金色のガッシュ アフター   作:やまもとやま

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1話 クリアセウノウス

 多くの者が寝静まった夜半、ゼオンのもとに伝令がやってきた。

 伝令はカラスの姿をした鳥人族であり、翼をはためかせて城の上部にやってくると、ゼオンのいる一室の窓を叩いた。

 敏感に魔力を察知できるゼオンはすぐに伝令に気づき、窓を開いた。

 

「ゼオン様、夜遅く申し訳ありません。殿下が大至急ゼオン様に会いたいとのことで、聖域の深部に来ていただけますでしょうか」

「父上が? 容態が悪化したのか」

「ええ、今日朝方から具合が優れず、すぐにお伝えしようと思っていたのですが、殿下がそれを否定されていたのです」

「わかった。すぐに行く」

「よろしくお願いします」

 

 ゼオンは窓を閉めて、しばらく天井を見上げた。

 それから先ほどまで座っていた机のほうに目を向けた。机の上には羽つきのペンとたくさんの書類が雑多に置かれていた。

 

「父上……」

 

 今から半年前、魔界の王を決める戦いが終わり、新たな王政が始まった。

 ゼオンは政治の中枢である大臣に就任して、非常に忙しい日々を送っていた。

 

 新しい王政が始まり、短期間のうちに魔界は大きく変わった。

 

 貧困地域は大幅に減り、ゼオンの取りまとめたデータによると、ここ4週間あたりの餓死者は新王制発足前の4週間に比べて400分の1という驚異的な減少幅だった。

 しかし、資本階級からは厳しい声が上がっていた。

 新王制発足により、あらゆる資産に対して厳しい課税が行われた。

 それが理由か、ゼオンはここ最近、何度も暗殺者に命を狙われていた。

 資本階級が動かした軍事力に対して、力を行使しなければならないこともあった。

 

 それでも、ゼオンは新たなる王の理想を実現するべく厳しい政策を実行してきた。

 

 ここしばらく、ようやく不穏な争いも少なくなり、魔界は平和な世界に向かいはじめていた。

 

 そんなとき、ゼオンのもとに伝令がやってきた。

 

 ゼオンは聖域の近くへと瞬間移動した。

 ゼオンの身に着けているマントはベル一族に伝わる魔法の防具で、魔力が十分に蓄えられれば、数百キロの距離を一瞬で移動することができる。

 ただし、繰り返しの瞬間移動には、48時間以上の回復期間が必要になるため、ゼオンは緊急時以外はこうした長距離の瞬間移動は行わないようにしていた。

 

 いまはそのときだった。

 

 ゼオンは小さな森の中にあった「聖域」にやってきた。

 この聖域近辺は特別な魔力で満たされており、瞬間移動することができない。

 ゼオンは自らの足で森の中に足を踏み入れた。

 

 この聖域はバオウが封印されている地であり、24時間厳重に監視されている。

 ゼオンが足を踏み入れると、すぐさまベル一族の妖精がやってきた。

 

「ゼオン様、お待ちしておりました」

「父上の具合が優れないと聞いた。状況は?」

「危険な状況です。鎮痛剤でいまは安静にされていますが、もう長くはないかと」

「そうか」

「こちらです」

 

 ゼオンは妖精のあとをついて、聖域の近くにある建物を訪れた。

 ゼオンの父親は最期の時を迎えるためにこの地にやってきており、その時は刻々と近づいているようだった。

 

 ゼオンは憔悴して横たわった父親の前にやってきた。

 

 ゼオンの父親は軽く5メートル以上の大きさがある。

 ベル一族を長く率いてきた魔神であるが、そのような魔神にも終わりの時はある。

 最強の雷を操った魔神も最期の時を迎えようとしていた。

 

「父上!」

 

 ゼオンがそう問いかけると、父親はゼオンのほうに顔を向けた。

 とても苦しそうな顔をしていた。呼吸もとぎれとぎれであり、誰の目にも悲痛なものに映った。

 

「ゼオン……来てくれたか」

「具合は?」

 

 ゼオンは一応尋ねたが、尋ねるまでもない状況なのはすでにわかっていた。

 

「私はまもなく雷へと還元することになるだろう」

「……」

「悲しむことはない。それが宿命だ。私は黒き雷だった……」

 

 父親は顔を天井に向けて、悲しそうな顔をした。

 

「ゼオン、お前にだけはどうしても話しておかなければならないことがある。聞くんだ」

「私にだけですか? ガッシュには?」

「正直悩んだ。だが、まだその時ではない」

「……」

「もし、その時が来ればゼオン……お前の口から伝えてほしい」

「……わかりました」

「お前に伝えなければならないこと……それはバオウのことだ」

「バオウ?」

「ああ、バオウの真の目的について……」

 

 父親はその目にバオウの姿を映していた。

 

「バオウの目的……それはクリアセウノウスへの復讐だ……」

「クリアセウノウス?」

 

 ゼオンは驚いたように目を見開いた。

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