ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

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発生:genesis-phase2

そのテロのニュースについに始まったかと俺は思っていた。

 

ついに来たと運命の日が来たと。正直、トリトン……現、恙神涯とどんな顔して会えばいいのか分からない。久々に会った親友は別の人が憑依しましたよって言える訳がない。それと同時にヴォイドは人の心そのもの。どれだけ表面上を装うとも自分の心に嘘はつけず、本当の心の形をヴォイドは現すのだ。だからこそ自分は原作の桜満集のようにできるのかわからないのだ。もしかしたら自分でも気づいていないコンプレックスや願望がヴォイドとして現れるかもしれない。そんな不安もあったのだ。

 

昼休みに一人で先に天王州大学跡地に向かっていた。谷尋たちにはまだ出来ていないクリップ映像の編集と機材の片付けと言う題目で。もうすぐ、もうすぐ、運命の邂逅が始まるのだと緊張にもにた気持ちだ。

 

聴いたことのある歌声が響く。そのまま進むと部室に一人の少女が座り込んでいた。

 

無防備に天使をイメージしたらしいがどう見ても金魚のようにしか見えないホロスーツを半分脱いでおり、おそらく昨夜の襲撃で負った傷を治療するいのりの姿があった。

 

その姿は綺麗だと人形のように見えながら、そして何故なのかは分からない、だけど何処かわからないところで自分とそっくりだと……俺はそう感じていた。

 

「誰!?」

 

ここに現れた俺をGHQと勘違いしたのかふゅーねると一緒に襲い掛かってくる。来ると分かっていたのか自然と自分の体は動いていた。体を半身に傾け攻撃をかわし、そのまま下がらせた手でいのりの手を掴み引っ張らせバランスを崩し残った手で首を掴み地面へと押さえつけた。うん、どうやら体は動いてくれたようだ。

 

「っ!」

 

「ビックリした。いきなり襲い掛からなくてもいいじゃないか。でもどうして君は此処に? それに君って僕の見間違いじゃなければEGOISTのいのりなんだよね?」

 

ぶっちゃけ普通の学生の対応ではない気もするがそこはスルーしておく。あっちも気にしていないし。

 

「それは……」

 

暴れて拘束から逃げようとしたその時だった。いのりのお腹の辺りから漫画とかでよくある空気を変える間抜けな音。グゥーと。つまりは空腹の際に出てしまう生理現象だと。一気に白けてしまった。なんともいえない微妙な空気になってしまう。

 

「………………おにぎりあるけど……食べる?」

 

その答えはかなりの速さでコクコクと頷かれた。すこし赤くなった彼女の顔が可愛かったといっておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に弁当のおにぎりを食べて、ついでに怪我の治療も一人じゃ上手く出来なかったから手伝った。ちらりといのりの傍にいるふゅーねるを見た。おそらく、あの中にヴォイドゲノム……王の力があるのだろう。それがなにか恐ろしく見えた。この後の展開から言ってGHQが来ていのりを捕縛するだろう。でも正直言って見捨てるのは後味が悪すぎる。さてどうしようかと悩んでいると。唐突にいのりがこっちに向いて。

 

「取って」

 

そうして向けられるあやとり。その姿は知識にある桜満真名にそっくりで……体がそうしたのか無意識に一歩下がっていた。幸いにも目の前のいのりには気づいていないみたいだ。

 

「?……えっと、あなたは?」

 

いのりが俺のことを呼ぼうとして気づく、そういえば俺の名前を言っていなかったっけ。

 

「……集……桜満集だよ」

 

それが今の俺の名前。十年前からずっといわれている自分のことを示す名前だ。軽く名前を告げたその後にあやとりをとろうとしない俺をやろうとしないと感じたのか。

 

「桜満集は臆病な人?」

 

「……だろうね。いつもいつも人の顔を伺って、愛想よく振舞っていれば否定されることなんてないから」

 

同時に俺は怖がっているんだろうな否定されることを。贋者だと思っていてもどこかで俺を否定されるのを怖がっているんだろう。桜満集として愛想良く演じていれば否定されないと思い込んで振舞っている臆病な人間だ。

 

その返答がいのりにはどう思ったのかはわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後だった。突如として誰かが入ってくる音が聞こえた。自分にはそれが何なのか知っている。だからか……

 

「伏せて!」

 

咄嗟にいのりに覆いかぶさるように倒れこむ。直後に銃撃が自分達の上を通った。

 

「ちぃ!! いのりさん、失礼しますよ!!」

 

既に誰であることは知っているからか行動は早かった。正直言って、何もしなくてもふゅーねるは残って結局はいのりを助け出すのだろうが、だがいのりを見捨てている事実は変わらない。だから、今見捨てるなんて俺には許容できなかった。後味悪いとかそんなの関係無しに。

 

いのりを両手で抱えた……所謂お姫様抱っこともいう担ぎ方で勢い良く近くにある窓を蹴破って逃げ出した。抱えたいのりが意外に軽いなと結構場違いな感想と共に。

 

結局いろいろ考えてみたがその場での勢いで行動することになってしまった。

 

 

 

 

 

『うわぁ……あの少年、結構根性あるというか思い切ったことしたね』

 

「ああ、そうだな」

 

ふゅーねるを通じて葬儀社のリーダー、恙神涯は見かけ上は冷静に、だが内面では嬉しさに似たものと疑問が渦巻いていた。ずっと昔、まだ自分が少年であったころに親友だった。その少年がここでいのりと邂逅するなんて運命かと思った。人の顔色を伺うような変わった部分もあったけど思いっきりのいい昔から変わらずに居た部分もあり、昔の親友を見れたことが嬉しくもあった。だけど、それ以上に何故あの真名とそっくりないのりのことを疑問に思わないのだろうか? そして集の接し方も始めてあったように話すのだ。まるで最初から真名のことなんて知らないように。その集から感じられる違和感があった。まるで少しだけ……まるでそっくりな人間と話しているような、そんな違和感が涯の心をかき乱していた。

 

そんな内心でもやるべきことはやっていた。指揮を執っていたグエンと交渉し、時間は稼ぐことは出来た。

 

『あ!……戻ってきた。でもいのりんがいない』

 

少ししたら親友というべき人物が戻ってきた。ただ一人だけで、それは一緒にいたいのりは捕まったことである。その証拠にその顔には悔しさが滲んでいた。涯は親友が無事であることに安堵していた。だが、次の問題も出来たのは事実。GHQに捕まった。幸いにも重要なものはまだふゅーねるの中にある。なんとしてでもヴォイドゲノムは回収しなければならない。

 

「ふゅーねるを自動帰還モードに設定しろ」

 

『アイ……大変!駆動系に物理トラブルが発生しているみたい……しかも深刻な!』

 

「自力での帰還は出来るか?」

 

だが、問題はない。現在地はふゅーねるを捕捉しているために後で人を出して回収しればいい。モニターを見れば、集がなにかを探すようにあたりを見ていた。

 

『どこにある? いのりさんと一緒にいたあの機械……逃げる前に見た限りだとこの近くに隠れているはずなんだけどな。はあ……間違いなく厄介ごとなのに頼まれちゃったからなあ。ガイに渡してって』

 

その後に呟いた集の言葉に涯は驚いていた。集は完璧とは言わないがそれでも現状を把握しているのは間違いはない。だと言うのにこれを届けようとしているのだ。それはなんらかのテロリストに手を貸すことになるのだ。

 

(おもしろい……だったら試させて貰おう)

 

だからか涯は試そうとしたこの出会いが必然なのか、それとも偶然なのかを……

 

 

 

 

 

「痛え…………」

 

結局捕まった。幾ら鍛えているといってもたかが一学生。軍隊染みた組織に逃げ切れるわけでもなくあっという間に捕まり、いのりは連れ去れてしまった。

 

その後に梃子摺らせたとあのデブに半ば八つ当たり気味でぼこぼこに殴られた末に放置された。春夏の息子として結構重要な位置づけなのかはわからないが連行されるのまでにはいかなかった。その後に部室に戻っていた。連れ去られる前にいのりから頼まれたのだ。ふゅーねるをガイにと。

 

「どこにある? いのりさんと一緒にいたあの機械……逃げる前に見た限りだとこの近くに隠れているはずなんだけどな。はあ……間違いなく厄介ごとなのに頼まれちゃったからなあ。ガイに渡してって」

 

おそらく、この部屋の何処かに隠れているのだろう。そしたら案の定、ここに隠れていたふゅーねるが現れた。

 

「あ、ここにいたのか……悪い、彼女を守れなかった」

 

AIが動かしているのかツグミあたりが操作しているのか分からないがこうなった以上捕まったのは俺の責任だ。

 

すると行き成り地図が出て、中に収められたものを見せる。ここに行けと……セフィラゲノミクスから最重要機密でもあるヴォイドゲノムを盗んだのだから普通では厄介ではすまないかもしれないけど頼まれた以上ほっとけない俺はお人よしなのかもしれない。結局は原作どおり動くしかないと。

 

ヴォイドゲノムが収まったシリンダーを胸のポケットに入れてからちょっと大き目のふゅーねるを抱えて移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

指定場所は六本木フォート。ロストクリスマスの中心地で今はアポカリプスウィルスの一級感染地域として隔離さている場所。そこらにホームレスのようにさびれて生活しているひとたちがいた。

 

辺りが暗くなるころにやっと目的の場所の広場に着いた。でもやっぱりと言うか辺りにはその涯らしき人物はいない。まあ、テロリストのリーダーやっている人物がこんなところで待っているわけなんて居ないしな。

 

「おい、お前」

 

肌の黒い、俺よりもでかいごろつきがこっちに絡んできた。おそらく俺が学生であるのと踏んでかふゅーねるを奪おうとしている。

 

「それ、置いてけよ」

 

これは頼まれたものだから無理だと断るといきなり殴りかかってきた。だけど、さっきのGHQの兵士に比べれば子供じみていたからかあっさりと避け、お返しにと勢いを乗せた手加減無しの回し延髄蹴りをかますといい具合に入り。一撃で気絶した。

 

「弱っ……」

 

「このガキぃ!調子乗りやがって!」

 

ゴロツキが倒されたところを見た仲間らしき二人のゴロツキが逆上してナイフを取り出して威嚇し始めた。

 

…………あれ? これって案外不味い状況かも。どうやって対処しよう……他人に任そう。さっさと涯来てくれ。

 

 

その直後、自分の周囲が照らされた。その光源のほうから一人の男が現れた。

 

 

 

「やあ、死人の諸君」

 

 

 

 

 

そう、いのりの所属している地下組織の葬儀社のリーダー…………そして十年前、桜満集の親友である恙神涯である。

 

昔のトリトンとして知っている身としては変わりすぎだろ。

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