ちょい都合よく展開しているところもありますのでご注意ください。
翌日の放課後、俺といのりで学校の一角にいた、無論『シュガー』探しとして。だが俺は既に『シュガー』が谷尋と知っているのでヴォイドを取り出すための練習として捜索もどきをしている。
「集、ヴォイドのルールは覚えた?」
一つ、ヴォイドは十七歳以下の人間にしかヴォイドは取り出せない。これは理由は不明とされているがその理由はロストクリスマスの時に四散した桜満真名の因子が当時七歳以下の少年少女たちに入り込んだからでその因子がヴォイドを具現させているはずだ。
一つ、取り出された相手はヴォイドを取り出された前後の記憶がなくなる。脳のイントロン記憶野が開放されたショックらしいのだが後半ではもはやなかったも同然なんだよね。意識失わなくなるし。
だがそれ以上に重要なことは相手が俺に見られていると感じさせることだ。相手にそう見られているとしなければヴォイドは取り出せない。これは絶対だ。例外は涯のヴォイド位だろう。
確認が済むと丁度よく一人で気楽に音楽を聴いている颯太がいた。ちょうどいい獲物発見。つうことで
「颯太ぁ!」
「へっ?」
「そらぁ!」
相手が颯太なんで遠慮なんぞなしに思いっきり胸に殴りこむように手を突っ込ませ、ヴォイドを引き抜いた。
うん、コツはつかめた。案外簡単だったと言っておこう。
この時にうっかりしていたんだ。最初からヴォイドを取り出すのがうまくいったこともあり、失念していたのだ。つまり俺が桜満集であることを。そのときの展開を。
最初からうまくいって調子付いてしまい段差があることを忘れてつまずいてしまった。咄嗟に倒れないように体勢を立て直したときだ。ふにと手に柔らかい感触が……
「「あ……」」
倒れないようにした右手が出てしまい、それがクラスの委員長の草間花音の胸に……
「きゃあああああああ!!」
「すいませんでしたぁぁぁぁぁ!」
やっちまったことに謝罪しつつも全力で逃走した。委員長と一緒にいた祭が何か言っていたけど俺には聞こえなかった。
なんとか委員長を撒き、体育館近くの連絡通路で休憩している。いのりは葬儀社から連絡を受けている。やっちまった、油断してた。しかも写真まで撮られて校内ネットにアップされているし。仕方ないか俺の不注意だし。
「涯から? 追加の情報入った?」
「うん、目撃者がカメラで撮影してたって」
「うわ、物的証拠か。早く回収しないとまずいかな」
目撃証言だけならば信憑性が問われるけど物的証拠があるならば即座に特定されてしまう。涯も捕まるのが嫌なら早くしろと警告なのだろう。
「あ、そういえば探すヴォイドの形聞いていなかったけ、どうゆう形なんだ?」
「ハサミ」
「ハサミか……ヴォイドってなんだ? 颯太からはカメラみたいなものが出てきたし」
「ヴォイドの形や機能は持ち主の恐怖やコンプレックスを反映した……いわば、心の形」
「そっか、教えてくれてありがと。心の形を表すならヴォイドも千差万別なのか。いのりは剣のカタチをしていると。どうしてなんだろうね」
あ、ついでてしまった失言にいのりの表情に影が差してしまった。彼女にとってはこの話題は避けたいものだと忘れていた。やべ、どうしよう。
「いたぁ! 桜満集!」
ちょうどいいところに怒っている委員長が現れた。いい感じに話題転換してくれたグッジョブだ!委員長!
「もう見つかったか!」
「こっちだ。集!」
これまたちょうどよく体育館の裏口から谷尋が現れた。ありがたいのでついていくことにした。
案外委員長の体力がなかったからなのか俺の体力が多かったのか今度もあっさりと逃げ切ることに成功。今はいのりと谷尋に俺の三人だけで体育館にいた。
「あーもう委員長もしつこいな。はあ、後でしっかりと謝らないとな」
「だな、今カンカンだろうし。もうちょいしたら謝ればいいさ」
後で俺も謝るからさと言ってくれた谷尋。演技だとしても本当にいい奴だなと思えてしまう。本当ならあまり踏み込みたくはないけどするしかない。
「そっか。ちょうどよくここらに人いないし。谷尋と話したいことがあったんだよ」
「ん? どうゆうことで話したいんだ?」
「『シュガー』」
その瞬間、谷尋の雰囲気が変わった。さっきまでの穏やかなものではなく、鋭い敵意。
「やっぱわかっていたか。何時から知っていた?」
「結構前から、俺はあえて追及しなかったけど今回はそうせざるを得ないんだ。数日前の六本木のデータ、あれがあると俺が困ることになるんだよ」
「へえ……渡さないと言ったら?」
「実力行使、もしくは処分。俺はあんまりしたくはないんだよ。友達を処分なんてしたくない」
「あ? ここまで踏み込んでおいて今さら友達面かよ!」
「だからだよ、上っ面の友達付き合いとは言え友達だ」
それでもだ、それでも殺したくはない。それが偽善だとしてもだ。だけど谷尋には余計に苛立たせただけだった。
「……そういうこと言うから俺は善人面しなきゃならないんだ! 俺ではない誰かを演じなきゃいけないんだよ!」
そうやって誰かであることを強要されて嫌がる谷尋の姿が昔の俺に見えた。それが昔の見たくもない自分の姿と重なっていらいらする。だったらと構える。谷尋も完全に逆上していかったのか俺の意図を理解してくれたみたいだ。不穏な空気を読み取ったいのりが加勢しようとするけど
「すまないけどいのりさん。手出さないでくれ」
お互いに上着を脱いで動きやすい格好に。目には殺意にも似た敵意。
「集、俺はお前のこと気に入らなかったんだよ」
「谷尋……奇遇だな。俺もなんだよ」
似た者どうし、馬が会うものどうしだからこそ見えてしまうのだ。自分の汚いものがそれが互いに認められなくて。結局これは自己嫌悪の自分勝手な争い。
お互いに肉を打つ音が体育館に響く。俺も鍛えているけど谷尋も六本木でいろいろやっていたからなかなか強い。
「おら! どうした? こんなもんか!?」
谷尋の左のフックが脇腹に刺さる。結構効いたがまだまだ!
「はっ! そんなもん効かねえよ!」
こっちもお返しに右をボディに抉るように撃ち込む。
「がはっ! そっちこそ温いパンチじゃ倒れねえよ!」
だけど谷尋は倒れない。意地になって倒れない。ここで引いたら敗けなのだと感じているのだ。
もう、お互いに遠慮せずに溜め込んだ汚いもんをぶちまけていく。何時も何時も仲裁させやがって。お前こそ何度も昼飯奢らせやがったと思っているんだ。
などともう気遣いもなんもへったくれもない罵りあって、その黒い感情を拳にのせてルールなんぞ関係なしで殴りあう。
そして日が完全に落ちて暗くなる頃にはお互いにボロボロになった二人で互いに椅子に座っている。だけど何処か憑き物が墜ちたような表情だった。
「谷尋。そんであのデータ渡して黙ってくれないか? もちろん金は払うし『シュガー』であることは黙るから」
ポンと投げわたれたそれは六本木のデータ。渡してくれたのが嬉しかった。
「それが目的のデータだ。ほんと容赦なく殴ってくれたな、かなり効いたぞ」
「そっちこそ遠慮なくレバーブローしてきただろ。まだ痛むぞこのやろう」
「ざまぁみろ。だが…………いろいろ吐き出したらすっきりした。ありがとな、集」
殴られた場所が痛むけどお互いの心のうちをぶちまけたから谷尋のことが少しだけど理解したように思えた。
あの後、家で喧嘩での傷を治してごはんにした。データはすでに物理的に砕いてある。
「いのりさん。俺の喧嘩に手を出さなくてありがと」
正直言ってあの喧嘩の後にいのりが谷尋を殺さないか心配していた。涯は排除と言っていたからいのいのりならやりかねないと思っていたからだ。でもいのりには困惑していた。
「わからない。でも、何故か邪魔しちゃいけないって感じて。なんだろう? 涯の言う通りにすれば確実なのになんであんな非効率なことをしたの?」
そう言う彼女の目には疑問。どうしてこんなことするのかわからないのだろう。それが自分ですら。どうしてそうしたのか、俺も疑問に思ったけどまあいいか。谷尋を殺そうとしなかったのは俺にとっても好都合だし。
「友達だから、かな……確かに口封じに殺すのが一番確実なんだろう。でも殺したくなかったんだ。解っちゃうんだよ、似たもの同士だからさ心の奥底では鋏なんて抱えているきつさを知っているんだ。きっと壊れそうで助けてって言っているんだ」
俺も桜満集としての仮面を持っているからわかる。外では望む顔をしているからこそ本心から擦れいくのが怖いのだ。演じているうちに心が擦れて自分がなくなっていく感覚が怖かった。昔の自分も心が擦りきれそうになったからわかってしまうのだ。
「コンナモノ……」
そう呟いたあと、どこか驚いたような感じがした。なにか驚くことがあったのだろうか? まあ、いいか。
「ごはんできたよ」
ちょうどよく晩御飯も出来たし、気分転換しないと、机に置きっぱなしだった映画の媒体が。
「そういえば、谷尋から借りた映画観ないと」
ホラーだしもうちょい後で観たほうが雰囲気出るから後にしよ。
「いま、みたい…」
……これ食事時に絶対観るもんじゃないよな……まあ、いのりが観たいからいいか。
うん、失敗したかな? 電気消して暗くして雰囲気出したのだが……出しすぎた。
『キャアアアアアアアアアアアア!』
「!!??」
その結果がこれだよ。ビビリまくりだよ。この映画意外に怖かった。終始ドキドキしっぱなし。なのに隣のいのりは怖がるとか驚きとかそんなの関係なしにもくもくとおにぎりを食べながら観ている。
「集、こわいの?」
「否定できない……」
映像で悲鳴が上がるたびにビクッて反応しちゃうのがちょっと情けない、隣の女の子は平然としているのがなおさらだ。
「今度は恥ずかしい?」
「……こういう映画観て男のほうが怖がるのはね」
「当たった……」
そう言って無邪気に喜ぶ姿が可愛かった。
そうこうしているうちに映画も終わって。
「うん、面白かった」
特に主人公がヒロインを身を挺して庇ったシーンが印象深かった。本来ならばそんな主人公だったはずの存在を乗っ取った自分はあんなふうに出来るかなと不安に感じてしまう。本物を偽っている偽者である自分が出来るのか……と、いかんいかんネガティブ入ってしまった。気分を変えないと……あ、原作のことに夢中になってコンクール用のクリップ映像取るの忘れていた。
あの後にいのりの了承を取ってから屋上で撮ることにした。シーンもそこまで重要なものではないし、いのりもただ立っているだけでいいものだ。
「う~ん、星があったほうもっといい雰囲気出るのになぁ」
一応俺も映研に所属しているからちゃんと活動しているよ。それに部の皆からもセンスがいいっていわれているからクリップ映像任されているわけだし。あ、これはいのりさんが悪いわけじゃないよ。うん、これはこれできれいだけど。
「そういえばなんでいのりさんは歌を始めたの?」
結構気になっていたことだ。ネットにいのりのことが流れたのは涯の茎道へのあてつけなんだろうけど、でもいのりは歌っていることが多い。たんなる命令じゃそこまでしないだろう。返答はやっぱり涯の命令。でもその後に
「歌は好き。楽譜のときは記号でも音にすると心が見えるから。いろんな人の気持ちが集まってくるみたいで……」
その答えに納得した。いのりは知りたいんだと。気持ちを知りたいんだと。歌うことで知ろうとしたんだと。
「集はいつも人の気持ちに繊細……」
「んー……空気読んでるつもりなんだけどな」
「その時の私ってどう見える?」
「楽しそうだよ」
そして微笑んだ彼女はまるで人間のようだと思えた。その姿がとても綺麗で見惚れていた。
深夜、集は眠っている頃にいのりは涯に連絡していた。
「どうだ? どこか変わったことはあるか?」
変わったことはないかと涯は聞いている。涯は期待しているのだろう。いのりの姿を通じて集が昔の記憶を思い出して欲しいと。それはいのりにすら教えていない秘密。だからいのりは気づかない。
(ない……けど)「集は……面白い。一緒に居て楽しい」
「そうか。これからも頼むぞ。それと集にはこういえばいい。”ずっと傍に居ていい”と。あいつのやる気が出せればいい。王の力があるなしで活動が変わるからな」
そうして通信を終える。でも涯の言うことで集に言うのにどこか抵抗があった。いつもならば涯の言われたことならばすぐに実行できたはずなのに。そんな思いがいのりにはもどかしく初めてだった。
ふとリビングのソファで寝ている集に視線がいった。
少なくとも今日一日とも過ごしてみて理解した。集は何かを知っている。それこそ普通では知りえないようなことを、いのりが知らないいのりのことを、知られたらいけないなにかを、それでも集はいのりをいのりとして接してくれた。それが彼女にとって暖かく感じていた。そしてもっと集を知りたいと思った。
(集は私をどんな風に見ているんだろう)
こっちの集と谷尋は意外と仲がいいのでこうゆう展開に。
あと後半の展開は漫画版より。
作者はアニメ、漫画、小説版を読んでいるのでどれかからいいのを使っているので
アニメしかしらない人には知らない情報とか出てきたりします
作者的には小説はおすすめです。いい感じに設定を補完してくれるので、物語も少々違っているのもいいです