「神様! 早く早く!」
「そんなに急がなくてもオラリオもダンジョンも逃げないよ」
「はーい」
僕の名前はクラネル。えっ? ベル・クラネルじゃないのかって? いやまあ、本名はそうなんだけど、一応、
そして、僕を引っ張って早く行こうとせがんで来るのはアイズ・ヴァレンシュタイン。
金髪金眼の美少女で、育ての親としては目に入れても痛くないぐらい可愛い。親バカだって? そんなの自覚してるさ。
11年前……って言っても分からないか。アイズが5歳の時、僕はこの子をダンジョンの中で見つけた。
当時は大分ゴタゴタしていたから、眷属が少なくそれなりの強さを誇っていた僕が引き取る事にした。(他にも理由はあるけど)
そして、山奥の家でひっそりと暮らしていたのだが、アイズがオラリオに行きたい! と言っていたので、恩恵は既に与えていたため、
「神様、次は私達だよ?」
「えっ? あっごめんね」
そうしている内に、検問の番が来たようだ。
検問をしていた【ガネーシャ・ファミリア】の人が僕を見ると、驚いて頭を下げた。
あっ、少しは顔を隠すべきだったか。
「これは、クラネル様! お久しぶりでございます! 此度はどのようなご用件でこちらに?」
「ああ、うん。頭を上げて。ここに来たのはこの子の付き添いでね。この子が冒険者になりたいって言ったから、僕も主神として付いてきたのさ」
僕はアイズの頭を撫でながら、そう言う。
アイズは頭を撫でられてとても嬉しそうだ。可愛い。
「なるほど! では、どうぞ、お通りください。嬢ちゃんも頑張れよ!」
「はい!」
そうして、検問の人に見送られながら、僕達はオラリオへと入った。
最初にやってきたのはギルド。
ここでアイズの冒険者登録を行う。
オラリオには他にも僕の眷属はいるし、担当アドバイザーはいなくて良いかな。
【クラネル・ファミリア】の名前を出した時はすごく驚かれた。
今も、あの子達は活動しているだろうに。そんなに驚くことかな?
そう口に出すと、受付嬢は「そう言う問題では……いえ、貴方様の鈍感さは皆が知るところですから、言っても無駄ですね」と変に納得されてしまった。解せぬ。
アイズの冒険者登録を終え、僕達の
そこで待っていたのは、
「あっ! クラネル様! お帰りなさいませ!」
メーテリアと、
「やっと、帰って来たのか」
アルフィアの二人だった。
二人はオラリオの最強姉妹だと言われている。
メーテリアは『寂静』、アルフィアは『静寂』の二つ名を持っていて、どちらもレベル7の冒険者。
この子達はアイズよりも早く出会い、二人とも病気に蝕まれていたため、ある方法を使って二人の病気を抑えた。あくまで、抑えただけだったのだが、二人がランクアップを重ねて、病気を打ち消すスキルを手に入れた。どちらも同時期に手に入れていたから、姉妹なんだなぁと思いながら、ステイタス更新をしていた記憶がある。
僕が二人との出会いを思い返していると、アルフィアが口を開く。
「アイズ。久しぶりに会ったんだ。昔みたく、相手をしてやろう」
と、不敵な笑みを浮かべて言うので、アイズはメーテリアの背後に隠れてしまった。
そこは僕じゃないのか、アイズよ。
と言っても、アイズは「アルフィアお姉ちゃんもだけど、神様も結構厳しい」なんて言われてしまった。
僕、そんなに厳しくしたっけ?
そして、自分の背中で縮こまるアイズを撫でながらメーテリアも口を開く。
「はいはい。お姉ちゃん。アイズちゃんもクラネル様も長い移動で疲れているんだから、今は休ませましょう?」
「アイズはもうレベル5で、クラネルに至ってはもはや、心配するのも烏滸がましいくらいだぞ?」
「もう! そうじゃないの! お姉ちゃんだって、クラネル様に甘えたいでしょ? そのための時間!」
メーテリアの言葉に一気に顔を赤くさせ、僕とメーテリアを何度も交互に見て、反論する。
「そ、そんなわけないだろ! 誰もこいつに甘えたいなんて言ってない!」
グサっ。
ふ、深く言葉の槍が胸に突き刺さった……。
僕は分かりやすく落ち込み、アルフィアは慌てて弁明する。
「ち、違うんだ! 別にクラネルに甘えるのが嫌ってわけじゃ!」
「良いんだよ、アルフィア。どうせ、僕は大事な眷属をオラリオに置いて行ってしまった愚か者だよ……」
「それもそうだな」
急にガチトーンで僕の卑屈を肯定したアルフィア。さらに心にダメージが……。
「確かに、クラネルは天然でお人好しで無自覚女ったらしで救いようもないほどの馬鹿だが……」
「ゴフッ」
やめて! 僕のライフはもう0よ!
「それでも、私はあの時、お前に救ってもらった事に感謝している。正真正銘、私達はお前の優しさに救われたからな」
「アルフィア……」
「だから、お前はそのままでいてくれ」
「うん」
ありがとう、アルフィア。でもね、
僕を落とした張本人が言うことじゃないと思うんだ。