レッドが地上に戻るようです   作:naonakki

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第十三話

「皆! 黒幕を見つけた! これから制圧しに向かうっ! 攻撃を中断し、俺に続け! 皆は周囲にいるポケモン達を追い払ってくれ! 黒幕は俺とイブキで叩く!!」

 

 ワタルの力強い指示にトレーナー達は「おお!!」と応える。

 カイリューに乗ったワタルとイブキが先行して黒幕がいる地点まで一直線に突き進んで行く。黒幕に近づくごとに野生のポケモン達が行く手を阻むように立ちふさがってくるが、後ろに控えている他のトレーナーのポケモン達によって排除されていく。

 

 そして、とうとう黒幕の姿をこの目でとらえることができた。

 

 それは二足歩行の人型のポケモンであった。全身は白色に包まれ、長い尻尾のみ紫色である。その瞳はどこまでも深く憎しみに染まっていた。

 その堂々たる存在感は周囲にいるポケモン達とは一線を画し、底なしの実力を持っていることは誰の目から見ても明らかであった。

 目の前にいるだけで強力なプレッシャーを感じ、委縮してしまいそうだ。

 

 ……こいつが人々をっ!

 

 そのポケモンは、何をするでもなくただじっとこちらを見つめて動きを待っている。

 そのポケモンは完全に試していた。

 目の前に迫る敵を、……ワタル達を。

 悠然たる態度で。

 それを裏付けるように、ワタル達と黒幕のポケモンとの間にいた大量の野生のポケモン達がその場を退いていく。まるで客人を招き入れるように。

 黒幕のポケモンとワタル達との間に障害は無くなった。

 

「……っ! 舐めるなっ! 合わせろっ! イブキッ!」

「分かっているよ!」

 

 敵の思惑を理解したワタルとイブキは怒り、敵との距離を詰めていき、寸分のずれなく同時に叫ぶ。

 

「「はかいこうせんっ!!」」

 

 二体のカイリューから繰り出された『はかいこうせん』。

 文字通り、すべてを破壊する眩く輝く光線はそのポケモンに一直線に向かっていき命中した。そのポケモンは技が命中するまでの間、その余裕の態度を崩さず避ける素振りすら見せなかった。

 技がヒットした瞬間、大爆発が起こり、衝撃波と共に爆炎が周囲に広がっていく。

 他のトレーナー達は、「やったぞ!」、「まともに命中した!」、と勝利ムードを醸し出しているが、ワタルとイブキは対照的に顔を青ざめさせて信じられないものを見る様子で目の前に広がる爆炎に目をやっていた。

 その理由は、あまりにも手ごたえが無かったから。

 敵は全くダメージを受けていない。それを確信していた。

 

 爆炎が収まっていくと、やがてその中心にゆらりと影が見える。

 ようやく他のトレーナー達も敵がまだ健在であることを理解し、水を差されたようにシンとした静寂に包まれる。

 そしてその姿が再び鮮明に見える。そのポケモンには埃一つついていなかった。

 そのポケモンを見ると、バリアーが展開されており、それで防がれたものだと理解する。しかし、バリアーで先ほどの強力なはかいこうせんを防ぎきることなど普通は不可能だ。

 

「貴様達は……、ふむ。ポケモンリーグのチャンピオンのワタルに、ジムリーダーのイブキか。人間界の上に立つ者でこの程度の実力か……。最強の存在である私より強い者などいるはずがないことは分かっていたし興味も無かったが、これは流石に少々……いや、かなりがっかりだな」

 

 その冷徹でよく響く声は、体の芯に響き、生物としての本能が警鐘を鳴らす。

 この存在に関わってはいけないと。

 それが、なぜかワタル達の正体を言い当ててきたことや、そもそもポケモンが人間の言葉を喋ったことに対して驚く余裕を持つ者はいなかった。

 トレーナー達は凍り付いたようにその場から動けなくなる。

 

 

 

「…………私はミュウツー。お前たち人間を滅ぼすためにここに来た」

 

 

 

 自らをミュウツーと名乗ったポケモンは、右手を前に突き出すようにゆっくりと持ち上げる。

  

「サイコカッター」

 

 淡々と技名が告げられたその瞬間、虚空から生み出された鋭い刃が目にも止まらぬ速度でイブキのカイリューに襲い掛かる。

 イブキとカイリューは何も反応できずに、カイリューは刃で切り裂かれ、苦悶の鳴き声をあげて地に沈んだ。一撃である。

 

「カ、カイリュー!」

 

 イブキがカイリューの元に駆け寄る傍ら、ワタルはミュウツーから視線を外さず警戒を続ける。いや、続けざるを得なかった。

 一瞬でも目の前の存在から目を背けるとその瞬間、命を刈り取られる。そんな予感がするのだ。

 絶対的存在を前に、恐怖からなのか全身が震える。

 今の一連の動きだけでも目の前のポケモンが自分では敵わない存在であることを理解する。

 それでもここで自分が立ちあがらなくては大勢の人たちが犠牲になることも理解している。

 

「……カイリュー! 炎のパンチだ!」

 

 他のトレーナー達が委縮する中、自らに課せられた責務を全うするべくワタルは立ち上がる。

 しかし、カイリューの攻撃は届かなった。ミュウツーのバリアーに阻まれたわけでもない。

 第三者によって防がれたのだ。

 

「なっ!? お、おまえは……!?」

 

 それはカメックスであった。カイリューの炎に包まれた拳を余裕をもって受け止めている。

 そのカメックスは、ただのカメックスでは無かった。

 ミュウツーを除くこの場にいるどのポケモンよりも鍛えられていることが分かる。そしてカメックスだけでは無い。

 横合いからカメックスと同レベルに鍛えあげられたメガニウムが現れる。

 その二体のポケモンのことはワタルもよく知っていた。

 

「…………コトネ、ブルー」

 

 現実を受け入れたくないと言わんばかりに震える小さな声で呟いたワタルの予想が正しいと言わんばかりに、ミュウツーの両脇から無気力な様子の二人の可憐な少女が現れる。

 コトネとブルーである。

 共にワタルを超える実力を持った天才少女であるが、今はミュウツーに意識を乗っ取られ、無理やり身体に負荷をかけられてさらに力を増している。ワタルが敵う道理は無かった。

 ミュウツーは、嗜虐心に満ちた表情を浮かべて可笑しそうに笑う。

 

「……くくく、お前達ごとき私が戦うまでもない。この二人と他のポケモン達で十分だろう。私に操られないように対策をしているようだが、操られた方が幸せだったかもな……」

 

 その時だった。少し離れた上空からバババとヘリコプターのローター音が聞こえてくる。

 

「……なっ!? マスコミか!? ここに来るなと念押ししておいたのに……」

 

 音源に目を向けたワタルが、その正体に気付き慌てる。

 流石にここから距離はとっているようだが、このミュウツーと言うポケモンがいる戦場にいること自体が危険である。

 

「ますこみ? …………ほう、なるほど。テレビというものがあるのか。ちょうどいいではないか。これから始まることを全ての人間にみせてやろうではないか」

 

 そばにいたコトネからマスコミやテレビについての情報を手に入れたミュウツーは、瞬時にその仕組みを理解する。そのままミュウツーは、ヘリコプターのほうに視線を向け、その瞳を妖しく輝かせる。

 あまりにも一瞬のことでありワタル達も反応できない。

 するとヘリコプターはすぐさまこちらに距離を詰めてきて、近い距離から今ここで起きていることを撮影し始める。

 

「さあ……これで準備は整った。……いけ」

 

 ミュウツーがそう指示を飛ばすと、周りで大人しくしていた野生のポケモン達が一斉にワタル以外のトレーナー達を襲いだす。

 あり得ない出来事の連続で思考が停止していたトレーナー達だが、自らに危険が及んだことで硬直から解き放たれ、ポケモンを繰り出していく。

 しかし、いくら実力あるトレーナー達とは言え、ハナダの洞窟の強化された無数のポケモン達を前に次々にやられていく。

 さらにミュウツーは、どのトレーナーにも必ず数的有利を取って戦うように命令し、絶対に負けない方法で攻めてきているのだ。

 ここにいるトレーナー達は結局、一対一のポケモンバトルのスペシャリストであり、複数のポケモンが相手となると勝手が分からず後手を踏んでしまうのだ。

 当初の計画は完全に潰えた。

 まさに絶体絶命の状況。

 

「くっ、皆……っ!?」

 

 ワタルが他のトレーナー達を助けようとした瞬間、コトネとブルーがポケモン達に指示を与え、同時に襲い掛かってくる。

 ワタルは何とか応戦するも当然の如く全く敵わない。

 イブキが加勢しようとするが、ミュウツーはワタルを孤立させるために野生のポケモン達を使ってイブキをワタルから引き離す。

 コトネかブルー、どちらか一人だけが相手でも敵わない相手であるのに二人同時にかかってこられては、ワタルは何もできずに次々と一方的に攻撃を加えられていく。

 

 さらにミュウツーは、テレビ越しに人間に恐怖を与える為、惨たらしく尊厳を壊すように追い詰めろと指示を飛ばす。

 ミュウツーの思惑通り、ワタルはコトネとブルーに弄ばれるように翻弄されていく。

 ブルーのポケモンがワタルのポケモンを羽交い締めにし、無抵抗のワタルのポケモンをコトネのポケモンがいたぶるように攻撃を加えていく。

 最早、戦いですら無かった。 

 国民アイドル的存在でもあるコトネと名も知れぬ少女が、チャンピオンであるワタルを追い詰めるその構図は人間達に大きな絶望を与えるだろうとミュウツーはほくそ笑む。

 ワタルは、ギリッと歯を噛みしめ、拳を握りしめ、己の無力さに怒りを燃やす。

 

「くく、ポケモンだけでなく、自分の心配もするんだな?」

 

 ミュウツーの撫でるように振るった手から放たれたわざと微弱に調整された攻撃がワタルに襲い掛かり、それがワタルの右腕に命中する。ワタルは「うっ、く、くそ」とあまりの痛みに腕を抑えて膝を地面につく。骨が折れたのだ。

 

「くく、ふふふ! どうだ人間! 何もできずに滅んでいくがいい!」

 

 悠々とした態度のミュウツーが後方で高らかに笑う。

 

 

 

 いつ心が折れ、全滅してもおかしくない状況。

 それでも、ワタル達は希望を捨てていなかった。

 確かにミュウツーは規格外のポケモンである。

 間違いなく伝説と呼ばれるポケモンに類されるだろう。

 ミュウツーが自ら言ったように、これまで発見されたポケモンの中で最強と呼ばれる存在なのかもしれない。

 しかし、こちらにも同等の存在がいる。

 同じく規格外であり、敗北を知らない、際限なく強くなる史上最強のトレーナーが。

 

 

 

 そう……、レッドである。

 

 

 

 ここに来る前にグリーンが言ってくれたのだ。

 後からレッドと一緒に必ず向かうと。

 それを皆理解しているからこそ、どれだけ不利な局面に立たされても希望を捨てずに戦える。

 ここで自分たちが耐えれば、間もなくレッドが来て全てをひっくり返してくれると。

 レッドの存在がトレーナー達に戦う勇気を与え、そこから驚異的な粘りを見せる。

 

 

 

 

 

 あれからどれくらいの時間が経過しただろう。

 既にトレーナー達は満身創痍。

 なぜ立っていられるのか分からない。

 それでも彼ら、彼女らは倒れない。

 

 ミュウツーは、しぶとく粘ってくるワタル達に苛立ちを見せ始める。

 なぜ勝ち目がないくせにそこまで粘るのかと。

 

 

 

「……もういい、私の手で全てを終わらせてやる」

 

 

 

 痺れを切らしたミュウツーは自らの手で終わらせるべく一歩進みだす。

 次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 ドオオオオオンンンンッッッ!!!

 

 

 

 

 

 大気を通して、耳をつんざく轟音が周囲一帯に響き渡る。

 少し離れたところで雷が落ちた音だった。

 

「……なんだ? 雷?」

 

 突然の現象に驚いたミュウツーは歩みを止めて不思議そうに上空を見つめるも、そこには雲一つない青空が広がっていた。雷が落ちるとは思えない。

 ポケモンが『かみなり』を使用したのかと疑うが、すぐに否定する。

 今感じたエネルギーはもっと莫大なものだった。いちポケモンが扱えるものではない。

 

「…………はぁ、はぁ、来たか」

 

 しかし、今の現象の正体を理解したワタルは、にんまりと不敵な笑みを浮かべると自分の役目は終えたとばかりに意識を失いその場に倒れた。

 他のトレーナー達も同様に安堵した様子でその場に力なく崩れ落ちていく。

 

「……なんだいきなり。ふん、まあいい、それよりようやくくたばったか。二人とも下がれ。私自らがその人間にとどめを刺してやる」

 

 ミュウツーがコトネとブルーにそう指示を出し、倒れたワタルに向かって歩み出そうとした瞬間だった。

 

 

 

 急に影がさした。背後から伸びてきたそれは自分をすっぽり覆ったのだ。

 

 

 

 同時に感じたことのないほどの巨大な殺気を背後から感じる。

 急いで後ろを振り返る。

 そこには、自身の体格を大きく上回る巨大なポケモンである『カビゴン』がいた。

 普段温厚で穏やかな表情を浮かべているカビゴンは、今、怒りと殺気を振りまいている。

 カビゴンが全身に力を込めて、突撃するためのモーションに入る。

 その動きがミュウツーにはスローモーションに映る。

 ミュウツーの本能が警戒を発し、脳内処理速度を加速させているのだ。

 こんな経験は初めてであり、ミュウツーの反応が遅れる。

 

 『ギガインパクト』

 

 カビゴンが持っている全ての力を込めてミュウツーに突撃する。

 回避が間に合わないと判断したミュウツーは、咄嗟に高出力のバリアーを展開し、そこにギガインパクトが衝突する。

 ただの突撃にも関わらず、爆発でも起きたような莫大な衝撃が生まれ、周囲の大地が捲れ上がっていく。その余波で近くにいたコトネとブルーはその場で転倒してしまう。

 ミュウツーは、なんとか攻撃を防ぎ切ったもののバリアーは大きく削られた。こんなことは初めてであり、瞬時に事実が呑み込めない。

 カビゴンは自らが生み出した衝撃によって周囲が戸惑っている隙に、のしのしとブルーとコトネ、そしてワタルの元まで向かう。そのまま三人を軽々と抱えてその場を離れていく。

 ミュウツーはすぐに我に返ると、異常なパワーを持ったカビゴンの登場に何か嫌なものを感じ取り、再度バリアーを展開しなおし、周囲に野生のポケモン達を集めて守りを固めようとする。

 

 しかし、それは叶わない。

 

 いつの間にか周囲の空気は白くなり、気温が急激に下がっていた。

 ミュウツーが何かを考える暇もなく、次の瞬間に猛烈な『ふぶき』が吹き荒れ、ミュウツーと野生のポケモン達が引き離されていく。

 目を開けることも困難であったが、ミュウツーは目を凝らしふぶきの発生源を辿ると、白く染まる世界にうっすらとその姿が浮かび上がる。

 そこには『ラプラス』がいた。こちらも本来温厚なポケモンにも関わらず、カビゴン同様にこちらに対して殺気と怒りを向けてきている。

 ミュウツーはなんとか、ふぶきを払おうとするが、ラプラスのふぶきは強力であり中々上手くいかない。

 

 ……なんなんださっきから。何が起きている?

 ……なら、いい。最大出力でさきほどのカビゴン含めて私の支配下におく。

 ミュウツーが力を込めようとした瞬間だった。

 

 目の前が眩く光った。

 次の瞬間、先ほどのカビゴンの『ギガインパクト』と同等かそれ以上の衝撃がミュウツーに襲い掛かった。またもバリアーのおかげでミュウツー自身にダメージはないが、やはりバリアーは大きく消耗した。

 

 なんだ!?

 

 攻撃をされたことは分かるが、どのように攻撃をされたのか、何に攻撃をされているのかが不明だ。

 するとまたも目の前が光ったかと思うと攻撃を加えられる。僅かに雷の軌跡は見えるが、それまで。攻撃をしている正体まで確認できない。

 その後も次々と攻撃が加えられていく。反撃したくても攻撃が見えないのでは、どうすることもできない。バリアーが削られるたびに修正していくが、謎の攻撃が激し過ぎて間に合わない。

 

 ……くそっ! どうなっている!?

 

 ここに来て初めてミュウツーは焦りを見せる。

 しかし、謎の敵はミュウツーに対抗策を練らせる時間は与えてくれない。

 

 バキィィィンン!!

 

 とうとう、バリアーを削り切られてしまった。対してミュウツーはまだ敵の正体すら確認できていない。状況は圧倒的不利だ。

 ミュウツーが周囲を見渡すも吹雪に阻まれて視界は悪く白い世界が広がるのみ。

 

 ドゴオオオンンン!!!

 

 次の瞬間、全身に強烈な衝撃が走る。

 腹部に雷を纏った何かが衝突してきたのだ。

 

「がっ!?」

 

 生まれて初めて感じる痛みに驚き、たまらず苦悶の声を上げるミュウツー。しかし、普通のポケモンがダウンするほどの大ダメージを受けても倒れない。しっかりとその足で大地を踏みしめる。

 それどころか痛みを噛み殺して敵の正体を確かめるべく自らの腹部に視線を下げ、ようやく攻撃し続けていた何者かの正体を確認する。

 

 ……ピカ……チュウ……だと!?

 

 そこには種族的に自分より圧倒的に劣るはずの愛くるしい見た目のピカチュウがいた。しかし、目の前にいるピカチュウからは、先ほど現れたカビゴンやラプラスを遥かに上回る圧倒的強者のオーラが放たれている。そのピカチュウがこちらをギロリと睨んでくる。

 ミュウツーの全身に悪寒が走る。

 それが恐怖によるものだとは、ミュウツーは理解できない。

 むしろ、自分がピカチュウごときに遅れをとっていたという事実に怒りを覚え、反撃に出るべく動く。

 しかし、ミュウツーが動くより早く、ピカチュウは飛びのき『10まんボルト』を放ってくる。ミュウツーは何とか『10まんボルト』をいなそうとする。しかし。

 

 ……く、なんだ、この馬鹿げた火力は!?

 

 先ほど一撃を受けたこともあり、上手く力を制御できない。ピカチュウの高火力の攻撃を防ぐだけで精一杯。その場から動くことすら叶わない。

 そして、ミュウツーはある違和感に気付く。

 いつの間にか、周囲のふぶきが晴れており、視界が戻っていたのだ。

 そして周囲には自分とピカチュウ以外に何もいなかった。

 

 

 

 三体のあるポケモンを除いて。

 

 

 

 ゾクッ!

 

 

 

 ここでミュウツーは今日一の殺気を感じ取る。

 自分をぐるりと囲むように等間隔に『リザードン』、『カメックス』、『フシギバナ』がいるのだ。

 その三体は、なぜか満身創痍であり、今にも倒れそうな状態であった。

 それでも三体の瞳に燃え上がる闘志の炎は荒れ狂い、その矛先は自分に向けられている。

 

 この三体がボロボロな理由。

 それは最初にミュウツーが聞いた落雷音。

 それがピカチュウによる三体への攻撃だったからだ。

 そしてこれは、ポケモン達自身が望んだことで、その主もポケモン達の覚悟を受け入れた。

 『リザードン』、『カメックス』、『フシギバナ』。

 この三体には、ある特性がある。

 『もうか』、『げきりゅう』、『しんりょく』。

 それは命尽きるその寸前、生存本能により、技の威力が桁違いに跳ね上がるというもの。

 誰もが手に入れることができる最初の三体のポケモンに備わった力。

 そして今、三体はその力を発揮させる。

 

 

 

 ここにいるミュウツーと言う未知の強大なポケモンを倒すために。

 そして、大好きな主の大切な人を助ける為。

 

 

 

 

 三体が一斉に吠え、技を発動させる。

 

 

 

 リザードンの『ブラストバーン』。

 

 カメックスの『ハイドロカノン』。

 

 フシギバナの『ハードプラント』。

 

 

 

 極限までに育て上げられた三体が、ほのお、みず、くさ、それぞれの最強の大技を発動させていく。

 

 ……っ!!??

 

 ミュウツーは自分が置かれている状況が絶望的であることにようやく気付く。

 カビゴンから攻撃されていた時から既に詰んでいたのだと。

 動こうにもピカチュウに邪魔されて何もできない。

 

 

 

 私は……、私は、最強の存在……ではなかったのか?

 

 

 

 三位一体の攻撃が、放たれる。

 それらはすべてを飲みこむようにミュウツーに近づいていく。

 ミュウツーは自分に攻撃が当たる刹那、確かに見た。

 

 

 

 六体のポケモン達の後方で悠然と立ち、絶対的強者のオーラを放つ唯一無二の存在を。

 それは赤い帽子を深く被り、その下から僅かに見えた瞳には、見る者を恐怖に陥らせるほどの怒りが浮かんでいた。

 そしてその者の口が僅かに動いた。

 それはこう言っていた。

 

 

 

 

 

 ゆ る さ な い

 

 

 

 

 

 そしてミュウツーに攻撃が炸裂した。




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