始まるわけないだろうこの野郎。
ニヤニヤしながらナレーションする神の頭を後ろに潜んでいたもう一柱の神が思いっきり叩く。
おおよそ、神罰が下ったと言っても過言ではないくらいの音が響いたが、流石は神、痛そうではあるがそこまでダメージはなさそうだった。
「いたぁ!? えっ!? なにっ? え、誰が僕を叩いたの!?」
「僕だよ、このクソ神。何僕風にナレーションしてるんだ、『ゼウス』」
クラネルは目の前の爺をチョップする。
ゼウスは叩かれた頭をさすりながら、声の調子を元に戻す。
「あ、あ、あーー、ふぅ。なんじゃ、折角面白くしてやろうと思ったのに」
「だ、ま、れ。必要以上に読者を混乱させるな。何が『加速』だ。僕的には加速どころか逆行してるよ。いつの話してるんだ」
「えぇ〜。読者も気になってるじゃろ? お前さんの過去、まさに『愚者』と呼ぶに相応しいじゃろ?」
おおよそ、キランッとでも言うべき効果音がゼウスのドヤ顔から発せられる。これにウザいと思わないのはーー例え善神のアストレアやミアハ達のような心の広いヤツでもーー無理だろうよ。
「うっさい、お前ホントにマトモなことしないな。勝手に進行しやがって。あの
「地味に的確な罰を与えていくのうお主・・・。分かった分かった、しっかり儂から言っておく。それでも止まらんようなら好きにやってくれて構わん」
ゼウスは諦めてそう言うが、そもそも被害を完全に無くしたいベルはその答えじゃ満足しなかった。
「へぇ? じゃあもしゼウスが説得に失敗したら、そうだな、ヘラに言っておくよ。『メーテリアがゼウスの子のゴミ虫に言い寄られて困っている』ってね」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待つんじゃ!? ヘラは関係無いじゃろ!?」
急に慌て始めるゼウス。
ヘラにそんな事をチクったら間違いなく世界が終わる!
ヘラは
そして、これが一番大きいのだが、ヘラの眷属達はワシの眷属よりも軒並み強いのだ。一応、ワシの眷属で一番強いマキシムはレベル8でありながら、ヘラの眷属のレベル9の
クラネルが絡めば、『女帝』から遠慮が消える。その状態を見た事があるマキシムは「あれは
そんな彼女達がクラネルから依頼を受けてみろ。全員嬉々としてこちらを襲撃ーーいや、蹂躙してくるぞ!?
自分の欲に正直で、どれだけ酷い目に遭っても『覗きは男の浪漫だ!』とか何とか言って諦めないゼウスも流石にそれはいやだった。
「わ、分かった! しっかりこちらで躾けておく! ワシの眷属総出でアイツの教育を行う!」
「・・・まぁ、良いだろう。ほら、さっさと行くぞ。誰がこんな陰気臭い所にわざわざいなきゃならんのだ」
「陰気臭いって・・・。ここ、一応ワシの部屋なんじゃが?」
「なら、自分の部屋くらいさっさと掃除してくれ。いや、そうだな。あのゴミむーーサポーターにやらせるか。野郎の、それも爺の部屋の掃除なんて、アイツにとっては最高の嫌がらせだろうしな」
「そろそろワシ泣くぞ!? アイツに部屋を掃除されるくらいなら自分でやるわ! 何故、可愛いメイドちゃんじゃなくて、男に掃除させなきゃならんのだ!」
「一体どこにアンタの汚部屋を好き好んで掃除するメイドがいるんだろうな」
どこにもいないだろうよ。そんなメイドの神様のような人。
そんな人が…あ、いたわ。メーテリアがいるじゃん。絶対にゼウスの部屋の掃除なんかさせないけど。
メーテリアは、うん。正直、血縁的に色々複雑なんだよなぁ。アルフィアもだけど。
なにせ、『僕』はメーテリアの子であり、『私』はメーテリアとアルフィアの先祖に当たるからね。
わぁすごーい。字面だけだと意味不明だ〜。
読者の諸君にヒントを授けよう。
『英雄神話』は終わらない。
世界は英雄を欲し続ける。
世界は1人の『最後の英雄』を見初めた。
世界はその英雄を縛り付けた。その『役割』に。
『英雄神話』は巡り続ける。
その英雄が永遠に存在できるように。