ポケットモンスターMIX ~時神の瞳を持つ者~   作:万年レート1000

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プロローグ⑤:ライバル

「勝ったー! やったー!」

「くっ……まさか、初戦が黒星とはな」

 

 チュチュと手を取り合って喜びあっていると、白金髪トレーナーはおもむろに『げんきのかけら』を取り出して、ジュンに使用した。

 

 気絶していたジュンが目を覚ます。

 げんきのかけらは、ポケモンを戦闘不能状態から蘇生するアイテムだ。

 

 結構な高級品な筈だが、駆け出しトレーナーのくせに躊躇いなく使うなぁ。

 

「だー! 負けたー! くやしー!」

 

 起き上がって早々、ジュンは涙目になりながら赤い羽根をバタバタ振りながら立ち上がった。

 

「ピカリ……いや、チュチュ! 調子に乗らないことね! 今日はなんか朝からお腹の調子悪かった気がするし、そもそもタイプ相性的にあたしは常にハンデを背負ってるみたいなものなんだからね!」

「勝ちは勝ちですー! それにわたしの体力をギリギリまで削れてたからハンデ背負ってたのはむしろわたしなんですー!」

 

 ぎゃいぎゃいと女二人でも姦しいチュチュとジュンを見て、本当に仲良いなぁと生暖かい視線で見守っていると、僕の方に近づいてくる影が一つ。

 

 さっきまで戦っていた、白金髪トレーナーだ。

 名前は……なんだっけ?

 

「良いバトルでした。改めて名乗らせて頂きましょう、俺はこの町出身の『タイト』といいます」

「あ、どうも。僕は『トキヤ』です」

 

 傲岸不遜そうな見た目に反して、中々礼儀正しい男だった。

 

 やはりこの男、悪いやつではなさそうだ。

 ホント、見た目は『天上天下唯我独尊』が口癖でもおかしくないくらいキザなイケメンだというのに。

 

「最後の『あまえる』、してやられましたよ。でんじはで麻痺を狙ってくる可能性は考えていましたが……見事でした」

「い、いやあ、はは……咄嗟に思いついただけだよ、実際かなり賭けだったし、ただチュチュが頑張って耐えてくれたおかげおかげ」

 

 なんとなくバツが悪くて、視線を逸らす。

 

 右目が、ジンジンと疼く。

 

「ほら、タイプ相性もこっちが有利だったしね」

「ふふ、謙虚な人だ。タイプ相性は確かに重大な要素だが、勝負はそれだけではないでしょうに……ところで、トキヤさんは……」

 

 タイトがちらり、とチュチュの方に視線を向ける。

 

 チュチュとジュンは取っ組み合いの喧嘩をしていた。

 何してんだあいつら。お互い体力ミリの筈だろ。

 

「『アルセウス杯』に、挑戦するつもりですか?」

 

 アルセウス杯。

 カミヨ地方最大の大会で、優勝することで外の地方に出る許可が貰える大会……という認識だ。

 

 具体的な内容や、出場条件はまだ知らないが……。

 

「ああ、優勝する」

 

 優勝しなくちゃいけない理由がある。

 

 大言壮語かもしれないが、これだけは一人のポケモントレーナーとして譲れない思いだった。

 

「ふっ、では俺たちはライバルですね」

 

 ニヒルに笑って、タイトは右手を差し出して握手を求めてきた。

 

 ライバル。

 ……上等だ、同じ町から旅立つ者同士、切磋琢磨してお互いを高めあおうということか。

 

 手を、握り返す。

 握った手に、画鋲が突き刺さった。

 

「痛っ!?」

「ヒュー! 引っかかったぜバーカ!」

 

 が、画鋲を握りこんでいたのか!?

 なんて奴だ! リアルでこんなことするやつ初めて見たぞ!?

 

「あんな勝負、負けだなんて認めないよーだ! 覚えてろ! 今度会う時は地面タイプ三体くらい捕まえて育てておくから覚悟しやがれええええええええ!」

「て、てめえええええええええ! やっぱタイプ相性不利だったこと気にしてんじゃねえかぁあああああ!」

「チュチュー! 次会った時は負けないわよ! 首洗って待っておきなさい!」

 

 捨て台詞を残して、タイトとジュンは走り去っていった……。

 

 ……キャラの安定しない、愉快なライバルが出来たものだ。次会ったらケツバットしてやる。

 本音を言えば今すぐにでも追いかけて画鋲投げつけたいところだが、今は他にやることが満載だ。

 

 何せ、トレーナーになると決めたのだ。

 旅の準備や、職場への連絡、この地方特有の文化について学んだり、やらなくてはいけないことは山ほどある。

 

「チュチュ、とりあえずチュチュのお父さんに事情を説明しなきゃだから一回家に……」

「…………」

「チュチュ?」

 

 チュチュは地面に倒れ伏していた。

 

 駆け寄って、顔色をうかがう。

 まさか……これは……。

 

「体力ミリの状態で、喧嘩なんかするから戦闘不能になってやがる……!」

 

 あほか!

 全く、仕方ない……急いでポケモンセンターに……あ。

 

 ポケセン無いんだっけ。

 どうしよう。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「げんきのかけらが一個百五十ポケドル……だと?」

 

 チュチュを背に背負いながら、僕は驚愕の表情で薄黄色の鉱石――げんきのかけらを手に取る。

 

 あの後、とりあえず家のベッドで寝かせとくか、とチュチュを背負って歩いていたところ、路商を広げている『カクレオン』というポケモンが居た。

 そこで、この衝撃的な値段のげんきのかけらと出会ったのだ。

 

 一ポケドルの価値は大体一円と同じだから、要するに百五十円である。

 

 げんきのかけらは他の地方なら一個千五百円もする高級品。

 見たところ偽物には見えない……何でこんなに安いんだ?

 

「勿論、お客様の笑顔のためです。今なら十個買って頂ければ千円でお譲りしましょう」

「な、なんて良いカクレオンなんだ……! 三十個買います!」

「毎度あり~」

 

 一か月前まで無一文だった僕にとって、三千円はそれなりに大金だが、それで手に入るのがげんきのかけら十個であるというなら話は別だ。

 

 ホクホク顔で三千円を支払い、げんきのかけら十個ゲット!

 これでチュチュを起こしてあげられるぜ。

 

「あ、ところでカクレオンさん、モンスターボールは売ってないの?」

「? はて……もんすたぁぼぉる、とは?」

「え?」

「え?」

 

 何それ、と不思議そうな顔で首を傾げるカクレオンさん。

 

 モンスターボールの存在自体を知らない……? そんなことありえるのか?

 

 もしかして、この地方にはモンスターボールが……無い?

 

 ……捕獲の仕方については、後でゆっくり調べよう。

 とりあえず今はチュチュを起こしてあげないと。重くは無いが、静電気がピリピリする。

 

「チュチュの『とくせい』は『せいでんき』かな……? まあいいや、ほら起きてー」

「ぴっ!」

 

 げんきのかけらをほっぺにグリグリと押し付けると、しばらくしてチュチュが飛び起きた。

 それと同時に、げんきのかけらが砕け散る。

 

 よしよし、やっぱりちゃんと本物だったな。

 

「こ、此処は……?」

「公園からの帰り道だよ。とりあえず降ろすな」

「う、うん……」

 

 よっと。

 

 チュチュは背から降り立つと、元々赤いほっぺをさらに赤くして、手櫛で髪を整えた。

 

 おんぶされてたのがちょっと恥ずかしかったのだろうか。

 仕方なかったとはいえ、年頃の女子として男子におんぶされるのは複雑な気持ちなのかもしれない。

 

 こういうときはポケモンの姿をしていた方が気が楽なんだけどなぁ。

 

「……ん? 何でこんな中途半端なところで起こしたの? わたしの家行けば普通にげんきのかけらが置いてあるのに」

「げ。そうだったのか? まあ、この先必要なものだから、安く売ってたし纏め買いしたんだよ。そこのカクレオンさんから……あれ?」

 

 いつの間にか、カクレオンの路商は姿かたちも無く消えていた。

 

 もう何処かに行ってしまったのだろうか。

 

「え? 買ったの? げんきのかけらを?」

「ん、なんか拙かった?」

「いや、げんきのかけらなんて『そこら中に落ちてるし』……わざわざお金出して買うほどのものじゃないよ?」

「えっ」

「えっ」

 

 ……。

 …………。

 

 言いたいことは、山ほどあるが。

 

 とりあえず僕は今度カクレオンに出会ったら三千円分の恨みを晴らすことを心に誓った。

 

 

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