レッドが地上に戻るようです   作:naonakki

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第四話

 「……う~ん、美味しい!!」

 

 頬に手を当て、恍惚の表情を浮かべるブルー。

 その手元にはジューとなんとも魅惑的な音を奏でるステーキがあった。

 「やっぱり私の見立てに狂いはなかったわ」とパクパクとステーキを口に運んでいく。

 

 ……肉。

 

 目の前の鉄板皿の上に置かれたその姿を改めて瞳に映す。

 分厚いその塊から溢れ出る肉汁が俺の食欲をこれでもかと刺激してくる。

 口内には既に唾液が立ち込めており、早くそれを食せと全身が訴えかけてくる。

 

 ……あぁ、シロガネ山以来の久しぶりのまともな食事だ。

 あっちだと食べられない日なんかもざらにあったしな。

 

 ……いざ、頂きます!

 

 「何よレッド、食べないの? じゃあ私もらうわね。」

 

 俺が突き刺したフォークとナイフは肉を空振り、机に刺さってしまう。

 バッと視線を前に向けると、自分の皿を空にしたブルーが俺が食べるはずだったステーキをバクバクと食べていた。

 

 ……あれ? 

 なんか視界がぐにゃりって歪んできたんだが……。

 

 「は~、やっぱり美味しいわね……って、何泣いてるのよ?」

 

 不思議そうな表情を浮かべ、何の悪びれもなく淡々とそう聞いてくるブルー。 

 

 ……まじで一回しばいてやろうか。

 

 恨みを込めた睨みをきかせるがブルー本人はどこ吹く風状態である。本当にいい性格をしている。

 

 ……うぅ、俺の肉が。

 新しく注文しなおしても次に来るまで十五分はかかる。それまでお預けである。この肉の香りで満たされたこの空間でだ。

 つまり地獄である。

 

 突きつけられた現実に項垂れていると急に俺の口の中に無理やり何かが押し込まれる。

 熱々に熱されたそれはとても柔らかく溶けるように口内いっぱいに濃厚な味わいを伝えていく。

 

 ……う、うまい。なんだこの反則的な美味しさは。

  

 「あはは、本当にあんたって三年前と何も変わらないわね。肉を取られた時のあんたの顔と来たら、ふふ。相変わらず虐めがいがあるわ~。」

 

 咀嚼しながら視線を上げるとそこには可笑しそうに笑っているブルーが目に入る。その手にはフォークが握られている。恐らく俺の口にそれでステーキを押し込めたのだろう。

 

 ……やっぱりわざとやってやがったのか。

 ブルーこそ何も変わっちゃいない。

 昔からブルーは俺とグリーンのことをおもちゃか何かと思っている節があったからな。

 ブルーの破天荒には俺とグリーンがどれほど苦労したことか……。

 

 「はいはい、そんな恨めしそうに見てこない。はい、あーん。この私にあーんしてもらえるなんてレッドもラッキーよね。これはチャラどころかお釣りがきたってもんよね?」

 

 ブルーはニコニコしながら大真面目にそんなことを言ってフォークに刺したステーキの切れ端をこちらに差し出してくる。

 こいつはどれだけ自分に自信があるんだよ……。

 言いたいことは多くあるが、肉の誘惑には逆らえるわけもなく、甘んじてそれを受け入れる。

 

 ……うん、やはりうまい。

 

 その後、俺たちはおかわりも頼み、満足いくまで食事を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 「……さて、それじゃあそろそろこれからのことを話し合いましょうか?」

 

 先ほどまでの雰囲気とは一変、真面目な顔つきとなったブルーがそう切り出してくる。

 このようにブルーは報酬が絡むと超真面目に働く。

 その代わり報酬を払わなかったら殺されるけど……。

 

 「正直私もシンオウチャンピオンのシロナの実力は分からないわ。だからまずは相手の実力を知る為にも、今日はシロナのこれまでの公式戦の戦いの過去動画を見まくるわよ。それにレッドも昨日の今日だしいきなり激しい修行はできないでしょ?」

 

 ……その意見には賛成だが、そんな簡単に他の地方のポケモンバトルの動画データを集められるものなのだろうか?

 

 「そんなのポケモンリーグにいくらでもあるに決まっているでしょう。というか既にポケモンリーグ関係者に連絡してダッシュでデータを送るように命令しておいたわ。」

 

 ……命令て。なぜ権力もないはずのブルーがそんなことできるんだよ。

 

 「えー、そりゃあポケモンリーグ内には私のどれ……駒が何十人もいるからね。結構便利よ?」

 

 こいつ今奴隷って言いかけたよな。後、なぜ駒という表現ならセーフと思ったのか。

 まあ今に限って言えばありがたい話なのであえてスルーする。

 ……しかし何をどうすれば駒が出来上がるのだろうか。

 

 「そして明日からが本格的に修行開始よ。午前中はシロナの過去のバトル動画を見て戦略を考える。そして午後からひたすら色々なトレーナーと戦ってもらうわ。候補としてはそうね、まずグリーンを除くジムリーダーと四天王ね。ちょっと物足りないと思うけど、程よく動くサンドバッグくらいにはなるでしょう? その中でシロナ戦を想定した色々なシミュレーションをするといいわ。」

 

 ……酷い言いようだな。サンドバッグて。

 まあ、そうなるんだろうけど……。

 

 「そして仕上げにグリーン、ワタル、コトネ、そして私と戦ってもらうわ。これをひたすら三週間続ける。とりあえずこれで行こうと思うわ。後でグリーンにこの旨を伝えておくわ。後は向こうで勝手に色々準備してくれるでしょ。」

 

 なるほど、まあ確かにそのプランでいけば、シロナの対策もできるし、俺のポケモン達のレベルアップにも繋がるだろう。悪くない。

 しかしみんな忙しいだろうし俺の修行に付き合ってくれるだろうか?

 

 「当たり前でしょ? むしろ誰が戦うかで喧嘩になるわよ。それに私がいるんだから相手がいないなんてことにはならないわよ。」

 

 ……そういうものだろうか? まあブルーがそう言うのならそうなのだろう。

 でも動画はどこで見るんだ? 俺の病室か? でもあの病室って俺の体調がよくなった後でも使っていいのだろうか? すごい高級室だし。流石に図々しいよな?

 

 「嫌よ。病室ってなんだかソワソワするのよね、謎の緊張感があるというか。それにポケモンリーグの監視下っていうのも落ち着かないから却下よ。」

 

 その気持ちは分かるが他に候補でもあるのか?

 

 「私が泊ってるホテルにしましょう。ちょうど大きめのテレビとソファもあるし、そこで見ればいいわ。ルームサービスで食事も運んでくれるし環境としては悪くないわ。」

 

 

 

 ホテル……だって? ブルーの泊っている?

 

 

 

 なるほどな。その手があったか。頭いいなブルー。

 というわけで大枠の方針が決まった俺たちは店を出て早速ブルーの泊っているホテルへと向かっていった。

 

 

 

 俺は背後に突き刺さる視線には結局最後まで気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モニターの中には、華麗に黒いコートをはためかせ、ポケモンに指示を出すシロナの姿が映っていた。

 その姿は、まさに戦場に咲いた花であった。

 シロナのポケモンの流れるような一挙一動に相手のポケモンが翻弄され、為すすべなく倒れていく。

 

 今見ているのは、一週間ほど前に行われたチャンピオン防衛戦の時の動画である。

 シロナのガブリアスが相手のエンペルトのれいとうビームを躱し、カウンターのじしんを叩き込む。まともに食らったエンペルトはそのまま地に沈む。

 試合はそこで決着となった。

 

 見事防衛を果たしたシロナは、笑顔を浮かべ周りの観客に手を振っている。

 その表情にはまだまだ余裕があり、本気を出していなかったことは明白である。

 実際にシロナの手持ちのポケモンはまだ半分以上が残っていた。

 しかし相手が弱かったわけではない。シロナが強すぎたのだ。

 

 チャレンジャーの白いニット帽を被った紺色の長髪の少女も、そのあまりの実力差に呆然としている。

 

 「ふーん、これがシロナ……ね。確かに強いわね。まだまだ余力を残しているようだし。底が見えないわね。」

 

 ……確かにこれまで見てきた中では最もポケモンの強さが完成されている。

 仮にシロナがコトネのように俺のポケモン構成を把握し対策をすれば俺が勝つ可能性はゼロだろう。

 勿論、こっちが何も対策をしなければの話だが。

 

 ……けど、正直勝てない相手じゃないと思うんだよな。

 ぶっちゃけ俺のポケモンの方が成長レベルとしては上だろうと見ている。俺だって伊達にシロガネ山で三年間籠っていたわけではない。

 まあ画面越しに見ただけなので100%確実かと言われれば困るが。

 それをそのまま正直に隣に座っているブルーに伝えると、ブルーは呆れたようにこちらを見つめてくる。

 

 「あのねぇ……それは今日見た動画を見ての感想でしょ? シロナがグリーンやコトネ、ワタルよりも強いのは明らかでしょ? そんなシロナがあんたに絶対に勝てるって言っているのよ? 実力を隠しているに決まっているじゃない。最悪、今見ているポケモン達が全て二軍だなんて可能性も視野に入れておいた方がいいかもね。」

 

 ……二軍、か。そりゃ負けるわ俺、多分だけど。

 確かに楽観的になるのはまずいな。むしろ今見ているのが二軍であると想定して修行するくらいが丁度いいかもしれない。

 

 その後も俺とブルーはシロナの過去のポケモンバトルを見続けた。

 しかし、時計の短針が10を過ぎる頃になってブルーが「う~ん」と伸びをして、時刻を確認すると

 

 「もうこんな時間ね。私はシャワーに入って寝るわ。レッドはどうする? 帰るのが面倒だったら別に泊っていってもいいけど。ソファ広いし別に寝れるでしょ。毛布もあるし、少なくともシロガネ山よりは環境いいでしょ?」

 

 失礼な。ブルーはカビゴンベッド&ピカチュウ抱き枕のすばらしさを知らないらしい。シロガネ山の頂上とはいえ、カビゴンの腹の上で寝るのは柔らかいし温かいのだ。そしてピカチュウの安心感のある温かみを感じることの素晴らしさよ。

 ……まあ、カビゴンが寝返り打った瞬間、俺の人生が終わるので恐怖で全然寝れないんだが。付け加えると、寝ぼけたピカチュウから電撃を食らうこともしばしば。だが、素のままで寝ると凍死するので、恐怖と戦いながらもそれを実行する必要があったのだ。

 ちなみにリザードンにくるまって寝るという方法もあったが、あれは逆に暑すぎるし、一回リザードンの尻尾の炎で髪の毛が燃えかかってからは二度としないと誓った。

 ……結論、強がりました。

 はい、おっしゃる通り、ソファの上でもシロガネ山よりは環境いいですよ。

 

 ここはお言葉に甘えてここで寝させてもらおう。帰るの面倒だし。

 

 「ん、分かった。じゃあ私シャワー浴びてくるわ。」

 

 俺はそのままルームサービスで頼んだ夕食を口に運びながら、シロナの対戦動画を見続け、頭の中でどう対策をするかをずっと考え続けた。

 そしてその後、シャワーから上がったブルーと入れ替わるようにシャワーに入り、その日は寝た。

 

 久しぶりに満腹状態で、敵に怯えず、適温の中でカビゴンに潰される恐怖もなく、ぐっすり眠ることができた。やはりベッド……ではなくソファだが最高。

 なんだかんだブルーという理解者の存在も大きかったのかもしれない。睡眠時にここまで安心できたのは本当に久しぶりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 俺たちは朝早く起きて予定通り、シロナの対戦動画を見て、有効な戦略をブルーと二人で話し合いながら考えた。

 しかし、俺とブルーの間に意見の齟齬が生まれ、うまくかみ合わなかった。

 どうもブルーは俺の実力を実際より下に見ているらしい。まあブルーも俺がこの三年間でどれだけ強くなったのか知るわけもないし仕方ないのかもしれないが。

 しかしブルーはブルーで自分の意見を絶対に曲げないので、一度ポケモンバトルをして俺の実力を確かめるということになった。

 

 というわけで俺たちは今、近くの小型のスタジアムに来ていた。

 

 「じゃあ時間もあまりないし三対三のバトルでいいわね? 当たり前だけど、レッドの実力を知りたいから全力で来るように。私も全力であんたを倒すつもりで行くわ。この三年間でどれだけ強くなったか見せて貰うわよ。」

 

 そう言い、モンスターボールを構え自信満々の表情を浮かべてくるブルー。

 

 ……久しぶりだな、ブルーとの勝負も。

 

 ちなみに三年前までの俺とブルーは完全に互角だった。これまでのブルーの口調から向こうもそれなりに修行をしていたのだろう。

 どこまで実力を上げたかは知らないが、俺に近い実力を持っていると見ていいだろう。

 

 

 

 ……うず

 

 

 

 なんと俺は今、戦いたいと思っていた。

 シロガネ山でのコトネとの戦いで満足していたと思っていたのにだ。

 自分でもびっくりだ。

 

 その理由は、今の俺の体調にあった。 

 凄い体が軽いのだ。頭も澄んでいるし自分が自分じゃないみたいだ。久しぶりにぐっすり眠れたからだろうか?

 こんなことを言うのもなんだが、今の俺は誰にも負ける気がしない。

 加えてポケモン達も先ほど久しぶりにポケモンセンターでちゃんとした設備の元で体調チェックをしてもらったし、みんな調子が良さそうだ。これまでは俺のお粗末な治療だけだったからな。

 

 ……今の俺がどこまで戦えるか見てみたい。

 ここは遠慮なく全力でいかせてもらうぞ、ブルー。

 

 俺はモンスターボールを投げる。それに応えるようにブルーも勢いよくモンスターボールを投げてくる。

 

 

 

 

 

 ……凄い、こんなことが。

 

 ブルーもかなり腕を上げていることが分かる。グリーンより強いと言っていたことを裏付ける強さだ。なんなら純粋なポケモンの実力だけならコトネともタメを張るかもしれない。

 だが、今の俺には相手のポケモンの動き、技の軌道、範囲、ブルーの思考、思惑、そのすべてが手に取るように分かる。

 相手の次に取ってくる行動の全パターンを把握し、その全てに対し、最善手でもって返すことができる。

 この勝負の全てを自分の手でコントロールすることができていた。

 

 決着はあっという間だった。十分も経っていなかったと思う。

 結局、ブルーの三体のポケモンは俺のピカチュウ一体の前に為すすべなく敗北していった。

 

 「……え……な、なにが……おき……。」

 

 あれほど自信に満ち溢れていたブルーの表情は驚愕に包まれており、目の前で起こったことが信じられないといった様子だ。ブルーは腰が抜けたのか、ぺたりとその場に女の子座りの態勢で崩れ落ちてしまっていた。

 しかもあの勝気なブルーの瞳がうるうると潤んでいる。

 

 ……流石にやりすぎたか。

 

 ブルーとの実力差はすぐに分かったが、ブルーも全力で来いって言ってたし、何よりブルーだしいいやと思って、そのまま手加減なしの全力で戦ってしまった。

 それにしてもこんな姿のブルー初めて見たな……。

 まあここまで一方的なバトルになったのも初めてだったし、ショックを受けても仕方ないか。

 

 どうしたものかと思い、とりあえずブルーに近づき、手を差し伸べる。それを見たブルーは、はっとした表情になり、慌てて立ち上がり「……ちょっと待ってて。」そう言い残し、手洗い場まで小走りで駆けていった。

 

 

 

 ブルーの言った通り、ベンチに座って待っていると、十五分ほどしてからブルーが戻って来た。

 顔でも洗ったのか、瞳から潤みは無くなっていた。

 ブルーは無言のまま俺の隣に腰掛けてくる。心なしか距離が少し近い気がする。

 

 そこからしばらくお互い無言の状態が続く。

 

 ……気まずいな。

 

 こちらから声を掛けるのもどうかと思うし。そもそも俺、元から無口だし。

 

 「……レッド、あんた本当に強くなったのね。」

 

 するとここでブルーが俯きながらもボソボソと喋りかけてくる。

 

 「……私も結構鍛えていたから自信あったのに。もーなんなのって感じ。いつの間にここまで実力差が開いたんだか。」

 

 ……まあ、さっきの俺は自分が自分じゃないみたいに絶好調だったからな。それ抜きでも勝ったとは思うけど。

 

 「……ま、でもいいわ。おかげであんたへの報酬が決まったわ。」

 

 その言葉にブルーの方へ視線を向けると、そこにはいつもの勝気な表情を浮かべたブルーがいた。だが、その顔には僅かだが赤みが差しているように見える。

 

 「……ふふふ、気になる? 報酬の内容?」

 

 ……気になるけど聞きたくない。負けた腹いせに一生奴隷とか言わないだろうな。

 

 ブルーがこちらに顔をぐいっと近づけてくる。もう少しで鼻息がかかるほどの距離だ。

 

 ……なんだなんだ、何を要求されるんだ俺は!?

 

 「いいわよ、言ってあげる。あんたは私の……」

 

 

 

 「レッドさん!!!」

 

 

 

 うわっ!? びっくりした!?

 

 急な大声に心臓が跳ね上がる。

 慌てて声のした方向に顔を向けると、そこにはコトネがいた。

 

 ……なんでコトネがここに? コトネとの修行は午後からのはずだが。

 

 コトネは息を荒らげ何やらご立腹の様子。そしてなぜか目の下に隈があり、若干頬がこけている様子だ。寝てないのだろうか?

 そのコトネはズンズンとこちらに歩み寄ってくると、俺のすぐ目の前まで詰め寄って来て、ジロリと俺を見下してくる。その瞳には光が宿っていない。

 

 ……え、俺カツアゲでもされるの? 確かに昨日一杯お金貰ったけども。

 

 「この女の人は誰なんですか?」

 

 コトネの指さす方にはブルーが。

 そう言えば昨日コトネには事情を説明せずに出て行ってしまったことを思いだす。コトネにブルーは幼馴染であり、シロナ戦に向けて色々協力してもらっていることを伝える。

 

 「そんなことはどうでもいいんです! ステーキをあーんしてたし、しかも、この人と、ホ、ホホホ、ホテルに行ってましたよね!!」

 

 どうでもいいのかよ!? ステーキをあーんとかホテルに行ったことの方がどうでもよくないか?

 ……ていうかずっと見てたのかよコトネ。

 

 「それにそもそも! シロナ戦の対策ならこの人でなく、私の方が相応しいです!!」

 

 

 

 「……は?」

 

 

 

 地獄の底から響くような禍々しい声が横合いから聞こえてくる。

 そろーと顔を向けると、そこには額に血管を浮かばせ、誰が見ても怒っていると分かるブルーがいた。

 

 「……なに、あんた? 急に出てきてピーピーうるさいわね。ていうかあんたコトネよね? あんたはテレビにでも出てその辺のキモイ豚野郎共に笑顔を振りまいて、ブヒブヒ言わせとけばいいのよ。こんなところでヒステリー起こされても鬱陶しいからとっととどっかに行ってくれない? 目障りよ。」

 

 わーお、凄い毒舌。

 

 「……はぁ? あなたこそ何なんですか? 幼馴染だか知らないですけど、急に出てきて図々しいですよ? さっきの試合も見させてもらいましたけど、とてもレッドさんの修行相手が務まるようには見えませんでしたよ?」

 

 ……やめろ、コトネ。ブルーを煽るな。血管がはち切れる寸前だ。

 けど、この一触即発の状態で俺はただ無言で立ち尽くすことしかできない。根拠はないが喋ったら死ぬ気がする。

 

 「……へー、言うじゃない。だったら見せて貰おうじゃない。あんたの実力を。……レッド、げんきのかたまり三つ。」

 

 はい、どうぞ。

 速攻でげんきのかたまりをブルーに渡す俺。

 

 「……そうですね、どっちが上かポケモンバトルで白黒つけましょう。」

 




沢山の感想ありがとうございます。楽しく読ませてもらっています。
また誤字報告いただいた方ありがとうございます。非常に助かってます。

※本作は、アニポケの「躱せ!」があります。れいとうビームだって避けれます。
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