去年からほっとらかしだよ。アホか。
今回は、前回のUSJ事件後の爆豪と。
体育祭開催のお知らせ。
モヤモヤしつつ、ブツブツとしつこく文句たれているザギ。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
雄英は平和を守る象徴であるヒーローという職業の人材育成で有名で、それに恥じない最新鋭、最新技術を盛りに盛り込んだ設備とシステムを兼ね備えた、育成のための訓練施設だけじゃなく、守りにおいてもちょっとした要塞並の高校だ。どこにそんな金があるんだと言いたいぐらいである。
だが矛盾(むじゅん)なんて言葉が大昔から廃れることなく今に伝わるぐらいなので、必ず上には上が現れ、終わりの見えない矛と盾の勝負が起こる。今回の雄英内に突如ヴィランの群れが侵入した事件は雄英が持つ盾(警備システムや防壁など)が、ヴィランという矛に貫かれたのだ。
黒霧という奇妙な見た目をした黒い霧のようなものでテレポート個性を操るヴィランはかなり稀少であり、あれだけの人数を移動させてくるというのはプロヒーローが活躍する現場でも滅多にない大事だった。そんな稀少な奴に対する守りが疎かになるのは仕方がない。
USJで訓練を行う予定だった1年A組は、その後やっと駆けつけたプロヒーローの教師陣の救援もあり、たいした怪我もなく全員が生還した。
なのだが、ひとりだけ担架で運ばれた。
ザギが引っ込んだ後、救援に来た教師陣の姿を見て緊張の糸が切れた爆豪が胃を押さえて倒れたのだ。
爆豪と一緒にテレポートで飛ばされた切島の証言で、ヴィランからの攻撃でそうなったのではないことは分かったが、じゃあ何があった?という話である。
「神経性胃炎だね。」
救護室にてリカバリーガールからそう診断された。
「命に関わるものですか?」
診察の付き添いで来ていた相澤が聞いた。
「そうさね…、他の合併症にならなけりゃ直接の死因にはならないよ。でもこの胃の状態だと短時間で胃の中が血塗れになるほどのストレスがかかったね? 急激なストレスで身体に変調をきたすなんてよくある話だし、過去の症例にもある。まあ、でもお前さんは元々神経質でもストレスには強いしストレスの抜き方も知ってるようだけど、いったいどーしたの? 何かヴィランより怖いとか心配なことでもあった?」
ベットで横になって診察を受けていた爆豪はリカバリーガールの言葉にグッと言葉を詰らせ、ストレス原因を思い出して再び胃を押さえて身体を丸めて呻いた。
リカバリーガールはその様子を見て言葉を止め、相澤の方を見た。
「……胃薬その他、鎮痛剤などの処方を頼みます。」
相澤はこれ以上は追求せずにリカバリーガールに頭を下げた。
「分かってるよ。担任として周りにはちゃんと根回ししてやりな。あー、あと他に困ったこととかあったらすぐ言うんだよ? ストレスの症状は素人目線じゃ判別つかないことが多いからね。なんだったらツテのあるカウンセラーを紹介をしてもいいよ。」
「………………………すんません……。」
気を遣ってくれるリカバリーガールや相澤に、爆豪は普段のプライドを忘れて涙を浮かべてお礼をした。その様子にヒーローの卵デビューの日が浅いクラスの生徒とは言えかなり参っている状態であることを見抜いた相澤はなんとかしなければならないなと今後のことを考えることにした。
そうして爆豪の胃の治療についてはリカバリーガールと相澤だけの秘密になったのだった。学校が休みの時のためリカバリーガールの紹介を受けた病院で親にも内緒で処方薬を受け取れるようにもしてもらった。色々と内緒で手を貸してくれる大人達の配慮に爆豪は色々と限界で泣いた。
ザギにボコられた6歳のあの時から今日までたったひとりでザギを警戒しすぎたことと神経質故に気が休まらなかった反動だった。それがUSJでの事件で爆発。そして急性の神経性胃炎になってしまったのだ。
しかしそのことを告げ口しようものならザギが何をするか分からないので爆豪はザギのことを相澤達に伝えられない。
みみっちい爆豪は6歳の時の一件で出久の身体を使って死ぬ寸前まで追い詰めたあの攻撃性と救急車に運ばれる直後に見た出久の背後にいる黒い何かが出久以外を敵としか考えていない、そういう直球の凶暴性を心身に焼き付けてしまった。だから恐怖でザギのことを周囲に伝える事ができないのだ。
しかしそのことであることに気づいた。それはUSJの一件で出久の中に潜んでいるザギが出久の身体を使ってヴィランを叩きのめしたことと、その姿をクラスメイトどころか相澤とオールマイトと13号に見られたことだ。ヒーロースーツのお披露目みたいな実戦訓練の時は一瞬だけ轟を殴るために出てきただけだったが、今回は長めに出ていた。出久と入れ替わって身体を乗っ取った状態と凶暴な声と圧倒的な暴力をバッチリと目撃されてしまった。もう横から声を掛けたり何かしら注意を引いて誤魔化せる状況では無くなった。
自宅に帰宅し自室に戻って来た爆豪は雄英を卒業するまでに自分の胃袋がさようならする可能性に、ベッドの上で再び涙をにじませた。
***
〔早死にすればいいのに〕
碌でもないことを真面目に考えているのは、爆豪を胃痛で倒れさせた原因であるザギ。
出久の家から近所である爆豪の様子を透視能力で見ていたが、胃痛でかなり参っているらしい爆豪に心の中で笑った。
その後、襲撃事件の暗い余韻が残っているが学校は再開され、近所だから通学路も被る出久が爆豪を見つけてすぐに声をかけていた。
「かっちゃん、だいじょうぶ?」
「うっせー、どうもねーわ。」
「うん! 元気で良かった!」
タフネス。若さもあるだろうがストレスの抜き方と胃への影響を軽減させる方法を早々に見つけたらしくすぐ復帰してきたため、出久の中でザギはひっそりと舌打ちした。
ヴィラン集団襲撃事件後、手早い対応と事後処理ですぐに雄英の運営は戻り在学生達の学業もできるようになった。個性云々の災いが日常の時代背景もあるだろうが平和を守る人材の育成を謳う学び舎が運用できないとそれこそ平和を遠ざけることになる、だからこそこれだけ回復が早いのだろう。地雷原のある通学路を通って学校に通う子供達のようなものだろうか。
まあ、そんなことは別に気にすることじゃない。ザギはそう考えている。
学ぶことが好きな出久が意欲的に学ぶ姿を止めたくない。ザギとしてはヒーローにはしたくないのが本音である。
ザギがモヤモヤとしていると、あの襲撃事件後だというのに、学校らしい一大イベントの開催が決定した。
体育祭
雄英校で行われるコレは、個性という超常能力が当たり前の時代になってからのオリンピックに該当する一大イベントであった。
〔名誉回復か…〕
学び舎の訓練場所にヴィランを侵入させてしまったあげくに死傷者こそ出なかったが生徒を危険にさらした責任は重い。ましてや有名なヒーロー育成学校であるからこそ。
だからこそその学び舎としての学校の力を示して、傷ついた名誉の回復をすることでこの学び舎を選んで成長しようとしている未来ある卵を無事に孵化させて飛び立たせたい。綺麗事ではない不純な動機こそあるだろうが本質はより大きな価値ある未来のためである。
〔売り込み…〕
ヴィランの活動による被害が多種多様化する一方でヒーローという職業が人材が多すぎて飽和状態な今日に、いかにして座る椅子が少ない椅子取りゲームを制するか、平和のためという志だけではヒーローをできないというのは平和を遠ざけていないか?とザギはひっそりと思う。
かつてザギがいた地球なら防衛軍的な組織があったが、あれはスペースビースト(※怪獣)のような脅威が平和を脅かすからそれに対応する形での人間達の動きだったわけであるが。そこら辺の事情は深く考える必要ないとザギは考えに至った。
〔この地球における英雄(ヒーロー)とは……〕
血反吐を吐き続けるばかりで意味などないような正義というマラソンを走り続ける守護者達を知っている。
神の模造品として造られたザギは、あの巨人達のことをよーく知っている。
なぜなら自分のモデルにされた神は、時に神と言っても差し支えないような強大な力を持つ巨人達の目から見て伝説にして真の意味で神のごとき超越した存在だったからだ。
だから造られた時から幼子が寝るまでの間に語り聞かされるお話のようにずっと教えられ、自力で実際に目にしたような情報量も得て巨人達を知っている。
奴らのようなことを誰も彼もができるわけがない。そんなことは分かっているつもりだ。だがそれでも比べてしまう。英雄(ヒーロー)という肩書きは、それほどに軽くない。終わりの見えない血反吐を吐く苦しみしかない無意味なマラソンに身も心も削り続けて、時にその行動を嘲笑され怒りをぶつけられても止めない奴らの姿が脳裏に焼き付いて離れない。
〔アイツらはどんなに腐敗煮込みであろうと見捨てないか?〕
守護をするのに嫌気がさして放棄しそうになるような胸くそ悪い事件は多々あるようだが、何だかんだで守護を続行しているあたりにクモの糸を掴んで縋るように欠片ほどの希望を信じる心の広さ故なのか。それとも巨人達の原型が地球人類によく似ているからなのか。
〔出久をヒーローにしたくない……〕
それはザギの本音だ。けれど、ヒーローは出久の夢であり、ザギが未来予知した未来の出久の将来でもあった。
すべてのヒーローが、取るに足らない、心身共にヒーローの肩書きに見合わない愚者ではないことは分かる。分かっているつもりだ。だがしかし、その愚者と肩を並べる立場に出久が並び立つことや平和の象徴のオールマイトのようにむやみやたらに弱者に縋り付かれるだけの生贄の立場にさせるのは嫌なのだ。
ザギは出久の中で長くデカいため息を吐いた。
ひょっとして自分のせい? 自分が未来予知で運命を確定させて引き寄せたからか!?
ザギは、うーんうーんっとずっと考えている。出久を守ると決めたあの日からずっと。
「チンタラすんな! んな状態じゃテメーなんざヒーローになっても秒で引退すんぞ!」
〔………………それだ!!〕
未来予知したとはいえ、出久がヒーローになってどれくらいヒーローとして活動できるかまでは知らない。
〔よし! 出久がヒーローになっても即引退になれば夢も叶う、そして未来も実現してその先の安全に繋がる!〕
ザギは、爆豪の台詞にナイスなアイディアだと賛辞を送りたくなった。
ザギがそうと決まればと考えていた直後。
「だいじょうぶだよ! 僕、頑丈さなら誰にも負ける気がしないよ!」
ちなみに………………、ザギが宿っている出久の身体の頑丈さは、全盛期or完全復活したザギと同等である。
〔結局………………、オレのせい………………?〕
それを思い出したザギは、怪我などによる物理的な引退はまず無理だと思い知って出久の中に形成されているザギの住処で四つん這いで項垂れたのだった。
出久が性格的に控えめで自己評価が低くてもヒーローを諦めずにいられる圧倒的な力を与えてしまったのは自分であることに気づいてしまった。出久はそのおかげでそう簡単に怪我もしないし敵もいないが、危険だらけの夢と将来を捨てる理由も無くなることになってしまった。自分以外の誰かのために危険に飛び込んでも死なないことを出久が分かっているからだ。
〔オレのせい………………〕
涙は出ないが、涙があったら間違いなく半泣きになっていた。
「た、体育祭………………! 個性時代到来からのオリンピックイベントの晴れ舞台………………!」
「デクくん、緊張しすぎ!」
テレビなどの情報媒体でしか見聞きしていない雄英校の体育祭の舞台に、雄英校の生徒として参加者になれると改めて認識した出久はまだ先の話だというのにガチゴチに固まり、緊張しすぎで魂が抜けそうになる。そんな出久を麗日を始めとしたクラスメイト達が正気に戻そうとしたりして、ヴィラン襲撃事件の恐怖から心機一転して今の時代のオリンピック開催に心を躍らせるヒーロー科の卵達であった。
その陰で爆豪が体育祭でザギが何かしでかす可能性が高いことを想像し、トイレに行くフリをして個室に入り、頓服としてもらっていた痛み止めを素早く飲み込んでいた。
たぶんこの日に教室外に集まったB組と、その他学科の生徒がなんか言ってきて、ザギがイラッとして出てこようとしたのを察した爆豪が出久を引っ張ってその場から引き離すなりしてザギのことをまだ知らない周りを助けるという展開を考え中。
麗日が出久にたいして恋する乙女全開でいるオリジナルエピソードを書こうか悩んでいます。
もしくは出久が就寝中の夢でザギの過去(※ウルティノイドザギ時代頃)を見て目を覚ましたら泣いていたというエピソードか。
色々と考えています。