東方戦国記   作:楠名等

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前回は変身しなかったですけど、こっちでは変身します。


その名は、黒影

「今の声って、チルノか!?」

 

いち早く悲鳴の主に気付いた魔理沙が言う。玄関の方から確かにチルノの声が聞こえた。そして、おそらくインベスであろう声も。

 

「外か!」

「あ!スイカ太郎!一人で行くな!」

「魔理沙、萃香。私達も行くわよ」

「分かってる!」

「はぁ、落ち着いて酒も飲めないのかい」

 

インベスの声を聞いた戦国は外へと駆ける。誰かが襲われているなら、インベスを退治する。それがアーマードライダーの役割だと戦国は考える。今がその時だと。

外へ出ると、青い髪の女の子がインベスに襲われていた。背中に羽が付いているのに戦国は動揺するが、そんな事で驚いている暇はない。

 

「そおりゃあ!」

「グォ!」

「&キャッチ!」

「わっ!?」

 

手を振り上げるインベスに飛び蹴りをかまし、チルノを抱きかかえる。想像以上に冷たい体に驚くが、そのまま霊夢達の元へと駆け寄る。チルノを助けるためとはいえ、戦国の無茶な行動に呆れる霊夢と魔理沙。そんな中、萃香だけは茂みの方を見ていた。

 

「怪我は無いみたいだね。ちょっと離れてて」

「あ、ありがとう」

「よーし!ここからは僕の」

「はいはい、ストップ」

「スイカ太郎はチルノを頼むぜ」

「え?ちょっ、え!?」

 

チルノを降ろし戦国はインベスに向かおうとする。が、霊夢達が間に入り押し出される。納得のいかない戦国は二人に下がるように言おうとしたが、それよりも早く光がインベスを包み、悲鳴を上げる間もなくインベスは爆散する。

一瞬でインベス全てが倒された事と、霊夢達の使った術に驚いた戦国はしばらく呆然とした。

 

「・・・今の何」

「何って、普通の魔法だぜ?」

「あー、はいはい。普通の魔法ね。・・・うん」

 

一瞬納得しかけるも、戦国の常識では魔法自体が普通じゃない。この人達は本当に人間なんだろうかと、戦国は悩む。まあ、それを言ってしまえば、アーマードライダーだの何だのも魔法みたいなものだが。

 

「ま、あのくらいなら楽勝だぜ。・・・って、萃香がいない?」

「萃香ってあのかっこいい角の子?確かにいないね」

 

戦国達が周りを見るが、萃香一人だけがいなくなっていた。確かに一緒についてきていたはずなのだが。

 

「嫌な予感がするわね」

「霊夢が言うとシャレにならないって」

「ね、ねぇ」

「どうしたの?チルノ」

 

さっきまで黙っていたチルノがおずおずと喋り出す。いつものような覇気は無く、どこか怯えているようにも見える。

 

「あたい、そこで見たの」

「見たって、何をかな?」

「萃香の事か?」

「ううん。男の人を見たの」

 

チルノが神社の近くで見たものは、男の事だった。特にこれといった目立つような格好もしてなく、人里に暮らす一人だろうと思ったらしい。だが、神社に参拝しにきたにしては少し様子がおかしかった。人里からこの神社に参拝に来るには、危険な獣道を通る必要がある。なのに、その男は特に武器を持っているわけでもなく丸腰だった。

 

「それは確かにおかしいな。『博麗神社』に参拝に来るなんてあり得ないしな、てっ!つねるなよ霊夢!」

「確かに、危険な獣道を丸腰で通るなんて、よっぽどの実力者かただの馬鹿だけね」

「それで、その男の人に話しかけたの?」

「かけてない。そいつ、なんか怖かったから」

 

チルノはその男の事を思い出し、身震いする。どこか普通じゃなかった。近くにいるだけで不安になる。そんな恐怖を感じたという。

 

「それでね、その事をあたいが霊夢に教えようって思ったら、そいつがこれに似てるのだしたの」

「それって、ロックシード!」

「ロックンロール?」

「字数あってないだろ!」

「魔理沙、落ち着きなさい」

 

チルノが戦国に自分の持っている『ヒマワリロックシード』を見せる。そして、チルノの言う事が本当ならその男もロックシードを持っているのだろう。

 

「それで、さっきの妖怪を沢山出したの」

「成る程。理由は分からないけど、その人が大量のインベスを操ってこの神社を襲おうとした。で、あえなく失敗したと。もし、まだ神社の近くにいたとするなら、失敗したのを見て逃げたのかもね」

「それを萃香が見つけて追ってるとかか?・・・ん?ちょっと気になったんだけど、それと同じのを使ったんならさ、あのショボいのが出てくるんじゃねーの?」

 

魔理沙の言うショボいのとは、先日チルノのが呼び出した状態のインベスの事だ。

 

「スイカ太郎、あなた何か知らないの?」

「すいかたろう?」

「名前は気にしないで。特殊な方法を使ってリミッターを外せば実物大で呼び出せるんだけど、一体誰がそんな事を・・・」

 

ロックシードにはリミッターが付いていて、召喚したインベスは本来の力を持たない脆弱な存在になる。しかし、そのリミッターを解除する事でインベスをほぼ本来の力を持った状態で呼び出せる。問題はそのリミッターを誰が外したのかだが。

 

「待て、霊夢。チルノの言う事が正しいなら、その男は人里の奴だよな?」

「正しいならね。それが・・・!しまった!」

 

魔理沙に言われ、人里の状態を思い出す霊夢。今人里は結界を張っている。一般人がやすやすと出入り出来る訳がないのだ。もしかしたら、結界をやぶられたかもしれない。

 

「その男の目的は分からないけど、人里の奴に何するか分かったもんじゃないぜ」

「事を起こされる前に、捕まえるのが一番でしょうね」

「萃香が追ってるとも限らないし、用心するに越したことはないしな」

「そうね。チルノ、あんたの言ってた男の顔は分かる?」

「会ったら分かるわ。あたいの記憶力はパーフェクツだからね!」

「不安ね」

「不安だぜ」

「何でよー!?」

 

チルノをからかいながらも、二人にはあまり余裕はなかった。また昨日みたいに人里が襲われないとも限らない。のんびりしている暇はないだろう。

 

「僕も」

「足手まといはいらないわ」

「スイカ太郎はここでお留守番な」

「えぇー」

 

自分もついて行くと言おうとしたが、即戦力外通告を受ける戦国。霊夢達はさっきの戦国の反応で分かったが、戦国は魔法の類を使えない。インベス退治が役割であるアーマードライダーとやらになれるらしいが、なったばかりの上に未熟だと自分で言ってた奴を連れていくわけにはいかない。確実に足を引っ張るからだ。

 

「霊夢、箒借りるぜ」

「死ななくても返してもらうから」

「すいかたろうは?」

「神社に置いといていいの」

「あ、お土産は買ってこないぜ」

 

そう言い、空を飛んで人里へ向かう霊夢達。魔法やらなんやらで慣れたのか、戦国はもう流石に驚かなかった。

「あれ?力を合わせるって・・・あれ?」

 

一人置いてけぼりにされた戦国は、地味に傷ついていたりする。

 

 

「ちくしょうっ!何で失敗してんだよ、あの役立たず共!」

 

一人の男が獣道を悪態をつきながら走っている。先ほどインベスを使って博麗神社を襲おうとした人物だ。

 

「ガキ一人も攫えねぇのかよ!くそったれ!」

 

男はインベスを使って、ある人物を攫おうとしていた。それは見事に失敗し、こうやって情けなく逃げているのだが。

 

「人攫いなんて、今頃流行りやしないよ」

「な、何だよ。てめぇ!そこどけ!」

 

男の前に、角を頭から生やした少女が現れる。男は突然現れた少女に驚くも今は構っている暇はないと判断し、押し退けようとする。しかし、少女は動かない。

 

「いやいや、こんな危険な獣道を走ってる人間がいるからさ、ちょっと事情を聞いてあげようと思ったんだけど、人攫いなんて物騒な言葉を聞いちゃったもんでね。あんた、何が目的なんだい?」

「っ!?」

 

少女がギロリと男を睨みつける。少女の怒気に当てられてか、周りにいた動物達が一斉に逃げ出す。その目つきは少女とは程遠い、鬼のような鋭さだった。その目は男を震え上がらせるには十分すぎた。男は気付く、この『鬼』をこれ以上怒らせてはいけない事に。

 

「い、いやいや、違うんだよ。君は勘違いをしているんだ。攫うっていっても、俺がしたことじゃない。実は悪い妖怪がいて、人里の子どもが攫われてしまったんだ」

「・・・悪い妖怪ねぇ」

「そう!最近人里に大量に現れただろ!それで俺は、その親に頼まれてここに来たんだ!だけど、驚いたよ。まさか博麗神社にその妖怪がいるとは!もしかしたら、博麗の巫女はその妖怪を操って」

「もういいよ」

 

熱弁する男の虚言を、少女が静かに遮る。

 

「私は嘘吐きが嫌いだ」

 

聞くだけ無駄だったと。そして、男は自分のしでかした間違いに気付く。少女に嘘を吐いてしまった。その愚かさを。

 

「あんたの前に一人、私は嘘吐きの少年と会ったのさ」

「あ?それが何だよ」

「そいつはね、確かに嘘を吐いていたさ。でもね、それは多分自分の為じゃない。誰にも言えない秘密があるんだろうって、私は思うんだよね」

「だから!それが」

「あんたは、自分を守るためだけに嘘を吐いている。しかも、私の仲間まで貶めようとして!」

「ひっ!?」

 

少女の怒りが直に伝わったのか、男はへたり込む。

 

「私はそれが許せない・・・!私の友達を傷つけようとしたあんたを許せない!」

「何だよ!何だってんだよ!?うるせぇんだよ!知るかそんな事!?」

「・・・こんな奴もいるんだよな」

 

反省の色を見せない男の姿に、少女は少し悲しそうにする。

しかし、少女は直ぐに強気な笑顔になり、男に宣言する。

 

「この『伊吹 萃香』様が、直々にあんたの曲がった根性を叩き直してやるよ!」

 

ジリジリと迫ってくる少女ーーー萃香を恐れて男は逃げ出す。逃がすまいと後を追おうとした萃香だが、予期せぬ相手に邪魔をされる。

 

「グルルゥゥ!」

「あ?何だっけ?イ、イ、インベーダーだっけ」

 

萃香の前に一体のセイリュウインベスが立ちはだかる。男を無視して萃香に向かうとこを見る限り、男の味方なのだろう。

 

「ひぃっ!」

「あ!待て!」

 

男が走って逃げていく。それを追おうとするが、セイリュウインベスが邪魔をする。

セイリュウインベスと対峙する萃香。並の相手じゃないのは気配で分かる。だが、お互いに引く気は無い。

 

「私が怒る前にそこを退いた方がいいよ?」

「グウゥ!」

「やる気満々だねぇ。だったら、倒してから通る!」

 

鋼のようなセイリュウインベスの体に拳を叩き込む萃香。鬼は戦いを好む。それが強者なら尚更だ。拳から血を流しながら戦う萃香は今日一番輝いていた。

 

 

萃香から逃げた男は人里の前に辿り着いた。怪物が突然現れなければ逃げきれなかっただろう。

 

「はぁっはぁっ、逃げきれたか?」

「誰から?」

「チルノ、こいつか?」

「間違いない!犯人はこいつよ!」

「げっ!博麗の巫女!?」

 

男にとって今一番会いたくなかった相手がそこにいた。しかも、恐らくは何をやったのかばれている。

 

「あなたに色々と聞きたい事があるんだけど」

「こっちはねぇよ!俺は忙しいんだ!」

「そう、じゃあ単刀直入に言うわ。持っている錠前を渡しなさい。ああ、里に逃げようとしても無駄よ。破れた結界はもう直ってるから」

 

男の想像通り、霊夢には男のやった事がばれていた。逃げようにも相手はこの幻想郷の守護者だ。直ぐに捕まるだろう。

そこまで考えた男の行動は早かった。

 

「仕方ないなぁ・・・。くくく、お前らが悪いんだぜぇ」

「何か様子がおかしいぜ?」

 

男は自分の持っている錠前ーーーロックシードを取り出す。それは、チルノが持っているヒマワリロックシードと同じ形だが、色が腐っているかのように黒く染まっておりナンバーが刻印されていなかった。

男が黒いロックシードを解錠すると、一度に大量のクラックが開かれ、実体化したインベスが次々と現れる。

 

「な!?こんなにたくさん出んのかよ!」

「あたいのよりたくさん!」

 

想像以上のインベスの数に魔理沙とチルノは思わず声を上げる。それを見て気を良くしたのか、男は大声でインベスに命令する。

 

「さぁ、化け物ども!『運命の巫女』以外は全員殺せぇ!」

「運命の巫女・・・?」

「霊夢!くるぜ!」

 

霊夢は男の言った運命の巫女という言葉に疑問を持つが、魔理沙の言葉にハッとする。考え事をしている暇はない。今は目前の敵を倒す。

 

「行けぇー!!」

 

男の言葉と同時にインベスが動き出す。そして、霊夢達もインベスに向かう。男の悪事を叩き潰すために。

 

 

一人神社で待ちぼうけを食らっている戦国。人里に行こうにも場所が分からないから、動きようがないのだ。

 

「・・・はぁ」

 

自然とため息が出る。インベスが関わっている以上、自分が戦うべきだと思っていた。だが、現実は違った。あんな少女でも変身せずに戦える。しかも、ドライバーは神社の中に置きっ放しになっていたし、ロックシードは手元に無い。我ながらどうやって戦おうと考えていたんだろうか。

 

「・・・はぁ」

「何だいなんだい?辛気臭いねぇ」

「あ、角の人・・・って、ボロボロだけどどうしたの!?」

 

先ほどまでセイリュウインベスと戦っていた萃香が神社に戻ってきた。かなり激しい戦いだったのか所々怪我をしている。それでも、案外元気そうだが。

 

「角の人って、私は鬼だよ!お・に!」

「鬼?鬼って、あの鬼ごっこの鬼?」

「鬼ごっこって、答えに困るねぇ・・・。鬼ってのは種族の一つだよ。知らないのかい?」

「うーん?」

 

戦国は首をひねる。鬼と言われて思い出すのは、本に出てくる赤鬼くらいだ。

 

「まあ、あんたは幻想郷に来たばかりだから、知らなくても仕方ないさ」

「ねぇ、さっきから気になってるんだけど、ここってもしかして異世界?」

「異世界って言うか、一応日本にあるんだけど、似たようなものかね?」

「・・・やっぱりね」

 

戦国はようやく自分の置かれている状況を把握出来た。あの空間の亀裂はこの世界ーーー幻想郷に繋がっていたのだろう。しかし、一つの疑問が解決すると同時に、新たな疑問が出てくる。インベスがここに出た事、ではなくロックシードをここの住人が持っていた事だ。ロックシードは加工物だ。自然にあるものではない。なのに、この世界にあった。それは何故か。戦国は頭の中に様々な仮説を立てるが、納得のいく答えが出ない。せいぜいあの空間の亀裂に巻き込まれたといった考えくらいだ。それでも、納得はいかないが。

 

「そんな事より、霊夢達はどこだい?」

「紅いリボンの人なら、黒い帽子の人と羽の生えた子と一緒に人里に行ったけど」

 

考え事をする戦国に萃香は話しかける。本来の用事は霊夢達にあった。しかし、タイミングが悪くすれ違いになってしまったが。

 

「すれ違いになっちゃったか。人里に向かわないとね」

 

萃香はそう言い、戦国の手を引っ張る。状況が飲み込めてない戦国はそれに戸惑ってしまう。

 

「どうしたのさ、スイカ太郎?あんたも行くんだよ」

「え?いや、でも、僕が行っても・・・それに、ドライバーはあるけどロックシードが無いし」

「ロックシードってやつなら、私が預かってるよ」

 

萃香は懐から二つのロックシードを取り出す。一つは使用不可状態のスイカロックシードで、もう一つは黒影の変身に使うロックシードだ。その二つのロックシードを見て、戦国の目つきが変わる。

萃香は戦国の意志を試していた。ここでどう選択するのか。受け取るのか、それとも目を逸らすのか。

 

「どうするんだい?ここでお留守番するか、私と一緒に戦いに行くのか」

「僕は・・・」

 

戦国の中での答えはもう決まっていた。萃香からロックシードを受け取り、神社の中へと入る。自分が戦うための力を使うために。

 

「確かここに・・・あった!」

 

戦国は卓袱台の上に置きっぱなしになっていた戦極ドライバーを手に取る。インベスが現れた以上、自分に選択肢は無い。

 

「あの子達を守らなきゃ」

 

例え見ず知らずの人でも守る。それは、ユグドラシルの研究者としてとかアーマードライダーだからとかではなく、戦国自身の思いだ。

 

『それで本当にいいの?』

「え?」

 

急に聞いた事の無い人の声が聞こえた。大人とも子供とも言えない女性の声が。周りを見回すが、誰もいない。まるで直接頭の中に話しかけるかのように、声は響く。

 

『今その力を持ってあの子達を見捨ててこの場から逃げれば、貴方は自由になれる。もう二度と閉じ込められる事も無い。本当の自由を手に入れられる』

「本当の・・・自由?」

『貴方が失ったものに怯える事も無くなる』

「・・・」

 

声の主はまるで戦国の事を全て知っているかのように語りかける。優しく諭すような声で。自分の心を包み込むようなその声に、戦国は答える。

「誰かを見捨てて手に入れられる自由なんて、僕はいらない」

 

戦国に迷いは無かった。自分に名前をくれた人が言っていた言葉を思い出す。

 

「『自由を手に入れても、たった一人だけの世界ではそれはただの孤独だ』。僕が目指すものは皆がいる世界だ!」

『・・・後悔しない?』

「知らん!そんなのは、後で考える!」

 

そう言い切り、戦国は外へと走り去る。

 

『・・・その心を無くさないように願うわ』

 

声は最後にそう言った。

 

 

人里の前では、インベスとの戦いが続いていた。劣勢ではないが優勢でもない。あまりの数の多さに状況が進展していない。

 

「ちっ!数が多すぎるぜ!」

「あたいの最強の技が全然効かない!」

「魔理沙!チルノ!下がりなさい!」

 

霊夢が多数の光弾をインベス目掛けて発射する。周りの被害を考慮せずに放ったために草木や地面がえぐれる。複数のインベスは光弾に巻き込まれ爆散するが、クラックから次々と現れてくる。

 

「キリが無いわね・・・」

「『レミリア』にでも頼んで赤い霧でも出してもらうか?」

「そうね、終わったら考えておくわ」

 

魔理沙の冗談に答えながらも霊夢は考える。あのロックシードでインベスを召喚しているのなら、それを破壊すればいいはずだ。どうにか近づく方法は無いか。まあ、男の事を考慮しなければ幾らでも方法はあるのだが、それだと事の真相が聞けずじまいになる。

 

「行け行け!全員ぶちのめせ!」

「あいつ、かなり様子がおかしいぜ」

「なんか怖いよ」

「あのロックシードのせいかもしれないわね」

「勘か?」

「まあね」

 

男は目を血走らせながら狂ったように野次を飛ばしている。どこか自分の意思が無いようにも見える。

その中で魔理沙は別のことに気付く。

 

「なあ、段々インベスの数が減っていってないか?」

「確かに、最初と比べると勢いが無いわね」

 

魔理沙の言うとおり、クラックから出てくるインベスの数が徐々に少なくなってきている。男もそれに気付いたのか、焦りを見せ始める。

 

「ほんとだ。家来の数が減っててる」

「くそっ!マジかよ!!」

 

しばらくインベスと戦っていると、突然インベスの出現が止まりクラックが全て閉じる。男は本格的に焦り、ロックシードを何回も操作する。

 

「おいおい!もう出てこねぇのかよ!?」

「チャンス灯台ね!」

「明るくしてどうするんだよ」

 

チルノの間違いにツッコミながらも、魔理沙は男に近づく。まだインベスは残っているが今が男を捕まえるチャンスだと。

だが、男の悪足掻きはまだ終わっていなかった。

 

「待って魔理沙!まだ何かくるわ!」

「は?」

 

霊夢の言葉に立ち止まった魔理沙の目の前に、巨大な手が振り下ろされる。直撃はしなかったものの、衝撃で魔理沙は吹き飛ばされる。痛みに怯みながらも、魔理沙はインベスに攻撃しようとし、言葉を失う。

 

「ゴオオオォォォーーー!!」

 

さっきまで戦っていたインベスよりも、いや、昨日の戦いにすらならなかった赤いインベスよりもずっと巨大なインベスがそこにいた。

異様に発達した上半身に全身を覆う枝角を持った、鹿を思わせる見た目の遥か巨大なインベス。『シカインベス』の『強化体』が空中に開かれたクラックから出現した。

 

「何だよ・・・あれ?」

「・・・本当に化け物ね」

「・・・あれ?あたい、体が動かない?何で!?」

 

先ほどまで戦っていたインベスとは比べ物にならない威圧感に、三人は恐怖を感じる。自分達など軽く潰せそうな巨体に何ができるのか。本来、死を恐れない妖精であるチルノですら死の恐怖で怯えている。

三人が動けずにいる間に、残ったインベスが周りを囲んでくる。既に折れそうになっている闘志を上げようにも、恐怖で何も出来ない。

 

「・・・けて」

「ウオオオォォーーー!!」

 

シカインベス暴走体が動き出す。巨体に見合わない速さで霊夢達に向かっていく。

 

「・・・助けて」

 

チルノの呟いた言葉はーーー届いた。

 

「そおりゃあ!」

「セイヤー!」

 

空から戦国と萃香がインベス強化体に飛び蹴りを食らわせる。突然の事に対応出来なかったインベス強化体は二人の蹴りが直撃し地面に倒れる。その隙をみて我に返った霊夢がインベス強化体を結界に閉じ込める。

空中で一回転しながら着地する萃香と戦国。空から待機状態のダンデライナーが降ってきて、戦国はそれをキャッチする。予想外の助っ人に霊夢達は動揺した。

 

「萃香に、スイカ太郎!?」

「ちょっと!スイカ太郎、何であんたまで来てるの!?危ないから逃げなさい!」

「危ないのは百も承知。それに、危ないのなら尚更ほっとけない」

「・・・どうして?あなたがここを守る必要は無いでしょ」

 

霊夢の疑問に、戦国は自分の意思を伝える。

 

「誰かが助けてって言った。僕はそれを助けたいって思った。それで十分だよ」

「・・・馬鹿だな」

「本当に馬鹿ね」

「すいかたろうはおバカさんなのね」

「えぇ〜」

 

ちょっと感心されるかなぁ、と期待していた戦国の考えはあっさり砕かれた。しかし、

 

「でも、嫌いじゃないぜ?そんな馬鹿は」

「そうね」

「あたいも!」

 

三人が初めて本当の笑顔を戦国に見せた。戦国もつられて笑顔になる。

その間も周りで萃香一人がインベスと応戦している。軽々とインベスを放り投げながら、萃香は戦国に手伝うように言う。

 

「おーい!スイター!早く手伝いに来てくれないかい!」

「分かった!あ、じゃあ、そこで待ってて。僕が戦うから」

 

霊夢達にそう言い、戦国はインベスに立ち向かう。突然現れた戦国を警戒しているのか、インベスは動かない。

 

「・・・いくぞ」

 

懐から戦極ドライバーを取り出し、腰に当てる。すると、ドライバーから銀色のベルトが出てきて戦国の体に巻きつく。そして、変身に使うロックシードを構える。前面にマツボックリがデザインされており、『L.S.ー01』と刻印されている。

 

「変身!」

『マツボックリ!』

 

『マツボックリロックシード』を解錠すると、戦国の真上にクラックが開かれ巨大なマツボックリのようなものーーーマツボックリアームズが降りてくる。

その光景を霊夢達は何も言わずに見ている。これから何が起きるのか、それを見届けるために。

 

「そりゃ!」

『ロックオン』

 

戦極ドライバーの中央部にマツボックリロックシードを取り付けロックする。法螺貝のような音色が鳴り響き、準備が完了した事を知らせる。カッティングブレードを握り、倒す。

 

『ソイヤッ!マツボックリアームズ!』

「「え?」」

「おぉー!」

 

音声と共にロックシードが切れて断面が現れる。それと同時に空中のマツボックリアームズが落下し、戦国の頭に被さった。こうなるとは全く予想していなかった霊夢と魔理沙は驚く。なぜかチルノははしゃぐ。

 

『一撃・イン・ザ・シャドウ!』

 

戦国の体に黒いアンダースーツが現れ、マツボックリアームズ内の戦国に仮面が装着される。マツボックリアームズが展開し、それぞれ肩、背中、胸の鎧となる。最後に戦国の手に影松が出現し、変身が完了する。戦国は影松を軽く振るい、自分が変身した事を確認する。

 

「ドライバーに問題は無いな」

「なあ、お前スイカ太郎だよな?」

「スイカ太郎?違うよ」

 

目の前で起こった事が信じられないのか、魔理沙がそう確認する。そして、戦国はそれを否定し魔理沙達の方を向いて自分の名前を告げる。

 

「僕の名前は、『戦国 時正』」

「戦国・・・」

「時正?」

「そして」

「!おい、後ろ!」

 

後ろを向いた隙にインベス達が襲ってくる。それを見た魔理沙が注意するが、戦国は焦る事なく影松でインベスを切りふせ爆散させる。

三人を背に、結界を破ったインベス強化体と対峙する戦国はもう一つの名前を叫ぶ。

 

「アーマードライダー黒影だ!」

 

戦国は一つの運命を選んだ。見ず知らずの誰かのために、インベスと戦う。その運命を。

 

 

 





変身シーンが凄く短かったですね。次回、戦闘しますので、どうかご容赦を。

てか、東方側の口調が安定してない・・・。
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