一方その頃、穂波と志歩はおみくじを引いていた。セカイから顔を覗かせるルカとミクの為に、今年の運勢を占った結果は……
「だ、大凶!?」
『あら……』
「大凶なんて初めて見た……」
あまりいいものとはいえなかった。それからもう一度挑戦するも、結果はあまり変わらない。
自分の運勢ならまだしも、恩義を感じているセカイの住民の運勢。穂波は気まずさとショックで世界の終わりのような顔をしていた。
「しほちゃーん、ほなちゃーん!」
そんなこととはいざ知らず、ダウンした七緒を担いでやってきた二人。それを合図にルカとミクは再び引っ込む。
「何、どうしたの……って!」
「衛藤さん!?」
恩義を感じているのは二人だけではない。目にした異常事態に絶望する暇すら与えられず、最強の気分転換となったのは言うまでもない。
事情を聞くのは後にして、穂波の助けも借りて救護テントに連れ込んだ。
「七緒君、甘酒を飲んだらこんなになっちゃって」
「え、甘酒? 御神酒とかじゃなくて?」
「そうなの! 一口飲んだだけでフニャフニャになっちゃって」
「甘酒のアルコールってほとんど無いはずだけど……」
信じがたい現実に驚きを通り越して呆れる志歩と、解説を挟む料理に詳しい穂波。ひとまず長ベンチを借りてその場に寝かせる。
「まずは楽にしてあげないと……咲希ちゃん、お水買ってきてくれないかな」
「うん!」
「ジャンパーは脱がせて……寒いし、掛けてあげなきゃ」
穂波が先導して介抱に当たる。その慣れた手つきは一歌も志歩も出番がないレベルだった。
「穂波は凄いね、こういう時にも手慣れてて」
「弟がいるからね。これでよし、と」
彼が着ていたジャンパーを掛け布団がわりにして、暖かさを損なわないようにする。そこで咲希が水を持って戻ってきた。
「ううん……すぅ……」
「「「「………」」」」
心配をかけている本人は夢の世界へと旅立っており、普段の幼く可愛げのある表情に輪をかけて魅力的に映っていた。
しかしそれは男としての魅力ではなく子供としての魅力であり、介抱するのも忘れしばらく見入ってしまう。
「七緒って、ほんとに男なんだよね?」
「そのはずだけど……」
「寝顔、とってもかわいいね」
「うん、女の子と間違えちゃいそう」
愛護、または母性をくすぐられるその見た目はある意味犯罪的で、見飽きることなく眺めている4人。
「そうだ、写真撮っちゃおーっと」
「ちょっと咲希、可哀想だよ」
「えー、でも次いつ見られるかわかんないんだよ?」
頼れる存在の意外な一面をスマホに収める。一度止めに入った一歌も、次があるとは思えず記録しないのは惜しかった。
「よーっし、今度はみんな入ってー」
「一人だけ寝てるの、なんだかシュールなんだけど」
「そこがいいでしょ! はい、チーズ!」
彼の知らない内に、4人の思い出は増えていくのであった。
◇
<七緒>
「う……ん?」
「あっ、お目覚めですか?」
目を覚ませばテントの鉄骨と屋根、そして茶色のサイドテールに青の瞳が映り込む。
「望月、さん?」
「あ、まだ動いちゃダメですよ。ゆっくりしててください」
起き上がろうとするも、宥めるように手をそっと額に当てられる。まるで子供の面倒を見る母親みたいだ。うちの母さんとは大違い。
「他の皆さんは?」
「一歌ちゃんと咲希ちゃんは体にいいものをって買い出しに、志歩ちゃんは……」
「やっと起きたの。あんまり心配かけさせないでよね」
視界に入ってなかっただけで彼女もすぐそばに居てくれたようだ。普通の顔より見慣れた呆れ顔で出迎えてくれる。呆れられてばっかりだけど、これは仕方ない。
「すみません、断りきれなかったもので」
「というか、甘酒で酔っ払ったって聞いたけど」
「はい。僕お酒に弱いもので」
「いや、弱いとかそういうレベルじゃ無いでしょ……」
「おっしゃる通りです」
酔うだけならまだしも、僕の場合はすぐに眠くなってしまうから周りの人に迷惑をかけてしまう。幸い目が覚めればすぐに復帰できるけど、眠気を覚えるまでの酒気の上限が低すぎた。
それからは戻ってきた二人を含めた皆の介抱の甲斐もあり、早々に復活を遂げる。
「すみません、みっともないところを見せてしまって」
「ううん、そんなことないよ」
「そうそう、素敵な物も貰っちゃったし」
「それに、ほとんど穂波がやってくれたしね」
そんな事実を知ってから、改めて穂波さんの方へと向き直り頭を深く下げる。
「本当にすみませんでした。なんてお礼を言ったらいいか」
「そ、そんな大したことはしてませんよ。日頃からよくしてもらってますし」
「いえ、それでは足りません。いつか必ずお礼をさせてもらいますね」
「えっと……じゃあ、楽しみにしてます、ね?」
迷惑をかけた以上、それよりも大きなお礼をしなくちゃならない。彼女にとって当たり前のことでも、人としてここまで出来るのは凄いことだ。強引に押し切りながらも約束を取り付ける。
「七緒も戻ったことだし色々見て回らない?」
「そうだね。皆で一緒に」
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
それからは少し人の少なくなった屋台を見て回ったり、おみくじを引いたり、絵馬を書いたりした。一人では決してやらないことでも、皆とやれば案外楽しいもの。
そのまま神社でやれるほぼ全てを堪能し、帰路に付く。
「皆さん、本当に今日はありがとうございました」
「どうしたの、急に改まって」
「ちょっとハプニングもありましたけど、素敵な思い出を貰ったので」
「そっか。なら、こっちも誘って良かった」
別れる間際に再び頭を下げる。僕だけだと初詣にも行かなかっただろうし、仮に来たとしてもこんな体験は出来なかっただろう。
お礼の言葉にそれぞれの笑顔で応えてくれた。
「今年もよろしくね、七緒君」
「アタシもよろしくね、なーくん!」
「私も、よろしくお願いします」
「まあ、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
改めて新年の挨拶を交わし僕は4人の元を離れる。今年はいい一年になりそうだった。
◆
「あ、そうだ咲希」
七緒の姿を見送り街を歩く中で、一歌が何か思い出したように声を上げた。
「どうしたのいっちゃん、忘れ物?」
「あの……さっき撮った写真、良かったら……」
「うん、皆に送るね。5人のも、寝顔の方も!」
「ちょっ、そんな大声で言わなくていいって……!」
こうしてLeo/need全員に、彼の弱み(?)を握られたのはまた別のお話。
IFルート
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咲希
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穂波
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志歩