「「「「いただきます」」」」
今、僕たちは夕飯を食べている。
メーテリアが作ってくれたのだ。
ちなみに僕もアルフィアもアイズも料理できる。
しかし、どうしてもメーテリアの腕には負けるので、僕たちの中ではメーテリアが料理することになっている。メーテリアは嫌がらないし、むしろ進んでやってくれる。
何年か前に「メーテリアは良いお嫁さんになるよ」なんて言ったら、メーテリアが「お、お嫁さん!? えへへ、私が神様のお嫁さん〜」とか言っていた。びっくりした後、頬を朱に染めながら、何かと小さく呟いていたためよく聞き取れなかったが、その時アルフィアとアイズが不穏な空気を発していたので、そのままにした。
そういえば、アルフィアとアイズが料理上手になったのって、その頃ぐらいだったかなぁ?
アルフィアは才能があったが、アイズは最初危なかった。
包丁を剣のように持つわ、何でも強火で焼こうとするわ、塩を入れすぎたら砂糖を入れようとするわ、典型的にダメだった。
流石に見ていられなかったので、僕は二人羽織のような形で指導した。その時、アイズはずっと顔が真っ赤だった。どうしたんだろうね?
翌朝、僕達は庭に出ている。
まぁ、もちろんアイズ達を特訓するためだ。
そう、『僕』が『アイズ達』を特訓するのだ。
僕は準備体操して、木刀を手に取る。
木刀ではあるが、世界樹の枝を削って作ったものだ。丈夫さは折り紙付きである。
数度木刀を振り、感触を確かめる。
うん、問題ないかな。これなら
っと、どうやら3人共来たようだね。
アイズは僕と同じ木刀を持ち、アルフィアは素手、メーテリアは杖を持っている。
アイズは純粋な剣士。
アルフィアは体術を併せ持つ魔道士。
メーテリアは攻撃、支援の2つを極めた魔道士。
前衛、中衛、後衛にしっかり分かれている。連携も凄まじいし、正直、下手に人員を追加するよりもこの3人でパーティを完成させて良いとも思える。
「3人共準備は良いかい?」
「はい!」
「ああ」
「よろしくお願いします」
「うん。じゃあ、始めようか」
僕は始まりの合図を出したのと同時に殺気を放つ。
3人はもう慣れたかのように僕の殺気に怯まず、各々の行動を取る。
アイズは正面から突進してきて、一点からではなく多方面から、すなわち連撃離脱の精神で攻撃して来る。
アルフィアは自身が放つ魔法にアイズが巻き込まれないように常に動きながら場所を移動する。
メーテリアは他2人と僕の動きを観察し、並行詠唱もしつつ、僕からは見えない位置に常に移動する。
うん。3人共、僕に対する対策をしっかり組んできている。
この特訓のルールは
1.僕は【魔法】も【スキル】も使わず、3人は使用可能。
2.3人の攻撃が僕に一度でも当たると特訓終了。ただし、時間による。
3.時間制限まで3人は何度も倒れても良いし、何度も挑んできても良い。
の主に3つである。
さて、そろそろ疑問に思う頃だろう。
何故、僕は神でありながら、3人に特訓をつけられるのか。
理由は単純。僕は元冒険者だからだ。いや、ある意味今も冒険者だ。
僕は冒険者でありながら、『恩恵』を神まで昇華させた。
つまり、ランクアップをし続けて神の領域まで上り詰めたのだ。
それに伴い、『恩恵』は消失したから、かつての冒険者のような力は完全になくなった。
しかし、今まで身に付けてきた『技術』は体に染み付いていて、全知零能の僕でもレベル10までなら木刀で捌けるのだ。
アイズの猛攻を全て木刀でいなし、アルフィアの見えない音の魔法も木刀で切り裂き、メーテリアの支援魔法をも超える力で3人を木刀で叩く。
僕は人体の構造は熟知している。
何処をどれだけの力で叩けば、気絶するのか全て分かっている。
だから、僕が3人を木刀で叩けば、3人はすぐに気絶する。
ちなみに、痛みを感じさせないために一瞬で意識を刈り取っている。
さて、そろそろ3人の合計気絶回数が10を超えた辺りかな。
「3人共、まだ続ける?」
「続ける!」
「当たり前だ!」
「行きます!」
うん。3人共、心は全く折れていない。
『冒険』をする上で大事なのは【ステイタス】でも『技』と『駆け引き』でもない。
『心』だ。『覚悟』だ。『勇気』だ。
結局の所、最後に生死を分けるのは『心』。
だから、僕は3人に絶望を与え続ける。
圧倒的な力をもって、3人を叩きのめす。
さあ、今日はいつまで続くかな?
「お疲れ様」
「「「ハァッ、ハアッ、ハアッ」」」
3人は地に倒れながら、激しく呼吸を繰り返す。
うん。前より長く続いてる。
アイズは僕の『最速かつ見えないかつ間合いを超えた斬撃』にもだんだん対処ができてる。剣の技術は上達しているし、体術も鋭くなっている。他2人とはアイコンタクトで連携を取り合っていて、僕に作戦を読ませないようにしていた。アイズ自身の『技』もよく洗練されていて、このままいけば、レベル6相手でも勝つことができるだろう。
アルフィアは常に動きながら、僕に魔法を浴びせて来る。僕の見える所でたまに口元を隠しながらフェイントを混ぜて来るため、アイズのための隙を作らせようとしていた。魔法の制御はもはやピカイチで強弱をつけて本命の攻撃を隠したり、限りなく圧縮したものを飛ばし僕にワザと斬らせる事で爆発させたりと多彩な攻撃を披露していた。
メーテリアは魔法で僕の五感を奪っていた。それ以上に木刀を持つ感覚すらも奪っていたため、途中から少し本気を出さざるを得なかった。まぁ、僕は3人の動き方を完全予測できたから、あまり意味はなかったかもしれないが。でも、並行詠唱の精度は上がってたし、2人に指示を出しながら、よく動いていた。指揮は悪くなかったし、『
うんうん。3人共しっかり成長していて、僕は嬉しいよ。
それらを3人に伝えると、
「やっぱり、神様の特訓が一番キツイ」
「しっかり痛めつけるだけ痛めつけて、終わったら素直な賛辞なのだから、タチが悪い」
「お姉ちゃん。甘えたいなら、甘えたいってちゃんと言えば良いのに」
と、三者三様の言葉が返ってくる。
よしよし、後で幾らでも甘えてくると良いよ。
僕は3人に
ちなみに館に戻った後、3人が僕に抱きついて全く離さなかったのは別のお話。