歪な白兎は迷想を走る   作:幻桜ユウ

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第五話 羞恥の白兎

 

 

 

 夜のダンジョン探索から神様にバレない内に帰還しさっさと寝た。

 

 朝、僕は目が覚め、ギルドのエイナさんにランクアップ報告をすると、

 

 

 「一週間でレベル2〜〜〜〜!!!???」

 

 

 という、お決まりとも言える叫び声を出していた。エイナさんはすぐに口を閉じ、僕の腕を引っ張って部屋へと連れてきた。

 

 エイナさんは肩で息をしながら、僕に問い詰めてくる。

 

 

 「ちょっと!? それってどういう事!?」

 「いや、どういう事も何もそのままの意味ですけど?」

 「そうじゃなくて! なんでレベルアップしたの!?」

 「ああ、それはですね──」

 

 

 僕はエイナさんに、昨日ミノタウロスに襲われて撃破した事を伝えた。

 

 エイナさんはフラフラとしながら椅子に座り、ハァーと盛大なため息を吐く。そのすぐ後に急に笑顔になり、告げた。

 

 

 「ベル君。どうやら君は私が言ったことをちゃんと理解していないようだから、みっっっっっっちりと教えてあげる」

 「あっ、いや、あの、その、スミマセン」

 

 

 僕はエイナさんの黒い笑顔の前に何も言えず、数時間に及ぶ説教を受けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エイナさんの説教が終わり、とりあえず少しでも稼いでおこうとダンジョンに潜る僕。

 

 現在、7階層。

 

 特に何かあるわけではないが、とりあえず魔法を撃ちながら探索を進めて行く。

 

 

 「【福音(ゴスペル)】」

 「グギャッ!?」

 「【福音(ゴスペル)】」

 「ガルアッ!?」

 「【福音(ゴスペル)】」

 「グアッ!?」

 「【福音(ゴスペル)】」

 「ブモッ!?」

 「【福音(ゴスペル)】」

 「キュン!?」

 

 

 まぁ、本当に何もないので危なげなく進んでいる。

 

 まだ精神力(マインド)には余裕もあるし、10階層まで行ければ良いかな。

 

 と、順調に進んでいたのだが、

 

 

 「あっ、ベル」

 「アイズ?」

 

 

 アイズに会った。

 

 

 「また、会ったね」

 「うん、そうだね。中層に行くの?」

 「うん。ちょっと18階層に行こうかなって。ベルも来る?」

 「え? いや、一応僕レベル2になりましたけど、まだ中層は早いんじゃあ?」

 

 

 いや、アイズがいるなら問題は無さそうだけど、無闇に到達階層を増やすのもどうなのだろうか?

 

 ……正直、もうエイナさんに怒られたくない。

 

 

 「ベルなら、大丈夫。私もいるし、何より折角ベルに会えたから、もっと一緒にいたい

 「何より、何?」

 「う、ううん。なんでもない」

 「そう? じゃあ、良いけど。うーん、分かった。じゃあ、一緒に行こう」

 「ーッ! うん」

 

 

 そうして、僕達は18階層へと向かった。

 

 道中、アイズはとても楽しそうにモンスターを薙ぎ倒していたので僕の出番はほとんど無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ついたよ。ベル」

 「ここが18階層。【迷宮の楽園(アンダーリゾート)】。本当に地上のような光があるんだ」

 「うん。今は『昼』だけど、『夜』は水晶の光が消えて真っ暗になるの」

 

 

 僕は18階層の天井にある水晶を見て呟き、アイズが捕捉説明をしてくれる。

 

 僕はのびーっとしながら、アイズに尋ねる。

 

 

 「それで、18階層に何か用があったの?」

 「ううん。別にないよ。普通の探索」

 「そっか。これからどうするの?」

 「うーん。とりあえず、リヴィラに行ってみる?」

 

 

 『リヴィラ』──ここ、18階層で作られた街の名前。もちろん、安全階層でモンスターが産まれることはないが、上下の階層からモンスターはやってくる。だから、モンスターの襲撃によく会うらしい。その都度、何度も建て直しているそうだ。

 

 正直、あまり良い噂は聞かない。

 

 やれ、売り物の値段が法外だの。

 

 やれ、実力主義で治安は悪いのなんの。

 

 うーん。行きたくないかなぁ。

 

 でも、折角アイズが誘ってくれているのに無下にするのもなぁ。

 

 僕がうーんうーんと悩んでいると、アイズがクスリと笑った。

 

 

 「ふふっ。リヴィラはやめよっか。じゃあ、この近くで水浴びしよう」

 「うん? それもそれでどうなんだろう?」

 「気にしちゃダメだよ。ほら、こっち」

 

 

 アイズは僕の手を掴み、軽い足取りで歩いて行く。

 

 僕はレベル5の『力』に対抗できるわけないので、大人しくついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今、かなり危ない状況である。

 

 どういう状況かというと、今はアイズが完全に裸で水浴びをしていて、僕はその近くの木を挟んで地面に座っている。要するに警備だ。

 

 そうなのだが……

 

 

 「ベルも一緒に水浴びしよ?」

 「しないよ!?」

 

 

 本当にアイズは何言っているんだ!? アイズだって年頃の女性なんだから、恥じらいを持ってくれ!

 

 僕はあまりアイズの方に意識を割かず、()()()()()()()()()()()耳の方に意識を向ける。

 

 ……決して水浴びの音を聞こうとしているわけじゃない。

 

 ないったらない!

 

 ここは森の中で、モンスターもいないからとても静かだ。

 

 とっても心地が良い。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし、アイズの音はとても心地良かったが。

 

 とりあえず、『あの夢』によって僕の体が色々変わっている気がする。

 

 夢の女性のように病気があるわけではないが、何かおかしい。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何もおかしくはない。僕はずっとこうだった。

 

 都市の喧騒を煩わしく感じるのも、モンスター共の声に不快を感じるのも、()()()()()()()()()()()()()()

 

 僕はずっとこうだった筈だ。

 

 

 「ベル? もう水浴び終わったよ? 次、どうぞ」

 「ん? ああ、分かったよ」

 「じゃあ、今度は私が警備をするね」

 「うん。よろしく」

 

 

 僕はアイズと交代し、服を脱いで水に入る。

 

 アイズは僕の方を見ながら、周囲に気を配っているようだ。

 

 ん〜〜〜〜〜〜〜????

 

 いや、待って? なんで、こっち見てるの?

 

 

 「ア、アイズ? どうして、僕を見てるの?」

 「……体、鍛えてるんだね」

 

 

 冒険者ですからね……

 

 いや、そうじゃない!

 

 

 「いや、それ立派な覗き……」

 「? うん。覗いているよ?」

 「あっはい」

 

 

 天然! 超天然! そうじゃない! そうじゃないんだ!

 

 僕は先程の穏やかな心とは打って変わって、混乱の極地にいる。

 

 誰か〜〜! リヴェリアさ〜〜〜ん! ちょっとあなたの娘さん、しっかり教育してますか〜〜!? 

 

 僕の心の悲痛な叫びは誰かに届くことなく、強制無心によって静かに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

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