白兎が神となり、剣姫を育てる話。   作:幻桜ユウ

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第六話 夢はまだ夢のままで良い

 

 

 

 

 

 ーーどうかしたの()()

 

 ーーいや、何でもないよ()()()。気にしなくて大丈夫。

 

 ーーそう? なら、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの?

 

 ーー悲しそう、か。やっぱり君に隠し事はできないね。

 

 ーーやっぱり、()()の事?

 

 ーーそうだね。()()()は今までの歴史を全て覆せる程の存在になりつつある。まぁ、だからこそ『物語』としての価値があるんだけどね。

 

 ーー『英雄試練』は決して貴方を裏切らない。それが『世界の理』であり、貴方の意志の体現でもあるのだから。

 

 ーーそうなんだけどね。これに関しては僕は恨まれても仕方がないから。

 

 ーーでも、コレを認知できるのはそう居ないよ?

 

 ーーいや、できるさ。なんせ、そういう『物語』であり、僕はその『道』の上に立っているからね。

 

 ーーそっか。なんにせよ私はずっと貴方と一緒にいるから。

 

 ーーありがとう。さて、僕に謝罪をする権利は無いかもしれない。されど、僕は『試練』を与えなければならない。『世界』よ。聞き届けよ。これは『たった一人の愚者が歩き続ける物語』。

 

 

 さあ、少年よ。君の返答は如何に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うっ、うぅん?」

 

 

 知らない夢を見たが、いつも通りクラネルは起床する。いつもと同じように朝早くに起きる。体を起こし、体を伸ばす。ベッドから出て、寝間着からいつもの白ローブへと着替え、部屋を出る。

 

 この時点でもうクラネルは夢の内容は忘れていた。

 

 クラネルは二階から一階へと降りて、リビングにて椅子に座る。

 

 すでに食卓には料理が並べられており、クラネルはキッチンへと目を向ける。そこにはエプロン姿で鼻歌を歌いながら、楽しく調理をしているメーテリアがいた。その美しい白い髪はさながら神の僕と同じようである。青い瞳はアリアドネにそっくりである。

 

 だからこそ思う。メーテリアは僕とアリアドネの子孫であるのだと。アルフィアも同じである。見た目こそ共通点は少ないが、雰囲気などーー言葉遣いは置いといてーーアリアドネと似ているのだ。優しい所も厳しい所も。

 

 クラネルは目を閉じて過去を思い返す。

 

 ある日、ゼウスに連れ回され歓楽街まで行きかけた所、ヘラに見つかり僕は保身の為にゼウスを差し出した。その時、「この裏切り者オォォオオオオ!!」とか言われた気がするが、全く気にする事なくダイダロス通りへと散歩に行く。

 

 その時のことだった。二人の子供を見つけた。それがアルフィアとメーテリアだ。ダイダロス通りに影響されて装いが少し汚いが、その汚れ以上の高潔な魂が見えて気がした。何より、僕とアリアドネに似た子達をそのまま捨て置くことなどできなかった。

 

 だから、僕は二人に手を伸ばした。その手に対し、二人は警戒して、特にアルフィアは妹の前に立ち守ろうとしている。しかし、その腕はプルプル震えていて、今にも倒れそうだ。

 

 いや、倒れた。

 

 二人は激しく咳き込み吐血する。最初は周囲の不衛生な環境によるものかと思ったが、二人の体をしっかりと注視するとその真実を理解した。身に余る『魔力』が自身を蝕んでいる。相当に珍しい。『恩恵』が無い身で膨大な『魔力』を発現している。

 

 僕は二人に近づき二人の頭を優しく撫でる。そして、神威を込めた言葉ーー『言霊』を二人にかける。

 

 

 『もう大丈夫。僕が来たからもう楽になっても良いよ』

 

 

 僕の言葉に導かれ、二人の子供は安らかな眠りにつく。

 

 僕は二人を抱えて、自身の家へと運ぶ。

 

 そしてこの後、二人は僕の初めての眷属となる。

 

 僕が回想終える頃には、アルフィアもアイズもリビングの椅子に座っていた。

 

 メーテリアも最後の料理をテーブルの上へと運び、自分も席へと座る。

 

 そして、四人は手を合わせ、

 

 

 「「「「いただきます」」」」

 

 

 今日という一日が始まる。

 

 『物語』は加速する。

 

 これは『たった一人の愚者が歩き続ける物語』。

 

 故に、愚者の周りに仲間はいないという『設定』。

 

 史上最悪の物語が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

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