・・」

「霊夢ー、酒飲んでいいかい?」

「萃香、後にして」

 

流石に言い訳としては苦しすぎた。疑惑の目が一層強くなり、戦国は針で刺すような鋭い目で見られる。というか、萃香と呼ばれた少女は酒がどうとか言っていたが、色々と大丈夫なのだろうか?実は成人なのかもしれないが。

 

「二つめの質問。これは何?」

 

霊夢が卓袱台の上にあるものを置く。それは戦国が変身に使う量産型の戦極ドライバーだった。寝てる間に取られたのだろう。

 

「それは戦極ドライバー。さっき言ってた、アーマードライダーに変身するのに使うやつ」

「戦極ドライバーねぇ・・・」

「なぁなぁ、スイカ太郎ー。変身ってどうやるんだい?」

「どうって、ドライバーだけじゃ変身出来ないけど」

「そうなのか?じゃあ、後は何が必要なんだ?」

「何って、ロックシードだけど?・・・って、分からないか」

 

ロックシードの名前を出した時に、霊夢と魔理沙の表情が変わったのを戦国は見逃さなかった。

 

「僕も詳しい事は分からないんだけど、ロックシードっていうのは戦極ドライバーとセットで使うものなんだ。ドライバーにくっついてなかった?こんな錠前みたいな形のやつ」

「ああ、あれがロックシードだったのか。私達も初めて見たから分からなかったぜ。スイカ太郎はロックシードの事、何か知らないのか?」

「うーん、沢山種類があるって事くらいかな。僕もドライバーを貰った時に一緒に貰っただけだし」

「ふーん、そうなんだ」

 

この二人は何か隠している。自分から戦極ドライバーを取ったということは、スイカロックシードがついたままのドライバーを外したという事だ。そして、今戦極ドライバーにスイカロックシードはついてない。この人達は何かロックシードについて自分から聞き出そうとしているのかもしれない。戦国はそう推測する。

霊夢と魔理沙も戦国が隠し事をしているのに感づいていた。昨日チルノが持っていた錠前がロックシードである事は間違いない。もし、あの妖怪を呼び出せる物が複数あるなら、そのロックシードを持っていたこいつも異変に関与している可能性がある。まあ、後々分かるはずだ。

「実際に変身してみる?ロックシードとドライバー返してもらったら、すぐに出来るけど」

「いや、後で見せてもらうわ。今は質問に答えてもらえばいいから」

 

逃げようとしてたな。霊夢は持ち前の勘の良さで気付いた。おそらく、この戦極ドライバーを返してしまったらそこでこいつには逃げられる。それだけは阻止すべきだ。何だったらここで壊してもいいけど。

 

「三つめの質問。インベスって何か教えてもらえる?」

「インベスっていうのは、時々町の中に現れて人々を襲う怪物の事。さっきも言ったけど、それを退治するのがアーマードライダーの役割ってわけさ」

「なあ、インベスはどこからやってくるんだ?」

「分からない。どこからともなく現れて、気付いたら消えてるんだ」

 

実際には、インベスはクラックを通ってヘルヘイムの森から町に侵入してくる。だが、クラックの存在を教えてしまったら、その先のヘルヘイムの森の事も教えなければいけなくなるかもしれない。一般人には伝えるわけにはいかない。

 

「ふーん、得体の知れないやつと戦おうだなんて物好きだな。何か報酬でも出るのか?」

「基本的に無償労働。褒められることはあるよ」

 

魔理沙がいう事も最もだ。人は正体の分からない物を恐れる。それが未知の怪物なら尚更だ。そんなものと戦おうという物好きなんて、普通はいない。ただ、そんな物好きが沢芽市にはいるのだが。

 

「へぇー、まだ若いのにスイカ太郎は偉いなー」

「そういう君は何歳なの?」

「いくつにみ・え・る?」

「・・・次の質問は?」

「おう、無視かこら」

 

何故か分からないけど、あまり真面目に付き合わない方が良さそうだと戦国は判断した。萃香自身も茶化しているだけなのだが。

 

「そうね、四つめの質問をするから外に出て」

「外って、何で?」

「まあまあ、行けば分かるぜ」

 

多少困惑している戦国を半ば無理矢理外へと出す。戦国は物珍しそうに周りを見回している。霊夢はその様子を見て疑惑が増していく。

連れて行った先は、例のクレーターとなった地面の所だ。事情を知らない戦国は一層困惑している。

 

「地面陥没してるね。どうしたのこれ?」

「スイカ太郎、あなたがスイカに乗って降ってきた時、どこに着地したか知ってる?」

「いや、知らな・・・そういう事か」

 

霊夢は感心する。理解が早くて助かる。自分が置かれた状況が把握できたようだ。隠し事をする奴のようだが、良心はあるのか段々申し訳なさそうな顔になってきた。

 

「僕のせいか・・・」

「そう、スイカ太郎のせい」

「しかもよ、あの木を見てみろよスイカ太郎。余波で一本へし折れたんだぜ?」

「余波?え、余波で折れた?」

「そう、しかもそれだけじゃない。霊夢の大切な大切な湯呑まで割れちまったんだ」

「ゆの、湯呑?」

「男として責任を取れ!スイカ太郎!」

 

妙に気合の入った動きで責任を押し付ける魔理沙。それを白けた目で見る霊夢。萃香は事情を知らないためか、特に何も言わない。実のところ、魔理沙自身がしたミスを押し付けている訳ではないのだが。

 

「それで、僕にどうして欲しいの?」

 

諦めたように相手の要求を聞く戦国。ニヤリと霊夢と魔理沙が笑う。ああ、きっとろくでもない事になるな。

 

「ちょっと解決したい件があってさ。その道に詳しそうな奴の力が借りたいんだ、ぜ☆」

「もし、協力してくれるなら場合によってはこのクレーターとか諸々許してあげるわ。それに、ドライバーもロックシードもちゃんと返す」

「拒否権は・・・無いよね」

「無いわ」

「無いぜ」

「無いんじゃね」

「ですよね!」

 

満場一致で異変解決の手伝いをさせられる羽目になった戦国であった。

 

 

「あ、スイカ太郎。ちょっといいか?」

「・・・スイカ太郎じゃないんだけどなぁ」

「細かい事は気にすんなよ」

 

正直、細かくは無いと思う戦国だが、言っても無駄だという事を承知したのか深くは突っ込まなかった。

 

「で、何の用?」

「いやさ、個人的にお前に聞きたいんだ」

「・・・何さ」

 

まあ、ついて来いよ。そう言って魔理沙は戦国を庭まで連れていく。魔理沙は自分が乗っていた乗り物の事を戦国が何か知らないか尋ねようと思った。しかし、そこにあったのは、昨日魔理沙が神社に来る時に乗ってきたバイクではなく一つの錠前だった。

 

「あれ?ここに置いてあったのに無くなってる」

「これは・・・」

「ん?スイカ太郎、何なんだそれ?」

 

魔理沙と違い戦国は地面に落ちていたロックシードに見覚えがあった。いや、正確にはロックシードではなく、ロックビークルだが。前面にはタンポポの花がデザインされていて、『L.V.ー03』と刻印されている。

 

「まさか、こんな所に『ダンデライナー』があるなんて・・・」

「ダンデ?」

「ダンデライナー。ロックビークルと呼ばれる乗り物の一つだよ。ロックシードと違い変身には使われないが、これ単体で乗り物へ変形する。他のロックビークルは基本的に地面を移動するけど、このダンデライナーは空を飛ぶ事が可能なんだ。更に特徴的なのは」

「あー、分かった分かった。つまり、空飛ぶ乗り物何だな」

「君にはその程度の解釈で十分だね」

 

今までの意趣返しか、若干嫌味っぽく言う。そもそも、一般人にはそのくらいの知識で十分なのだが。

 

「何かむかつくな・・・。ま、いいや。それで、どうやって乗り物にするんだ?」

「どうって、こうだけど」

 

戦国がダンデライナーのロックを解除し、放り投げる。すると、解錠されたダンデライナーが空中で変形しながら巨大化し、バイクへと変化した。さすがの魔理沙も意表を突かれたのか、目を見開いている。

 

「これで、変形完了。戻したい時は・・・どうするんだっけ?あれ、本当にどうやるんだ?」

「なぁ」

「ここを・・・違うか」

「なあ!」

「え、何!?」

 

いきなり大声を出した魔理沙に驚きつつも戦国は聞き返す。戦国自身はロックビークルの存在を知っていたから大した反応をしなかったが、普通はそうもいかない。目の前であんな事をされては流石に普通の魔法使いも黙ってはいられなかった。

 

「いや、おかしいだろ!あんな小さかったのに巨大化してるし!そもそも、質量保存の法則はどうなってんだ!?」

「質量保存の法則って、何?」

「・・・私が変なのか?私が間違ってるのか?」

 

真顔で聞き返す戦国。自分の疑問全てがたったの一言で返された魔理沙は地味に悩んでいた。それを不思議そうな顔で見ていた戦国だったが、すぐにロックビークルの戻し方を探す作業に戻る。

戦国本人は本当に質量保存の法則を知らないだけだったりする。

 

 

「いやー、やっと戻し方分かったよ」

「よーござんしたね」

「魔理沙、拗ねてないで話を進めるわよ」

 

茶の間に戻った戦国達は一旦状況の整理に戻る。お互いに情報を話して、異変を解決するために少しでも力を合わせるべきだとの萃香の案だ。先日の一戦で自分一人の力では手に負えない事を理解している霊夢と魔理沙はその案を受けいれる。拒否権の無い戦国は言わずもがなだが。

 

「まず、異変が始まった日。昨日の昼頃、大量の妖怪が人里を襲った。その妖怪はチルノが家来にしていた奴と瓜二つだったけど、サイズは大人一人分はあったし、大人の男でも歯が立たなかったぜ」

「うん」

「私と魔理沙がその妖怪達を退治したけど、慧音を襲った妖怪は人里では見当たらなかった。慧音の言葉が正しいなら、私達が見つける前に逃げた可能性が高い」

「うん」

「そして、夕方。神社から帰ろうとした私が赤い妖怪と遭遇した。多分、慧音の言っていた妖怪はあれだったんだろうな。桁が違いすぎて勝負にならなかった」

「うん」

「で、スイカ太郎がスイカに乗って降ってきた。その時に巻き添えを食って、妖怪は退治された。こんなとこね」

「そうだ」

「お前、さっきから相槌うってるけど、私達の話ちゃんと分かってるか?」

「いや、全然」

「私もそん時いなかったから、さっぱりだねぇ」

 

あっけらかんと言う戦国と萃香。戦国は二人が何を言っているのかさっぱりだった。妖怪だの人里だのチルノだの慧音だのスイカ太郎だの、戦国にとって意味の分からない言葉ばかりだった。そんな戦国に霊夢は呆れながらも、自分達の説明では当事者ではなかった戦国と萃香では分からないのも仕方ないと思い、説明を追加する事にした。

 

「妖怪っていうのは、昨日人里に現れた怪物の事よ。緑色の体に丸っこい胴体に短い手足、理性的な感じはしなかったわ」

「それ確実にインベスだね。妖怪じゃないよ」

「あー、スイカ太郎の話し聞いててそんな感じはしてたけどさ」

 

霊夢の補足を受けて、戦国は確信した。そこまで特徴が一致している生物が他にいるはずも無い。それに、赤い妖怪というのは上級インベスだろうと戦国は考える。赤い姿のインベスなら、戦国の知る限りでは『ライオンインベス』くらいのものだ。

魔理沙や霊夢も戦国の答えを聞いて納得する。別の場所から来たのなら、幻想郷で見た事がないのも当然だ。

 

「ん?待って。君達がインベスを退治したって言ったよね?」

「ああ、緑の奴らなら殆ど霊夢一人で片付けたぞ。私も一匹だけ退治したけどさ」

「・・・本当に?どうやって?」

 

一般人がインベスを倒した等というデータはユグドラシルには今まで無かった。それ以前に、戦国の目には霊夢と魔理沙は普通の女の子にしか見えない。にわかには信じ難いのだろう。

 

「何だったら見せてあげてもいいわよ。どうやって退治したか」

「・・・遠慮しときます」

「そう」

 

戦国の方に札を構えながら言う霊夢の顔は、どこか本気のような気がした。

 

「しっかし、インベスとやらはどうやって幻想郷に来たんだろうな」

「・・・?」

「どうした、スイカ太郎。そんな不思議そうな顔して」

「あのさ」

 

魔理沙の言葉の中に戦国は聞きなれない名前を見つけた。両者の食い違いの一点を。

 

「幻想郷って何?沢芽市にそんな場所あったっけ?」

 

霊夢と魔理沙はの二人は顔を見合わせる。薄々感じていたが、そうはっきり言われると少し困る。自分達の話の前提が間違っていたのだから。

 

「霊夢、やっぱり・・・」

「みたいね。薄々そうなんじゃないかとは思ったけど」

「なんだい、あんたら今頃気付いたのかい?」

「萃香、気付いてたんなら先に言えよ。話が余計こんがらがったじゃん」

「あのー、誰か答えてくれたらありがたいんだけど」

 

一人困り顔の戦国を置いて全員が何か合点がいったかのようにしている。霊夢はため息をつき、改めて自分の説明が足りなかったのを感じた。事前にどこから来たのかを聞いておけば良かっただけなのだから。

 

「スイカ太郎、落ち着いて聞いてもらえる?」

「う、うん?」

「ここは」

 

霊夢はこの世界の事を説明しようとしたが、それは失敗に終わった。

 

外から聞こえた悲鳴と、怪物の鳴き声のせいで。

 

 





次回に続く
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