ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

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かなり遅れましたが投稿です。




夏日:courtship behavior-phase1

さて、夏と言えば何を想像するのだろうか? ありきたりなところだと花火とかかき氷とかスイカとかもまさに日本の風物詩だろう。そんな中俺たちは……

 

「ふう、こんなもんだろうか」

 

浜辺でビーチパラソルを差し立てていた。所要時間三分。この程度ならば手こずるかもしれんがそこは予習しておいたと言っておこう。

 

今俺たち……というよりも谷尋を除いた映研+いのり一向は大島に観光旅行に来ていた。ここは日本国内の離島ではあるが年に万人以上の観光客が訪れる人気スポットである。その理由について日本から出られなくなったことも大きいだろう。未知のウィルスを拡散させないための国境封鎖のために国内の観光スポットに需要が集まっていたのは必然だろう。追記すればロストクリスマス以前からも観光事業に注力していたことも大きいだろう。

いのりも勿論ついてきていてどういう意図なのか明白だろう。ここ大島になんならかの重要な何かがあると推測されている。状況的証拠も出ているから信憑性が高いと考えられている。

周りを見ればほかの葬儀社のメンバーがいることからこの作戦に対する意気込みが分かるものだ。ただ、皆さん私服になって偽装しているけど若干バカンスを満喫している人がいるなー。

あとな、アルゴがすげー浮いている。観光地にヤーさんがいると言えばしっくりくるだろう。そのまんまである。

大雲さんはちゃんとバカンス用にきがえているよ。そんでも結構目立っているがな

 

そのことでツグミがGHQが重要視していたか疑問を覚えていたが理由を知れば当然だと思える。この島こそ地球に初めてアポカリプスウィルスが降り立った島なのだから。当時の研究施設だってあるがそれ以上に大切な物が保管されているのだから。

 

で俺自身も客を装って来た訳である。無論、怪しまれないように学生の合宿としてだけど。そして定番の海へと来たって言うのが経緯である。男の着替えが早いというのも定番で先に準備しているのだ。

俺の水着は普通のトランクス型でパーカーを羽織っているくらいだ。ネタでスリングとかブーメランは流石に引く。俺だったらそうする。だが卑屈にはしないし、むしろ堂々している。

 

見よ! 貧弱な少年ではない鍛えられたこの肉体を! 細身ではあるが見れば。現に近くにいる颯太と比べれば鍛えられているのが分かるはずだ。実際、ほかの観光客が俺を見て感心しているのだ…………やめよ、なんか虚しくなってきた。こんな見せるために鍛えているわけでもないしな。

 

「…………やめよ、意味ないし」

 

それと同時に颯太のほうを見る。今回の旅行のメンバーとしてどうしてもここに連れてこなければならない人物と……いや、ストレートに言ってヴォイドが必要である。要はそのために旅行を装ったわけである。

当の颯太がカメラを構えてなんか悩んでいるのは知らん、当たり障りはいいが俺はそういう人間であるからな。映研ではあまり関わりは少ない。大抵は谷尋とつるんでいたしな。まだ作戦決行まで時間はあるしのんびりするのも悪くはないだろう。

 

二二○○(フタフタマルマル)からだし軽く楽しもう」

 

そのまま、伸びをしたときにいのりが前を横切ってきた。そしていつもの服とは違い水着姿だ。何がとは言わないけど正直って祭や綾瀬よりも小さいだろう。だけどその分の全体のバランスが優れていた。柔らかな肌にピンク色のビキニ。患いを帯びたような表情が一層儚さを増しているように見えてしまう。

 

「…………」

 

「集?」

 

その姿に言葉が出ない。まるで横からガツンと衝撃をぶつけられたように釘付けになってしまう。いつの間にかこちらに気付いて声を掛けているのは聞こえているけど処理が追いついていない。

 

「……!?」

 

その数秒後に腕にふにょんと女の子特有の柔らかい感触がががががががが。ビークール、Beクール、Be Kool、Be Cool……うん、落ち着くは英語で表すとclam(カーム)だから。鼻の下が伸びそうです。女の子ってこんなにも柔らかいのかー、って。

視線を向けるとなぜか祭が俺に抱き付いていた。はい? 何で俺に抱き付いているのですか、祭さん? そんな大胆なことは彼氏とかにしときましょうよ。それと人目がある場所でそういうのは割とはしたないのでは? アピールにしては露骨すぎやしませんか? あれ? それって……いや、ないない。うむ、わからん。断定できるほどに俺はそういう経験はないからやめ。

 

それとして水着になると普段とは違ったテンションと言うか一面が出ていい。すまん、俺とて男の子である。つまりは綺麗な女の子の水着姿を見てテンションが上がらない訳があるだろうか。いや、ない。この状況役得なんだけど理性のストッパーが危険です。

 

「…………なあ、祭。なんで抱き付いているんだ?」

 

表情には出さないけど荒ぶるっている何かを抑えながらも何やっている? そしてそれを見ているいのりが無表情だけどなんだかむすっとした雰囲気が僅かに出ているのですか何か気に障ったのか?

 

訳が分からんが海行って頭冷やしてきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼間に十分に楽しんでから春香からの頼み事で一人とある場所に向かっていた。そこは観光事業による人はほとんど入っていない。そうここは十七年前の災害によって亡くなった人たちの墓標が納められている集合墓地だった。そこには桜満集の父親も入っている。要は春香からの頼みで墓参りと言うわけだ。

 

「あれ? なんで涯がここにいるんだ?」

 

そこにいたのは予想通りと言うか予想外と言うべきか涯がそこにいた。真夏だというのに着込んでいるいつもの服装でこの瞬間だけ墓標もあってか喪服のようにも見えていた。いや、それだけではなく、涯から感じられる感情がそれを醸し出しているのだろう。

 

「そちらこそここにどんな用だ?」

 

「墓参り。ここに実父の墓があるって聞いて春香に頼まれてな」

 

持ってきた花束を見せれば涯は納得した。俺が来たのは一応の義理なのだろう。どうしてかはわからないけど桜満集(からだ)に憑依というか成り代わってしまったのだから。どんな風にしたって家族だって言われてもピンとも来ないし意識はある意味別人だろう。その様子に涯はポツリとつぶやくように出た言葉はやけにはっきりと聞こえた。

 

「……なあ、お前は記憶を取り戻したくないとは考えていないのか?」

 

「ある程度は取り戻したいとか考えてはいるが今を捨ててほどではないな。どこまで行ったって俺は俺、そう感じているから無理矢理戻したら狂いそうだ」

 

本当に考えがぶれていく俺に思わず苦笑いしてしまう。少し前のルーカサイトでの事で知りたかったのってあれも囚われている一つだったのだろう。それが出来事一つで変わったのだ。その答えの返答は涯の寂しげな笑顔であった。何か思う処があるのだろうけど俺には分からなかった。

 

「そうか、もし思い出したら……どうするんだ?」

 

「その時はその時だ。いろいろ考えても結局は行き当たりばったりだ。俺、ただの高校男子だしな」

 

今年に入ってからいっつもそうだ。初めていのりと会った時だって抱えて逃走しようとしたことなんて考えもしなかったし、せいぜいが流れ道理に行くだろうと考えていた。足りない頭使って云々考えようと結局はアドリブが入ってしまう。そんなところがまだ少年なんだろう。

 

「ここだってほとんど覚えちゃいないけど一応の義理ってところだな。父は遺体どころか骨すら見つかっていない。春香に聞かされるまで知らんことだったから」

 

「…………そうか」

 

俺の他人事のような、実際に他人事を言い切ったことに僅かにしかめたのが見えた。その理由は理解しているがなにもしない。それをしたらいけないから。譲れない大切なものを踏みにじるのはとてもつらいことだから。

 

追悼の意を捧げる。あったことなんてないけどただそれだけはしておいておこうと気まぐれなのだろうけどなんだか、しなきゃいけない気がした。そして花を送る。父親の墓標を観察していたら偶然『MANA』と掘られていたのを見てしまった。その瞬間まで完全に油断していたのだろう。

 

「がっ!?」

 

唐突にそれは襲ってきた、声すらも出ない。まるで形そのままに脳髄をシャーベットにして中身だけをシロアリに削られる。そんな嫌悪感が全身を支配してやまず、ただその場に蹲るしかない。涯が何か言っているのはわかるけどそれが情報としてほとんど伝わっていない。

 

「…………かっ、はっ!?……」

 

そのまま意識がどこかに飛ばされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで見た景色は先ほどまでと同じ場所だった。いや、それでは語弊があるかもしれない。同じようだけどあまりにも人気はない。まるで最初から人がないような風景だった。その光景を実際に見てはないが見覚えがある。そう、まさに昔に戻ったような人気のなさだ。

 

何故今になってあの時よりも鮮明になっているのだ。自分自身がその時の場所にいるのではないかと錯覚しうるほどの鮮明を持っている。過去にタイムスリップしてきたと言えば納得しそうなほどだ。それほどまでの感触をもっていた。

 

「あれは……」

 

訳が分からない状態になって周りを見渡していたらふと見えた。いや、見つけてしまっただろう。

ぼろぼろになった橋の上に二人の少年がいる。一人は茶髪の好奇心旺盛で元気いっぱいなやんちゃ盛りな少年。もう一人はブロンドの気弱そうな少年だ。

 

あれは昔の涯と俺がなる前の本当の桜満集。それは微笑ましくてなんだか懐かしく思えてきてそして…………

 

「……帰りたい」

 

無意識に口にした言葉に愕然とした。あの光景を見て帰りたいだと? あれは本物の桜満集(・・・・・・)がトリトンであったころの涯と過ごした記憶だ。断じて俺があそこで遊んでいた事実など、ありえない。だと言うのにまるで俺が本物の桜満集(・・・・・・・・)であるような言葉だった。

 

そこまで察して恐怖した。まるで宇宙的深淵を覗いたような狂気の錯覚のような正気を削られていく恐怖にだ。

自分が自分でなくなるような恐怖。それがとても恐ろしかった。

 

ここで橋の二人に一人の少女が訪れた。その姿はまるでいのりを幼くしたような容姿で違うのはその活発そうな雰囲気とセミロングとは違ってロングであるくらいだろう。それくらいしかいのりとは違いは見つけられない。だけど俺にははっきりと別人にしか見えなかった。その少女の名は桜満真名。そう、桜満集の……

 

「……お姉、ちゃん……」

 

勝手に言葉を呟いた口を顎ごと手で塞いだのはもはや反射だった。下の橋では三人の少年少女が和気藹々と楽しんでいるのに丘の上で口を抑えて震えているのがあまりにも場違いな雰囲気があまりにもシュールである。

 

「……っ!? 不味い!」

 

思考が引きずられていることに気付けば行動は早かった。ここにいてはいけない。このまま入れば俺は何かに引きずり込まれる。引きずり込まれたら二度と戻れないと予感していた。俺はそこから逃げた。俺のままで居たいため。生きるために逃げ出した。

 

そこで意識は反転した。その時は俺は気づいてすらいなかった。下の橋にいる昔の桜満集が俺を見ていたことを。そしてその瞳は茶色ではなく赤黒く、血のような紅であったことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこからの目覚めは奇しくも初めて目が覚めた時と同じような、揺さぶられている感覚だった。それにどこか懐かしさを覚えながらも意識は戻っていく。

 

「おい、大丈夫か! しっかりしろ!」

 

だんだんと周りの風景が鮮明になっていく。俺を心配する声がした。意外にも俺と同い年である少年だ。その姿を知っている。俺を心配してくれている姿に戻ってきたと場違いな考えが浮かぶけどなんとなくうれしかった。

 

「う、あ……涯か」

 

「何か思い出したのか? 何か、思い詰めているような顔をしているが大丈夫か?」

 

「ああ、大丈夫だ。ただ、昔にここに住んでいたのかもしれないって少しだけ思い出しただけだ。それが何か大事なことを忘れているってことも」

 

何ともないように立ち上がって。服についている土を払うことで大丈夫だと言っておく。その様子に何かしらがあったかと勘繰ったみたいだけど大丈夫な様子に安心したようだ。

 

もともと知ってはいるがここは思い出したことが重要だろう。俺がまずやらなければならないことは決まった。少しばかり旅行で浮かれていたのかもしれない。少し考えればルーカサイト以上に重要な分岐点であるはずなのにのんびりしているとか俺自身を殴り倒したいくらいだ。

 

「心配かけた。すこし一人で休む。作戦までには体調は万全にしておくから心配しないでくれ」

 

これからやろうとしているのは最初から未来が分かっていなければ行動すらも起こそうとしないことなのだから。だがここが上手く行けばそもそも起きることが起こらなくなることだ。そしたらどんな事態になるかなんてわからん。それこそ神くらいだろう。だがやらんと何かが起こる。そんな予感はしている。

 

そして、俺は気づいていなかった。涯がそんな俺を見抜いていることなんて可能性すらも考えていなかった。

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