ギルティクラウン -Fake Crown-   作:SUMI

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さて、谷尋と泥臭い殴り合いを演じて黙るように約束した俺なんだが、今どうしていると思う?答えは

 

「桜満集君、質問があります。足にフィットするパンツやタイツのこと。スパッツやカルソンとも四文字。何だと思います?」

 

「レギンスじゃないのですか。嘘界さん」

 

「あー!そっかレギンスかぁ!ありがとう、桜満集君!」

 

原作の展開通りに嘘界さんにGHQに捕まっていた。こういう展開望んでいたけどどうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡って朝の登校途中の電車でのことだ。唐突にいのりが話しかけてきた。

 

「ずっと傍に居ていい?」

 

「……それは涯の命令で言っているの?」

 

今の俺にはいのりの言葉が本心なのかそうでないのかわからなかったためにあいまいな返答。俺の言葉に驚いてこちらを見ていた。今のセリフが涯の命令だと気づいたことなのだろう。

 

「一日短い時間だったけどおおまかには人となりはわかるよ。だからかな」

 

事前に知っていてもこうして接することで理解した。今のいのりはまだ涯の言うことがほとんどだ。だからこそ涯の言葉一つで何でもやってしまう危うさが見えた。だからいのりの言葉で聞きたいとそう思った。

 

「知りたいの……集のこと、みんなのこと……だから」

 

途切れ途切れながらに話された理由、それはいのりの気持ちなんだろう。戸惑いながも話すいのりがなにかが暖かく感じて。

 

「そっか、ならいのりの好きなようにすればいいさ」

 

「いのり……?」

 

「いのりでいいんだろ? それに一日一緒に過ごしたのだからもういいかなって」

 

その直後に急に電車が止まり、途中で止まった駅には武装したGHQの兵士達。いのりも何故と困惑していた。扉が開き、自分の後ろから誰か……谷尋が俺を押そうとしてきているんだろう。避けることも出来たがここは素直に押されておく。一人駅へ、その光景にいのりも訳がわからないといった表情。後ろには谷尋が

 

「あれはあれ、これはこれだ。悪いのは集だ、俺は謝らない。ま、せいぜい俺のためにいい値で売られてくれ」

 

と実にいい笑顔で言われました。正直、イラッとしたけどあれはあれで一番怒りが湧かなかったと思っている。今の谷尋は弟のことを優先している。特にあの実験施設から逃げ出そうと、逃げ出すのにも金が要る。で葬儀社の情報に懸賞金が掛けられている。それが谷尋には魅力的に写ったのだろう。さらには昨日の喧嘩で俺を売るほうに吹っ切れたと。中途半端にやられるよりは後腐れもないからましだな。後でそのすかした面にシャイニングウィザードかます。そう心に決めながら

 

「桜満集君。君を逮捕します」

 

本当にいい笑顔の嘘界さんたちGHQに逮捕された。

 

「キミはとてもいいお友達を持ちましたね」

 

「ええ、俺にはもったいないくらいに本当にいい友達でしたよ。それこそ殴り倒したくなるくらいにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘界は気になっていた。桜満集のことが。最初の印象はふてぶてしい少年。友人に裏切られても悪びれずに返すくらいだ。話してみてよくあるテロリストにある思想の偏りもなくただのメンバーではない。それと同時に気がついてしまった。この少年は何処か歪んでいる。その歪みは小さすぎて大抵は気がつかないだろう。その歪みはこの少年は誰かを演じている。誰を何をまではわからない。でも普通は気づかないくらいに極々自然に演じている。それこそ今まで本当に本人であると勘違いさせるほどに。嘘界自身でも騙されそうになったくらいだ。運がよかったのだろう。この僅かな違和感に気づいたのは

 

だからこそもっと話したくなったのだ。確かめたくなったのだ、何故演じているのか、この少年が何であるか。ともかく、葬儀社からの第四隔離施設への襲撃が予告された。これはちょうどいい、仕込めるかもしれない。

 

あの後に隔離施設の患者達を見せた。その結果はやはり、彼は事情を知っている。彼を売った同級生の姿を見せてもただただ目を細めていただけで怒りはまったくない。同情とは違うなんらかの視線を向けただけだった。自分の話にも思うところはあるみたいだ。仕込みも出来た。あとはどう反応するかどうか。

 

「桜満君。私にはわからない。何故君のような賢い少年が彼らに手を貸すのか。何故我々の善意を踏みにじろうとするのか」

 

「…………あんたたちにとっては善意だな。だけど受け取る側がどう受け取るかはあっちの勝手だけどな」

 

返された答えは皮肉めいたもの。ふてぶしさは変わらない。さて、確かめてみましょうか。

 

「それはあなたの答えなのですか? それとも桜満集としての答えなのですか?」

 

「……え?」

 

自分の問いに彼は一瞬、何を言っているのか分からないと虚を突かれた表情になった。内心、これはと、自分の予測が当たっていたと確信する。やはり演じていたのかと。

 

「もう一度聞きます。それはあなたの答えなのか、それとも桜満集としての答えなのですか」

 

「俺は……あれ?……俺は……俺は?……」

 

だが思った以上に自分の質問が彼の心の内側の何かを抉る。今まで平然としていた彼が目に見えて狼狽し始めた。さっきまでどこかに感じさせたふてぶてしさも最初からなかったように挙動不審になり始める。

 

「落ち着きなさい。私はただあなたの本当の答えが聞きたいのですから。さぞ怖かったのでしょう。安心しなさい、演じる必要はないのですから」

「お……俺の本当の答え……」

 

落ち着かせようともそれが彼に更に追い討ちを掛けてしまった。人は誰しも仮面を被っている。しかし彼の場合、その仮面が素顔になりかけていた。それが剥がれかけたときどうなるか?

 

「怖い……怖いよ……」

 

それが今の彼だ。さっきまでのふてぶてしい姿はなく、ただただなにかに怯えて縮こまる最早別人と言ってもいいほどの状態だった。すこしやり過ぎたかな? と思いはしたが仕込みが楽になった程度の認識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メイスンとして変装して涯は集と面会したときに驚愕した。一瞬別人かと思ってしまうほどだ。数日前にあった集は自分の気に食わないことに抗う気骨があった人物だ。だが目の前に居る人物はなんだ?

まるで繰り糸が切れて動けなくなった人形だ。魂が抜けたと言ってもいい。だらりと完全に無気力な状態で面会に引っ張り出された集の姿に絶句した。

 

「やあ、はじめまして集くん。私が君のお母さんの依頼で君の弁護を担当とするメイスンだ」

 

だが集は答えない。それどころか聞いているのかすら怪しい状態だ。涯は内心焦り始めた。集がGHQに捕まったのはまだいい。計画の一部だ。自分が接触し、集に行動を起こす予定だった。だがこの短時間で集がこんなふうになるなんて予想外もいいところだ。この状態では足手まといもいいところだ。

作戦まで時間がある、一応は発破を試みた。涯自身でも気が付いてはいないがこんな集を見たくなかったのかもしれない。だが一向に反応を示さない。襲撃も始まり、計画の修正をしようとしたとき。

 

『集……聞こえる?』

 

通信機からいのりの声が。

 

「………いのり?」

 

だがいのりの声に集が反応した。さっきまで殆ど反応を返さなかった集がだ。

 

『よかった……今行くから待ってて』

 

いのりの言葉にその後、ツグミからいのりが独断で集を救出に向かっていると、こう立て続けに想定外の出来事が起きたことに涯でも悪態をつきたくなる。

 

その直後に大きな固いもの同士がぶつかった音が響く。その音が発生した方を見れば集が勢い良く机に頭をぶつけていた。流石の涯も集の突然の奇行にどう反応すればいいのかわからなかった。一瞬の静寂の後。

 

「で、涯。城戸研二のヴォイドの特性は?」

 

顔を上げた集の額から一筋の血が流れてはいたが目にはさっきまでの魂が抜けた空虚ではなく生気と意志が戻っていた。いのりの単独行動に危機を感じたがこれはこれで妙手だと柄になく感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか桜満集として行動するのが当たり前になっていた。あの時、嘘界の質問に俺は答えられなかった。何かが見られるのが怖かった。まるで桜満集となった直後のようだった。あの俺ではない桜満集を見ていたあの瞳が。俺ではない誰かを強制されているようで、俺が否定されてた。無視されていた。それは桜満集を知らない学校へ行くまで続いた。だが、知らずに俺の心に深い傷跡が出来ていて、だからこそ嘘界の本当の自分として質問された時、造り上げてきた俺と言う名の桜満集が否定されたと思えてしまった。だから昔のように自分の殻に閉じこもってしまった。最後にそれが功を成したのかあのボールペンを渡された。

 

そして時間も過ぎて涯との面会。そして襲撃といのりの単独行動。通信からいのりの俺を心配する声が。嘘界のような嘘っぱちでない純粋に俺を心配してくれているその声に胸のうちがあたたかくなってただただその声に答えようと。自分でも何故そうしたのかわからない。気づけばそうしていた。

 

ガンッと鈍い音が響く。近くの机に思いっきり頭をぶつけた。その衝撃と痛みで頭がグラグラするがさっきまで抜けていた何かが戻ってきた感じがした。顔に水っぽい何か滑り落ちる感触。どうやらさっきので額を切ったみたいだがどうでもいい。

 

俺がなんなのかどうでもいい。”桜満集”と”俺”が混合し始めているのを知らされたのも今はどうでもいい。俺のために独断で来た彼女がいる。それに答えなければ今度こそ本当に”桜満集”でも”俺”でもなくなってしまう。それだけは受け入れなかった。

 

「で、涯。城戸研二のヴォイドの特性は?」

 

今はいのりの元へと行こう。そのためにも涯から情報を聞き出そうとしたときだ。

 

「面会は終わりだ」

 

外にいた警備員が入ってきた。もう時間がないと。内心舌打ちしつつも行動に移していた。警備員の水月に拳を叩き込み、即座に無力化。銃を奪って走り出す。

 

おそらくいのりが目指しているのは俺がいた場所だろう。俺はそうあたりをつけ駆け出した。

 

 




補足
嘘界さんはちょっと気になった程度です。ただ、ちょっとつついた程度でああなってしまったので一気に興味はなくなりました。それと集くんもガチなトラウマピンポイントで突かれたのであっという間にああなりました。まあ、いのりの声で復活しましたけど


このSSの評価が作者の思っていた以上に高い。このSSを評価してくださったみなさんありがとうございます。今度ともできるだけ早く投稿出来るように作者も頑張ります。
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