ヒロアカ×ダークザギ  ネタ   作:蜜柑ブタ

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続けて投稿。

ノッている内に睡眠時間削っちゃった……。
アホです。



今回はガチンコバトル開始。


最初は心操。

次に轟。


心操はサクッと終わりますが、轟とのバトルでザギが色々と酷いことを……。


流血表現と、残酷表現、自傷行為などがあります。
あとヒーロー全般へのアンチ表現があります。


そしてアンケート結果で決まったエンデヴァーにザギが『殴る+光線一発』のうち、光線一発を入れるシーンがあります。







それでもOKって方だけどうぞ。





いいですね?




第19話  ザギの強行を止められるのは、ただひとり

 

 

 

 雄英体育祭、最終種目は、ガチンコバトル。

 1対1で生徒が今もてる力を全てを使ってぶつかり合い、その後は生徒達が将来に向けた課題を見出したり、見る側が一番盛り上がる最終種目。

 ヒーローの多くがヴィランとの戦闘が求められるため、攻撃力の高い個性が優位に立ちやすい。

 だがそれだけではヒーローとして食っていけないの現状であるし、工夫次第ではそれほどでもないいわゆる弱個性でも高い順位をキープするヒーローになれるのだから相澤が常々『一芸だけでは勤まらない』と言っているのである。

 強個性に恵まれていても、知謀の前に負けることは少なくないからそういう点もスカウトがしっかり見極めようとする。

 

 

 第壱回戦目は、なんと出久。

 出久は、ちょっと事情があってトーナメントの最初に回ってしまった。

 一部の生徒が棄権を申し出たからだ。

 その結果、その生徒が戦う相手が出久と戦う。

 

 

 

 セメントスによってあっという間に製作されたガチンコバトルのためのステージの上に、出場する生徒が立つ。

 相手は紫色の髪の毛と、気怠そうな表情をした男子生徒。

 着痩せするタイプか一見スマートであるが高身長な方で、鍛え方次第では化けると見える。普通科とはいえ、最終種目の出場権を勝ち取ったのだ、ヒーロー科を目指すための努力が伺える。

 

 

 〔C組。普通科…、心操人使。手だらけの奴が来た後日に教室前に集まっていたヒヨコ以下共の中にいたか〕

 

 

 普通科がヒーロー科の受験を落としてやむを得ず普通科に入った人間が多く、そのためヒーロー科に上がろうと隙をうかがっていると言っていたのがこの心操だった。

 ヒーロー育成に特化した進学校であるため、普通科はヒーロー科の枠から落ちてしまった生徒の救済配置みたいなポジションらしい。そしてヒーロー科の生徒が逆に普通科行きになる可能性も大きいという意味もあった。

 

 

 やがて試合開始の合図が出る。

 

「なあ、騎馬戦の時のアレの時の記憶が無いってマジな話?」

「う、うん。そうなんだ…。」

「!?」

「えっ? どうしたの?」

 心操からかけられた言葉に普通に返事を返した出久に、なぜか表情を強ばらせる心操に出久が首を傾げた。

 普通科の席側の方で小さくどよめきが起こる。

「なんで……、別人格があるから? いや…それでも…。」

「もしかして……、個性を使ったの?」

「っ…!」

 動揺を隠しきれない心操の体がビクッと跳ねた。

 

 

 〔超越者を支配できるわけないだろうが。ただの地球人程度の精神力で〕

 

 

 今の出久の精神は、ザギが宿っていることで光の一族、超越者であるウルトラマンと同じぐらいの強度がある。

 それは物理的にも精神を覆う表層の壁の強度もだ。その分厚い壁を突破するには、ウルトラマンに並べるぐらいの超能力を扱えるだけの精神力やそういうことに特化した宇宙人の固有能力のようなものがないと無理だろう。

 ついでに出久については、ザギが壁にもなっているので精神に入り込んできたらザギが待ち構えていて不法侵入者を即撃退状態だった。

「マ…ジか! そんなのありなのか!?」

「何をしたのか分からなかったけど、僕には通用しなかったんだね。僕も勝ち上がりたいから、行くよ!」

「くっ!」

 心操の個性である洗脳が通用しないと分かり、素手での戦いしかもう手段が無い心操は、負けると分かっていても最後まで足掻くことを選んだ。

 心操が発する言葉に言葉で返事を返すと意識を喪失して操り人形のようになってしまう個性だが、言葉で返事を返さなければかからず、洗脳状態も心操が解除するか、誰かからダメージを受けたりすると容易に解除できたりと意外と脆い。だが洗脳をかけるタイミングは心操の自由であるし、複数人を一度に操れるので、状況と使い方次第では恐ろしい個性だ。

 最大の欠点は、心操自身の肉声を直に聞かなければ発動しないことだろう。つまりマイクや拡声器などの発声器越しだったり、記憶媒体に記録して聞かせても無意味ということだ。変声機もこれに該当するため声を変えて相手を油断させる手段も使えないときた。

 まあ、肉声を聞いて返事をしても洗脳できない……というイレギュラーは、心操も今まで遭遇したことが無かったらしく平静を保とうとしているがかなりパニックになっているようだ。

 

 

 〔運も実力のうちとは良い言葉だ〕

 

 

 身体能力が異常レベルの出久に正々堂々戦っても勝てないのは火を見るより明らかだったため、奮戦したものの心操は敗退した。

 出久以外だったなら勝てていただろうに。運が悪かった。

 

 ちなみに体育祭後に、心操がダークシャドウを持つ常闇に洗脳を試させて欲しいと頼みに行き、常闇とダークシャドウを操れたという結果が出せたため出久だけがイレギュラーだったという答えが出るのは別の話である。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 プロヒーローの観戦席で、その一部が重苦しいオーラを放っていて、その周りに座らなければならないヒーロー達の気分を害していた。

「え、エンデヴァーさん…。」

 重苦しいオーラの原因はエンデヴァーだった。

 ぶっす~とした不機嫌オーラメラメラ状態で、顔の横にデッカい絆創膏を張っているが隠せていない酷い腫れ具合は誰もが二度見してしまう有様だった。

 リカバリーガールがせめて腫れを少しでも小さくしようと頑張ったが、今日中には無理と判断されて今である。

 絆創膏は腫れと痛みを緩和する治療薬の他に、腫れの原因なったグーパンの痕を隠す意味もあった。むしろ後者のために張ったと言っていいかもしれない。エンデヴァーがとにかく隠したがったからだ。

 いったいなにがあったのか? それを聞く勇気を持つプロヒーローはいなかった。

 雰囲気で絶対聞いてくるなというのが感じ取れてしまうし、空気が読めないタイプでもエンデヴァーの顔の状態になる事態が起こっても体育祭が中断されていないことから裏で不祥事の示談が終わっているのだろうと思ったり、面倒ごとに巻き込まれたくないという気持ちなどもあって、結果誰もエンデヴァーに話しかけない。

 そんな中でも体育祭最終種目であるガチンコバトルは、続いている。

 多種多様な個性を持つ将来を担う若人達が将来のため、自分自身の今の力の限界を出してぶつかり合い、勝敗を決める。

 雄英卒業生達は自分達の学生時代を懐かしんだり、卒業生でもそうじゃなくても純粋にガチンコバトルを観戦したり、事務所運営者はスカウトのために目を光らせたり、様々だ。

 ただザギをイライラさせる声がちらほらずっと聞こえる。

 

 それは自分達のプロヒーローとしての順位を脅かされることを恐れるものだ。

 

 プロヒーローの人数が多くなりすぎた現代で、順位は重要性を増す。

 順位の変動はそのまま死活問題に繋がるから必死なのだ。

 それは分かるが、それが余計にヒーローというものの価値を下げているとしかザギは思えなかった。

 

 

 〔血を吐きながら終わらないマラソンを続ける……。ノアも、それ以外の奴らも……。アイツらは損得勘定や恩着せがましい理由で宇宙を跨いで命をかけてはいない〕

 

 

 大いなる力を手にしたからこそ、その力を持つことの責任を果たそうとする。そのために寿命を縮める技を使うことさえ厭わない。

 全てのウルトラマンがそうであるわけではないが、少なくとも警備隊や大きな称号を持つ者から認められた者には、共通しているとザギは思う。

 違う星出身でも一部がウルトラマンと同じ力を持つ者もいたり、文明レベルが比較して低いが同じウルトラマンと類似した力を持つ狩猟民族もいるぐらいだし、なんだかんだあって別の星出身のウルトラマンがウルトラ一族が住む光の星に移住したということも少なくないから、もしかしたらこの宇宙のどこかにウルトラマンか、それに近い種族がいる可能性はゼロじゃないわけだが……。

 

 

 〔はあ………、くだらない。まるで滑ったコントというものか? もしくは素人が演じる劇か。やっぱり、出久には相応しくない〕

 

 

 ザギはあらためてそう考えて、ひとり頷く。

 

「麗日さん! ナイスファイト!」

 

 出久がそう声をかけているのに気づいて、そちらに意識を向けると、爆豪と対決となった麗日が敗北後に担架で運ばれていく姿があった。

 疲れ切っていた麗日はセメントの粉塵の汚れと汗にまみれた顔であったが、出久に向けて精一杯の笑顔を見せ、サムズアップをして見せた。

 爆豪の方もかなり消耗したようだが、圧倒的なセンスと攻撃特化の爆破の個性で麗日の攻撃を防ぎきりトーナメントを勝ち上がった。

 保健室に連れて行かれた麗日より先に爆豪が戻って来たが、爆豪はスクリーンに映るトーナメント表を見て顔を歪めた。

「おい、出久。」

「なに?」

「………次、お前と戦う相手は轟で間違いねぇぞ。」

「えっ!? でも、まだ…。」

「勝負する間もねーよ。」

 爆豪の言葉通り、瀬呂と当たった轟は巨大な氷塊で勝負を一瞬で終わらせてしまった。

 手も足も出ないとはこのことで、感情が高ぶっていて出力を加減できなかったことを詫びつつ、もうひとつの炎の個性で氷を溶かして瀬呂を助け出した轟の雰囲気は危ういものだった。

 その様子を見ていた出久は、自分の胸を片手で鷲掴み、言いようのない不安を覚えた。

 爆豪と交わした会話で、自分の中にいる別の人格が出久を過保護に守ろうとして周囲に敵意を持っていること、そして訓練の授業やUSJでのヴィランの襲撃事件、そして騎馬戦で暴れた話を聞いて、これから何が起こるのかを嫌でも予見させられた。

「……出久。」

「かっちゃん?」

「お前じゃなきゃダメだ。アイツを止められんのは。アイツはもう開き直ってやがる。」

「!」

「俺じゃもう止められねぇ。ヒーローの連中もダメだ。とにかく騎馬戦の時みたいに浮かび上がって来い。じゃねーと……。」

 爆豪がスクリーンに映った轟に視線をやった。

「…分かんだろ?」

「………うん!!」

 

 

 そうして強い決意を持った出久は、自分の出番が来たため戦いのステージへと移動した。

 そこで順当に瞬殺の勢いで勝ち上がってきた轟と相対する。

 轟の鋭い視線が出久に向けられているが、出久はその視線が自分では無い誰かに向けられていると瞬時に理解した。

「轟くん……。」

「緑谷、俺の本命はお前じゃない。」

「!」

 

 そして戦いの合図が出されるが、轟はなお言葉を続けた。

 

 

「お前の中にいる奴だ。出せ。」

「でも………。」

「百も承知だ。エンデヴァーに言われたからじゃねー。俺は俺の理由でぶっ飛ばしてぇ。それだけだ。」

「だけど! それ……っ。」

 出久の中にいる存在に向けて戦いたいと望む轟に、やめるよう進言しようとする出久の意識が一瞬にして消えた。

 轟がそれを見逃さず、すぐに構える。

 顔や袖をまくった腕に現れる赤い模様、黒く染まる髪。

 騎馬戦で目撃された、黒い緑谷がゆっくりと赤い目を開けて轟を見た。

『〔………馬鹿か。お前は。馬鹿としか言いようがない〕』

「…お前がなんなのかは今はどうでもいい。とりあえず、俺と戦え。それで………、俺が勝つ!」

 強い口調で言ってくる轟を見て、黒い緑谷、否、ザギが心底呆れて笑えてきたとばかりに大げさに肩をすくめて鼻で笑った。

『〔大事に大事に育てられた箱入りが……。ヒヨコ以下の中で特に恵まれた環境と血筋に恵まれただけの脆弱なヒヨコ以下が。ロクに戦う相手との力の差も分からない雑魚が。お前程度は……、壊される楽しみのためだけの一瞬の付加価値しかない!!〕』

 

 

「しょうとーーーーーー!! 戯れ言に耳を傾けるな!! お前は№1になるために生まれた!! そんな訳の分からない凶暴なだけの野良悪ガキごときに遅れを取ることは許されんぞーーーー!!」

 

 

『〔がぁーーーーーーーーーーーーー!! う る さ い!!〕』

 

 

 次の瞬間、観戦席で大声を上げるエンデヴァーにムカッときたザギが、怒りの形相と共に右手に紫色のエネルギーを溜めて右腕をエンデヴァーに向けて伸ばすと紫色のエネルギーの光弾を発射した。

「はっ、なっ……!? ぐおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

 いきなりのことに驚いたが、超高速で発射された光弾を回避する暇も無かったエンデヴァーは光弾の着弾と共に爆発に飲まれた。

 左右、前後にいたプロヒーロー達は爆発の勢いに吹っ飛ばされたり、爆発から逃れようと飛び退いたりしていた。

 プロヒーローの観戦席は、あっという間に大混乱。

 もちろん体育祭のすべての観客席や教師陣、生徒の観戦席も混乱。

 煙が晴れると、プロヒーローの観戦席がいくつか破損して、自分が座っていた席は辛うじて残ったが爆発でできた背後の凹凸に上半身を背中から垂れ下がらせた状態になったエンデヴァーがプスプスと小さな煙を立ち上らせて倒れた状態になっていた。

『〔フンッ! 最小限に手加減してやったんだ。感謝しろ!〕』

 一撃で倒してやったエンデヴァーに向けて中指を立ててそう叫ぶザギ。

 エンデヴァーをザギシュート(すごく手加減した威力)で黙らせたザギは、ポッカーンとしてしまっている轟に向き直った。

『〔それで? 戦ってどうする? さっきのを見ても?〕』

「っ……。それでも……。」

 ハッと我に返った轟が表情を引き締め、構えた。

「俺は……、お前と戦って勝ちてーって思った。それだけだ!!」

『〔……そうか〕』

 それ以上の会話はもう必要無しと判断した轟が先に動いた。

『〔愚かだ〕』

 次の瞬間、轟の体がステージの床にうつ伏せになっていた。

 何が起こったか分からない。

 だが遅れて強烈な激痛と込み上げてきた鉄の味が喉からせり上がり、咳き込むと床に赤黒い血が吐き出された。

 胸の横が凹んだような状態で、それが肋骨の片側を粉砕されて肺に突き刺さって吐血したと頭が理解するのにそこまで時間はかからなかった。

 ザギはその場から動いた様子はない。だが目視できない速度で致命傷になる一撃を轟に入れていた。

 ザギのつまらなさそうななが~いため息が妙なほど耳に届き、轟はなんとか顔を上げてザギを下から睨み上げた。

『〔胸骨と、片方の肺をまず潰した。次はどこを壊されたい? 選ばせてやる〕』

「…っ……くっ……ぐぅぅ!!」

 次の瞬間、口周りを血塗れにしたまま歯を食いしばった轟が最大出力で氷結の個性を放ちステージ全体を巨大な氷で覆った。

 ザギは立ったまま、氷に包まれて動けなくなる。震えることさえできない状態で氷像と化した……かに見えたが。

『〔………この程度か。こんな氷程度で満足か?〕』

 隙間無く氷に閉じ込められているはずが、ザギの表情と口が動き、全ての氷がかき氷のような細かさに砕けて散った。

『〔地球の気候じゃこの程度の低温が限界だったな。まあ、それは置いておくとしても、本当に面白みがない〕』

「ーーーっ!」

 自分の限界を超えたと自負できる特大の氷塊を一瞬にして、何の予備動作も無く消されたことに轟は目を見開いて知らず知らずのうちに身を震わせた。

 ここに来て、轟はやっとザギとの力の差を身をもって理解した。

 強い…なんてものじゃない。次元が違いすぎる!

 挑むなんて愚かなマネをしてはいけない相手だった。

 片方の肺を損傷したせいで呼吸が十分にできないままうつ伏せで倒れたままの轟の頭を、ザギが左手で掴んで軽々と自分の目線まで持ち上げる。

 赤く不気味に光る赤い目が細められる。

『〔壊しがいもない。攻撃もつまらない。この程度の冷たさで自滅しかけて、なにをしている?〕』

 轟の右半身が霜を纏っていて、轟の体が低温で自然と震えていることに気づいたザギが首を傾げる。

 轟の個性には二種類あることは知っていたので、片方を補うための方を使わないことにザギは理解できないと顔を歪めた。

『〔勝つことを望むなら、なにをしてでも戦うことをやめるな。全てを使い尽くせ。その程度の意欲でオレに挑んだのか? 笑わせる! 生みの親だろうが育ての親だろうが兄弟だろうが、喰って殺してでも勝利を欲したこともないのか! つくづくガッカリさせられた! この地球のヒーローというものに! つまらない! 心底くだらない! 価値も無い! ただの烏合が! 英雄(ヒーロー)の価値をどこまでも下げるだけだ! お前もそうだ。父親の叶わぬ望みの代替えで終わることを不服とするなら、手段を選ぶな! 全てを喰らい尽くして糧としてでも抗う執念を持て! 価値のないものに価値を見出して夢を求める強欲さを! それができないなら……、死ね〕』

 ひとしきり叫び散らしたザギが急にスンッとなって、轟の頭を掴んでいない右手に紫色のエネルギーをまとわせて拳を握った。

 トドメを刺す気だと、一連のことを見ていた者達全員が考えた。

 あまりに一方的で残虐ファイトにしかないっていない轟と出久の戦いの中止をとっくに放送席から発せられていたが、それは無視されていた。

 教師陣やプロヒーロー達がザギを止めるべくステージに群がって来たが、近づこうとした瞬間に見えないエネルギーの壁にぶつかって弾き飛ばされた、強引に破ろうとして全力で殴り続けたマッスルフォームのオールマイトの腕が先に逆流するエネルギーでボロボロになり鮮血が飛び散っただけに終わり。他のプロヒーロー達が合わせ技でぶつかっても無駄に終わった。

 ザギが轟の頭めがけて最後の一撃を入れようと腕を振りかぶろうとした時だった。

 パッと轟の頭を掴んでいたザギの左手が開かれて轟が床に落とされた。

『〔なっ……!?〕」

 ザギが動揺したように声を漏らした。

 続いて左腕が勝手に動いてザギの右腕の肘辺りを掴んだ。

 左腕を動かしているのはザギではない。

『〔出久…! なぜ……?〕』

 ギリギリと右腕を掴む左手の力が強まり、右腕の肘辺りの骨が軋み出す。

 何をしようとしているのかを察して、ザギの表情が狼狽えたものになる。

『〔出久!〕』

『……ねがい…』

『〔!〕』

『もう……、やめて……。これ以上は…。だから……』

 出久の泣きそうな声…、いやもう涙している声がザギの内側から溢れてくる。

 メキメキと骨が、肉が。

 

 

『僕が君をとめる!』

 

 

 そして右腕の肘辺りが左手の力で握りつぶされ、千切れてはいないが溢れ出る血と共にあらぬ方向に曲がった奇妙な形になってしまった。

 

 

 〔そんな……〕

 

 

 ザギが出久のためと思ってやろうとしたことを出久は知り、自分の腕を自分で握りつぶしてでも阻止しようとした。

 

 

 〔ああ………、……出久に嫌われた〕

 

 

 ザギは、それを痛感しながら出久の意識と入れ替わった。

 

 

 

 

 出久はハッと目を開けた。

 溢れ出る涙で視界は悪いが、戻って来れたと理解した。

 下を見れば口から血を吐いて息も絶え絶えな轟が倒れてたまま。

 出久は慌てて轟を仰向けにして、状態を見た。

 その途端轟が咳き込んで気管に溜まった血を吐いた。

 出久は顔を歪め、ザギが張っていたバリアが消えて集まってきた教師陣やプロヒーロー達や救護班など目に入らず、決意をしたように表情を変えた。

「お願い……、力を…、轟くんを治すための力を!! お願いだから! 使わせて!!」

 それは懇願。

 出久からザギに一生のお願いだと言わんばかりのもの。

 出久の中で この世の終わりのように落ち込んで、膝を抱えていたザギがその懇願を無視するなんてできない。

 だから、これまで抑えていた超能力の出力を本来のものに一時的に戻した。

 湧き上がってきた力を感じた出久は周りの声を聞かず、轟の体に両手を添えてヒーリングの力を使った。

 これまで使ってきたものとは比較にならない高出力のそれは、まばゆいほどの薄緑の光で周囲を照らすほどだった。

 轟の折れた肋骨、潰された肺、凍傷も全てが凄まじい速さで完治していく。

 やがて光が消え失せると、轟がゆっくりと目を開けた。

「………お、…俺……傷が…?」

 苦痛が嘘のように無くなったことに混乱しつつ、轟が身を起こそうとした時、俯いていた出久が轟の体に倒れ込んできた。

「緑谷!?」

「緑谷少年!!」

「轟くん……、怪我…治った…?」

「あ、ああ…。治して、くれたのか?」

「よか…った……。」

 出久は轟の腹辺りでへにゃりと笑い、そのまま意識を失った。

 

 

 〔………今まで使わせたことがない、最大出力だった。慣れていないから…〕

 

 

 未体験だった最大出力の超能力に精神の方が耐えられず、意識を失ってしまったのだ。

 いくらウルトラマン相当の頑丈さと超能力への抵抗力ががあっても、本質はただの地球人なのだから。

 何度も使えば慣れて使いこなせるようになるだろうが、ぶっつけ本番で、急に最高血圧に達するようなことをしたから負担が大きかったので、ザギは出久に頼まれても出し渋ろうと決めたのだった。

 

 バチバチと紫電のような光が弾けながら、握りつぶされた出久の右腕がある形に変異していた。

 それは、本来のザギの腕の形。

 黒く、赤くて赤い光がほんのり脈動する模様がある腕。

 最短で出久の腕を完治させるための思いつきだった。

 右腕が握りつぶされた箇所から上、肩近くまでがダークザギの腕になったのだ。

 もちろん出久のサイズで。

 この後、保健室で意識が戻った出久が変わり果てた右腕を見てビックリしすぎて叫ぶことになる。

 

 

 ガチンコバトルの結果であるが、不測の事態が発生したものの、出久が自力で凶暴な人格を強引な手段で押さえ込み、重症を負った轟を全力で回復させて後遺症無く完治させたことで体育祭の中止はひとまずお預けとなり、出久が意識を失ったことを理由に轟の勝利という判定となった。

 

 

 




本編で描かれていた他の生徒達のバトルシーンははしょりました。
申し訳ありません。

どうしても一番書きたかった、エンデヴァーに光線一発と、轟とザギの一方的なバトルシーンと、出久がザギを止めるシーンを書きたかったのです。

当初の予定からかなり変わり、ザギのことを認識するのが体育祭中となり、出久がザギを止めるために自分の腕を握りつぶすという自傷行為をしたという展開になってしまいました。
原作での右腕をボロボロにした場面が印象に残っているので、何らかの形で右腕を負傷するシーンを書きたくなり、考えた結果こうなりました。

握りつぶした右腕をザギが本来の自分の腕に一時的に変身させることで、治るのを速めるというゴリ押し方法も同時に思い付いたので、この話以降、少しの間だけ出久の右腕はザギの右腕の形でいることになります。

重症を負って死にそうな轟を助けたくて、出久はザギに懇願して力を貸してもらい、これまで使ったことがなかった出力でヒーリング能力を使って轟を治療し、轟は無事に助かりますが、代わりに出久は無理がたたって倒れてしまい、轟の勝ちという形でバトルは終了という形で終わらせました。
なので体育祭の最終順位は、本編と同じにしようと考えています。

ザギが自分の持論を轟に吐きまくってますが、これがきっかけで轟が炎の個性も使うようなる予定です。


右腕が一時的にザギの腕になったことで、出久の意識が表の状態でザギが右腕で意思表示したり、出久からコミュニケーションを試みて少しずつザギが緊張を解いてという展開を考えています。
書けるかな……。
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