金色のガッシュ アフター   作:やまもとやま

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8話 戦いの幕開け

 ゼオンはある文献に目を通していた。

 それは父親から遺言として授かった書物で、クリアセウノウス、バオウ、そして魔界と人間界のすべてが書かれていた。

 

 クリアセウノウスとバオウの戦いの後、天使らは人間界と魔界を特別な力で分け隔てた。

 それからというもの、1000年に1度、神からお告げが入るようになり、王を決める戦いが起こるようになった。

 それより以前、人間界と魔界は1つの世界であり、魔物と人間は共に過ごしていた。

 魔物は人間と交流することで、心を得た。

 人間は魔物と交流することで、力を得た。

 

 それを天使は恐れていた。

 人間の心を介在したとき、魔術は最大の高み「シン」に到達する。

 シンの力は強大で、必ず争いの種になる。

 

 天使は「シン」の力を恐れ、人間と魔物を分け隔てた。

 しかし、人間の心がある限り、シンは語り継がれる。

 バオウがシンの高みを手に入れたとき、おそらくは世界を滅ぼす力となる。

 クリアセウノウスはバオウの完全なる封印のために、再び現世に現れるだろう。

 

 最後は予言めいたことが書かれていた。

 

「どうする? クリアセウノウスが目覚める前に継承者を抹殺するべきなのか?」

 

 ゼオンは書物を閉じ、自問自答した。

 

「いや違う。ガッシュはそれを望まないだろう。だが、バオウとクリアセウノウスの争いが始まれば、この世界はいったいどうなってしまう? おそらくは滅びる」

 

 ゼオンは表情に緊張感を漂わせた。

 すでにクリアセウノウスの継承者の正体はついている。

 しかし、その継承者を抹殺することは、ガッシュにとって大きなショックになる。

 

「ガッシュにすべてを伝えたほうがいいか?」

 

 父親からは時が来たときに伝えるようにと遺言を授かっている。いまがその時なのだろうか。

 

 結論が出なかったので、ゼオンはクリアセウノウスの継承者に会ってみることにした。

 

 ゼオンはガッシュが通っている学校にやってきた。

 ゼオンはすでに飛び級で一番上の学校まで卒業しているので、学校は無縁の地である。

 

 ゼオンはゆっくりと学園内に足を踏み入れた。

 さまざまな種類の魔力を感じた。その中で、癪に障る魔力があったので、そちらのほうに向かった。

 

 謎の少年と謎のXが謎のダンスを踊っていた。どうやら、その踊りが癪に障ったようであった。

 

「ヨポポイトポポイスポポポーイ」

「わはははははは、ベリーメロンロックンロールスタート!」

 

 ゼオンは謎のコンビの踊りをしばらく見ていた。癪に障るが、なぜか見入ってしまう不思議な連中だった。

 

「むむむむ、誰かね、仲間に入りたそうにしているそこの少年は。寛大にもこのビクストリーム様が仲間に入れてやろうか?」

「入る気はない」

「くくくく、強がりおって。私たちの踊りを見て虜にならなかった者などかつていないのだよ。のう、我が華麗なる相方ヨポポよ」

「ヨポポイ」

 

 ヨポポとビクストリームはそう言って笑った。

 ゼオンの魔力探知能力は高いが、このコンビはそれを打ち消すほどのジャミング能力を発揮していた。

 ゼオンは感心したくなかったが、感心せざるを得なかった。

 

「ティオという者がここに通っているはずだ。お前たちの奇妙な踊りのせいで魔力を正確に追えなくなった。どこにいるか教えてくれないか?」

 

 まだゼオンの頭の中には、先ほどの奇妙な踊りと歌声が循環していてなかなか頭から離れなかった。

 

「ふっ、道に迷ってしまったか、ガキだな。仕方ない、このビクストリーム様が居場所を教えてやろう。見よ、この華麗なるXを」

「……」

「どうだ、見えたか? 我がXにはお前が進むべき道が刻まれているであろう」

 

 見ていると、余計に頭がおかしくなりそうだったので、ゼオンは関わるのをやめることにした。

 

「奇妙なものを見てしまった。三日は離れそうにないな」

 

 ゼオンは頭を押さえた。人間界にいたころ、パートナーのデュフォーからバカと関わってはいけないとさんざん教えられていたが、どうやら正しかったようである。

 

 ビクストリーム一行のジャミングのせいで、ティオを発見するのに手間取ってしまった。

 ゼオンはようやくティオの魔力を追える位置までやってくることができた。

 

 ティオは校舎の屋上に立って、何かにとりつかれたように空の一点を見上げていた。

 ゼオンは持ち前の身体能力で屋上まで跳躍すると、ティオの背後に迫った。

 

 ティオは振り向かず、突然独り言をしゃべり始めた。

 

「空が落ちてくる。眩しい光が魔界を包み込む」

「……?」

 

 ゼオンは目を細めた。

 

「最後の戦い。これが本当に最後の……」

 

 そのとき、ティオが見つめていた空の一点に一筋の光が現れた。

 その光はティオのもとに降り注いだ。

 突如、すさまじい暴風が吹き荒れた。ゼオンの体は一瞬で吹き飛ばされた。

 

 ゼオンは何とかマントを操って風を跳ね返すと、ティオから一定の距離を取って着地した。

 

「まさか」

 

 ゼオンは光に包まれたティオのほうに目を向けた。

 ティオの背中には4つの羽が現れ、ティオの体が宙に浮かび上がった。

 

「クリアセウノウスが目覚めたのか?」

「この魔力……そうか、ジガディラスの雷か……バオウと共に地獄に堕ちた愚かな堕天使。再び、落ちなさい、地獄へと」

 

 ティオは操られたようにそう言うと、指先を前方に突き出した。

 鋭く鋭利な光がゼオンのマントおよび体を貫いた。

 まさに光速の一撃だった。

 

 ゼオンはこれまでに感じたことのない衝撃を感じた。

 意識を保つことができず、ゼオンはその場に崩れ落ちた。

 

 ティオは再び空を見上げた。

 

「バオウを消し去り、魔界に真の平穏を取り戻すのです。それが私の最後の使命」

 

 ティオはそう言うと、4つの翼を小さく振動させた。直後、その場から消え去った。

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