「どうして、こうなったんだっけ?」
僕は噴水のある広場のベンチに座りながらそんなことを呟く。
オラリオの
そんな中、僕は何をしているのかというと、ある人を待っているのである。まぁ、多分みんな分かると思うけど……。
「ごめん、ベル。待った?」
そんな風に僕に声をかける金髪美少女。そう、アイズである。アイズの格好は白い短衣にミニスカート。さり気ない花の刺繍とアイズの金髪がより美しさを際立たせている。どうやら、急いで来たようで少し髪が乱れている。
そんなアイズの格好を見て、僕も少しは着飾るべきだったかと今更ながら思うが、どんなに着飾ってもアイズには敵わないかとそう結論付けた。
「大丈夫。僕が来たのは少し前だから、そんなに待ってないよ」
「そう? なら、良かった」
安堵の表情と共に胸を撫で下ろす仕草をするアイズ。うん。可愛い。
ちなみに僕の言葉は嘘ではなく、待ち合わせの時間十分前に来て、アイズは時間丁度に来たため、本当に少ししか待っていない。
さて、いかにもデートの最初の定番をした所で、現在の説明を簡単にしよう。
ダンジョンでの水浴びの後、アイズに祭に誘われた。以上。
えっ? 簡単すぎるって? いや、本当にこれしかなかったの。
僕はベンチから立ち上がり、アイズの髪を手で直しながら、これもまたデートの定番と言うべきか、アイズの服装を褒める。
「アイズ。今日の服装、似合ってるよ。まるで美しい花畑に囲まれたお姫様のようだ」
「っ!?/// ありがとう、ベル……」
僕の言葉にか、はたまた頭を撫でられていることに照れたのか、アイズは顔を真っ赤にして俯く。
というか、僕もよくそんな褒め言葉がスラスラ出てきたな。なんだか、言い慣れているような……。
そんな疑問はさて置き、僕は右手を差し出し今も恥らうお姫様を誘う。
「では、美しきお姫様。どうか、私の手を。一緒に行きましょう?」
「うっ、うん/// お願い、します///」
アイズは僕の差し出した手に自分の手を乗せ、承諾の意を示す。
別にここまでやる必要はないと思ったが、折角の祭りだし、これぐらいは許してくれるだろう。
なお、そんな安易な考えで行ったことにより、少年少女の周りには二人の甘々な空気に当てられた有象無象の男女が倒れ伏している。まさに地獄絵図。
しかし、少年少女はそんな事を気にせず、祭りに参加するのだった。
そして、折角の祭りの時間はある神の思惑の下、消え去るのだった。
僕達はジャガ丸くんを買い、そろそろ本命でもある闘技場の方へ向かう途中のことだ。
というか、アイズが買ったジャガ丸くんの小豆クリーム味って一体何なんだ? とても甘そうな名前なんだが。
食べれない程ではないが、甘い物が苦手な僕はアイズのジャガ丸くんを食べる様子を見て、微かに戦慄するのだった。
うーん。やっぱりアイズといると、周りの喧騒が気にならなくなる。いつも煩わしいと感じていた騒がしい雑音はアイズの側だと不快に思わなくなる。いや、正確には僕の耳が周りよりもアイズだけにしか向いていないようなそんな感じがする。
何故、そんな話を今するのかって? そりゃ勿論、それによって気付かなかったんだよ。
「きゃあああああ!」
「うわぁああああ!」
街の人の悲鳴と共に現れたモンスター。
モンスターに付いている拘束具から察するに、闘技場で使われる筈だったモンスターが投げ出してきたのだろう。
それと、闘技場がまだ湧いている所から察するに、モンスターの脱走は一部のみ、外部で発生している。
確認できた音は『トロール』『ソードスタッグ』『シルバーバック』──計九体のモンスター。そして、余りにも気色悪い未知のモンスター。
その内、僕から視認できるトロールは逃げ惑う人々には目もくれず真っ直ぐ僕に向かってくる。
狙いは僕か!
何らかの作為があると確信した僕は腰にある短剣を引き抜き、正面で構えた──その時だった。
ビュンッ!
おおよそ普通とは思えない風が僕の隣を通り過ぎて、トロールを襲い一瞬で灰へと化した。
恐る恐る隣を見ると、ニッコリと黒い笑みを浮かべているアイズがいた。
アイズは今日武器を持っていない。つまりは武器を使わず、何かしらの魔法を使ったのだろう、
「ア、アイズさん?」
思わず敬語になってしまう程、今のアイズには迫力があった。
そして、アイズは何か呟く。
「折角、ベルとデートだったのに。どうして、邪魔するの?」
あっ、やばい。これ、モンスター達死ぬわ。
いや、ここまでの騒ぎを起こしたのだから、倒すしか無いのは当然ではあるのだが。
このままではアイズが暴走しかねないので、一つ提案をすることにした。
「アイズ。少し落ち着いて、デートならこれからもできるでしょ? 後でいくらでも付き合うから。今は、住民の避難が先だよ?」
「……分かった。じゃあ、モンスター達を殲滅しながら、皆を助ける」
あっ、何も分かってないな、コレ。
もう、どうしようもない事が分かったので、アイズの好きにさせる事にした。
「じゃあ、僕もついて行くよ。僕ならモンスターの場所が分かるし、住民の保護も僕がするよ」
「うん。ありがとう」
アイズの纏う黒い雰囲気が無くなった。
よし、一旦は落ち着いてくれたみたいだ。
一つ気掛かりなのは今も地下から出てこないモンスターだが、まだ出てこないなら後回しでもいいだろう。
そう結論づけ、僕達は逃げ出したモンスター達の処理へと向かった。
さて、アイズの制御できるかなぁ〜。
僕は僅かながら未来に不安を覚えながら、走るのであった。