金色のガッシュ アフター   作:やまもとやま

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13、対立

 清磨は城に戻ってきた。

 レイラにあちこち紹介してもらったので、魔界の暮らしぶりは十分に理解することができた。

 ほとんどのことは地球と酷似していて、かつて魔物と人間が共存していたということも納得できた。

 

 清磨が戻ってきても、まだガッシュは眠りについていた。

 パティは目を覚ましていた。

 

「悪い、邪魔だったか?」

 

 清磨は気を遣って部屋を出ようとしたが、その清磨の背中をレイラが押した。

 

「いいのよ。邪魔しちゃえば」

 

 レイラは図々しくガッシュの部屋に押し掛けた。

 レイラが入ってきたのを見て、パティはちょっと不機嫌そうな顔になった。

 

「誰かと思えば、黒女。何しに来たの?」

「ご挨拶ね。学校に遅刻しないように起こしに来てあげたのよ」

 

 レイラはそう言うと、清磨の前に出てパティをにらみつけた。

 二人の視線が重なって、清磨は二人の間に火花が弾けているのが見えた。

 

 この二人は仲が悪い。見ただけでわかった。

 

 王を決める戦いでは、パティとレイラは共闘していたのだが、パティがゾフィスになびいている間に、レイラはパティに強い不信感を持っているようであった。

 そんな影響もあって、魔界でも二人はしばしば対立しているようであった。

 

「そんなお気遣いは無用よ。ガッシュちゃんの安眠を妨げないでくれるかしら?」

「あんたがそばにいたら、ガッシュも悪夢に苦しむだけじゃないの?」

 

 二人の言い合いを放置していると、どこまでもエスカレートしそうだったので、清磨は二人の間に入った。

 

「もう昼だ。パティ、ガッシュを起こしてやってくれ。それに、パティもウルルを探しに行かないといけないんだろ」

「そうねえ。でもどこにいるかわからないんでしょ」

「ああ、しかしかつてのパートナーたちはみな魔界に来ているはずだ。ウルルも間違いなく来ている」

 

 ウルルとは、王を決める戦いが終わった後に一度だけ手紙でやり取りをしたことがあった。

 ウルルはいま故郷のレストランで働いていて、ガッシュが王になったことを祝福してくれた。

 ウルルは家族思いの立派な男だった。

 

「ガッシュちゃん、そろそろ起きる時間よ。学校に遅れちゃうわよ」

 

 パティはガッシュを優しくゆすった。

 

「もうガッシュちゃん、早く起きないとほっぺにキスしちゃうんだからね」

「きもい」

 

 レイラはぼそりとそう言うと、星型のステッキを取り出して、パティの頭を叩いた。

 

「いったー! 何すんの、黒女」

「ガッシュをバカ女の強姦から助けてあげたのよ」

「あんたね、そんなだからボーイフレンドの一人もできないのよ。さては私が王妃様になったからって嫉妬しているんでしょう。ふふふ、残念なおばあちゃんね、あんたは」

 

 パティはガッシュを抱きかかえると、見せつけるように頬ずりした。それでも、ガッシュが目覚める気配はなかった。

 レイラは表情こそ変えなかったが、怒りのボルテージがみるみるうちに上がっていくのがわかった。

 

「清磨、バオウザケルガ」

「物騒なことはやめような」

 

 清磨はパティからガッシュを受け取って、地球に住んでいたころと同じ方法でガッシュを目覚めさせた。

 

「ガッシュ、バルカン300がピンチだぞ!」

「ぬ?」

 

 ガッシュはその一言でパチッと目を開いた。

 

「バルカン300がピンチだと? バルカン!」

 

 ガッシュは飛び起きると、寝室の窓辺に大切な飾られていたバルカン300を手に取った。

 このバルカン300は清磨が惜別の品としてガッシュに渡したものだった。ガッシュはそれを大切に保管していた。

 清磨はいまようやく窓辺にバルカン300があることに気づいた。改めて見ると、とても懐かしい思いがした。

 

「なんだ無事ではないか。清磨、驚かすでない。バルカンはこのように元気だ」

「おう、おはよう」

 

 ◇◇◇

 

 ガッシュは魔界の王という地位にいるにも関わらず、普通に学校に通っている。

 王だからという特別なものはなく、普通の子供たちと同じ扱いである。むしろ、ガッシュは学校に通えない貧しい子供たちを学校に招待したりと頑張っていた。

 

「うぬ、教科書よし、ノートよし、バルカンよし」

 

 ガッシュは時間割を確かめながら学校に持っていくものを丁寧に確認していった。

 

「ガッシュちゃん、今日は粘土を使った図工があるのよ。これも忘れちゃダメよ」

「うぬ、そうだった。今日は粘土遊びか。楽しみだのう」

 

 清磨ははたからガッシュの様子を見ていた。こうして見ていると、王様にはとても思えなかった。明らかに普通の家庭の小学生としか思えなかった。

 

「清磨も学校に来るか?」

「いや、おれはいいよ。学生じゃないからな」

「構わぬぞ。第7小学校は誰でも気軽に学べる学校だ。地球にいたころも、清磨は私を学校に連れて行ってくれたであろう。私も清磨を招待するぞ」

「そういえば、いつも勝手についてきていたな」

 

 清磨は地球にいたころのことを思い出した。

 ちょうど、そのとき大臣を務めている魔物が部屋に入ってきた。

 大臣はゼオンを中心に政治の中枢として選ばれていたが、ゼオンが意識を失った後は、ベル一族の古い者たちが政治を担っていた。

 

 やってきたのは老いた鳥人族の魔物だった。

 

「ガッシュ王、アシュロン様がお迎えに上がっていますよ。急がなければ学校に遅れてしまいますぞ」

「いま準備できたところだ。すぐに行く」

「清磨殿、魔界に来られている100人の人間を捜索するための部隊を結成しました。すぐに捜索を始めたいと思います」

「そうですか、それならおれも手伝います」

 

 王を決める戦いに参加した100人の人間たちが魔界に来ているはずだが、まだ清磨は他のパートナーとは出会っていなかった。

 魔界は広いうえに、非常に険しいダンジョンであふれている。南極やサハラ砂漠のような厳しい環境もあちこちにあるから、捜索はかなり難航することが予想された。

 

 しかし、それゆえに一刻も早く捜索する必要があった。

 

「ガッシュ、おれは捜索に参加する。お前たちはちゃんと勉強するんだぞ。パティ、それにレイラ。ガッシュのことを頼んだ」

「任せて。私がガッシュちゃんの面倒をつきっきりで見てあげるから。ね、ガッシュちゃん」

「バカ女」

 

 レイラはぼそりと呟いた。

 

 ◇◇◇

 

 清磨は魔界に来た魔物たちを探すために、捜索隊と面会した。

 そこにはそうそうたる魔物たちがそろっていた。

 

「おれはアイゼンスラウザー。燃える剛腕、いかずちの剛腕、氷の剛腕。すべてを打ち砕くぜ」

「す、すげえな」

 

 アイゼンスラウザー。剛腕の魔物。

 

「おれはプロウニング・ラモンド。世界中の大鹿を束ねている。この聖なる角は悪を貫く正義の象徴だ」

「おー」

 

 プロウニング・ラモンド。大鹿の魔物。

 

「アンダーク・ドーファー。闇纏いのデーモンだ。だが、悪の代表ってわけじゃねえ。愛と徳を尊重するデーモンなのだ」

「なるほど」

 

 アンダーク・ドーファー。闇の魔物。

 清磨はさすがは魔界だと思った。とてつもない力を感じさせる魔物が並んでいる。

 

「ウンコティンティン!」

「ん?」

 

 清磨は謎の魔物に目を留めた。

 

「スタンウェイ・パラゴン。龍族の重鎮。アシュロンの師にして最高の龍よ」

「ちょっと待ってくれ。ウン子ティンティンとは……?」

「なんだ清磨、おれのことを忘れたのか?」

 

 ウンコティンティンは清磨を見下ろした。

 

「忘れたかったが、忘れられずに困っていた」

「おれをただのウンコティンティンだと思っているのか?」

「どういうことだ?」

「おれは聖なる光に導かれ転生したんだ。もうお前には負けん」

「……」

「リベンジだ。おれが三日徹夜で考えた問題を解いてみろ。1+2+3+4+5+……」

 

 ウンコティンティンはすさまじいスピードで問題文を読み上げ、最終的に100まで順番に足し算した。

 

「99+100は? どうだ、この問題には答えられまい!」

「5050だ」

「なに?」

「5050だ。有名な問題だからたぶんみんな知ってると思うぜ。お前はそれを三日徹夜で考えたのか」

「……」

 

 ウンコティンティンは追い詰められたような表情を浮かべた。

 

「かつて魔界にやってきた大魔道士フェルマーから知恵を授かったこのおれがまたもや敗北するというのか……フェルマー、ファウードに魂を込めたフェルマー、いまはどこに?」

「そうか。お前、フェルマーから直々に知恵を授かっていたのか。それはうらやましいやつだな」

 

 フェルマーが実際に魔界に行ったかどうかを証明するには余白は十分ではない。

 

「そんなことはどうでもいい。おれは恵ラブだ。恵を探しに行くためにここにいる。もう一度名前を呼んでもらうためにな」

 

 ウンコティンティンは切り替えが早かった。清磨は前途多難を予感した。

 

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