白兎が神となり、剣姫を育てる話。   作:幻桜ユウ

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第四話 昔話

 

 

 

 

 

 僕が【ゼウス・ファミリア】に入った後、神ゼウスに『恩恵』を刻んでもらった。

 

 最初はレベル1から始まる。

 

 これに例外は無いそうだ。

 

 ただ、僕の真名が変化していた。

 

 それは【ベル・クラネル】。

 

 【アルゴノゥト】から【ベル・クラネル】に変わっていた。

 

 いや、もしかしたら、最初から【ベル・クラネル】だったのかもしれない。

 

 【アルゴノゥト】なんて名前は存在しなかったのかもしれない。

 

 それは親にでも聞かないと分からないことだが。

 

 そして、神ゼウスと相談した。

 

 何故、僕は歳を取らなくなったのか?

 

 これからどうするべきか?

 

 前者の方は確実性は無いが限りなく正解に近い結論が出た。

 

 それは【疑似神格化】とも言えるものらしい。

 

 【疑似神格化】というのは主に沢山の人の信仰心などによって、疑似的に神に近いものになるという事だ。

 

 認識の集合体である下位神でもあまり生まれにくい。

 

 何故ならば、神に至るほどの信仰心はとてつもない量と質を持っていなければならない。

 

 『横』にいくら広がろうが、それでも神の存在に至らしめることはできない。

 

 神というのはそれだけ超越した存在という事だ。

 

 では、何故神に至ってしまったのか。

 

 つまり『横』ではなく『縦』。

 

 長い長い年月で溜まった認識の量が僕の元に来てしまったのだ。

 

 それ即ち『英雄日誌』。

 

 目が見えない僕がオルナに任せた『英雄日誌』。

 

 これが長い時代を経て、沢山の人が僕の『存在』を認識した。

 

 しかも、『始原の英雄』なんて呼ばれていた。

 

 それだけの認識が過去へと遡り、僕の元に戻ってきたら、その『英雄日誌』に溜まった認識は僕へと繋がり、存在が昇華してしまった。

 

 そうだ。僕はそれを聞いた時、思わず手にある『英雄日誌』を破り捨てようとした。

 

 しかし、神ゼウスがそれを止めた。

 

 神ゼウスが言うには、僕の『存在』はもはや『英雄日誌』によって成り立っていると言っても過言でもないらしい。

 

 つまり、『英雄日誌』を破れば集っていた認識は霧散し、僕の存在は消滅してしまうと。そうなれば、『転生』どころではないと。

 

 僕はそれでも構わないと、もう生きていたくないと死のうとしていた。しかし、沢山の神に止められた。

 

 僕は・・・『英雄』になりたかった。

 

 でも、みんなが笑っていられるなら僕は『道化』でも良いと思ったんだ。

 

 そんな僕が今、僕を心配してくれている神達を悲しませるのか?

 

 神は永遠の時を生きるから、僕が死んだことなんていずれ忘れてしまうと?

 

 僕は愚かにもそんな事を考えていたのか?

 

 愚かだ。そうだ、あまりにも愚かだ。

 

 ただひと時の感情で自分自身を裏切る所だった。

 

 僕の『大望』が、『切望』が・・・僕自身の手で踏みにじられてしまうところだった。

 

 そんなものじゃないだろう。

 

 ああ、そうだ。そんなものじゃ無いはずだ。

 

 ずっと、僕の心を熱く焦がしていたのはそんなちっぽけなものじゃ無いはずだ。

 

 『英雄』になれなかった?

 

 ならば、もう一度目指そう。

 

 『英雄』を。

 

 今度は『始まりの英雄』ではなく『最後の英雄』を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、僕は『黒き終末』ーー隻眼の黒竜を打ち倒した。

 

 正直、『ヴァル』と『アリア』には申し訳ないことをした。

 

 二人に黒竜討伐の手伝いを頼まれたけど、その時の僕は色々やさぐれていたから、僕は参加しなかった。

 

 『傭兵王ヴァルトシュテイン』ーーアイズの父。僕は彼のことを『ヴァル』と呼んでいる。当時、冒険者のことは傭兵と呼ばれていたため、今の時代で言えば、『冒険者の王』。間違いなく、最強の英雄だった。

 

 『精霊アリア』ーーアイズの母。僕が愛した唯一の女性『アリアドネ』に似た女性。風の精霊であり、クロッゾの火の精霊(ウルズ)と似たような人である。

 

 そして、アイズ。彼女は僕が倒れていた所を拾ってくれた。皆にも歓迎され、一緒に住んでいた。僕は少々ーーいや、かなり負い目を感じている。何故ならば、僕がその時黒竜討伐に参加していれば、ヴァルもアリアも皆も死ぬことはなかったはずなのだ。しかし、アイズは一度も僕を責める事はなかったし、それどころか今では僕に好意を向けてくれている。

 

 ヴァル達の黒竜討伐の少し前の事だ。

 

 

 「アル。良ければだが、黒竜討伐に参加してくれないか?」

 「・・・すまない。僕はもう・・・何もできないんだ」

 

 

 我ながら、なんとも情け無い事だ。しかし、ヴァルは残念そうな顔をするも、どこか納得したような顔をしていた。

 

 

 「・・・そうか。じゃあ、一つだけ頼まれてくれないか?」

 「頼み事?」

 「ああ、俺達の娘を。アイズを頼む」

 「・・・何故、僕が? 僕は君達を死地に行かせる張本人だぞ? アイズは僕を恨み続けるぞ。僕は良いが、アイズにとって、はた迷惑な話ではないか?」

 「君はやはり、自己評価が低いな。本当のことを言うべきだろうが、親としては認めたくないことだから言わないが」

 「? 何のことだ?」

 

 

 ヴァルの様子にアリアはふふっと笑っていて、他の仲間達も少し引いている様子が見られる。

 

 一体何の話なんだ?

 

 その時の僕は疑問でしかないが、今となっては理解できる。

 

 アイズがその時から僕に執着していたということだ。

 

 すでにアイズの中ではヴァル達よりも僕の方に心が向いていたのだろう。

 

 それを見抜いていたヴァルはだからこそ僕にアイズを託したのだ。

 

 そして、ヴァル達は黒竜に傷を負わせ、黒竜を追い払ったが、ヴァル達は漏れなく死亡した。

 

 また、アイズも失踪した。

 

 何故かは分からない。一瞬の内に跡形もなく消えてしまったのだ。

 

 長い年月が経ち、迷宮都市オラリオが創設され、ウラノスから任された『ある事件』の調査のため、神であるが特別にダンジョンに入る許可をもらった。

 

 そこで出会ったのだ。

 

 ()()()()()()()姿()()()()()()()()()アイズに。

 

 約束通り僕は彼女を保護し、建前をいくつか並べて僕が引き取ることにした。

 

 建前は『事件との関連性を鑑みて、大手ファミリアに入れることはできない』『眷属の人数が少なく、眷属全員が高い戦闘能力を保持している』『主神は都市の外に出ることができる』ということ。

 

 本音は『約束』と『神としての直感』だった。

 

 アイズも僕の事を覚えていたためか、僕の所が良いと言ってくれた。

 

 それが、11年前の事だ。

 

 

 

  

 

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