ポケットモンスターMIX ~時神の瞳を持つ者~   作:万年レート1000

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シェイミーウッド③:三流の戦略

「探したぞ、ジャランゴ!」

「……む?」

 

 ジャランゴに敗北してから、翌日。

 全ての『準備』を終えた僕は、再びジャランゴの元へと辿り着いた。

 

 場所は前とは異なり、シェイミーウッドの中心部付近。

 色とりどりの花が咲き誇る草木に囲まれた、広場になっているエリアだ。

 

「昨日のリベンジ、させてもらうぜ」

「ほう」

 

 少し嬉しそうに、ジャランゴは僕の方を振り向いた。

 

「初めてだぞ、昨日の今日で我にリベンジを挑んでくる阿呆はな」

「改めて、僕が勝ったら仲間になってもらうぞ」

「勿論だ。尤も、そんな事態は起こりえないことだがな」

 

 ジャランゴが、戦闘態勢を取る。

 同時にチュチュが一歩前に出て、ビリビリと体に電気を纏い始めた。

 

「安心しろよジャランゴ。ちゃーんと、良い名前考えてきたからさ」

「戯言を……!」

 

 ジャランゴの腕が、光を纏う。

 ドラゴンクローだ。それ見て、僕はチュチュに指示を出す。

 

「でんじは!」

「うん!」

 

 麻痺させるための電撃が、チュチュの頬から腕を伝って放たれる。

 

 それはジャランゴに命中し、奴を麻痺状態にした。

 

「それがどうしたっ!」

「痛っ……!」

 

 ドラゴンクローが、チュチュの腹部に突き刺さる。

 相変わらず、鋭くて重い一撃だ。もう一撃でも喰らったらチュチュは戦闘不能になるだろう。

 

 でも、ジャランゴを麻痺状態にすることはできた。

 

 これですばやさが著しく下がったジャランゴ相手なら余程遅いポケモンじゃなければ先手を取れるはずだ。

 

「チュチュ! あまえる!」

「何だぁ? 攻撃してこないとは……勝つ気はあるのか?」

 

 あまえるで、攻撃を下げる。

 ただ、例え攻撃を下げてもジャランゴの元々の攻撃力を考えたら次の攻撃を耐えられないだろう。

 

「勝つ気が無いなら、去れ!」

「きゃあああああああ!」

 

 再びのドラゴンクロー。

 避けきれず、チュチュは攻撃を受けて仰向けに倒れた。

 

「チュチュ!」

 

 チュチュに駆け寄る。

 ……目を回して、気絶してしまったようだ。

 

「終わりか?」

「……いいや、まだだ」

 

 立ち去ろうとするジャランゴを呼び止める。

 

 ここまでは計画通り(・・・・・・・・・)

 

 勝負はここからだ。

 

「行け、『ムク一郎』!」

「オウフwww初戦がドラゴン相手とは拙者もついてないですなwww」

「! 新たな仲間か」

 

 僕の懐に隠れていた、ムックルが飛び出した!

 

 そう、昨日交渉に成功したものの、連れて行かなかったムックルだ。

 あの後再び交渉して、今度こそ付いてきて貰ったのさ!

 

「ですがこれもまた試練、頑張りますぞwww」

「ふん、だが見たところ、ろくに修練もしていない、付け焼き刃か」

 

 ジャランゴへ突貫していくムックルことムク一郎。

 

 しかし麻痺状態、かつ攻撃力が下がっている状態だというのに、ジャランゴはその突貫を軽くかわすと、すれ違いざまにドラゴンクローでムク一郎を叩き落した!

 

 一撃。

 やはり野生で捕まえたばかりのポケモンではこれが限界か、まあそれもわかってたことだ。

 

「それで? この程度で本当に我を倒せると――……おい貴様、何をしている?」

「何って……チュチュにげんきのかけらを使っているだけだが?」

 

 僕は、ムク一郎がやられている間にげんきのかけらをチュチュに押し付けていた。

 

 げんきのかけらが効果を発揮して、チュチュが立ち上がる。

 

「よし、チュチュ! 行ってこい!」

「…………うん」

 

 『こんな戦法が許されていいのだろうか……』と言いたげな表情でチュチュは再び前線に上がった。

 

 勝つため勝つため、仕方ない仕方ない。

 

「チュチュ! でんきショック!」

「ピィカア、チュウウウウウウ!」

「ぐあっ!」

 

 電撃が、ジャランゴを襲う。

 流石に一撃じゃ倒しきれない、どころかジャランゴとチュチュのレベル差と相性を考えると何発与えればいいのか検討もつかない。

 

 だから僕にはこの手しか無いのだ。

 

「回避は考えなくていい! でんきショック、撃ちまくれー!」

「くぅっ! はあ! このっ!」

 

 チュチュから放たれる電撃に当たりながらも、ジャランゴは怯まずにドラゴンクローをチュチュに向けて放つ。

 

 ひたすら電撃を放つことに集中していたチュチュに、その攻撃を避けることは出来ず、チュチュは再び戦闘不能になった。

 

「これで……!」

「まだまだぁ! 行け! 『ムク次郎』!」

「――――――刻は来た」

 

 ス――っと僕の背中から、またもやムックルが飛び出した。

 

 お察しの通り、交渉はしたがリリースしたムックルの内の一体である。

 

「闘志に燃えし鎧龍よ、貴様の鎧は我が漆黒の翼に耐えうるだけの強度は持ち合わせているかな?」

「……成程な、トレーナーよ、それ(・・)が貴様の戦略か」

 

 ジャランゴに睨みつけられながら、僕はチュチュにげんきのかけらを使用する。

 

 何と言われようとも、こういうの(・・・・・)が僕の戦略だ。

 尤も、ジム戦とかの公式戦では使えない手だけども。

 

素晴らしい(・・・・・)

「……!」

「戦いとは勝利が全て(・・)だ。如何なる手段を使おうと勝つために最大限の努力をする。そういうのは大好きだ」

 

 てっきり乏しめられるからと思っていたから、素直に驚いた。

 

 そう、その通りだ。

 戦いっていうのは『勝つこと』が前提条件。

 

 だから勝てなくなった僕は戦うことが嫌になった。

 

 案外このジャランゴとは、気が合うのかもしれない。

 

「だが勝つのは我だ。この程度の奇策、我が拳で粉砕してくれよう」

「……やってみろ!」

 

 背中から残りのムックル三匹が姿を現す。

 全員、昨日捕獲しなかった性格に一癖あるムックルだ。

 

 このムックルたちと、ムックルが戦っているうちに蘇生するチュチュをあと四回。

 

 全部を捌いて倒しつくされたら、僕の負けだ。

 

「チュチュ! でんこうせっか!」

「来い! 全て倒しきってみせる!」

 

 ムク次郎が倒れ、チュチュが出る。

 チュチュが倒れ、ムク三郎が出る。

 ムク三郎が倒れ、チュチュが出る。

 チュチュが倒れ、ムク四郎が出る。

 ムク四郎が倒れ、チュチュが出る。

 チュチュが倒れ、ムク五郎が出る。

 

 そんな風に繰り返して――ついにムックルが全員倒れた。

 

 流石に全滅してからげんきのかけらを使っても、勝ちとは言えない。

 というかそんな状況でげんきのかけらを使おうとしたらジャランゴに妨害されるだろう。

 

 これが、最後だ。

 

「行くぞ、チュチュ」

「うん、ようやく、あのジャランゴの動きにも慣れてきた」

「……それは、ハァ……こちらも……同じこと……!」

 

 チュチュとジャランゴが、相対する。

 

 正直、ムックル使うまでには倒しきれると思ってた。

 麻痺にして、攻撃を下げて、若干ずるい手を使って体力を削って――。

 

(ここまでやって、ようやく五分ってとこかな)

 

 ジャランゴの残り体力は、チュチュの電撃で、あと一、二発ってところか。

 チュチュの残り体力も、ジャランゴに一、二発殴られたらアウト。

 

 すぅっと息を吸って、吐く。

 目を閉じて、開く。

 

 ――集中。

 

「チュチュ! でんきショック!」

「チュウウウウウ!」

「もうそれは見切ったぁ!」

 

 狙い通りの軌道を描いて放った電撃は、両手の先に付いた鱗で弾かれた。

 

 狙い通り過ぎた!

 正確無比な電撃を放てるからって調子に乗って『良いとこ』ばかりを狙いすぎたのだ。

 

「ドラゴンクローォオオオオオオ!」

「避けろ! チュチュ!」

 

 でもこっちだって負けちゃいない。

 

 いい加減奴のドラゴンクローにも慣れてきた。

 

 間一髪でかわすと、反撃とばかりにチュチュが電撃を放つ。

 

「甘い!」

 

 しかしそれすら弾かれた。

 

 間髪いれずに放たれたジャランゴのずつきを、かわしきれずに喰らってしまう。

 

「くぅ……!」

「チュチュ! 大丈夫か!?」

「だ、大丈夫……」

 

 何とか立ち上がるチュチュ。

 もう一発喰らったら、立ち上がれないだろう。

 

 どうする。

 考えろ考えろ考えろ……。

 

 チュチュの技はでんきショック、あまえる、でんじは、でんこうせっかの四つ。

 最大火力はでんきショックだけど、まずでんこうせっかで……いや、それは悠長か?

 

 ジャランゴの技は、今見えてる限りだとドラゴンクローとずつきの二つ。

 どっちだ? 今度はどっちで来る……?

 

 くそっ考える時間が無い……!

 

「もう一発! ……っぐ!」

「っ、避けろ! チュチュ!」

 

 ジャランゴが追撃のドラゴンクローを放ってきた。

 が、直前で一瞬動きが止まったおかげで何とか回避。

 

 ま、麻痺させておいて本当によかった……!

 麻痺が無ければもうとっくに負けているぞこれ。

 

 どうにかしなくちゃ。

 何か、何か何か手は――。

 

 その時。

 ずきりと右目が痛んだ。

 

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「野生のポケモンにしては『そこそこ』だ」

 

 砂嵐吹きすさぶ砂漠で、うつ伏せで倒れこむジャランゴに語り掛ける人物が一人。

 

 フードを目深く被ったその若い人間は、男か女かもわからない。

 けど確かなことが一つ。――こいつは、強い。

 

 …………って、なんだこの映像!?

 

 モウカザルとの思い出が流れた時みたいな、感覚。

 

 でも僕の記憶にこんな光景は無い。

 倒れているジャランゴから察するに、これは……ジャランゴの過去?

 

「だが、自惚れるな。ポケモンが真の力を発揮するのにトレーナーの力は不可欠。たった一人で最強を目指そうという心意気は買うが……それは不可能だ」

「だが……我は……!」

「おっと、喋らない方がいい。傷は深いぞ」

 

 見れば、うつ伏せで倒れているジャランゴの右脇腹からは大量の血が流れていた。

 

 何か槍のようなもので突き刺されたかのような傷だ。

 

「最強になりたければ、トレーナーを探せ。共に切磋琢磨し、信頼できるトレーナーを……ああ、俺はやめておけ、手持ちにドラゴンタイプが二体居てな、これ以上は要らない」

 

 言って、人間は立ち去った。

 

 ジャランゴは、そいつの背中が見えなくなるまで、ずっとずっとそいつのことを睨みつけていた……。

 

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 ――今のが、ジャランゴがトレーナーを求めている理由?

 

 映像が終わって、視界には『現在』が映る。

 

 右目の痛みに耐えながら、ジャランゴの右脇腹を凝視した。

 

 ……ある(・・)

 見えづらいけど、確かにある。

 

 古傷(きゅうしょ)

 

「チュチュ! でんこうせっか!」

「がっあああああ!?」

 

 きゅうしょにあたった!

 

 チュチュのでんこうせっかは、狙い通りジャランゴの右脇腹をえぐる。

 

 思わず膝をついたジャランゴに向けて、チュチュは即座に追撃を入れる――。

 

「でんきショック!」

「ピィカァ……チュウウウウウウウ!」

「がああああああああああああああああああ!」

 

 電撃が直撃し、ジャランゴの叫び声が響く。

 

 電気によって巻き上がった煙が晴れた時――そこには目を回して倒れるジャランゴの姿があった。

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