ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

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七話投稿。
ここでも集くんのとある一面が垣間見えます。


輪舞:temptation-phase1

まあ、ルーカサイトから数日経った今、俺は何しているかと言えば……

 

「ふぁ~あ……ねむ……」

 

のんびりと登校途中の電車で欠伸交じりの日常に戻ってきた。まあ、戻ったというよりも動いていた状況が落ち着いたといったほうがいいかも。どうして俺がのんびりと学校に登校しているかって? それはルーカサイト阻止での取引で俺が嘘界さんに要求したことを誠実に実行してくれていたのだ。嘘界さんは趣味に走りがちなのだが有能で執着していることに対しては誠実だったりする。だから彼が満足したのか約束の通りに実行した結果がこうして葬儀社に籍を置いていながらもそのことは知らなかったことになっている。

 

いろいろと交流があったアルゴや綾瀬から一発貰ったがな。その痛みよりも俺を心配してくれていた人がいたことがうれしかったな。

 

涯? いろいろとあったがあの失態は見せずに涯の英断で済ませた。それを引き受けて涯を逃がし、機転を生かしてルーカサイトから日本を守ったということで済ませた。その結果は俺は英雄扱いで涯は信頼と信用を落とすことはなかった。そのことにすこし、後ろ冷たい気持ちになった。

 

これはもう終わったことだ。いろいろとごたごたと後始末を済ませ、葬儀社からは自由な学生の身分を持っているからかGHQへの囮として学生に戻ることになった訳だ。いのりと一緒にだ。おそらく学校に怪しまれないためなんだろう。

 

ちょっと眠いのは……察せ、GHQに連行させたのは一週間以上も前だ。家がどうなっているのかなんて想像の通りだろ? それの片づけで遅くなったせいだ。いのりやふゅーねるが手伝ってくれたからだいぶ楽だったがな。

 

まあ、そのまま授業を受けて夕方、何事もなく帰宅。リビングで後回しにしていた洗濯物を二人……+ふゅーねるで片づけていた。

 

え? 学校はどうしたかって? たしか葬儀社での疑いで絡まれたが……まあ、軽くあしらえた。というよりも嘘界さんの絡みを経験すればただただからかい交じりの強気になっているだけの絡みなんて子供じみたものにしか見えなかったし。生徒会長? 誰それ? 来る前になんとかしたしな。

教室でもいろいろと問い詰められたがのらりくらりとおべっか使って切り抜けたしな。こうゆう時にこそ演じていたいい子ちゃんが役に立った。そのことに少しばかり思うところはあったけどさ。

 

それよりも当然かやっぱりというべきか俺をGHQに差し出した日から谷尋がいないは分かっていた。そして収容施設を破壊したときに乗じて逃走しているのだろう。だからいないことは分かっていたが、どうしても寂しさを感じさせてしまう。

 

まあ、近いうちに会うことはありうるから今は谷尋のことは置いておこう。潜伏場所も今はどこなのかもわからないのだから。原作でも出ていた隠れ場所の孤児院の場所を俺は知らない。葬儀社に探させても、その必要性を説明できる自身もないしな。積極的に探しに行きたいが待つしかない。

 

それが……もう手遅れであったとしても。もう現時点でのできることが介錯であってもだ。

 

それとも早めに聞き出して春香のつてを辿って進行抑制剤を融通してもらえばここまで進行しなかったかもしれない。

 

…………やめだ。考えがすでにありえないifのことを考えているんだ。俺は選んだんだろ? 何もしないことを。今までこのことが考えに入っていなかったとしてもだ。今更こう考えるなんて女々しすぎる。

 

「……谷尋のことが心配?」

 

いつの間にか顔に出ていたのかに心配させてしまったようだ。すぐに顔に出てしまうようだ。

 

「ああ……ある程度は知っていたからこうなることは分かっていたけど」

 

「裏切られたのに?」

 

そうだといったらいのりは不満げだ。やっぱり谷尋が俺を差し出したのが不満なのだろう。普段から感情を外に出さないいのりが不機嫌とわかるほどなのだからよほど不満なのだろう。

 

「それでもだ。実のところ谷尋の事情を知っている。それを知っているから気にしていないかもな」

 

そう憑依者として知識だが知っているのだ。引用するの何度目かは分からないが谷尋は順序づけられる人間で俺よりも大切な弟を優先させただけだ。正直に言えば弟を優先させたことがわずかに思うところがあっただけ。ただ一発かますだけで恨みつらみは全くと言ってもいいほどない。

 

「本当に?」

 

俺の回答にいぶかしげに覗いてくる。

 

「ああ」

 

なにも言葉を濁す要素なんてない。まっすぐに言い切ってそこでこの話題は終了。手が止まってしまった作業を再開させる。

 

あの……何度も言うが俺だって思春期の少年なのだ。かわいらしい、あの、その、俺の下着と一緒にするとこう、恥ずかしいものなんだが。

 

後、俺の顔覗こうと前かがみになるのは軽率じゃないかな? いのりって無防備すぎやしないかな? 眼福だが自制しなきゃいけないのが割ときつい。あ? 何が見えるって? 今の彼女の服装けっこうラフなんだよ。解れ、以上。

 

ふゅーねる、解っているから即座にスタンガンはやめてください。割と、というか結構痛いからやめてください。あ、いのりのはお願いします。俺には刺激が強すぎるので。

 

「集ー! 帰ってきているのー?」

 

その時だ。玄関から誰かが返ってきた声が家に響く。その声を聞いたとき、切り替わる。それはもはや無意識どころか反射レベルだった。寒くなれば毛穴が閉じて鳥肌が立つような変化で、その変化をいのりは困惑した顔を見せていた。

 

「たっだいまー!」

 

そして勢いよく、家だからって物凄くずぼらな服装でいるのははしたないなと思いながらもいつも通りの対応(えんぎ)で。役得? 彼女に対しては何の感情も感じるどころか反応すらもない。

 

「ああ、お帰りなさい。春香さん」

 

「しゅ、集?」

 

集の突然の変わりようにあのいのりすらも驚く。彼女の、おそらく家主を思われる桜満春香らしき人物の声を聞いた瞬間にスイッチが切り替わった回路のように変わったのだから。さっきまで感じていた暖かな雰囲気も消え失せている。顔には笑みを見せてはいるが能面のような気味の悪いものにしかいのりは感じない。

 

「また、そんな恰好でいるのは少々恥ずかしくないのですか? もう少したしなみを持ったほうがいいのでは?」

 

「あ、ははは。いいじゃない。私が家主なんだし」

 

まるで人形なのだ。いや人形でも作った意図がある。それすらもない機械というのが相応しいだろう。まるで自動生産されたような機械のようなのだ。集のやれやれと言った仕草ですらプログラミングされた機械の動作のようにしか見えない。

 

「まあ、いいでしょう。それよりも今後の予定はどうなっていますか?」

 

「ええと、明日はパーティーに出演するから」

 

「畏まりました。でしたら召し物はご用意していただきます。夕食は何がいいですか?」

 

「えっと、今はピザが食べたいな」

 

「かしこまりました。では、手配させます」

 

淡々と交わされる会話に温かみがない。極めて事務的な返答にいのりは困惑する。今、目の前にいる少年は本当に自分が知っているような少年なのかすこしだけわからなくなってくる。

 

「それで……彼女は誰?」

 

一連のやり取りを終えた後に春香は前に帰る前にはいなかった同居人に視線を向ける。そう、さっきからずっと黙っているいのりへとだ。次にごくわずかに表情がひきつった。

 

1,2秒ほどすっと視線を細めて彼女を注視する。春香が集にはその反応の理由を知っている。それを一ミリすらも顔には出さず、春香に対する笑顔は動かない。ただただ淡々といのりを紹介する。

 

「ああ、紹介が遅れました。いろいろありましたが彼女がここで下宿することになったいのりです。申し訳ありません、家主の許可なく誰かを上げることになってしまって」

 

唐突に紹介されてほとんど表情が出てはいないが少しばかり動揺していたいのりがぺこりとお辞儀して挨拶をする。

 

「すいませんがまだ片づけるべきことがありますので私は失礼します」

 

つらつら伝えるべきことをさっさと伝えて出ていった。ああ、いつかは来ると知っていたくせにいのりにこの姿を見せたことに鉄面皮でありながらもどこかもやもやしたものを感じていた。洗濯物はいつの間にかふゅーねるが片づけてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングから集が出ていった後、いのりと春香が向き合っている。お互いにどう話していいのかわからなくて沈黙した空気が流れている。別の場所で集が作業している音がわずかに聞こえてくるが別の世界にいるかのように届かない。

 

「いのりちゃんだっけ? どうして家に…………ってどうしたの?」

 

「あんな集……初めて見た。怖かった。機械のような集、知らない」

 

無意識に抱えていたふゅーねるを抱きしめる。それはいのりが想像以上に恐れてしまったことだ。いのりからすれば自分以上に無機質なものを見てしまった。さっきまでいつも通りにいた集がまるで別人に成り代わったように変わったことが恐ろしくて震えてしまう。いや、いのりには別人だと見えてしまった。

 

「そっか……集もちゃんと笑うんだ。私にはぜんぜん見せてくれないのに」

 

そのことをいのりから聞いた春香は疲れたような自嘲でもあるようなほっとしたような声を出した。その様子はどこか安心したようでありながら悲しげな表情だった。そのまま手に持ったビールを一気に煽る。

 

「?……どうして?」

 

いのりは疑問に思う。それはお互いの認識の違いだった。いのりから見た彼は捻くれて大人びているが見た目通りの少年だ。だが春香から見た集は……

 

「そうね……集はね、ロストクリスマスが起こってから……あんな風に変わっちゃったの。まるで人形みたい」

 

そう、(ホンモノ)(ニセモノ)に変わったときから。一番最初に(ホンモノ)として接してしまったのが間違いなく春香なのだから。春香からすれば純粋な心配だったのだろう。だがその純粋な感情は少年にはこれ以上ないくらいに深い深い傷を刻み付けた凶器であった。それ故に肉体よりも高い精神をもってしても防衛本能がそうさせてしまった。その結果が感情の分離。

 

「記憶を失ったから?」

 

いのりが遮るようにその原因を言い当てた。春香は驚く、なんせ集が記憶喪失だと知っているのは春香だけど思っていたのだから。既に十年も前でそれ以前に関わっていた少年も少女も集のそばにはいないのだから。

 

「へえ、それは誰から聞いたの?」

 

「集が教えてくれた」

 

何気なく話したことに、にもう一度驚く。春香も集自身が記憶喪失のことを自覚しているのを知っているからこそ余計に驚いた。

 

「そんなことまで、心許してくれているんだ」

 

「うん、(ニセモノ)(ホンモノ)って呼ばれるのが嫌いだって」

 

「え………?」

 

それは彼女にとっては青天の霹靂だった。同時にパズルが噛み合ったように思考が納得する。だからかと、春香は納得した。そうだ、集はそう呼ばれるのが一番嫌いだったんだと。流石に普通に接しようとしても遅いかもしれないけど…………

 

「さて、どんどん話してもらうわよ~! 私が知らない集のことを!」

 

少女と彼女の夜はまだ終わらないだろう。

 

 

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