ポケットモンスターMIX ~時神の瞳を持つ者~ 作:万年レート1000
「ククク……我を仲間に……? いいだろう、だが油断するなよ? 我が漆黒の翼が齎す深淵よりも暗き闇は遍く全てを飲み込む闇、有象無象の区別無く……おい、何処に行く?」
「ゲーッスッスッス! わたちを勧誘するなんて見る目があるでゲスねぇ! いいでゲスよ、条件次第じゃあんたに付いて行ってやっても……ゲス? どこへ行くでゲスか?」
「んんwwwボカチュウはありえないwww異教徒は導くしかありませんなwwwおぅふwww何処へwww行くのですかなwwwんんwww」
「暴力! 金! S〇X! 暴力! 金! S〇X! ああん? 仲間だぁ? 合法的に暴力を振るえるってんなら、付いていくしかねぇよなぁ……おい待て! 何処へ行く!」
「はわわ! あちしを仲間にでやんすか!? ふゆぅ……こ、怖いのは苦手ですぅがぁ……で、でも折角トレーナーしゃんと戦えるのでちから、うゆ、あちしがんびゃる! ……え? あちしの性別? ♂ですが? ……あっ、何処に行くのでぃすかぁ!」
「うわぁ……君、ピカチュウの
「――この森に、まともな鳥ポケモンは居ないのか!」
電撃で丸焦げになったムックルを尻目に、僕は天を仰ぎ叫んだ。
交渉は――はっきり言って苦戦している。
いや、正確に言うならば交渉自体には結構あっさり乗ってくれるけど、仲間になって欲しいと思える性格のポケモンが居ないというべきか。
ポケモンには色んな性格の子がいる。
同じ種類だとしても、決して同じポケモンは居ない。
頭では分かっていたけれど……どうやらまだまだ理解できていなかったらしい。
『ようき』とか『きまじめ』とか、そんなもので分類できるほど単純なものではないようだ。
モウカザル、コロトック、ミミロル。
君らはどんな性格だったのかなぁ。
「鳥ポケモンが変なのばっかりなら、別のポケモンを狙うかぁ……ん?」
行動方針を変更しようとした時だった。
チュチュが明後日の方向を向いて何かを見つめている。
何だろう、と僕も目を向けると、そこには今まさにムックルを勧誘している女性トレーナーが居た。
快活そうなポニーテールと、動きやすさ重視のTシャツ+ハーフパンツといった格好の、おそらく十歳前後の少女。
駆け出しトレーナーらしき少女は、自己紹介の後「お願いします」とムックルに頭を下げた。
ムックルは答える。
「いいでしょう。まだまだ未熟な身ですが、あなたのお役に立てるよう、誠心誠意仕えさせて頂きます」
「やったー! じゃあね、じゃあね、貴方の名前はね……」
「…………」
「…………」
無表情で、彼女たちを指差しながらこちらを見つめてくるチュチュ。
言うな。
何が言いたいかは分かるから、言うな。
「トキヤって前世で鳥ポケモンに何かしたの……?」
「知るか! 言っとくけど僕が一番泣きたいんだからな!」
もういっそ、ここら辺の鳥ポケモンを纏めてチュチュの経験値にしてやろうか。
幸いにもタイプ相性は抜群、そう苦でも無い筈だ。
「ひ、ひぃいいいいいいい!」
と、僕が危ない発想に至ったその時。
トレーナーらしき男が一人、ポケモンを抱きかかえた状態で僕の横を走り抜けていった。
何だ? 全滅したのか?
この先でポケモンバトルでもしてたのかな?
興味本位で、男が逃げてきた方向に進んでみると、そこには――。
「はっ! 惰弱! 惰弱!」
――一匹のポケモンが居た。
大きな盾のような黄色い鱗が額と両手の先に付いている、灰色の体を持ったリザードマン。
見慣れないポケモンだから、一瞬何が何だかわからなかったが、あれは……。
「『ジャランゴ』……?」
「む。お主もポケモントレーナーか?」
ジャランゴ。
かくとう・ドラゴンタイプのうろこポケモン。
シンオウじゃ見かけないポケモンで、図鑑でしか知らないポケモンだが、『ジャラランガ』と呼ばれる強力なドラゴンポケモンに進化するレアポケモンじゃないか。
ジャランゴは僕らの存在に気が付くと――一も二も無く戦闘態勢に入った。
「人間よ、戦え。我は優秀なポケモントレーナーを求めている、もし我に貴様が勝てば、傘下に下ってやろう」
「……は!?」
「問答無用! さあ、行くぞ!」
拳と拳を擦り合わせ、こちらに向けて飛び出すジャランゴ。
とりあえずチュチュ! 分かったから『ね? わたしが特別好戦的なわけじゃないでしょ!?』みたいな顔してないで戦闘態勢を取ってくれ!
*****
「カッテェェェェェェ!」
端的に言えば、少し調子に乗っていた。
この地方で『トレーナーが付いているポケモンは強い』という事実をなまじ体験してしまったばかりに、僕は『野生のポケモン相手なら多少のレベル差はひっくり返せるでしょ』と高を括っていたのだ。
というか、実際多少のレベル差程度はひっくり返る。
優れたトレーナーならば相当レベルが離れていようと関係なく勝ちを掴める。
つまり今回の『敗因』は、レベル差が『多少』どころでは無かったこと。
それと、僕が決して優れたトレーナーでは無かったことの二つだ。
「中々良き、戦いだった」
気絶するチュチュを抱える僕に、ジャランゴは言う。
「ピカチュウ一匹で我と『そこそこ』戦いになっていたことを、まずは評価しよう。……だが、あくまでそこそこだ」
「…………」
「我が求めるのは絶対なる強者。『異能』とまで評される才を持っているトレーナーだ。貴様ではない」
それだけ言って、ジャランゴは去っていった。
おそらく次のトレーナーを探しに行くのだろう。
僕は、げんきのかけらをチュチュに使い、彼女を気絶から覚ました後、決意するように呟いた。
「ぶっ潰す」
「もしかしてとは思ってたけど、トキヤって結構執念深いよね」
「違う。根に持つタイプなだけだ。あの野郎ちょっとレベル高いからって上から目線で人のこと『そこそこ』呼ばわりしまくりやがって……」
もう既にこの地方に来てから三人も『いつかやられた分をやり返すリスト』に乗っている。
タイトとカクレオンとさっきのジャランゴはこっちからある程度やり返さない限り絶対許さねえ……。
「チュチュ! 絶対あいつボコボコにして仲間にしてやるぞ!」
「凄く強かったし、仲間に出来るならしたいけど……勝てるかなぁ」
「とりあえずレベル上げとわざマシン……『かみなりのいし』でチュチュを進化もさせたいけど、売ってるかなぁ?」
「進化はしないよ」
「え?」
「しないよ」
あっ、またカミヨ地方特有の何かか。
そういえばお父さんピカチュウもお父さんなのにライチュウじゃなくてピカチュウだったしな。
……マジかぁ、どうしよう。
「ジャランゴの苦手なタイプを捕まえて育てるか……ええと、かくとう・ドラゴンの弱点……ひこうタイプは除くとして、フェアリーか」
「この辺りにフェアリータイプなんて居たかなぁ……それに、あの男が欲してるのは『強いトレーナー』でしょ? 多分ガチガチに対策して倒しても意味無いんじゃないかなぁ」
「ぐぬぬ……」
それならもう、手は一つか。
「チュチュ、お前の力であいつに勝つぞ」
「えっ」
チュチュは目を丸くした後、自信なさげに目線を逸らした。
何だその顔。自信が無いのか?
「そ、それこそ無理なんじゃない? 向こうはドラゴンで……わたしはピカチュウよ?」
「なに言ってるんだよ、無理じゃないと思ってるから言ってるんだ」
「……!」
ピカチュウだから何だというのか。
史上最年少でカントー地方のチャンピオンになった少年の手持ちにだってピカチュウは入っていたのだ。
「僕は三流だけど、三流には三流のやり方がある。精々一泡吹かせてやるさ」
これでもそこそこの経験はあるのだ。
弱者の戦い方ってやつを、あのジャランゴに見せてやろうじゃないか。
「それじゃあ、まずは準備からだ! 行くぞチュチュ!」
「う、うん! わたし頑張る!」
嬉しそうに頷くチュチュ。
……彼女からの、信頼を感じる。
トレーナーとして、応えてあげなくちゃな。
僕らは腕を振り上げ、森の中を走り始めた。