ダンジョンの上にそびえ立つバベルの上にて、一柱の女神と一人の武人が話をしていた。
「ねぇ、オッタル。あの子良いわ。とても透明で輝いていて、とても美しい」
「はっ、フレイヤ様のお望みとあらば、すぐにでも連れて参りましょう」
女神が恋する乙女のような、または兎を狩るような狩人のような顔で呟き、武人はその呟きに隠された神意を汲み取ろうとし、行動しようとするが、女神から止めが入った。
「今は良いわ。それよりもあの子の輝きをもっと強くしたいわ。何か案があるかしら?」
「案、ですか?」
武人は黙考する。先日、ダンジョンで白き少年が戦う姿を見た。その姿を見ていた時に思ったのが、ある『冒険者』に似ていたと感じた。その冒険者の二つ名は『静寂』。纏う雰囲気が酷似していた。それにレベル1であれだけ動けるのは相当な才能であると判断した。その点もかの『静寂』と酷似していた。その時、レベル7の獣人の聴力が少年の呟きを拾った。
『家族……か』と。
ならば、試してみるのも一興か。
「さて、時間も良い頃でしょうし、そろそろ地上へと戻りましょう」
「ああ、そうだな」
「うん」
僕はしばらくアイズとリヴェリアさんと雑談していた。
だが、外の時間と部屋の傷の修復具合からそろそろモンスターも生まれる頃だ。
そろそろ動かないとモンスターに襲われる。
とりあえず、5階層まで戻ってきた。
ここまでの道中のモンスターは僕が倒した。
男なら女を守るものだと体が勝手に動いたのだ。
一体どんな
たまにアイズがボーッとしていた。どうしたのだろうか?
それを見たリヴェリアさんはニヤニヤしていた。どうしたのだろうか?
そして、地上へと辿り着いた。
「今日はお世話になりました。
「いや、構わない。その件はこちら側に原因があるし、道中の護衛もしてくれた。こちらこそありがとう」
「うん。カッコよかったよ、ベル」
「あはは……ありがとう、アイズ」
やけにアイズに褒められるなと思いながら、僕は二人と別れた。
僕は街中を歩き、人の少ない小道を歩いていると、不意に声を掛けられる。
「お前が、ベル・クラネルか」
僕よりも遥かに大きい獣人に。
確か、【フレイヤ・ファミリア】のレベル7冒険者であるオッタルさん。
何で、僕のことを?
「ええまあ、そうですが。何か用ですか?」
「お前にあるものを渡しにきた」
あるもの?
そして、オッタルさんは僕に一枚の紙を渡した。
「これは?」
「そこにお前の家族についての情報が載っている」
「!?」
どういうことだ? 何故、僕が知らない家族をこの人は知っているんだ?
「一体、何故──っ!?」
僕はオッタルさんを問い詰めようとしたら、もうそこには誰もいなかった。
僕は廃教会の地下室へと戻り、ソファに座る。
そして、先程の紙を読んだ。
そこにはある一人の冒険者について書かれていた。
名をアルフィア。所属は【ヘラ・ファミリア】でレベル7の冒険者。二つ名は『静寂』。
そして、【魔法】と【スキル】について書かれていた。
否、紙に書かれていない。
僕がそういう風に幻視しているのだ。
まるでその情報を知っているかのように。
そして、本日二度目の気絶を迎えた。
夢を見た。
顔を名前も知らない『英雄』達が、けれどとても温かな『英雄』達が戦う夢を。
灰色ではあるが美しい髪を持つ女性。
黒いドレスを着こなし、凄まじい魔法を放つ女性。
どこか懐かしさを感じるその女性は『悪』に身を堕とし、『次代の英雄』の礎となった。
それ自体に何も感情を抱かなかった。
だって、とても満足そうな顔をしていたから。
でも、会って話してみたかったな。
続いてはある大男が戦う夢を見た。
黒い鎧と黒い大剣を装備した大男。
僕もこの人と戦ってみたいと思った。
「ベル君!」
「はっ!?」
僕は起きた。僕が持っていたその紙には何も書かれていなかった。
僕はいつの間にか寝ていたんだ。
「バイトから帰ったら、ベル君が白紙を持って座って寝ていたからびっくりしたよ。何かあったのかい?」
「実は──」
僕はミノタウロスの一件から話した。【ロキ・ファミリア】の不手際についてはぼかしたが。あと、アイズやリヴェリアさんとの事も言わなかった。嫌な予感がしたからだ。
どうやらミノタウロスの話だけで頭が一杯一杯だったようで、何も疑問に思われなかったようだ。
ただ、話の途中なのにいきなり「脱げ!」と言われたのにはビックリした。
そして、案の定僕はランクアップできるようになっていた。
ヘスティア様が「一週間でランクアップとか聞いた事ないぞ……。それになんだよ、アビリティオールSSSって……」と言っていた。なんかすみません。
僕は結局、夢については何も言えないままその日は終わってしまった。
でも、魔法やスキルには何も変化がなかったって事はやっぱりあの夢は本当にただの夢?
僕は夜眠る事はできず、結局またダンジョンに潜った。
最初の遭遇はゴブリン。
僕は夢の女性が使っていた魔法を行使してみる。
「【
直後。音の嵐がゴブリンへと襲い、消し飛ばした。
はい?
待って。威力強すぎない? 超短文詠唱なのにゴブリン一体どころか、数十体を纏めて一掃した。
でも、何でだろうか?
いや、何考えているんだ僕は。
僕はありえない発想を頭を振って霧散させ。
再び、生まれてくるモンスター共と対峙する。
グギャッ! ガキュッ! とモンスター共は不気味な声を発する。
ああ──
煩いぞ、雑音共。
そして、その夜、迷宮には荒れ狂う程の音の嵐が鳴り続けていた。