君と一緒に歌いたい   作:kasyopa

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少女は気持ちを整理したい

<一歌>

 

 志歩の悩みもなんとかなって、今まで通りの日常が戻ってくると思っていた。みんなで七緒君と練習出来る、いつも通りの日々。

 

「なーくん、今日も会えなかったね」

 

 いつも通りみんなでスタジオにお邪魔したけど、受付にいたのは七緒君のお母さんだった。

 呼びに行ってくれたけど、私達が来る時だけ部屋の中から出てこないらしい。

 気にしてないって言ってあげたかったけど、今はそっとしてた方がいいよね。

 

「やっぱり、あんなことをしたら顔も合わせにくいよね」

 

 一番おちこんでるのは志歩だった。ちゃんと気にしてないって伝えたのに、全部自分のせいって背負い込んでるから。

 気を取り直してセカイに来たけど、練習に身が入らない。みんなも同じみたいだ。

 

「一歌、何かあったの?」

「ミク……」

 

 すぐにミクに気付かれて心配させてしまう。志歩の時もアドバイスをくれたのに、これじゃ何にもならない。

 なんでもないって言うのは簡単だけど、今まで助けてくれたミク達にこれ以上隠し事するのも悪い。

 

「実は──」

 

 少し早い休憩も兼ねて、ミク達に七緒君のことについて話してみる。

 今の事情とスタジオで色々お世話になったこと、私たちの為に尽くしてくれたこと。

 流石に告白されたことは伏せたけど、されてなくてもきっと頑張ってくれたと思う。

 

「そんなことがあったのね」

「こっちに来るたび上手くなってるって思ったら、そういうことだったんだ」

「うん。多分ミク達と同じくらい教えてもらってるかな」

 

 最初は小さなきっかけだったけど、今はもう居てくれるのが当たり前って思うくらいの時間を重ねてる。教わり足りないのも一緒だ。

 

「それなら前みたいに話してみたら?」

「そう思ったんだけど、会ってくれないんだ」

 

 志歩の一件で自分の想いを伝える覚悟は出来ている。それでも、本人が会ってくれなかったら伝えようがなかった。

 

「そうだ、なーくんもLeo/needに誘おうよ! そしたら一緒にいられるし」

「私でも追いつくの必死なのに、七緒の演奏に合わせられる?」

「それは……」

「悪いけど私は反対。これ以上迷惑かけられない」

「どうしたらいいんだろう……」

 

 確かにバンドに入ってもらえたら一緒にいられる。でもあれだけ上手な七緒君だと結局教えてもらってばっかりになって、迷惑を掛けちゃうかも。

 

 今までギターを教えてもらって、相談してもらって、背中を押してくれて。

 咲希なんか偽だけどデートにも行ってたし、志歩だって昔のことを教えてもらってた。穂波は知らないけど、もしかしたら何かしてもらってるかも。

 そう思うと私には何にもなくてモヤモヤする。でもその理由は分からない。

 

「(伝えたいこと、たくさんあるのにな)」

 

 ありがとうだけじゃ足りない。もっと一緒にいたい。それなのにいられなくて、胸が、締め付けられる。

 

「一歌、苦しそうだけど大丈夫?」

「えっ?」

 

 心配そうに顔を覗き込んでくるミクにハッとする。いつの間にか胸をギュッてして息も深くなっていた。

 他のみんなも心配した表情を浮かべている。

 

「あれ、私……」

「一歌ちゃん、どこか痛いの?」

「調子が悪いなら個人練習に変えるけど」

「ううん、そうじゃなくて……七緒君と一緒にいられなくなるって思ったら苦しくて」

 

 去り際の辛そうな顔を思い出す度苦しくなる。もう二度と会えないんじゃないかと思うと体が震える。

 そんな私に他の3人は顔を見合わせていた。

 

「いっちゃん、それってもしかして……」

「一歌ちゃん……」

「それ言ってて本気で気付かない?」

 

 咲希は目をキラキラさせてるし、穂波は少し恥ずかしそう。志歩に至っては呆れていた。え、私何か変なこと言ったかな?

 ルカもメイコも納得したみたいに笑顔だし。ミクだけが私と同じ顔を浮かべていた。

 

「ルカもメイコもどうして笑ってるの?」

「ふふっ、ごめんなさい。ただ素敵だなって思ったの」

「それなら早く伝えてあげなきゃね」

「「?」」

 

 その理由が分からないまま、練習はお開きになった。

 

/////////////

 

 一歌達がセカイを後にし、残されたミクは2人に理由を聞いていた。

 

「ねえ2人とも、一歌に何があったの?」

 

 先輩として振る舞う彼女だが経験は浅く悟りも悪い。そんな純粋さが笑顔を誘うわけだがミクがそれを知ることはない。

 

「そうね。簡単に言うなら恋煩いかしら」

「恋煩い……って!?」

 

 言葉の意味を理解してミクは顔を真っ赤にするものの、2人は笑顔を浮かべるばかり。

 

「じゃあ、その、一歌は七緒って子のこと」

「そうね。本人は気づいていなかったみたいだったけど」

「その先輩も、ね?」

「だって、私そういうのあんまり詳しくないから……」

 

 しかし理解していたら一歌に自爆していたところだったと胸を撫で下ろす。こういう気持ちは自分で気づいてこそだから。

 

「それにしても、面白いことになりそうね」

「? どういうこと」

「一歌達は七緒君って子と一緒にいたいって思ってる」

「その想いが繋がれば、このセカイも少し賑やかになるかしら」

 

 そこまで言われてセカイの住民であるミクが気付かない筈がない。

 

「そうだね。そうなったら私達も嬉しいかな」

 

 3人揃った笑みに、セカイは一層輝きを増しているのであった。




もうすぐ終わりの物語、数話くらいで終わると思います。

IFルート

  • 咲希
  • 穂波
  • 志歩
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