ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

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ドーモ、作者のSUMIです。
うん、浮気しまくりです。ニンジャスレイヤーに嵌りかけて忍殺語を習得しようとしたりとか。
そんな中で楽園追放見に行ってきました。ストーリーは王道でマジで面白かった(露骨なステマを……)
見て創作意識湧いたので仕上げてきました。楽園追放で二次やるなら転生ものでやっぱり主人公の内面を掘り下げる形になりそうだなー。電脳人間として意識が覚醒して肉体があったころの暮らしの差異や思想の違いに苦しんだりとか、ディストピアじみた競争社会とかに生き残るために必死に昔の考え方の視点を使って功績立てたりとか。そんな中でしぶとく生き残っている地球人類を見てその生活に憧れたたりとかいろいろ妄想が広がります。
年内最後の投稿です。
こんな寄り道ばっかな作者の作品を読んでくれてありがとうございます。



輪舞:temptation-phase2

春香が帰ってきてからあっという間に一晩が立った。その朝に葬儀社から連絡が来た。

 

そのまま原作通りに潜入している。俺を連れてきた理由としては交渉を有利に進めるためだろう。王の力を見せるために。

 

俺たちはウェイターとして変装している。涯はいつも通りの髪型で変装らしい変装はウェイターとしての服装くらいで下手した気づかれそうなんだが涯は俺よりも慣れているから口出し出来ない。と言うよりも初めて変装する俺に出せるわけがないと言ったほうが正しいのだろう。

対して俺はかなり念入りに変装していた。ウェイター服は当然として髪は黒のメッシュ兼オールバックにして整え、更に黒目のカラーコンタクトに最後の黒い太縁の眼鏡をかけていた。一番最後に念には念を入れて小型の変音機を仕組んでいる。これなら初対面なら別人だと思われるくらいに念入りだ。現にほかの葬儀社のメンバーだって気づかないくらいなのだから。

 

変装して潜入ということなので少なからず緊張してたし、他に考え事をしていた。なによりも。

 

(はぁ、いのりとは話せなかったな……)

 

そう、見せたくなかった自分の一面を見せてから未だにいのりと会話が出来なかった。その原因が春香にずっと付きあわせていたからね。春香を送り出してから直後に涯が俺だけに任務が入ったために結局いのりと話す時間すら作れなかった。どうしてもその時に一瞬だけ見えた表情が頭にちらついている。それはなぜかうざいとか紛らわしいとかは考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして始まったパーティー。不安があったのだがそんな程度の揺らぎなんてなかったかのごとく手馴れた作業のようにこなしていく。傍から見れば潜入した工作員には絶対に見えないだろう。人が歩くように、呼吸するように自然と誰かを演じることが出来てしまう。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

パーティーの参加者に恭しくお辞儀をして見送っていく。そのまま涯が目的の人物に接触できるように出来る限り怪しさを出さず、カモフラージュになるように動いていく。その様は本職のように極々当然のようで違和感などほとんど残さず溶け込んでいく。

 

それはまるで何にでもなれるようで何にもなれないようで……けど、いのりに見せた時よりもなぜか嫌悪は浮かんでこない。まるで当たり前であるかのようだ。

 

その中でひと視界に入った。二階のVIP用の来賓席に春香がいるのを。そういえば昨日言っていたパーティーはこれだったな。ばれないようにそそくさとその場を逃げるように離れる。今の俺の対応だと春香にばれるかもしれない。その離れる様子はいのりの時とはどこか違った。まるで敵から逃げるように、こちらから拒絶するように。

 

その直後にインカムに通信が入る。ツグミからだ。発信している信号からしてかなり緊急事態だろう。

 

「こちら集。どうしたんだ? 何か予測外の事態が発生したのか?」

 

「そうよ! どこからかパーティーの情報がGHQに漏れてたみたい! どうやったのかわかんないけどドラグーンで狙われているわ!」

 

『ドラグーン』、俺も詳しい内容はわからないが大雑把に言えば戦略ミサイルである。当たり前だが威力は推して知るべしで直撃なんてくらったら木端微塵間違いなしである。ツグミが焦るのも無理はない。しかし、俺はそれを知っているために動揺なんてしない。だってここに俺が連れてこられた目的なんだから。当然、もう一人の同行人物も知っても動揺なんてするはずもないだろう。

 

「了解。涯に指示を仰ぐ」

 

そう言って通信を切る。いくらインカムでばれずらいと言っても違和感があるのだ万が一でもばれたら流石にまずい。特にここが狙われているのがばれたパニックになるのは確実。そのためにも早々に涯と合流しなければ。辺りを見渡してみると潜入した目標人物と接触している最中でちょうどいいタイミングだ。

その人物とはこのパーティーの主催した人物であり涯がスポンサーとして支援してもらうように接触しようとしている人物である。その名は供奉院翁。日本でも力を持つクホウイングループの総帥である。

 

「涯」

 

突然乱入してきた俺に護衛のSPたちが拳銃に手を掛ける。それを翁が手で制す。そのまま涯に耳打ちで手短に伝えると、驚きはなく落ち着いている。予定通りだといった感じ。まあ、分かっていたが白々しい。それと同時にあちら側には事態が察知されておらず図らずもこちらの有用性を先制して見せる形になっていた。そのまま目的の物を渡すと早々に事態の収拾に向かう。

 

「で、なんでGHQにこのパーティーがばれたんだ?」

 

「どうやら”善意の”情報提供者がいたみたいでな」

 

「へぇ、とんだ”善意の”情報提供者がいたんだ」

 

”善意の”部分を強調して言うと涯は小さく笑みを浮かべる。どういう意図が理解したのが手間が省けるとわかったのだろう。そして、どうして俺と一緒に潜入した意図とすべき行動を理解しているためだ。本当にとんだ”善意の”情報提供者がいるとはね。確かに”GHQにとっては善意”であるんだろうけどね。

 

「誰がどんなヴォイドを持っているんだ?」

 

まどっろこしい手間はいらない。もうすぐ撃たれるからこそ時間を無駄には出来ない。どんな意図かを理解しているからこそ最適な行動をするだけだ。そのために俺をここに連れ込んだだろ? 問いかけにはいたずら小僧のような笑みを浮かべて応えた。

 

「俺が連れてくる。お前は先に上番で待機しろ。ヴォイドは盾だ。それに後は誰にも気が付かれるな」

 

「了解。こっそりと阻止してみせるさ」

 

 

 

 

 

 

 

客船後方の誰もいない静かな海面に水平線に街の光が見える光景。かなり昔になるんだろうがかなりギザったらしいセリフが似合いそうだ。そんな状態の今からドラグーンがここに向かって攻撃されるなんて夢にも思わないだろう。

今更ながらおぼろげなアニメのようにデフォルメされた顔が浮かんでくる。今回の攻撃を指揮しているアメリカのあの人だ。性格もアメリカらしい豪快でけど軽快で発想も人柄もいい人だ。惜しむらくはあの人も踊らされていたことに尽きる。後は独走しがちな点を自重すれば惜しい人物ぐらいか。

 

それにしてもミサイルのドラグーンを横に倒して撃つとかある意味むちゃくちゃだが結構理に適っている……のかな? あれ、本来は上向きに放つ物だよな。そしたら重力とかの補正はどうなるんだ? まあ、無視できる距離らしいかね? わからん、だが現実として飛んでくるのには違いない。

にしてももうすぐここにドラグーンが飛んでくるなんて想像もつかないだろう。この静かな夜の海とわずかに聞こえ漏れ出てくる音楽が一層の静けさを醸し出している。ポツリとこぼした独り言ですらしっかりと聞き取れそうなほど。

 

「そういえば、こうしてゆっくりと一人で考えるのは……久しぶりだな」

 

今は危機であるはずなのにぽっかりと空いた時間の中、静かに一人で考えるのはなかった。だって……あの始まりの日からずっと彼女が隣にいるのだから。ふとしたことで一人になって、らしくもないセンチな気分になっている。

 

「俺もすこしは変わったのかな…………」

 

だって、一人で静かな部屋でいるのが普通でいつも通りの筈なんだ。少なくともこの春になるまでずっとそうだった。それなのに一人になっているのがどこか寂しいと感じている自分がいるのだから。颯太のようなにぎやかではなく、静かに隣にいるだけなのに。それが普通で心地よく感じていたんだと。こうして一人でいるとありありと感じさせられる。自分は寂しがっているんだと、でも抑えることが出来ず静かにしみこんでいく。

 

「これが終わったらちゃんと話すしかないな」

 

もういのりには見せてしまったのだ。でも……なんで俺はそんなに見られるのを嫌がったんだろう? 別に気にしないのならばまた会ったときにきっぱりとどうしてそうなったか説明すればいいだけだ。たったそれだけなのにどうしてここまで引きずるのだろう。俺はいのりにどう思われたいんだ? 考えるほどに嵌っていく。

 

「っと、もう来たか」

 

そこまで来て思考遊びの時間はもう終わり。さっさと切り替えて俺がいることを感ずかれないように物陰に身を潜める。涯が件の人物を連れてくる。まるで物語のちょい悪な王子様と生真面目なお姫様といった印象だ。

 

件のお姫様は供奉院亞里沙(くほういんありさ)。通っている学校の生徒会長を勤めているが俺とは一切つながりはない。美人と確実に言えるだろう。学校での評判も高く周囲でも高嶺の花ともしても知られている。

 

自分の感性にはちっとも響かない。そうだ、俺は後の彼女の姿を知っているからだ。それしか見ようとしない、それしか信じようとしない。それは彼女の都合のいい王子様を欲しているのではないか? だから簡単に騙される。自分の理想だと思い込ませればいいだけだ。ああ、そんな自ら騙されようと見えてしまう姿が俺はそれがどうしても気にいらないみたいだ。触らぬ神に祟りなしだ。今後もあまり彼女に関わらないようにしよう。

 

そうしている間にも涯の指示が来る。この場もさっさとやるべきことを実行する。涯と立ち位置を変え、彼女が目を開けた瞬間に自分の姿を見えるように、かつ記憶が残らないように迅速にヴォイドを取り出す。

 

その直後にツグミからの通信とわずかに光るモノが見える。手には盾のヴォイド。これで防げない道理はどこにも存在しない。さっさと防ぎきって帰ろう。無性に事を済ませたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後の涯の上機嫌な雰囲気から交渉は成立。上手く支援を引き出せたからだ。攻撃も止んでこれ以上追撃の気配もないために留まる理由もないためにさっさと葬儀社のアジトへ帰還する。すると深夜のために少しだけいるメンバーが俺に怪訝な視線を向けてくる。まるで怪しいやつが来たような…………あ、変装解くの忘れていた。ツグミ、分かっていたんなら説明してくれよ。こらそこのネコミミ少女よ、誰にも気づかないようににやけるのなよ。

 

「………………集?」

 

そこでいのりのポツリと呟かれた声にメンバー全員が驚愕していた。某スパイアクションで複数の哨戒兵に発見されるがごとく。え、俺だと気づいた? まだ変装はしたまんまだぞ? これでもかってくらい力入れた変装なんだけどこれ超えるとなると特殊メイクになるぞ? そのまま変装を解くと今度は驚愕の視線が向かう。

 

「あー、うん。変装解くの忘れていました」

 

変音器とか外したら今度はありえねーといった視線が飛んできた。

 

 

結局、あのまま微妙な空気で解散して、そのまま秘密の通路を通って自宅へと帰る。あの時とは違って月も星は全く見えなくて雲しかないけどそれもまた違う趣がある。もやもやした今の心境を表しているような感じ。

 

いのりは歩きながらも自分の顔をじっと見つめている。いつものぼんやりとした感じじゃなくて何かを確かめるようにいつになくしっかりと見つめている。顔には出さないがなんだか気恥ずかしいもどかしさ。

 

「どうしたんだ? そんな俺の顔をじっと見て何かついているのか?」

 

「良かった……いつもの集で……」

 

じっと見つめていた視線が緩んだ。その言葉にはいつもとは違う静かで平淡な声ではなくどこか安堵を含んだものだった。彼女も顔に出さなかっただけで不安を感じていたんだと。

 

「いつもか……正直に言ってしまえばあの姿も俺にとってはいつもなんだけどな……」

 

記憶を失ってから一番初めに桜満集の名前を呼んだ人はあの人(春香)だった。でもそれを自分は受け入れることが出来なくて自分を護るためにあんな自分を作り上げたのだから。隠したくもあったけど間違いなくあれも自分だ。それをいのりは別人になったように見えたようだった。

 

「前にアジトで言ったよな、世界が怖いって。それで自分を護るためにああなった訳」

 

俺がいのりにどう思われたいなんていくら考えてみても全然わからない。でもわからないままでもいのりといるのはなんだか心地よい。ずっととは言わないけどこの一時だけは浸っていたいとぼんやり考えていた。

 

「あの俺も含めて俺だ。まあ……その、なんだ……改めてよろしく頼むよ、いのり」

 

そのことにいのりはなにも言わなかった。でも、ただ微笑んでいてそれがなによりも雄弁に語っている。いつの間にか曇り空から一筋だけ切れて月が優しく覗いていた。

 

 

 

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