この勢いがいつまで続くか……。
今回は、前回からの続きで轟が最後の方でザギと話がしたいと言ったことを実現します。
前半は、これまでにも何度も書いたと思う、ザギがヒーローに塩評価な理由とか。
しつこいかな?
中盤はオールマイトが前回のあとに何したのかと、その後日談を根津に報告とザギについて考察したり。
後半が轟とザギの会話を出久が間を持って行う。
轟が見ていた夢の謎と、なぜザギの右腕を知っているような様子を見せていたのかの理由を描こうと頑張りました。
最後の方で微妙にエンエヴァーアンチ表現?があります。
エンデヴァーファンの方は回れ右してください!
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
雄英は、ヒーロー科のある進学校の中で特に学ぶことが詰め詰めの厳しい進学校だ。
6年間ある小学校と違い、たった3年間で肉体的にも精神的にも頭脳面でも能力が求められるヒーローという職業になることが前提なので最新鋭の技術と最新の知識、教師、体験学習の充実性などなど。
短期の専門学校などもその部類だろう。
ハッキリ言ってそんじょそこらの人間ではすぐに根を上げるほど厳しいのだが、それらを覚悟した上でプローのヒーローになりたくてここへやってきた子供達だ。根っこから違うのかもしれない。もちろん途中で挫折して諦めて去る者も多いだろう。過去に遡ればそうした人間達がいたからこそ、今のご時世とそれを学ぶための場所が作られる基礎となったのだ。
そう言う意味ではなにも無駄になんてなっていない。先陣の功績と犠牲の産物だ。
けれどザギは、この星に存在するヒーローというものを無駄で価値の低い物とした認識していなかった。
憧れる者が多すぎるからこそ食い扶持を得るために表の評価を気にして順位をばかりを重視して、目立つために単なるテレビのエンターテイメントのような役回りだけになってしまう者さえ多い。
だからこそザギは、思い出す。
自分が敗れた宇宙で見てきたノアのデュナミストとなった人間達と、どれほどの絶望を前にしても立ち向かい続けたそれ以外の人間達と、操作されて喪失させられていた恐怖の記憶を思い出して希望に転換してノアの完全復活に繋げた絆という大いなる力。
完全な敗北の記憶であるはずなのに、あまりにも眩しいその力を忘れることができない。できるわけがない。
だからザギは比べずにいられない。
痛みを知るただひとり。その強さを持つ者達と戦って負けたからこそ、失望の感情しか浮かばないのだ。
だから、出久をヒーローにさせたくないのだ。
出久には名ばかりの英雄(ヒーロー)というものが相応しくないと考えているから。
だから、ザギは余計にオールマイト(※出久がヒーローを目指したがる起源(オリジン))が嫌いなのだ。
***
「………派手に引っ掻かれたんだね~?」
「はあ……、半端じゃないなんてレベルじゃないほど嫌われてます……。」
トゥルーフォームなのだが、体のあちこちがボロボロになっているオールマイに根津がそう声を掛けると、オールマイトが頭をかきながらそう答えた。
教室での一件からザギにお近づきなろうと何度かトライしたのだが、全敗に終わり、ついでに超手加減された状態でボコられた。右腕だけで。
なんだったら見えない力(念動力)で、天井と床に打ち付ける人間ドリブルもされた。
「う~ん…、体育祭の最中にそのザギというのが表面に出てきた時に吐いていた台詞からすると、オールマイト個人を嫌っているというよりは、ヒーロー全体を嫌っているように思えるね。生徒達を卵以下だのヒヨコ以下だの、ヒーローというものに対してはガッカリさせられたとか、烏合とか、英雄の価値を下げているとかって……、まるでヒーロー殺しの言い分に近い。」
「それは…!」
「待ちたまえ。ザギがヒーロー殺しと並ぶような存在とは限らないよ。少なくとも緑谷くんの言葉にだけは耳を貸すし、何よりも緑谷くんを優先して守っているんだろう?」
「…生徒の台詞を借りますと、極悪な過保護…のようです。」
「極悪な過保護……、言葉だけでもやっかいなのがすごく伝わるね!」
「緑谷少年が認識していなかったら、USJでのヴィラン襲撃時のようになりかねないとしか考えられないのです。だからこそ、私はザギのことを知りたい!」
「でも、全然話すらしてもらえないんでしょ?」
「………………はい。」
「まずは緑谷くんに頑張ってザギの態度を軟化させてもらわないとなにも進展しないと僕は思うよ。焦る君の気持ちは分かるけど、相手は強すぎるうえに難攻不落なんだから攻略法を見出さなきゃ勝ち目は無い。分かるね?」
「はい……。」
オールマイトは、巨悪であったオールフォーワンよりも恐ろしいと感じたザギのことを早く知りたくて焦っていた。
何者なのか、何を目的にしているのか…などなど。
ただ直感だがザギは、個性ではないとオールマイトは考えている。つまり常闇のダークシャドウのような個別の人格を持つ個性とは完全に別物だと。
爆豪を小さい頃から脅していたことや、その前に無個性と診断されていた出久が突然凄まじい力に目覚めたという話も、もしザギがあとから出久に乗り移るなりして宿った何かなのだとしたら?
まさか宇宙人? 地球外生命体?
超常社会となった今の地球に宇宙人や正体不明のエイリアンが紛れ込んでいても、個性として片付けられてしまいそうだ。
などとSFな可能性を考えたが、ザギと会話すらできない今の現状では確かめる術がない。
………実は正解を導き出していたことをオールマイトが知るのは、まだ少し後のことである。
だが遠くないとても近い未来の話だ。
***
「………なんで、全員いんだ?」
「念のためだぜ。」
その日の放課後、帰宅するはずがA組の教室にクラスメイト全員が残っていた。
轟が希望したザギとの会話を出久を通して行うために、二人が放課後約束したのを聞いて、もしもに備えて警戒してのことだった。
「聞かれたくないことでしたら、監視カメラと音声録音機を残して外で待機する方法もありますわ。」
「いや、そこまでしなくていい。」
「んじゃ、問題ねーな。」
轟がザギに聞きたいことは、別に他者に聞かれても問題ない内容らしい。
二人が椅子に座って対面する形を取って、出久は緊張しながら右腕を摩るようにしてザギに促す。
「ザギ。轟くんが君と話をしたいって言ってるだ。質問でも答えてくれるなら、手を上げてくれる?」
出久が聞くと、ザギが右腕を上げさせた。
「オッケーだって。」
「ザギが直接緑谷の口を使うのか?」
「あっ。そっか……、じゃあイエスノーカードとか使った方が…。」
「それでしたらすぐに用意しますわ。」
物を創り出す個性を持つ八百万がすぐに二枚のカードを創造してくれた。
表面にYESと、NOが掘られた形になった硬い質感のカードを机の上に並べ、出久が右腕を机の上に乗せて選びやすいよう調整する。
「始めて良いならイエスを選んでね。」
そうザギに言うと、ザギはすぐにイエスを選んだ。
「早いな。」
「さっさと終わらせてーんだろ。」
爆豪がため息交じりに肩をすくめた。
「……分かった。じゃあ話していいか?」
轟が言うと、ザギがイエスを選んだ。
「俺、ザギのことをずっと前から知ってる気がする。」
「えっ!?」
驚きの声と共に一斉に視線が轟に向けられる。
ザギは、はあ?状態だった。
「その腕……、見たことある。」
轟が出久の右腕を指差した。
黒を基調とした赤い模様のある腕。人間の物ではない。
「どこで見たの?」
「……夢。」
「ゆめ? 寝てるときに見てたってこと?」
「何度か。いつからか忘れたが、忘れた頃にたまに見てる。その夢の中じゃ、ザギっぽいデケーのが最初は赤い模様のある石みてーな色だったけど、途中から真っ黒…、っ!?」
「ちょっ、ザギ!?」
最後まで言い終わる前にザギの右手が轟の口を掴むように塞いだ。
周りも慌ててザギから轟を引き離そうと手を出すが、ザギの指の力が強くて全く外せなかった。だが轟を握りつぶすほどの力は入っていない。ただ単に言葉を止めさせるために口を塞いだようだ。
〔なぜ……? こいつ……〕
夢でザギのことを知ったというのは嘘ではないと理解した。だが遙か過去のザギの姿をなぜ轟が?
「ザギ! 手を離して! 聞かれたくなかったことだったの!? だったらこれ以上は…。」
〔……今更だ〕
ザギは手を離した。
轟は指が軽く食い込んでいた頬を撫で触るようにして気にしていたが、ダメージはさほど無いようだ。
ひとまずザギが手を離してくれたことに周りがホッとした。
「やっぱ…、あれザギだったんだな?」
轟が言った。
ザギが過剰反応しないかと身構えたが、ザギは動きを見せない。
「誰か分かんねーけど、なんかの代わりにするために造られて…、なんか色々あって、今、ここにいんだな?」
「…そうなの?」
出久が右腕に視線を落として聞いた。
ザギは、イエスを指差した。
〔断片的な、オレの過去の情報……。たまたま流れ込んだのか〕
広大な宇宙で孤独という敵と戦うために発達したテレパシーなどの能力が、流れ弾みたいに非対称にぶつけられることがある。
知れないアドレスから知らないメールが来たとか、電話番号のちょっとした間違いで違う相手に繋がってしまったとかみたいなものだ。それがきっかけで良い意味でも悪い見でもお近づきになることもある。
ほとんどの場合、意図してなければ一方的なもので終わるので、轟の場合は一方的にザギの過去の記憶の一部が流れ込んで夢として見ていたのだろう。
ザギと轟の場合は、ザギが肉体を失って情報体が剥き出しの状態でこの宇宙の地球へ落ちてきた時に偶然共鳴的なことがあって記憶の情報の一部が一方的に轟の脳に流れてしまったのだろう。ザギが意識してやったことではない。
〔もし…、出久じゃなく、こいつに先に接触していたら……。こいつがオレの適合者か…〕
かつていた地球で、宿るのに適した体質の人間を見繕う必要があったが、この地球では轟がそれに該当するようだ。
だから同じ日本の地とはいえ、轟にだけザギとの一方的な見えない繋がりが構築されてしまったのだ。もし轟の方に宿る結果になっていたら、逆に出久が今の轟のように記憶の情報が流れ込んだ状態になっていたかもしれない。まあ、結果論と予想でしかない。
そもそも轟に先に出会ったとして、轟に宿る道を選んだ可能性があったかどうかは別問題だ。自分のせいで死にかけた出久を助けるために出久に宿る道を選んだのだから。
〔ないな。うん〕
もしも轟と先に出会っていたというIFを考えてみたが、出久に宿る道を選んだ今と同じにはならなかったとすぐに結論づけるザギ。
むしろエンデヴァーにムカついて轟を完全に乗っ取って悲惨な結末だけを残していただろうと容易に想像できたからだ。それ以降のことを想像できなかったのは、あの時期のザギは出久からあの言葉を貰えなかったら自暴自棄になるばかりで何も欲しくなくなっていた。それこそ目に付くもの全てを八つ当たりで破壊し尽くしすだけの害悪に成り下がっていただろう。
「なあ、その右腕触ってみていいか? ザギの腕なんだろ?」
「えっ? ざ、ザギ? どうする?」
〔………なんなんだ、こいつは…。別に減るものじゃないが…。意味が分からない〕
何をしたいのかよく分からない轟に、ザギは考え事をしていたのに妨害されて少し不満を抱きつつ減るものじゃないと好きにさせることにした。
ザギがイエスのカードを選んだのを確認すると、早速とばかりに椅子から立ち上がった轟が出久の方へ来て右腕を両手で触りだした。
肩パッドっぽい肩と腕の付け根から、腕全体、関節部分、手と指も。じっくり確認するように触っている轟の顔は、心なしかキラキラしているように見える。
「なんか不思議だ。」
「どうしたの?」
「ただの夢だって思ってたのが本当にいて、今こうやって触れてるのが。」
「そうなんだ。よかったね。」
とりあえず轟の希望が叶ったことに対してそう出久が声を掛けると轟は頷く。
「それと……、体育祭でスゲーいっぱい言ってたろ?」
「うん、そうみたいだね。」
「……おかげでなんか色々吹っ切れた。ザギの言うとおりだって思った。エンデヴァーを…、親父に反抗するんならとことんまで手段選ばねーぐらいじゃねーとできねーんだって。」
あのザギの台詞を覚えているクラスメイト達一同が何か不穏さを感じたが、轟は気づいてないようで言葉を続ける。
「俺が生まれた環境、俺の周りにある物、俺に与えられる物、俺が持ってる物、俺が経験してきたこと。全部、全部、俺がやりてーことに費やして使い切って、俺のなりたいものになりたいって欲。ザギの言うとおり、俺は環境に恵まれてるだけのヒヨコ以下だった。俺は口ばっかで全然やる気がなかったんだって気づけた。そしたらなんか色んなもんが見えてきて、本当にやりてーことが分かった。だから……、ありがとう。ザギ。」
そう言って嬉しそうに顔をほころばせた轟が握手をするようにザギの右手を両手で包んだ。
〔…………意味が分からない〕
ザギは、出久の中で額を片手で押さえた。
轟からの純粋な感謝の言葉に、出久からもらった言葉とは違う物が胸の内に溢れる感覚を感じた。
ただ思ったことを思うままに吐き散らしただけだった。別に説教をしたいとか思想を広げたいとかそういうのじゃなかった。
なのになぜ感謝されるのか。
吹っ切れるとか、今後のことをどうするかは勝手にすればいい。だがそれをザギにわざわざ伝える意味が分からない。
〔なんなんだ……。オレは何もしていないのに〕
ただ文句を吐き散らしただけだったのに、ひとりの人間が人生の方針を変えるきっかけを得た。
ザギにとってはどうでもいいことであるはずなのに、なぜこうも胸の中から何かが溢れてくる感覚があるのか、ザギはまだその理由を知らない。
ザギのおかげで色々と吹っ切れた轟は、それまでの一匹狼のようにガンギマリの固い表情から天然さを感じさせる年相応のイケメンに変わり、授業の訓練でもこれまで使うことを頑なに拒んでいた左側の炎の個性を使って戦術の幅を広げるようなった。
後日、炎の方を使うようなったことについてエンデヴァーがやっと自分から受け継いだ力を使うようなったなと手放しで褒められたそうだが、隙だらけになっていたその時に弁慶の泣き所に会心の一撃を入れて倒してやったと出久とザギ報告しにきて、出久が苦笑いして、ザギはオレは知らんとそっぽを向く仕草を右腕で示した。
おや? ザギの様子が?
勢いで書いてたらなぜかこうなった……。
予定から外れていくのはいつものこと。
轟は体育祭での一件で吹っ切れ、なおかつザギが吐き散らした言葉に感銘を受けて恵まれている自分と環境を全部利用するという方針に転換。
エンデヴァーにも思いっきり反抗するし、逆に利用できる部分は使い潰す勢いで使ってやろうって感じです。
エンデヴァーに反抗するためにヒーローを目指すのではなく、エンデヴァーを食い尽くして糧にして自分が思い描くヒーローになってやろうとします。
使い道が無くなったらエンデヴァーがポイ捨て…になる未来が……。
あれ? これだいじょうぶかな?
轟が見ていた夢は、地球に落ちてきた時の情報体のザギから、ザギの過去の記憶の情報の一部が運悪く4歳の時の轟に流れ込んで、それを夢として見ていたという理由です。
ザギは、全然知りませんでした。完全にもらい事故みたいなものです。
あと轟がそうなった理由として、ザギの適合者としての資質があったことも関係しています。
もし出久じゃなく轟の近くに落ちて先に轟に出会っていたら、エンデヴァーに過去の嫌な記憶を思い出してしまって大惨事になっていた可能性が高かったです。
轟も完全に乗っ取られて終わっていました。
出久に出会って、あの言葉を貰ったからこそ今のザギがいます。
ザギは、ただ文句を吐き散らしただけのつもりだったから、轟から吹っ切れるきっかけをくれたことを感謝されてムズ痒いような知らない感情が湧いてきて困惑。
これもザギの成長に繋がります。
次回は……、職場体験……どうしようかな?
やっぱグラントリノ?
それとも体育祭を見たステインが襲撃してくるというオリジナル展開もあり?