ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

5 / 17
今回で少ないストックが切れてしまいました。
現在も書いておりますが不定期になりそうです。
書き上げ次第に投稿する予定です。
楽しみにしている数少ない読者のみなさんごめんなさい。
では本編どうぞ。


適者:survival of the fittest

涯はその光の柱が上る様子を憎憎しげに見つめていた。

 

やはり、おまえは桜満集を選ぶのか。と

 

初めから選ばれなかったことを知っていたのか自嘲染みた笑みを浮かべていた。

 

だが祝福してやるとふてぶてしくも選ばなかったことを受け入れてもいた。

 

双眼鏡を通して、集がいのりのヴォイドを使い、ゴーチェを両断する姿を見る。

 

涯はそこである違和感に気づいた。王の力を使って敵を倒すのはまだいい。だが理解して(・・・・)使っている事が問題なのだ。普通ならばただの学生が戦車を生身で倒す力なんて始めて使ったのならもっと困惑する。いや、しないほうがおかしいくらいだ。なのに集は王の力を最初から知っているかのよう扱っている。集が自分自身や真名のことを忘れているのに何故と果てしない疑問が涯に纏わりつくように拭えずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両断されたもう一両のゴーチェが爆発する姿を確認した後、力が抜けた。

 

「すぅ……はぁ……なんつー力だよ」

 

正直、緊張で体力の一部が削られたがそれ以上に手にした力の強さに驚いていた。確かに説明でもエンドレイヴ一小隊だろうと一人で殲滅可能ってのが本当だと実感していた。

 

重火器すら無効化してさらには空中歩行可能とかどんだけだよ。

 

「しまった! いのりのこと忘れていた!」

 

ヴォイドと向かってくるゴーチェに気を取られすぎていて、いのりをその場においてきてしまった。

 

急いで元に居た場所に戻るとヴォイドを抜き取られた影響で気絶しているものの傷一つなくいた。

 

「よかった……怪我していないな。エンドレイヴは近くに居ないし……剣は戻しておこう」

 

今の状況じゃ剣は必要ないし、いのりを気絶させたままは流石にということで。

 

手に持った剣が銀の光へと変わっていきいのりの中へと戻っていく。

 

心なしか何かが戻っていった感じがした。

 

これでよしっと、後はいのりと一緒に安全な場所に連れて行こう。部室の時のよういのりを抱えた。

 

その後にふゅーねるが来て。通信で涯が

 

「十五秒やる。いのりを回収して、離脱しろ」

 

とのことだ。さすがに十五秒で離脱とか無理だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言いつつも増援が来ないうちにさっさと退散させてもらい、涯がいる屋上まできた。

 

涯は何かやってはいるが俺には口出しできないので何もせずに今は体を休めておく。

 

少ししたらいのりが起きてきた。涯にちゃんと出来たかどうかきいている

 

「おまえには失望した」

 

解っちゃいるけどいのりの悲しそうな顔を見ているとその光景に理性では理解しても感情が納得いかなかった。涯が出した指令を出来なかったいのりにも非があるのは解っちゃいるけどさ。

 

「流石にそれは言い過ぎなんじゃないのか。彼女はひどい怪我までしたのに」

 

「知っている。結果が全てだ。こいつは最後に大きなヘマをした」

 

「もしかして、あの力のことか?」

 

「ああ、本来ならば俺が使うはずだったものだ」

 

「それが俺が使ったからか……であの力はなんだ? 自分がやったのもなんだが正直言ってありえない。彼女から剣みたいのが出てきたのもだし、なによりエンドレイヴを一人で倒したのもだ」

 

簡単に言えば一人剣一本で戦車を倒したくらいにありえないことだ。それを容易に成すことが出来る力。手に入れることが原作知識で解っているとはいえ、実際に使ってみると予想外の強さに戸惑ってしまった。

 

その後にご丁寧に説明してくれた。やっぱ俺が桜満集だからなのか? あのシリンダーはセフィラゲノミクスが培養した強化ゲノムで使ったものには『王の力』が付与されると言う。ヒトゲノムのイントロンコードを解析し、ヴォイドとして取り出すものだと。神の領域を暴くゲノムテクノロジーの頂点。

 

「そうだ。その力を手にした以上、お前には戦ってもらう」

 

判っているよ。この王の力を手にした時点で否応が関係なく始まったのだから。戦わざるを得ないのだから。

 

「ちょっと待って。いきなり…」

 

幾ら力を手にしたとしても俺は一学生。いきなり戦えと言われても戸惑うだろう。何と戦うのかと聞こうとする前に涯はいきなり胸倉を掴みあげた。

 

「覚えておけ、桜満集。この先お前が選べる道は二つしかない。黙って世界に"淘汰"されるか、世界に"適応"して自分が変わるかだ」

 

"適応"しろ? 変わらなければならないことなんて解っている。それがどんなに怖かったことか。

 

「ふざけるな……」

 

あの時、俺が"桜満集"となったときからことが……そのことを思い出させる。一気に頭が沸騰して。

 

「ふざけるなよ!! 力を手にしたのはまだいい! 俺の選択だ! だがな適応しろ? ふざけんな! そうせざるをえなくとしても俺は納得して適応したい! 理不尽に俺に適応しろと押し付けるな! たとえそれが餓鬼の我侭だしてもだ!」

 

怖かった。みんなは俺を桜満集とよぶ。憑依する前の名前ではない。自分が別のものになった錯覚がした。自分が自分ではない幻覚がした。自分がなくなりそうな感じがした。自分が怖くもなった。今は"桜満集"として"適応"出来たからこそ普通にしているがあんな理不尽に変われと押し付けられるのは嫌だ。

怖かった。壊れそうだった。変わらなくちゃいけない。そうだと解っててもだ。それが我侭でもだ。

 

俺の胸倉を掴んでいた涯の腕を無理矢理はがす。思ったよりも簡単に外れた。涯の表情から俺の力が強かったみたいだ。だが涯は睨んでくる。思った以上に自分勝手なことを言ったからかもしれない。

 

「それがお前の選択か。子供の我侭だと知っての上か」

 

「ああ、そうだよ。無理矢理適応するなんてごめんだ。そのほうが賢くてもな」

 

同じように睨み返す。が正直言って威圧負けしそうだ。俺はたかが一学生。あっちは葬儀社のリーダーだ。過ごした環境も踏んだ場数もあっちのほうが圧倒的に凄いのだから。

 

逆上した状態であろうと足が震えてきた。ぶっちゃけ逃げ出したい。でも啖呵きった以上逃げ出すのもやだし。女の子の前でみっともない姿晒すのもやだだし。

 

そのときだった。急に涯の携帯に連絡があった。おそらく地下駐車場にGHQが入り込んだ知らせだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ少し時間が経った現在、俺は何をしているかというと……

 

「はぁ……結局はこうなるか……」

 

いのりと共に地下駐車場に向けて通気口を通っていた。涯の立てた作戦にしたがって。

 

 

 

 

 

 

 

また時を遡って涯の仲間から連絡があった後にこっちにも状況を説明してもらい、協力することにしたのだ。というよりも協力せざるを得ないと言ったほうがいいかもしれないが。

 

「俺が潜入すればいいんだな」

 

「ああ、それにしてもさっきのように反発しないんだな」

 

「俺はいきなり押し付けるのが嫌いだから反発しただけだ、納得すれば"適応"する。それにGHQのやっていることが気に入らない。利害が一致しているから協力する……で指示通りに動けばうまく行くんだな?」

 

GHQが行動を開始している時点で一級感染地域にいる俺はGHQをどうにかしなければ家に変えることすらできない。下手に見つかれば殺される可能性だってあるのだから。

 

「そうだ」

 

「信用してもいいんだな?」

 

「ああ、俺の作戦だからうまく行く。だから命令どおりに動けばいい」

 

俺の疑問に対して涯はどこか確信めいた表情で断言する。それはまるで全て自分の手の上だと言わんばかりの表情。

 

「……わかった」

 

だから俺は信じられる気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして剣のヴォイドを持っているいのりと行動しているのだが……

 

(わかっている……俺なんかよりいのりのほうがここの土地勘があるからわかっているんだけど)

 

いのりが先行して俺が後をついている形で進んでいる。さて、俺たちが今居る場所は通気口なんだ

 

そう、通気口だ。つまり普通には通れないくらい狭い……後は……言わずともわかるよな?

 

うん、眼福なんだけど……青少年には刺激が強すぎます! 鼻血出そうです! しかもホロスーツがきわどいからさらに刺激が……

 

(煩悩退散、煩悩退散)

 

でも今は作戦行動中。気を取られていないで迅速に行動しないと。

 

その途中で地下駐車場の光景が見えてしまった。その光景に浮かれていた気持ちが一気に冷めた。

 

避難してきた人たちを拘束している光景。さらにはそのうちの一人を楽しそうに殴っている屑が見える

 

GHQの白服を着た部隊。特殊ウィルス災害対策局。通称「アンチボディズ」

 

独自の感染者の認定権限を持ち、その判断に基づいて感染者を処分する権限が与えられている部隊。

 

その権限を悪用し、住民を虐げている。

 

(ちっ、胸糞悪ぃ。弱いものいじめして楽しいのかよ)

 

今すぐにも助けたい気持ちにはなるがそれよりも優先するべきことがあるから先を急ぐ。

 

(すいません。助けにいけなくて)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく自分達が居る場所へと到達。涯からの指示があるまで待機。だけど……

 

(はぁ……結局は王の力を手に入れても変わらないか)

 

原作でも草を刈るようにあっさりと殺された人達がいた。俺たちが早く動けば助けられると思っていた。けど結果は間に合わずに助けることができなかった。死ぬと解ってても手を出すことができなかった。俺がいのりのヴォイドを使えば助けれらただろう。でも彼らを助けたらもっと多くの人が死ぬ。それが解っているから手を出せないジレンマ。そうしているうちにもう時間が迫る

それがプレッシャーとなって俺に圧し掛かってくる。

 

(俺は上手く出来るのか? もしダリルから万華鏡のヴォイドを上手く取り出せるか?)

 

もし取り出せなかったら涯はレーザーに焼かれて死ぬ。六本木フォートの人たちもアンチボディズに殺される。くそ、手が震えそうになる。情けない。やってやると啖呵切ったくせに。

 

その時、そっといのりが手を握ってくれた。

 

「信じて……できる、絶対に」

 

その握ってくれた手は暖かくて自然と震えが止まっていた。目の前の女の子は出来るって信じているんだ。その本人が怖がっていちゃそれこそ情けない。出来る、そう思えてきた。

 

「ああ、そうだな……そのために君を使わせてもらうよ」

 

「うん。私はあなたのものだから」

 

握った手はそのままいのりの元へと吸い込まれるように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涯はアンチボディズの軍隊の銃口の目の前に立っていた。自分達の存在を世界に知らしめる為に。そのリーダーとして。

 

そして今、彼に向けていくつものレーザーの砲台が彼に向けて発射されようとしている。本来ならば絶体絶命の窮地のなのだろう。臨戦態勢に入っている軍隊の前に立つなんて自殺行為も同然だ。そんな状況でも涯は不敵な顔を崩さない。

 

「時間だ!」

 

前から何十本もの赤いレーザーが涯に向かっていく。このままだと容易く涯の命を奪うだろう。だが涯は動かない。その表情は諦めた顔ですらない、むしろ逆の上手く行ったと思っている顔だ。

 

そんなのは関係なしにレーザーは涯に向かい……

 

「いけ!万華鏡!」

 

涯の前に張られた何かによって弾かれた。弾かれたレーザーは万華鏡に入れられたように乱反射し撃ったものへとその威力を十全に発揮した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーザーによって出来た熱風が頬を撫でるように通り過ぎていく。ダリルのヴォイド『万華鏡』によって拡散されたレーダーがアンチボディズを貫いていく。其れによって爆発。その光景に冷や汗をかいていた。

 

「うわ、なんつー威力……涯はこんなの向けられて平然とするなんて」

 

レーザーの威力にも驚いたがそれ以上にそれらを向けられた状況でも何とかする手段があったとしても平然とした胆力にすごいと思っていた。

 

さらにはその手段ですら俺が上手く動かなければいけない賭けだ。俺なんか上手くいくかどうかでびびっていたんだ、あの状態でいたら間違いなく逃げ出していただろう。その涯の姿がかっこよく、カリスマに満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと気が付けば朝日が昇っていた、もう朝になったのかと思いながらその日差しがどこか新鮮に見えていた。既に廻りは葬儀社の人たちによって救助活動が行なわれており、人々がせわしく動いていた。

その人たちの顔はどこか安心したような表情だった。それがどこか暖かい気持ちになって笑っていた。

 

「お前が救ったんだ。集」

 

気づけば涯が近くに居た。俺が疲れていたのかどうかはわからないが何時の間に近づいたんだか。

 

「そうか? 俺はただ涯の指示通りに動いただけなんだがな」

 

「それでも実際に救ったのはお前だよ。お前はひとつ自分自身を越えたんだ」

 

「といってもそんな実感はないんだけど」

 

「いや、お前は確かに越えたんだ……来い、集。俺たちと共に。俺を信じろ」

 

朝日を背に差し出された涯の手。俺には其れが大きく見えて、あの壊れた橋のときは真逆だなと思いながらも俺は満面の笑みで……

 

「お断りします」

 

断った。まさかまさかの拒否。この雰囲気でまず言うはずのない返答。一瞬で涯たちが表情が引き攣ったのが妙に笑えた。

 

「俺が協力したのはいのりさんが俺しかいない状況で頼まれたからだし、それに関わった以上は見捨てることが出来なかっただけでそれに俺は学生だ。思想的にもあんたについて行く事は出来ないよ」

 

本当ならば俺も涯に協力したいと思っている。だけどここで涯の手を取ったら葬儀社の一員として参加すれば後でGHQに捕まったときに処分されかねないからだ。他にもここで手を取ったらうまくいかないこともあるかもしれない。たとえばルーカサイト。もしコアが原作どおりに破損でもしたら? GHQに捕まった際に渡されたあのボールペンがなかったら詰む。

 

だから今はその手を取ることはできない。

 

涯たちと分かれる際にいのりが悲しそうに見ていたのが糸を引くように感じていた。

 

 

 




補足説明
この集君はトラウマもちです。わかっていてもどうして反発したりします。
主に三つのコンプレックスがあります
まずは本編でもきれたように急激な変化を押し付けること。次に桜満集であることを押し付けられること。最後に自分が桜満集の偽者であること。
以上補足説明終わり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。