そばそば短編集   作:茶蕎麦

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 一時間で「カットアップ」をテーマに書いてみました!

 もし不思議な気持ちとそうなのかなあと結論をつけていただけたら幸いですー。


テーマ:カットアップ

 ボクには年上の恋人がいる。

 外見としては耳の両脇の小さなお下げ髪が似合う、大柄で鷲鼻が目立つ様子。

 口を開けば出る声色の低さばかりはしかしとても意外だった。

 

「いいね」

 

 誰か若い男の子が後ろで吹き替えでもしているのではとすら思えるそんな音色を真横で聞いて、ボクは我に返る。

 そうだ。今回のデートの主題は彼女本人ではなく、その趣味についてだった。

 自分の好きなところに連れて行ってあげる、という彼女が手を引いていくその先が美術展覧会場であったのには驚きがなかったが、しかしそこにあるものにはボクは度肝を抜かれたものである。

 

 彼女が隣で深く頷く度に、揺れる前髪の美しき流れも気にならないくらいに、ボクにその芸術作品はおかしく見えた。

 何しろ、人の顔の写真に機械部品が貼り付けられ、そしてどぎつい色をした切り取られた文字が、特に意味を持たないまま画面中を這い回っている。

 察するに目の置所も不明なこれに恐らく大した意味はない。というか、意図も不明瞭である。題名の「どこか遠くに」という文言ですら嘘のようであれば最早ボクは首を傾げる他になかった。

 納得する彼女を他所によく分からず、ボクは率直に問う。

 

「これ、コラージュっすか?」

「ううん。カットアップ」

「はぁ……」

 

 しかし、こんなに瞳が大きかったっけと思ってしまうくらい熱心にそのランダムが載せられた一枚を見つめる彼女の返答もまた、よく分からないものだった。

 手持ち無沙汰になったボクは、どういうことか手持ちの携帯端末に仔細をお聞きすることにする。

 やがて思慮深いAI様は、とても上手にまとめた上でボクに嘘か本当かこんなカットアップの事実を教えてくれるのだった。

 

「出来てるものをあえて切って、再構成すること……人為的に偶然性の美を生み出すってことっすか?」

「そうそう。賢いね、キミは。30点あげる」

「どーも」

 

 その作品の題名のごとく「どこか遠くに」気持ちを連れて行かれている様子の彼女のそぞろな言葉に、ボクは雑に返す。

 変わった彼女が戯れにくれる点数もそろそろ合わせれば千をも越えだしているのではないか。

 しかし何処まで経ってもろくに変わらぬ様子にボクは内心苛立ちを覚えながら、目の前の作品に関する所感を述べるために口を開くのだった。

 

「つまり、この作者がやりたかったことって……」

「うん」

 

 彼女は、ほぼ貸し切りの会場にてはじめてボクを見つめ直して清聴の姿勢になる。

 だから、ボクは。

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

 

 楽器を握るからには、それに慣れることは肝要に思えます。

 しかし、それはどうにも正しくも本来とは離れているような気が筆者は考えてならないのですね。

 なにせ、文字そのまま別に読み上げるとと「たのしむうつわ」です。

 努力は当然のように大切ではあるでしょう。ですが、そのあまりの真剣ぶりが音を響かせることを楽しまない理由になってしまってはよくありません。

 やがて本質を忘れた多くの方がダメだったと楽器を置いてしまいます。

 私はそんな風に、真面目な続かない人を沢山見てきました。むしろ、出来ないことを楽しむことすら音楽には必要であるのかもしれませんね!

 

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

 

 つれない素振りで通じなければ言葉を用いる他にない。

 私は、私を離さないようにと強く手を取った彼。その大きく節くれだった手の甲に向けるようにしてこう返す。

 

「だから、私は貴方が好きじゃない」

 

 自らに恋をするナルキッソスのお話と、異類婚姻譚を並べることなど無意味だ。

 彼が素敵であるのは分かっている。だが、あまりに私と彼は違うのだ。

 同じじゃなければ私は一緒になれなくてそれだけで、だからこんな恋をするのってとても楽しくないけれども。

 

「でも、貴方を嫌いになんてなれないの」

 

 ただそんな、相反した想いだけは彼に伝えられた。

 

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

 

 

「饅頭怖い」

 

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

「と、いうことっすよね?」

「そうそう! キミ凄いね! 十億万点!」

「うわあ凄まじい点数、どうもありがとうございます」

 

 ボクは、紆余曲折な心の流れを事細かに説明したことで、彼女からそんな高得点をいただけた。

 向けられた輝きばかりが満ちるこのヒトの視線すらまるで嘘のようである。

 ボクは嬉しくなってこう返すのだった。

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

 

神は「光あれ」と言われた。すると光があった。

 

 

 

――――v――――――v――――――v――――――v――――――――――v――

 

 

 

 

 

 

 

「よし」

 

 こうして、()のカットアップ小説は完成した。

 この出来栄えはきっと。

 

「100点満点ね」

 

 そう、私は鼻の先を掻きながら手の中の彼氏だったヒトの写真にそう呟くのだった。

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